水泳部に仮入部ではなく、正式な入部をあれから果たして早一月。
「部長…なんで水泳部なのに泳がない日の方が私は多いのでしょうか?」
「それは雄と関わったからですね」
「そうですか」
ジャグジーの泡の音がとてもむなしく感じました…。
この一ヶ月のうち、泳いだのは十日ほどです。
あとの放課後や休日は先輩に連れられ田園の用水路の清掃に行き、田んぼの代掻きをし、田植えもしました。ちょっとした農家気分です。他にも先輩の知人が経営している執事&メイド喫茶、中華喫茶、猫カフェなどでバイトをこなし、日によっては朝早くに起き漁師さんの船に乗せてもらい、またある日は学校を抜け出し結婚式場の手伝いもしました。
私の想像していた水泳部じゃありません…断じて違います!
確かに泳ぐときは私のダイビングをやってみたいという希望に合わせて、初歩的なダイビングの技術を教えてくれますし、他にも泳ぎこみとかもあるんです。
でもなぜかシンクロナイズドスイミングの練習を唐突に始めたり、水球をしたり、サーフィンをしたり、スプラッシュ祭りと言いながら様々な体勢で飛び込む練習をしたりします。
絶対これらは水泳部の領分じゃありません。自信を持て言えます。
「部長、この部活は本当に水泳部なんですか?」
「はい、水泳部ですよ」
「水面に散らばらしたビート板の上を走り抜ける練習をするのも水泳部なんですか」
「はい、私たちの水泳部はそうですね」
あ、また男の先輩が1人プールの藻屑と消えました。皆さん大爆笑してます。
「部長、先輩が余裕で走り抜けてます」
「雄は別格の馬鹿だからです」
成功して高笑いしている先輩を見て皆さん本気で悔しがっています。
あの中に私の同級生もいるんですよ?
「それに美波さん、今はまだまだまともな方ですよ」
「それはどういう意味なんでしょうか?」
「まだ水の中で活動してますから」
この水泳部は泳ぐ以外のことも当たり前のように部活動として行うらしいです。
「部長、水中以外での活動って筋トレやランニングのことですか?」
それだけですよね?
「もちろんじゃないですか。他にはラグビー、サッカー、野球もやりますけど」
「本当に私たち水泳部なんですか?」
それはもう総合運動部とかじゃないんでしょうか。
「ええ、水泳部ですよ」
そんなやり取りを部長としていると
「お~い、部長にみなみんもやろうぜこれ!面白いぐらいに人が沈むぜ!」
「誰がやりますかバカ」
「私も遠慮します」
「ほう…天下の神宮あっらた部長とあろうものが逃げるんですかい?俺にでもできたことができないと逃げるんですかぁ~?」
「…いいでしょう、あなたにできて私にできないなんてことないということを見せてあげます。ねぇ、美波さん」
「私もなんですね、結局」
はい、走りましたよビート板の上。
部長は走り抜けましたけど私は落ちました。できる方がどうかしてるんですよ。
そうですよ、3,4回の挑戦でできるようになる皆さんもおかしいんです。
…私も3回目でできちゃいましたけど。
「いや~みなみんもさすがうちの部活入っただけはあるな」
「それはどういう意味なんですか」
「そういう意味だ」
「怒りますよ」
「HAHAHAHAHA」
部活も終わり、先輩と一緒に帰路を歩いていると先輩がおそらく馬鹿にしてきます。
少し怒って見せても私の頭を乱暴にガシガシかき乱しながら高笑いでごまかします。
「先輩やめてくださいよ~」
「ははは、気にすんな気にすんな~子供は素直になでられとけ」
「私、子供じゃないです!お姉さんなんですからね!」
「はいはい、そうだね~偉いね~みなみんちゃんは」
「みなみんちゃんはやめてくださいっ」
「ちょっと小ばかにしているだけだろ?」
「それがダメなんです!」
何回言っても改める気配がこの先輩ありません。
私が何か頑張っていると褒めてくれながら私の頭を撫でてきますし、すこし私がむくれているときも頭をすぐ乱暴になでてきます。
女の子の髪をそう簡単に触っちゃいけないんですからねっ!
「それよりも先輩!水泳部なのにこれでいいんですかっ!」
「それでいいのだ~」
「バカ○ンのパパのまねしないでくださいっ!」
「部長がこれでいいって言ってるんだからいいんじゃないか?」
「それでも私達別行動多いですし…先輩のせいで」
「何事も経験なのだよワト○ン君」
「誰がワ○ソンですか」
先輩がホー○ズなら確実に迷宮入りですよ。
「無駄な体験はさせてないんだけどな~。田んぼ構いに行った村で食べたご飯とかおいしかったろ?他にも釣りたての魚の刺身とか」
「確かに鹿肉に猪肉、山菜の天ぷらに川魚の塩焼きどれもおいしかったですし、釣れたての魚も今まで食べたことない歯ごたえと美味しさでしたけど」
「おいしくってピョンピョンはねてたもんな~」
「跳ねてませんっ!」
言いがかりです!少し弾んでいただけですっ!
「ん~どの作業もそんじょそこらの運動よりよっぽどいい運動になってると思うんだけどな」
「確かにそうですけど…泳いでこその水泳部じゃないですか」
「うちの水泳部は一番キチってる集団って認識だから大丈夫だ」
「納得ですけどそれでいいんですか!?」
「なんせ筋肉四天王を超えるチャンピオンに座す集団だからな。頭逝ってるくらいじゃないと務まらんさ」
私たちの部ってラグビー部や相撲部より上なんですか!?どうりでみなさん筋肉質な訳です、脳まで。
「他にもうちの水泳部に所属してるとすごいぞ~運動部のやつらからは無条件で一目置かれ常識人からはそっと目をそらされるからな」
「誇れないです!」
どうりで最近クラスメイトが私と少し距離をとっているわけです。
先輩が窓(4階)から入ってきて窓(4階)から私を回収して行くせいだと思ってました。
そう言えば…
「非公式スキャンダル部って何なんですか?」
なごみちゃんが所属しているんですが秘匿事項と言って何も教えてくれないんです。
「非公式スキャンダル部は恋愛関係すっぱ抜いて記事にしたり、こんな珍事件があったってことを冊子にまとめて各クラスに一冊ずつ配布している部活だな。部長やってる杉並は俺の親友だ…時と場合によっては」
「最後のぼそって付け加えた部分がそこはかとなく不安なんですが」
「はははっ、お互い利用できるときは利用しあい、相手を貶めれば自分が助かる状況なら容赦なく相手を切り捨てるそんな関係だ」
私の知りうる限り最低の関係でした。
「俺も杉並も風紀委員のブラックリスト入りだからな。何回あいつを犠牲に生き延びたことやら」
「何をやればブラックリストに入るんですか…」
「俺は覗きと全裸。杉並は盗撮盗聴とあとは爆破とかだな」
「もう椅子に縛り付けて置いたりした方がいいんじゃないでしょうか」
「残念なことに現行犯逮捕以外無効ってルールがあってな、何もしてないうちから拘束することはできないんだ。まぁその代わり最近は現行犯逮捕のためにサバゲー部や科学部、飼育委員、筋肉四天王と協力体制をとるようになってきたんだよなぁ。すごいぞ?弾幕や罠仕掛けてくるし隠れても動物使って探し出してくる」
私たちの学校は戦場か何かなんでしょうか?
「ま、そんな奴が率いてる水泳部に次ぐ面白集団だから安心しろ」
「安心できる要素がどこにもありませんでした」
文武両道な進学校と言う入学前の私の認識がたった一ヶ月で頭に致命的なダメージを負った集団に書き換えられました。
そこで私と先輩のスマホが同時にメッセージが届いたことを電子音とともに告げます。
「部長からですね」
「あの女狐からか。何々~
送信者:新
件名:明後日に決まりました
本文:ラグビー部との練習試合。ですので明日はラグビーの練習と応援の練習を行います。男性の方は外で動ける格好。女性の方は体操服を持ってきてください。
p.s. 全裸は認めません」
「…私達水泳部ですよね?」
「あぁ、この頭のおかしさ。文句なしの水泳部だ。それにしても今年は早いな。よっぽどラグビー部のやつらは気合が入ってると見えるな」
「あの…水泳部とラグビー部で試合になるんですか?」
まずそこです。体格は互角かもしれませんけどあちらはラグビーを日夜本気で取り組んでいる方々です。試合になるとはあまり考えられないんですけど…
「HAHAHAHA、忘れたのか、俺たちは水泳部だぞ?」
おそらくですけど水泳部の誰よりも覚えています。
「水泳部に敗北の二文字はそう簡単にないんだよ」
「あるにはあるんですね」
そこはないって格好をつけるところじゃないんですか?
「おつむと水泳の大会、あとは国家権力とかによく負けてるからな」
学生として、水泳部としてそれはどうなんですか?
そして後日。
圧勝でしたよ…水泳部の。
決め手となったのは
「トライを決めるたびに美波さんが一枚ずつ脱いでいきます」
と言う部長の一言でした。
1つの目標に対して一致団結した水泳部男性陣は強かったです。修羅です、鬼神です。
まぁ、脱ぎませんでしたけどね。
チアガールをしたんですからそれで我慢してください。
こんな感じでダイジェストしながら高校二年間分消化していきます。
次は夏休み一年生編かな~