≪ワン娘と俺氏と紫キャベ娘≫ イマノウチニストックカクホジャー (⊂゚ロ゚⊂))))))))
○月×日
はじめまして! ほいくえんにかようようになったきねんににっきをつけようとおもうんだ!
◆ ◇ ◆ ◇
○月△日
あまりの自分の薄気味悪いコメントに初日に断念しそうになったのはマジ黒歴史。
保育園に通うことになったのが日記を始めた切っ掛けだが、理由はそれだけではない。
ヒマなのだ。
他にやることがなくて、あまりにも暇過ぎるから日記なんてものに手を出すくらい暇なのだ。
最初に触れておくと、俺には前世の記憶がある。
アレはそう、某週刊誌を立ち読みした帰り道だった。
当時掲載されていたお気に入り漫画が打ち切られ、メチャ落ち込んでいた俺は、赤信号に気付かずそのまま横断歩道を渡り、結果車に轢かれて亡くなった。
我ながら情けない、情けなさ過ぎて俺を轢いちゃった運ちゃんに土下座したいレベル。
轢かれそうな子供を庇って云々だったら良かったのだが、これでは死んでも死に切れん。
そんな俺の想いをくみ取ったのかは不明だが、気付けば俺は赤ん坊として生まれ変わっていた。
それからの記憶については特に語ることはないだろう。
乳児は寝てばっかで記憶なんて殆どなく、最近になって漸く意識もハッキリし出したのだから。
だが、最近は乳児の頃は幸せだったんだなぁと思う時がある。
入園前は親からの監視の目がなくなり、やっと自由を満喫できると出所前の囚人気分だった。
だが、そんなワクワク気分は入園一日で泡となって消えたのである。
理由は単純、園児共と精神年齢が違い過ぎてテンションについていけないですわい。
最初こそ一緒に遊んだりしたが、半端な精神年齢のせいか、怪我をしないか始終ハラハラ。
そこに自由を楽しむ余裕などなく、気付けば園の隅で自堕落な日々を送ることに。
本は全て読破、というか幼児向けの本など絵ばかりで読んだ気にもならない。
引き篭もる俺を心配した職員が園児の輪に入れようとするが、アレほんと要らぬお節介。
結果、職員の目を掻い潜り、かつ園児達を視界に入れぬよう、ボ~っと日々を過ごす毎日。
そんな日々が暫く続き、これはイカンと思い、日記に手を出したという訳だ。
前世では三日坊主な俺だったが、他にやることもないし意外と続くかもしれない。
◆ ◇ ◆ ◇
÷日×日
日記を付け始めて今日で一月。
意外と続くものだと俺自身が一番驚いていたり。
日記という目的が出来たせいだろう、日常のふとした瞬間に目を向けることが多くなった。
人間観察と言えばいいのか、新しくできた趣味に暇が潰せると俺氏歓喜。
他にも虫とか、風の音とか、雲の流れとか、そんな身の回りの自然にも関心を持つことに。
爺臭い趣味だなぁと思いつつ、他にやることもないからと今後も継続していこう思う。
◆ ◇ ◆ ◇
☁月☀日
今日、保育園で妙な出来事が起こった。
葬式なんかで頭に着ける△布? アレを頭に巻いたおっさんが来たのだ。
即通報な風体に職員を呼ぶが、何故かおっさんを誰も認識することができない。
あそこだと指を指すが、どこ? と返され、嘘はいけないと諭される始末。
憤慨した俺はおっさんの服を掴みながらこの人だ! と訴えるも取り合ってもらえず。
それどころか、一部始終を見ていた園児に嘘吐きと大声で連呼されてしまった。
完全な自意識が芽生えて以来、初めて涙を流した瞬間だったと思う。
結局、おっさんはいつの間にか消え、俺はこの日を境に嘘吐きの渾名で呼ばれるようになった。
◆ ◇ ◆ ◇
☔月⚡日
あの日以来、只でさえ開いていた園児や職員との距離がより広がった。
園児からは相変わらずの嘘吐き呼ばわり、職員も表面上は叱るが嘘を吐いた俺にも非があると喧嘩両成敗ということで謝罪を要求してきた。
大人としての俺が折れることを考え、子供の俺がそれを断固拒否する。
結果、俺が選んだのは現状維持だった。
園児から嘘吐きと呼ばれても適当に流し、職員からの言葉も適当にスルー。
集団行動には取り敢えず参加するが、参加は最低限で、後は基本単独行動。
親に送られ、ボ~っとしながら時間を過ごし、迎えに来た親と一緒に帰宅。
当然、友達なんて一人も出来る筈もなく、というよりも作りたいとも思わなかった。
前世の記憶を持ち、体は子供で頭脳は大人な俺と友達になりたい奴などいる筈もないのだから。
◆ ◇ ◆ ◇
>月<日
どうやら、俺には人には見えないものが見えるらしい。
というか、ぶっちゃけ幽霊が見えるっぽい。
おっさんを目撃して以来、時折そういった類の連中を見かけるようになったのだ。
最初こそ変な連中だなと思ったが、誰も彼等には気付かず、触れようとすると透過する。
決定打だったのは、偶々訪れた墓地で見た光景だった。
まるでお祭りでもしているかのように、人で賑う光景に、俺は自分の能力を悟った。
戸惑いこそしたが、受け入れるのは割と早かったと思う。
なにしろ、俺が前世で死ぬ直前に打ち切られた漫画ではありふれた能力だったのだから。
なるほど、一般人からしてみれば、確かに俺は嘘吐きだ。
なにせ、彼等には幽霊という存在は見えないのだから。
だけど、ハイそうですかと認めて謝罪できるほど、俺は素直ではなかった。
それに、例え謝っても、出来上がってしまった彼等との溝は、恐らく既に修復は不可能。
幽霊が見えると知って、俺の日常が何か変わるということは何一つだってありはしなかった。
◆ ◇ ◆ ◇
≦月≧日
しょうじょが なかまになりたそうに こちらをみている!
はい
→いいえ
しょうじょは さびしそうに さっていった。
◆ ◇ ◆ ◇
△月▽日
最近、というか入園して暫く経った頃から視線を感じている。
相変わらず一匹狼ライフな日々だったが、割かし辟易しているのはそのせいだろう。
今まで気付かなかったのは余裕がなかったからだろうが、今では当時が恋しいくらいだぜ。
日記と言えど個人名を出すのはアレなので、≪ナッパ≫という呼び名でここには記そう。
園児と関わる機会が殆どないので名前など全然だったが、ナッパは例外だった。
というのも、皆が嘘吐きと呼ぶ中、ナッパは唯一俺を普通に名前で呼ぶ稀有な存在だからだ。
これで俺が彼女に恩義を感じ、意識し、それが恋だと気付き、遂には片想いに――。
なんてことは勿論ない、というよりも俺の恋愛対象は精神年齢に依存する。
つまり、ガキンチョは圏外、最低でも十年+αくらい経ってから出直して来やがれである。
話を戻し、そんなナッパが俺を物凄く意識しているのだ。
具体的に言うと、俺の後をつけ回し、視線が合えば慌てて逃げるという感じ。
これがストーカーの被害者の気持ちなんだね、できれば一生知りたくなかった。
おかげで否が応でも俺もナッパのことを意識するようになってしまったのは完全な蛇足だろう。
ナッパの印象は、優等生――とにかくこの一言に尽きる。
職員の言うことを守り、というよりも率先してお手伝いをする、そんな感じの奴。
だが、園児からはと言えば、これが微妙の一言に尽きる。
これは完全に俺の持論だが、園児が思う魅力とは、大人のそれとは異なるのだ。
大人が容姿を重視するのなら、子供は性格を重視する。
恋愛感情など芽生えるのはまだ先、だからこそ容姿には関心がない。
代わりにスポーツができるとか、面白いとか、そういう面が子供には魅了的に映るのだ。
ならばナッパはどうかと言えば、ハッキリ言って魅力は皆無だろう。
偶然目にしたナッパの親御さんは超美人だったことから、容姿は園内でも抜きんでていた。
だが、運動神経はドンくさいの一言、八方美人だから一緒に居てつまらない。
だからこそ、俺とは別の理由で、ナッパは園内で孤立していた。
正直、同族意識みたいなものは感じてはいる。
他の園児に馴染めないナッパを哀れに思っている部分も無きにしも非ず。
かといって、他のグループに放り込めるほどの人脈など俺にある訳もなく。
寧ろ、嘘吐き呼ばわりされている俺が頼み事などすれば、逆にナッパが被害を被る。
かと言って俺がナッパと仲良くすれば、同じ結果だ。
そんな訳で、俺は今日もナッパからの熱視線に気付かないフリをしながら過ごすのだった。
◆ ◇ ◆ ◇
■月□日
一週間でギブアップですわ。
良心の呵責に耐えかねたと言えばいいのか、限界を超えた俺は行動にでた。
といっても、ナッパと友達になって一緒に遊ぶとかはしない。
今日も元気に? ストーカーを行為に精を出すナッパに、今日は俺から迫ることに。
慌てて逃げるナッパを追い掛け、追い詰め退路が断たれアワアワするナッパの近くに座り、いつものようにボーっと空を見上げる。
最初はおっかなビックリだったナッパも、俺が何もアクションを起こさないことに諦めたのか、近くにあった絵本を手に取り、少しだけ距離を開けて座った。
時折チラリとこちらの様子を窺って来るが、俺から何かを話すことはなかった。
ナッパが俺と仲良くすれば、余計に奴は孤立する。
かと言って、ナッパをグループに属させるほどの人脈は俺にはない。
よって、≪俺はたまたま近くにいるだけでナッパとは無関係ですよ≫作戦を敢行。
気休め程度だが、ないよりはマシ、なによりも俺のやった感が満たされる。
ナッパも誰かが近くにいることで、少しでも孤独感が紛れるかもしれない。
友達ではない、知り合いとも違う、奇妙な関係が出来上がった瞬間だった。
◆ ◇ ◆ ◇
+月-日
アレから毎日、ナッパが俺に話し掛けてきた。
俺はと言えば、周りから友達だと思われたくないのでガン無視。
最初こそ無視されていると泣きそうになるナッパだったが、奴のメンタルは中々のものだった。
職員の手伝い、ナッパの日課が終わると決まって俺のベストプレイスにやって来る。
それは園内にある一本の巨木で、死角に座る俺の反対側にナッパは決まって座って来た。
そして、ナッパは一方的に自分のことを俺に語り続けていたのだ。
名前から始まり、好きな食べ物や嫌いなスポーツ、果てには家族構成など。
保育園は幼稚園とは違い、勉強なんて殆どなく、たいていが自由時間。
時間だけは腐るほどあり、おかげで俺はナッパ博士を名乗れるくらい詳しくなってしまった。
ハッキリ言おう、全然嬉しくない。
どうせならナッパの母親のことを知りたいです、ナッパの母親の容姿マジ女神さまレベル。
ただ、最近俺の女神さまのご尊顔がすぐれない様子。
なんか日に日にやつれてるし、ナッパの話では家の仕事が忙しいみたい。
大変だなぁと、俺にとっては他人事だ、思うことと言えばそれぐらいだった。
◆ ◇ ◆ ◇
×月÷日
ナッパが園を休んだ。
職員から盗み聞いた話では、身内が亡くなったんだとか。
正直、幽霊が見える俺にはご愁傷さまくらいの気持ちくらいしか湧かなかった。
◆ ◇ ◆ ◇
0月∞日
ナッパが久方ぶりにやって来た。
だが、様子がおかしいことに気付く。
いつもなら職員に手伝うことはないか聞いていたのに、今日は真っ先に俺の所に来た。
いつものようにベストプレイスの巨木に腰掛けた俺の反対側ではなく、なんと隣にだ。
広場からは死角だが、いつ誰が見ているとも限らない。
物申そうとする俺だったが、ナッパの横顔を見た瞬間、その口は閉じることに。
いつものように、ナッパは一方的に俺に語って来た。
父親が死んだこと。
仕事中にテロにあい、意識不明の重体で、つい先日息を引き取ったこと。
以来、家族の皆が変わってしまったこと。
ナッパが話す間も、話し終えた後も、俺がいうことは何もなかった。
でも、溜めこんでいたものが吐き出せたのが良かったのか。
ありがとう――そう言って笑ったナッパは、笑顔のまま泣いた。
声を押し殺すのは、こんな時でも誰かに迷惑を掛けたくないからか。
俺には迷惑かけていいのかよ、なんてことを思いながらも、俺は今日も空を見上げる。
視界の端に映る、俯き涙を流すナッパの背後、彼女を悲痛な顔で見下ろす男をチラリと見た。
その男は足がなくて、地面から浮いていて、存在がなんだかあやふやで。
それは、俺がこの世で最も大嫌いな、俺が嘘吐きになる切っ掛けといえる類の連中。
存在を認識してから、一度だって自分から近寄ったことはなかったけれど。
悲しむナッパの表情が、同じように悲しむ男とあまりにも良く似ていたからだろうか。
――あんたの未練、オイラが晴らしてやろうか?
気付けば、俺は男にそう話し掛けていた。
◆ ◇ ◆ ◇
その日も、高町恭也の日常は変わらなかった。
日の出とともに目を覚まし、店の手伝い以外は全て鍛錬に時間を当て、そして眠る。
強くならなければという想いが、恭也をそうさせた。
先日亡くなった父の分も自分が家族を守らなければという強迫概念が。
義母から、従兄妹、腹違いの妹からも。
研鑽なんて言葉は生温い、拷問紛いの鍛錬を止める声に、しかし恭也は取り合わない。
もし止めて、止めている間に得た強さがあれば、何かあった時に家族を守れたかもしれない。
そう考えたら、止めるにも止められなかった。
例え体力の限界を迎え、体が限界を超えてたとしても、常に浮かぶ、今は亡き父の顔。
次は義母かもしれない、それとも従兄妹か、あるいは腹違いの妹か。
それは、一生のうちに一度起こるかも分からない、ほんの小さな、あり得るかもしれない未来。
頭では分かっている。
こんなことをして何の意味がある、家族に心配を掛けるだけだと。
でも、恭也はそれが自分に対する甘えのように思えて仕方がなかった。
妥協して、辛い現実から逃げたいと思う弱い自分を、恭也自身が許せなかったから。
「――――」
気付かなかったのは、果たして鍛錬に没頭していたからか。
安っぽい、縁日で売られているようなお面を被った、腹違いの妹とそう背丈の変わらぬ子供。
「……なんの用だ」
肉体的、そして精神的な疲労からか。
自分でもあまりにも大人げなく思う、険を含む冷たい声音に、しかし子供は怯えもせず、
「うんにゃ、用があるのはオイラじゃねぇ」
なんらかの道具を用いて変声させたと分かる声のままに、
「あんたに用があるのは、
何もない掌を、恭也に向けて真っすぐに突き出した。
「――――
全身が、総毛立つ。
久しく聞いていない、聞くことから逃げていた、尊敬すべき父の名。
言葉を失う恭也には取り合わず、子供は突き出していた掌を己の胸に押し当てる。
「憑依合体」
たったそれだけのことだった。
胸に手を当てた状態で俯き固まる子供の見た目に、変わった様子はない。
だが、恭也は動けなかった。
目に見える違いではない、子供の纏う空気が、変わったのだ。
武術に長けた恭也だからこそ感じ取れる、それこそ劇的とも言える変化。
そう、子供が纏う空気が、あまりにも懐かしいと感じるものへ変わったから。
――刹那、一陣の風が吹く。
目の前の子供の姿が掻き消え、背後に発生した気配。
慌てて振り返る恭也の視線の先で、子供は壁に立て掛けてあった二振りの模造刀を手に取る。
感触を確かめ、試し振りをし、徐々に体へと馴染ませていく。
そして、唖然と見詰める恭也の前で、子供は静かに構えを取った。
瞬間、恭也の心臓は比喩などではない、驚愕から拍を止めてしまうことに。
「…………とう……さん……?」
その構えは、かつて恭也が幾度となく見た、今は亡き最強の剣士を彷彿とさせた。
「永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術師範――――高町士郎」
まるで、止まっていた時間が、再び拍を刻みだすように。
耳にする声は違えど、魂へと響く言の葉に違いなどなくて。
いつの間にか流れる涙に、恭也が気付くことはなかった。
「いざ、推して参る」
一夜限りの奇跡が今、起きようとしていた。
正月に≪The MOVIE 1st≫を視聴してみた。
作者「おもしれー」
正月に≪シャーマンキング≫を読み返してみた。
作者「おもしれー」
そんな経緯で誕生したのが本作。
全3話完結予定なり。