アンダーバー城の地下には謎の空間が元より存在していた。
無駄に入り組んだ地形だが、一本道であるため迷うことは無い。
廊下を素直に進んで、順番に扉を開けていくと全ての部屋を覗けるようになっている。
「地下ダンジョンみたいで楽しいね!」
一つ一つの扉を開けながら嬉しそうに言っていたアンダーバーが、そこを牢獄にしろと命令した。
家来ダーバー1号の手のマメはすでに潰れて血だらけになり、骨が折れたのであろう小指も変形している。
右肩も大きく腫れ上がり、ブーツの中にも血が溜まっていた。
ダニエルは手にマメができ、細かな擦り傷がいくつかある程度だが、家来ダーバー2は1号と同じような状態だ。
立って歩くのがやっとであろうに、それでも作業を止めない。
主からの命令をこなすため、家来ダーバー1号2号は自らの身体的能力の限界を超えても働き続け、ダニエルもその傍らで真っ白な毛を汚しながら斧で扉を壊していく。
「こんにちは!ダニエル!」
作業音だけが続く中で、誤作動か、扉を壊す衝撃でボタンが押されたのか、その場に似つかわしくないほど底抜けに明るいアンダーバーの声が鳴った。その内容は光に溢れ、その声は優しさに溢れている。
「……止めて。」
蚊の鳴くような声で静止を求めた家来ダーバー2号だったが、言葉とは裏腹に彼女の耳は聞こえてくる言葉を一言も聞き逃さないようアンダーバーの声に意識を向けていた。
奥歯を噛み締めて、溢れて出てきそうになる何かを必死で抑え込んでいた。
「うんこっこー!」
笑いを誘う台詞の後にいつもの笑顔はない。作業音も止み、城の地下は3人の鼓動が互いに聞こえるのではないかと思われるほどの静寂に包まれた。
「……大至急、と王様は仰った。手を止めてはいけない。」
永遠に続くかとも思われた静寂の空間は家来ダーバー1号の声によって壊された。家来ダーバー2号とダニエルは緩慢な動きで一つ頷いてから、作業を再開した。
3人はまた黙って作業を進めるが、作業音の中に鼻をすする音が混じっていく。
それに気付かないふりをしながら、目の前の作業を続けた。
「アンダーバー様。」
不意に、家来ダーバー2号が仕える者の名を呼んだ。
「アンダーバー様は、この星の支配者。……私たちに夢と、希望を与えてくれる…」
口からこぼれ出る言葉たちは数刻前まで輝かしく誇らしい事実であった。
家来ダーバー2号は自分で呟いた言葉が頭の中を駆け回り、作業を続けながらも泣き叫んだ。
家来ダーバー2号の泣き声を聞きながら家来ダーバー1号とダニエルは作業を続けるが、2人の瞳からも家来ダーバー2号に負けないほどの大粒の涙が次から次へと零れ出てくる。
悲しみで今にも胸が張り裂けそうなほど苦しくても、この牢獄が何の為に作られているのか理解していても、3人はアンダーバーを満足させるためだけに牢獄を作り続けた。