_______________つまらない日々に嘆く。
いや、面白い事は面白いんだ。けど...
誰かが誰かを貶すばかりの日々、ちびっこはいじめで、中高生は陰口、大人はスキャンダル、誰も彼も、何処もかしこも悪意に満ち溢れてる。
誰もが自分の価値を上げるために、他人の価値を下げるばかりで、みんな汚い。
そういう俺だって、何も変えられない。ただ流されるままに生きてきたんだ。
でも、一片の矛盾もない正義_______そんな物があれば、俺はそうなりたい。そう常日頃、ガキの頃と変わらないままの夢を求めて、過ごしている。
「...部活行くか」
放課後、机に突っ伏したまま、ついついぼうっと昔の夢を考える。
ああ、悪い癖だこれは。さっさと着替えて部活へと向かった。
______矢を引く。弓をしっかりと番え、的を俯瞰する。
あとは、外しそうな自分を薄くイメージして。不安とともに射る。
不安を一蹴するかのように、矢は的の中心を貫通する。
ふぅと息をつき、次の矢を番えようとしていると、隣から拍手が聞こえてきた。
「百発百中だな!流石我が畑山学園の弓道部エース!うんうん。先生は鼻が高いぞー!」
俺は冷静に受け答えする。
「...別に先生は他校から教えに来てるだけじゃないですか。それに俺、入部届は出してないですし。俺一人で弓道同好会なんです」
それを表すかのように、俺は道場の一番端で練習している。
本当の弓道部員は、楽しげに弓道部エースのイケメン君に群がっている女子部員と、そのイケメンエース君と、数人の男子部員だ。
先生は悲しそうな顔をする。全く、もう立派な大人だろうに。そんな子供みたいな顔をしないでくれよ...
「...でも、褒めてくれてありがとうございます。藤村先生。先生が居なくちゃ、俺は弓道を続けてなかったかもしれない」
先生はぱあっと顔を明るくして、俺に笑いかける。
「うんうん。
「藤村先生、息子居るんですか?」
「居ーなーいー!士郎は弟みたいなものよ。君と同じで、弓道が得意だけど、部活には入ってないの」
「...ふーん」
「あ、でもね。なんか最近外人さんが来てね、その子が帰ってから、すごくいい顔するようになったの。芯の通った面構えっていうのかしら?」
「藤村先生の故郷って、何処です?」
「何処って、冬木よ冬木。ここからバイクで一時間程の」
「へぇ...こんど、お邪魔してもいいですか?その士郎君と、話してみたいです」
「いいわよー。じゃあクリスマスにでも来る?」
「ははは...親父に聞いてみます」
「一也くんは一人暮らしだっけ?その年で偉いねー」
「いえ、社会勉強の一環だと思えば、それに、料理を作るのも楽しいですし」
「へぇー!これは士郎より上手か気になるわね〜」
藤村先生は良い人だ。底なしに明るい。
恋愛対象として見る事は出来ないが、気を置かない友人の様な感じで接している。この学校で俺が本心を話せる三人の内の一人だ。
「あ、一也君。彼、もう来てたよ」
「そうですか。じゃあ、俺はもう上がりますね」
藤村先生にそう言って、俺は片付けをして、制服に着替えた。
白い目を向けられながら、道場の玄関で一礼して、道場を出る。
道場を出ると、良く見慣れた顔が見えた。
「よっ、修行は終わりか?」
「おう。そっちはどうだ?もうすぐ全国なんだろ?」
「ああ。絶好調だ。今日は10秒台だった」
「10秒台...そっか。中学の時、俺と競ってた時とはえらい違いだな」
「おまえ...ちゃんと弓道部入ったら全国一位狙えるくせになに言ってんだ」
「訳がわかんねぇよ俺も。腕を使って投射した物が絶対に的に当たる
なんて、わけわかんない得意技なんて」
「そうか?野球したら十分強いと思うが」
「...ボール球が投げれない」
「そりゃダメだな。絶対読みきられるしな」
「でも何なんだろ。この謎技術」
「さぁ?まぁ、お前腕力があるって訳でもないし、そこまで驚異的なものじゃないし、気にしなくていいんじゃね?」
「そうだな。...|知(とも)は、陸上部のエースだってのに、俺は嫌われ者か」
「やめてくれよ。お前は俺の大親友なんだからよ」
こんなスポ根じみた事を本心から言ってるのが、知だ。
俺の唯一無二の友人であり相棒。
「そうだ一也、お前、今日は俺の家で飯食ってくのか?」
「んー...今日はいいや。一昨日行ったばっかりだし」
「何言ってんだ。中学の頃は一也の実家の方でよく飯食わせてもらってたんだから、うちの親も一也の事気に入ってるんだから」
「そうか。そこまで言われちゃ断れないな」
「今はお前が一人暮らしだろ?頼ってくれよ」
「それもそうだな。じゃ、頼らせてもらうよ」
俺は曲がりなりにも、つまらない日常を楽しんでいた。運命の_______この日の夜まで。