アンダーバーランドの中心に座するアンダーバー城の門は普段であれば開放されている。
しかし、今は閉ざされ、その横に門番が2人大きな槍を持って困惑を隠しきれない表情のまま立っていた。
「門を閉めろ、誰も入れるな。」
非力な2人が持てるとは思えない大量の土木を持った家来ダーバー1号2号と、工具を持ったネコの男の子を引き連れ帰って来たアンダーバーは確かにそう言った。
外からの客をもてなすために王が自ら出掛けていくことは今まで何度もあったことだが、こうして門を閉めて城内に篭り、人を拒絶することなど今までなかった筈だ。
それに加え、アンダーバーが帰ってきたことに笑顔を浮かべた門番を見つめる瞳には、明らかな侮蔑が含まれていた。
今までにないことに門番の2人は底知れぬ恐怖を覚え、ただ黙って従うしかなかった。
城内に入ったアンダーバーは牢獄の制作作業を開始するため地下に降りて行った3人を尻目に、真っ直ぐ自室へ向かった。
部屋に入って鍵をしっかり締め、電気も付けずに真っ白な燕尾服のままベッドへと倒れ込んだ。
「……はぁ…はぁ…」
アンダーバーの片腕に抱かれていた宝石はベッドの上に投げ出され、柔らかな皺一つないシーツの上に転がった。
薄く開いた真っ赤な唇から浅い呼吸を数度漏らしたアンダーバーはそのまま仰向けになった。
虚ろな瞳で天井を見つめながら、首元を締め付けていたスカーフを無理矢理外し、シャツのボタンも胸元まで外す。
そこでやっと胸が上下するほどの深い呼吸をした。
「ハハッ……アハハハハ!!」
唐突にアンダーバーの口から大きな笑い声が溢れ出し、部屋の中で反響する。
暗い部屋に笑い声が溢れかえっていく一方で、闇に染まったその瞳からは大粒の滴が次から次へと零れ出てきていた。
「アハハハ……ハハッ…」
笑い声はだんだんと小さくなっていくが、涙は留まることなく流れ続ける。
アンダーバーの脳裏には、恐怖に染まった瞳で自分を見つめるかつての友人たちの顔が浮かんでは消えていった。
ぐるぐると様々な顔が混ざり合い、薄暗い黒で脳内が徐々に塗りつぶされていく気がした。
眩暈に似た感覚の中で、最後に浮かんだ新人家来ダーバーの涙もその黒の中に溶け込んでいく。
「そうだよ……そういう、その顔が僕は好きなんだ。」
まるで自分に言い聞かせるかのように、暗い部屋の中でアンダーバーは呟いた。
シーツに投げ出された宝石こ瞬きを反射し、アンダーバーの瞳から流れる涙が微かに煌めいていた。