キティたちがどうにか城に入れないかと門番に交渉している中、白い仮面をつけた国民が数人アンダーバーが帰ってきているという噂を聞いて国王に会いに城を訪ねてきていた。
厳重に閉じられた城門、その前に立つ大きな武器を持った門兵。
見慣れない光景に国民たちは戸惑っていた。
少し離れたところから様子を伺っている国民を新人家来ダーバーが見つけ、小さく声を上げる。
その声を聞いたキティも後ろを振り返り、国民の存在に気づくと、そちらに駆け寄り、新人家来ダーバーもキティの意図がわからないながらもその後に続いた。
「お願いがあるの!」
初対面の二足歩行の猫にいきなり詰め寄られた国民は思わず後ずさりをしてしまう。
その様子を見たキティは気まずそうに半歩引き、大げさな動きで深呼吸をした。
「ごめんなさい、私はキティ、ピューロランドからアンダーバーに招待されて遊びに来たの。」
そう言いながらキティはポケットから招待状を出して国民に見せると、国民もやっと納得したようだった。
国民たちが聞く体勢になったことを確認し、キティは改めて口を開いた。
「アンダーバーが苦しんでいるの…!」
キティの言葉を聞いて慌てふためく国民たちに掻い摘んで説明するキティの後ろで、新人家来ダーバーはまるでキティに仕えているように視線を落としている。
「みんなの力を貸して欲しいの!アンダーバーの笑顔をみんなで取り戻しましょう!」
キティの頭の中には奇しくも家来ダーバーたちと同じ案が浮かんでいた。
キティの言葉に胸打たれた国民たちは力強く頷き、他の国民にも知らせるために街へと走り去って行った。
新人家来ダーバーは下唇を噛みこみ、ぐっと強く瞼を閉じてから、無理矢理口角を上げてキティを見上げた。
「きっと上手くいくよね。」
「ええ!もちろん!」
不安を抑え込んだ新人家来ダーバーの瞳にキティは心の底からの笑顔を見せた。
新人家来ダーバーは眩しさに目をそらしたくなったが、作り上げた笑顔で目を細めてその光をやり過ごした。
不安と嫉妬と羨望と、新人家来ダーバーの心の中では様々な色がぐるぐると掻き回され決して美しいとは言えない色を作り上げようとしていた。
新人家来ダーバーがそこからも目を背けた瞬間、重い音を鳴らしながら門が開き始めた。
2人がその音に振り返ると、開ききっていない門の隙間を縫うようにアンダーバーが白いマントをたなびかせながら現れた。
視線がかち合った新人家来ダーバーは目頭が熱くなるのを感じすぐに目をそらしたが、キティはアンダーバーを真っ直ぐ見つめた。
アンダーバーはやはり光を感じさせない瞳をしている。
表情からも昨日と同じで感情は読み取れないかと思われたがキティと新人家来ダーバーを見比べたアンダーバーは微かに口角を上げた。
「可哀想に。」
キティはその言葉の意味が分からず首を傾げるが、アンダーバーのよく通る声は新人家来ダーバーの鼓膜を揺らし、体を硬直させた。
心臓が大きく脈打ち、冷や汗が自身の背中を伝うのを感じ、鳥肌が立つ。新人家来ダーバーはぎこちない動きで自分の体を抱え込み、顔をさらに俯かせた。
アンダーバーから近寄ることはなかったが、新人家来ダーバーの顔を覗き込もうとする。
アンダーバーから見えるはずがない表情と感情を新人家来ダーバーは全て見透かされているような気がした。
キティは新人家来ダーバーを守るように一歩前に出た。
正義感溢れるその行為を引き金として、新人家来ダーバーはそこから背を向けて震える足を走らせた。
後ろからキティの呼ぶ声が聞こえるが、新人家来ダーバーは振り向くことはせず木々の生い茂るジャングルへと逃げ込んだ。
「可哀想に。」
同じ言葉を呟くアンダーバーの表情からは既に感情が抜け落ち、興味がなくなっていることが見て取れた。
キティに目をやることなく、新人家来ダーバーが逃げ込んだ方向とは別のところからジャングルへと入っていった。
キティはアンダーバーの言葉と新人家来ダーバーの行動が飲み込めず、混乱した頭を無意識に抱えて立ち竦んだ。