[番外編]テニスの王子様の世界にチート転生者が来たようです 作:型破 優位
そしてもうすぐ終わり。
都大会の日から少し時が経ったある日。佑馬は福士と堂本と共に校長室へと来ていた。用件はその場とのことらしいので行ってみると、どうやら日米親善ジュニア選抜の練習合宿参加への打診のようだ。福士と堂本はまさか打診が来るとは思っても見なかったのかそれぞれが喜びの表情を浮かべているが、佑馬にはそれとは別途で一枚の紙を渡された。
校長を見てどういう内容か察し、念のため確認してみる。そして溜め息一つ。校長に質問をした。
「選手兼任コーチの打診って、それ大丈夫なんですか?」
「君のテニスプレイヤーとしての、そして指導員としての実力を買っての抜擢だ。多少のいざこざについては向こう側が責任を持つだろう」
選手兼任コーチということは、もう選手として出ることが決まっているということ。それはそれで問題が出そうな気はするが、どうしても勝ちたいということなのだろうか。佑馬としては監督してるだけで選手に選ばれるなら楽で良いのだが、この世界の中学生は血気盛んで実際に自分で体験しなければ信じない奴等ばかり。銀華中の時は越前を使って見せたから良いものの、あれが無ければ絶対に面倒なことになっていただろう。
「さすが佑馬さんだ。コーチにまで抜擢されるとは」
「佑馬がコーチやるなら俺はそこでやりたいな。お前の指導が一番強くなれる気がする」
佑馬がコーチに抜擢されたということで、その指導を望む福士と堂本。この銀華中で佑馬が特にしごいた二人だ。自分達の戦績からもしかして今年から開催される日米親善ジュニア選抜に参加できるかも、と思い練習してきた二人。実力は間違いなく全国区だ。
「……分かった。受けます」
「そうか。是非とも頑張ってくれ」
「分かりました」
◆◆◆
面倒だ。
今の状況はこの一言につきる。
まず朝。選抜合宿所へと向かった。選抜合宿が行われる宿舎はなんとも立派なものだ。いくら日米親善試合といえど、集まるのは地域単位だ。こんなに立派なものを使っても良いのだろうか。今回監督として参加するのは城成湘南の華村、氷帝の榊、青学で今回の総監督の竜崎、銀華の佑馬だ。彼らは全員が立派な選手を育て上げた名監督と言っても差し支えのない人たち。合宿内容は有意義なものになることは間違いない。
佑馬たちは一番最後の到着だった。
佑馬と邂逅があった者は一様に、様々な表情を浮かべながら視線を送った。
「やはり来たな銀華中。待っていたぞ」
「よう。あれから少しは強くなったか、真田?」
「無論だ。この合宿中に一度試してみるが良い」
「試させてくださいだろアホか」
彼らを代表して話しかけてきたのは、立海の真田。口ではこう言ってるが、かなり強くなっているみたいだった。予想ではあるが、「雷」はもう使えるようになっているのではないかと踏んでいる。そこまでは良かった。だが総監督の竜崎の話の時、それは起きた。
「今回、銀華中三年の中田 佑馬には選手と兼任で監督をして貰うことにしている。よってこの合宿で選出されるメンバーは残り七人だ」
予想通りというか、否定的な意見が飛んだ。
特に佑馬を実際に見たことが無い者は、猛烈に反対してきた。このままでは収拾がつかなくなる、そう判断した氷帝の監督、榊が「指導員としての実力はこちら側が保証する。選手としての実力は実際に体験した方がいいだろう」ということで、合宿早々試合をすることになったのだ。
相手は特に反発が強かった氷帝の部長、跡部。ワンセットやるということになり、もし跡部が勝ったら佑馬も強化選手として合宿に参加、跡部は選手になることが決定となることで両者合意した。
「噂は聞いているぜ? あの真田にラヴゲームらしいな。あ~ん?」
「だったら諦めてくれよ。お前真田より弱いだろ」
「……ハッ、まぁいい。吠え面かくなよ」
何が面倒だというと、プライドが高すぎることだ。真田が勝てない相手にどうして勝てると思っているのか、理解しがたい。
審判は事をまとめている榊。サーブ権は佑馬がいらないと言ったので跡部だ。
「ワンセットオブマッチ。跡部トゥーサーブ」
榊のコールと共に、跡部がルーティンを始める。
榊が跡部を出したのは間違いなく跡部のためだろう。榊は佑馬に跡部の壁を突き破らせるよう誘導しているのだ。
跡部はトスを上げて、サーブを打った。
やはりというべきか、真田にはかなり劣る。
佑馬はラケットにチョンっと当てて、ロブにしては低めの弾道でボールを返した。
「はあぁぁぁぁ!」
そこに勢いよく突っ込んできてスマッシュの構えをする跡部。彼の視線の先にあるのは、佑馬の持つグリップ。
「出るぞ! 跡部の
跡部の代名詞とも言える技。破滅への輪舞曲。
一回目のスマッシュで相手のグリップを撃ち抜いてラケットを落とし、そのまま戻ってきたボールを二回目のスマッシュで確実に決めるという技。
中学生、いや、人間にはありえない跳躍で球を捉え、跡部は佑馬のグリップ目掛けてスマッシュを打ち込んだ。正確にグリップへと向かう弾道。それはしっかりと佑馬のグリップへと当たり、ボールは跡部の元へと返ってきた。しかし、跡部は驚愕に目を開く。
(……俺様のスマッシュをまともに受けてグリップを落とさないのかよ!)
だが、もう止めることはできない。ボールは戻ってきている。それをしっかりとコースに決めれば良い。そう思って振りきった跡部。その瞬間、手に握っていたはずのラケットの感覚がなくなった。
「お返しだ」
そこから、跡部は全てがスローモーションに見えた。佑馬のコートに飛ぶボール。自分の手から落ちるラケット。スマッシュの体勢を取っている佑馬。間違いなかった。
――破滅への輪舞曲。
跡部の横を弾丸のように通りすぎたボールは、そのまま跳ねることなくバックスピンを伴ってコートの上を滑走。ネットに当たって止まった。
「0-15」
佑馬を知らないものは、目の前の光景に呆然としている。それもそうだろう。跡部の破滅への輪舞曲を初見で破られ、あまつさえやり返されたのだから。
対戦相手である跡部も冷や汗を流している。
「これはどうやら仕組まれた試合らしいからな。
跡部は気づいた。
煽ってはいけない人物を煽ってしまったと。
かなりとばしていきます