朝を迎えたアンダーバーランドには嫌味なほどの青空が浮かんでいる。
輝く太陽の光が全く差し込まない地下で、家来ダーバーの2人は目を覚ました。
体が限界値を超えたために意思とは関係なく眠りについていた2人は数秒の間状況が把握できず、辺りを見渡した。
体の下に敷かれている柔らかな布団、2人にかけられていた真っ白な薄い生地。
そこには確かにアンダーバーの香りがあり、温もりが残っていた。
昨日のことはただの悪夢だったのだと思いたくなるような優しい感触が手中にありながら、視界には自分たちで制作した地下牢の中で眉間にしわを寄せながら眠るダニエルの姿が映った。
その落差に眩暈を起こしそうになりながらも、家来ダーバーたちはどうしても抱いてしまう希望を潜ませて顔を見合わせた。
「……王様が、してくれたのかな。」
2号がアンダーバーの残り香のある温かなマントを撫でながら呟くと、1号もそれに習うようにマントを撫で、2人はその手を重ねて寄り添うように肩を預け合った。
「そうだと、いいね。」
透明な涙が1粒マントに染みこんだのを見て、それを拭き取ろうとするが染みは次から次へと増えていく。
どれだけ拭おうともこぼれ落ちていく雫が止まらないず染みはどんどん広がっていく。
それどころか、マントを改めて見てみると既に血や泥でところどころ汚れてしまっていた。
それに気付いた家来ダーバーたちは主の所持品を汚してしまった焦りにより先刻までの温もりも忘れ、顔から血の気が引き、涙も止まる。
地下を見渡すが汚れが付きそうなものは多々ありながらも、それを落とせそうなものは見当たらなかった。
慌ててマントを綺麗な正方形に畳んで整えた家来ダーバーたちはまだ痛みの引いていない足で階段を駆け上った。
転げ出るように明るい城内に入った家来ダーバーたちはアンダーバーの自室へと向かおうとするが、目的地に着く前に目的の人物を見つけた。
「王様…!?」
頭を抱えて蹲っている主の姿に悲鳴に近い声を上げた1号と、言葉を失う2号に気付いたアンダーバーは唸り声をあげながら緩慢な動きで壁に手をつきながら家来ダーバーたちに背を向けて立ち上がった。
家来ダーバーたちは支えるために近寄ろうとしたが、アンダーバーはそれを手で制した。
瞬間で動きを止めた家来ダーバーたちを横目に見たアンダーバーは浅い呼吸を何度か繰り返した。
「……王様、よろしいでしょうか。」
「…………なに。」
動きを制されたままの家来ダーバーたちはその場で跪き、恐怖により震える手でマントを握り締めた。
「王様のマントを…お召し物を、汚してしまいました…!申し訳ございません…!」
土下座する勢いで大量の冷や汗をかきながら頭を垂れる2人にアンダーバーは肩越しに気だるげな視線を投げるだけで、何も言わない。
家来ダーバーの2人は恐怖で顔を上げることが出来ず、アンダーバーの方を見ることもできなかった。
アンダーバーの大きなため息が聞こえ、家来ダーバーたちの肩が跳ね上がる。
「洗えばいいじゃん。ついでにお風呂も入れば。」
「へ、よ、よろしいのですか…?」
熱は篭っていないながらも、存外優しい言葉に家来ダーバーたちは思わず顔を上げると、軽蔑の眼差しで見下ろしてくるアンダーバーと目が合った。
「……汚いし、臭い。」
吐き捨てるようなアンダーバーの言葉に、家来ダーバーたちの顔には一気に熱が集まった。
敬愛すべき主に言われ、女として恥ずべき様相をしていることを改めて自覚させられた。
「ご飯も適当に食べて。効率悪いから。
……少しは自分たちで考えて行動しろ。」
それだけ言うとアンダーバーは二人の返事を待たず、乾いた血溜まりを踏みつけながら壁伝いに自室へと向かってしまった。
家来ダーバー1号2号の家来としてのプライドも、女としてのプライドも、目の前のふらつく背中の持ち主になじられた。
2人は跪いた姿勢のまま、今まで感じたことのない形容し難い感情に揺さぶられ、顔を真っ赤にしながら涙ぐんでしばらくその場から動けないでいた。