[番外編]テニスの王子様の世界にチート転生者が来たようです 作:型破 優位
制服なため、着替えるため部室を借りて、予め入れておいたスポーツウェアに着替える。
ラケットはクラウドで使ったのとよく似ているもののため、使い方は大丈夫だが、普通のテニスには『サーブ』というものがある。
これが打てなければ話にならないため、試合中になんとかするしかない。
そして、ボール。
硬式ボールはいいところに当てればよく跳ぶが、力が弱すぎたり変なところに当たればその分威力は落ちるし、コントロールもつかなくなる。
この試合で、硬式ボールになれつつ、サーブが打てなければリョーマに勝つのは不可能だろう。
裏を返せば、それさえ出来れば勝てるのだが。
ここで考えていても仕方がないので、佑馬はさっさとコートに向かい、リョーマと再び対面する。
「お待たせ。もういいよ」
「あんた初心者なんでしょ?やめた方がいいよ」
「お、言ってくれるね御チビ君。気持ちだけ受け取っておくよ」
その言葉を残してコートのベースラインまで下がる。
立った場所はセンターラインとアレーの真ん中。
「先サーブよろしく」
その言葉でボールを出してルーティンを始めるリョーマ。
持ち手は右手なあたり、初心者としての配慮はしてあるようだ。
そして、サーブが打たれた。
先ほどの銀華中のテニス部と同じくらいのスピードのサーブがサービスコートに入り、そのまま佑馬の右側に向かう。
(へぇ……態度の割にはちゃんと配慮出来るんじゃん)
まずはそれを軽く打ち返して、ラリーをする。
ボールの硬さ、反発力を確認しながら、まずはゆっくりと確実に。
「へぇ。初心者にしてはやるじゃん」
「そりゃどうも。君が手加減してくれたおかげだよ。だからもう左手で打っても大丈夫だよ?」
「そう。後悔しても知らないから」
慣れてきたため、挑発して左手に持ち変えさせてもらうようにする。
その挑発にのってリョーマは左手に持ち変えてさっきとは比べ物にならないスピードで打ってくる……が。
「うん、おかげでだいぶ慣れたよ」
その打球は既にリョーマ側のコートに入っていた。
「――ッ!?へぇ……やるじゃん」
「おい、嘘だろ……初心者なのに今の打球、全く見えなかったぞ」
「いや、テニスやってたか?って聞かれてたからやってないって答えただけで、やれるかどうかは聞かれてないからね」
佑馬の打球を見たリョーマは冷や汗を流しながら一言呟き、銀華中テニス部はありえないとばかりにザワザワしだす。
今度はバックサイドに移動し、サーブを待つ。
リョーマの手は右。
あのショットを見て右にしたということは、つまり、十八番サーブが来るのだろう。
トスを上げ、ツイスト回転をかけたボールが佑馬のサービスコートに入る。
「あれは!ツイストサーブだ!!」
銀華中の誰かがそう叫んだが、それがコートに届く前にもう、ボールはリョーマのコートへと落ちていた。
「んー、いい感じ」
「…………」
リョーマが恨めしそうにこちらを見つめるなか、またフォアサイドに戻って今度はルーティンをする……が。
「あ、一つ言うとさ。ラリーは出来ても、俺、サーブ打てるかわからないんだよね」
「「はぁ!?」」
そして、いきなりの暴露に今度は驚きの声を上げる銀華中テニス部。
息ピッタリなのは仕様なのだろうか。
とりあえず、再びルーティンを始める。
一球目を失敗しても二球目が打てるため、一球目は思いっきり打ってしっかりと感触を掴むことに専念する。
トスを上げ、打った。
「――ッ!!」
そして、それはサービスラインとベースラインの丁度間に落ちる。
だいたい感触は掴めた、次はいける。
再びトスを上げ、今度は先程より力を弱くして打った。
だが、これでもリョーマのツイストサーブよりも遥かに速い。
なんとか打ち返すリョーマだが、既に佑馬はネット際でボレーの準備をしていた。
「うん、なんとかなるわ」
そして、ドライブボレーを決めてポイントは佑馬が三、リョーマがゼロ。
「…………」
その圧倒的な実力に、最早誰も言葉を出すことが出来ない。
コート上のリョーマですら、圧倒的な壁を感じているのだから。
「御チビ君、次のサーブは君もよく知っている人のサーブだよ」
「……へぇ」
それにより、反応もだんだん薄く、表情は険しくなっていく。
バックサイドに移動してルーティンを少しやり、トスを上げ……ずに、回転をかけながらボールを離し、回転をかけながら
これはリョーマの先輩で天才と呼ばれる、不二周助のサーブ。
だが、一つだけ違うところがある。
「へぇ、不二先輩のサーブね。でも、これなら俺打てるよ」
「さて、どうかな?」
バウンドした瞬間、乱回転によりボールは消えたように見えるのがこのサーブの特徴。
そう、消えたように、
だが、このサーブは違う。
何故なら、本当に消えているのだから。
「御チビ君、構えているとこ悪いけど既に落ちてるよ?君の後ろにね」
「んなバカな……!!」
そう、コートに落ちて跳ねた瞬間に、リョーマの後ろへと移動させたのだ。
この理論は、誰も分かるものではない。
「さて、これで四対ゼロだ。どうする?」
「…………」
無言でルーティンを始めるリョーマ。
今回は少し長いところを見ると、作戦を考えているのだろう。
ラケットは左手にあるため、ツイストではなく単純な回転とスピードで勝負する気なのだろう。
そして、作戦が決まったのか、サーブの構えをし、トスを上げてサーブを打った。
それと同時に、走り込む。
(なるほどね。サーブ&ボレーか。まぁ、引っ掛かってやろう)
何をするのか気になるため、リョーマの方へ少しスピードを下げて打つ。
リョーマはいきなりしゃがみこみ、ボールの直前で飛び上がってきてドライブボレーを打った。
「出た!リョーマ様のドライブB!!」
桜乃と一緒に練習していたらしい……おさかな?っていう子が声を上げた。
ドライブBとは、飛び上がった力とドライブの力で超回転をかけることにより、高く跳ねすぐ沈むボールのこと。
「ドライブBか……じゃあ、これでいくか」
佑馬はそのドライブ回転のかかったボールを、スライス回転をかけることによりさらに回転を加えて、打ち返した。
それがコートに落ちた瞬間、そのボールは跳ねずに水平に移動していった。
「燕……返し……」
「そろそろ、終わらせよっか」
そして、勝負は決した。
十対ゼロで、佑馬の圧勝。
「君、名前は?」
「……越前 リョーマ」
「そっか。俺の名前は中田 佑馬だ。またやろうな」
「次は必ずあんたに勝つ……」
そしてリョーマは、ボール三百個を持って帰っていった。
「おい!なんで中田が勝ったのにボール持ってかれたんだよ!」
「いや、だって俺三十人の中に入ってないから。当然じゃない?」
「そりゃそうだけど……っというか、お前そんなに強かったのかよ!」
「まぁ、それなりにね。だから、来週の都大会は
「勿論だ。これで俺たちの都大会優勝も夢じゃないぜ!」
「「おお!!」」
結果として、ボールは取られたが士気がかなり上がって、さらにS3も貰えたため結果オーライというやつだろう。
次回、原作ではなかった対青春学園