Fate sky/arrow   作:haru10aki

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初投稿です


運命の夜(1)

もうずいぶんと昔の事だった。父から、母方の家に行き、魔術師になりなさいと言われたのは。

父は、聡明な人間、と言うのだろうか。少なくとも、自分の見た限り、父ほど素晴らしい人間は少ないだろう。

母は、自信にあふれた人間だった。自分に厳しく、他人にも厳しく。そして鍛え抜かれた自分を疑わない事が、強さへと繋がる。と言っていた。私には、母の理念は、よくわからなかった。

父は、いたって普通の人で、魔術なんてものには、全く知識は無かった。

母は、父に危険を及ぼさないために、離婚した。

幼かった私は、父との別れが悲しくて仕方なかった気がする。

同時に、母への気持ちは、どんどん薄くなっていった。高校に通い始めた頃から、もう母は、他人のような存在だった。

そんな母の訃報を聞いたのは、一年生が終わるかという2月の初めだった。

色々忙しく、魔術師の葬式や、倉庫の整理など難しい事は母方の親戚が全てやってくれた。

そして、私に回ってきたのは一通の手紙だけ。

______その遺言状のような手紙には、一文の言葉が記されていた。

「今年の8月、聖杯戦争の七人のマスターになりなさい」

封筒の中には、鉄の破片が入っていた。

全く、つくづく自分勝手な母だ。そんな風に流されてる私も私だけど。

...よし。それじゃあ、しようか。

ふぅとため息をついて地下室の扉を開ける。

(はや)る気持ちを抑えつつ、石造りの階段を下る。密閉された地下室に響くブーツの音がよく響く。そして、最後の石段を下りて、広い部屋に出る。

魔法陣は昨日描いておいた。今日が召喚の日。

鉄の破片を魔法陣の中心に置き、詠唱を始める。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。」

 

うん。触媒の鉄片に魔力がこもるのを感じる。

 

「 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

そういえば、今日は月が綺麗だったな。と思い出す。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する」

 

        

「―――――Anfang(セット)

 

「――――――告げる」

 

「――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「誓いを此処に。

  我は常世総ての善と成る者、

  我は常世総ての悪を敷く者。」

 

もう少しで、詠唱は終わる。

 

 「 されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。」

 

さぁ、ラスト一文、気合を込めて!

 

 「 汝三大の言霊を纏う七天!

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

魔法陣から爆風が発生し、私は驚いて、尻もちをついてしまった。

魔法陣があった位置には、燃えるような赤髪をした、毛皮の鎧を身にまとった青年が立っていた。

___________え。

見間違いなく、その青年は腰に一本の剣を携えていた。

「サーヴァント、セイバー。召喚に応じて、来てやったぞ。...あんたがマスターか?」

私は最優のセイバーを召喚できた喜びと、本当に、マスターになれたということに驚いて、動けなかった。

「...しゃんとしろ!あんたはマスターなのか?はっきり言ってくれ」

突如、右腕に痛みを感じた。右腕に、牙のような赤い紋が浮かんできていた。

令呪だ。その存在を知覚したことで、マスターとしての自覚が生まれ、それと同時に覚悟が決まった。

ゆっくりと立ち上がり、青年を見上げるようにしながら、しかししっかりとその目を見据えて、宣言する。

「私の名前は、木島(きじま)紙縒(こより)。これから聖杯戦争に勝つため、あなたに力を借りるマスターです」

セイバーは嬉しそうに微笑んで

「おぉ、臆病な小娘かと思ってたが、存外に気合いあんじゃねぇか。俺の真名は...いや、まだいいか。俺の真名は後々教える。見たところ、聖杯戦争は初めてか?」

「ええ」

「だったら、俺を呼んだのは大正解だ。タイマンなら任せとけ。そんじゃ、よろしく頼むぜ?」

青年は、右手をこちらに差し出してこう言った。

「今の挨拶ってのは、これで合ってるか?コヨリ。生憎サーヴァントってのは世間知らずでね」

「それでいいよ。それじゃよろしく、セイバー」

私も、その手をギュッと握り返した。

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