パンダバによって開けっ放しにされた扉を、アンダーバーは瞼を下ろす速度に合わせてゆっくりと閉じた。
瞳を閉じることで見えてきた世界はアンダーバー自身の脳内であった。
そこは大きな暗闇で埋め尽くされ、上も下もないような空間だった。
そんな空間で彼は確かに佇んでいる。
自分の脳内の彼もしっかり仮面を張り付けていて、表情は陰っていて確認出来ない。
それでも、アンダーバーは彼の表情を覗くことができた。
彼は仮面越しでも分かるほどに苦渋に顔を歪めていて、そんな彼が単純に情けないと感じた。
暗闇の中に不意に浮かんできた光を彼は必死に追いかけ、掴んで、捕まえると、そのまま抱きしめるようにクシャクシャに握り潰して、闇に溶かしてしまった。
まるで光が憎いかのような行動であるのに、やはりその表情は暗く歪んでいて、アンダーバーはその矛盾に気がつかないようにしながら、目が離せないでいた。
光を直視していても、一瞬見えたその中では見慣れていたはずの笑顔が広がっていた。
闇に溶けた笑顔は目も当てられないほど歪んでいるというのに、彼はそれをひたすらに見つめた。
見つめながら不自然に上がる口角と、見開かれた瞳からこぼれ落ちてくる大粒の涙が不協和音となって頭の中に響き渡る。
自分が求めていたはずの景色を思い出せなくなって、自分が愛していたはずのものが疎ましくなって、自分が自分でなくなっていった。
黒い画用紙にさらに黒いクレヨンで色を重ねていくような感覚に、アンダーバーは徐々に眩暈を感じ始めた。
そうしてアンダーバーは瞼をゆっくりと持ち上げる。
瞼の裏の彼はあんなに大きな水滴を瞳から溢れ出させていたというのに、アンダーバーの瞳は痛みを感じるほどに渇いていた。
ちぐはぐな自分を嘲笑いたい気分になのに、表情筋はぴくりとも動かない。
「死んでしまった。」
アンダーバーは自分の呼吸音と心臓の鼓動をしっかり感じながら小さくこぼした。
独り言にも満たない小さな呟きは、アンダーバーの鼓膜だけを揺らし、誰にも届かない。
静まり返る城内で、頭の奥の、さらに奥の方から誰かが嗚咽を飲み込む音が聞こえて、アンダーバーは両手で耳を塞ぎ、もう一度瞳を閉じた。
自分で歪めた笑顔を抱いて蹲る彼と目が合った気がして、慌てて目を開けた。
目の前には変わらず閉じられた扉があった。
「殺してしまった。」
光を握り潰した彼と同じ両の手を見下ろしながら小さく小さく呟かれた言葉は、微少な感情の熱を孕んでいた。