キティたちに背を向けアンダーバー城に帰ってきたアンダーバーは、自室には向かわず、客を迎える間で、玉座に腰掛けていた。
傍らには新人家来ダーバーから奪った宝石が飾られているが、すでにアンダーバーの興味の内ではないようだ。
足を組んで頬杖をつきながら、入口をじっと見つめる。
すると間もなく、家来ダーバー1号2号に引きずられる形でパンダバが姿を現した。
「離すだば!何でそんなに…!」
パンダーバーは必死で逃れようとするが、2人はびくともしない。能力10倍の催眠術をかけた時でさえ、こんな力は無かった筈だと気付いたパンダーバーの背中に嫌な汗が伝った。
アンダーバーは足を組み替えながら高い位置からパンダーバーと家来ダーバー1号2号を見下した。
「お前たちは作業に戻れ。」
「アン!」
揃った返事をしてから2人は小走りでまた地下へと戻って行く。
怯えを隠しきれないパンダーバーを見つめ、アンダーバーは綺麗な笑顔を見せた。
その笑顔は普段の笑顔と遜色ないほど優しさに満ちているようで、瞳の奥にはやはり闇が潜んでいる。
「待っていたよ、パンダーバー。」
「待っていた…だば?」
パンダーバーは酷い拷問を受けるかもしれない、もしかしたら殺されるかもしれない、という不安を捨てきれずに警戒しながらその眼差しをアンダーバーに向けた。
「君は闇の住人でしょ。」
アンダーバーはパンダーバーからの視線など意に介さず、綺麗な笑顔のまま、それしか言わなかった。
しかし、パンダバはその一言だけで全てを見透かされていたことを察した。
パンダーバーは闇に染まっていく世界を見ながら、畏怖と共に高揚感を心の底で抱いていたのだ。
光に溢れるキティと、それに触発されて希望を持ち始めた新人家来ダーバー。
2人の眩しさのすぐ傍にいることは、闇の住人であるパンダーバーには酷だった。
だからこそ、パンダーバーは二人から離れて自らの足でここまで来たのだ。
城門の前で待ち構えていた家来ダーバーたちに引きずられなくとも、ここまで来るつもりだった。
「……アンダーバー様。」
パンダーバーはその場で跪き、アンダーバーを敬った。
「うん、よろしくね、パンダーバー。」
それを見届けたアンダーバーは綺麗な笑顔を消し去り、元の無表情に戻ってしまった。
「一つ、聞いてもよろしいでしょうか、だば」
「一つね。何?」
パンダーバーはアンダーバーを未だに直視することが出来ないまま、改めて口を開いた。
「家来ダーバー1号2号は、その……どうやったんだば?」
「また漠然とした質問だね。言いたいことは分かるけど。」
アンダーバーはわざとらしく大きな溜息をつき、呆れていることを示すような声音でパンダーバーに答えた。
「君がかけた催眠術、能力を強くするものだろ?」
「はい、だば。」
「家来ダーバーに備わっていた能力って何だと思う?」
「え、えっと…」
「支配者への忠誠心だよ。」
アンダーバーはパンダーバーが答えるのを待たずに解答を出してしまった。シンプルなその解答にパンダーバーの背筋が震えた。
「分かる?この星の支配者である僕への忠誠心だ。
体のリミットを超えても、10倍になった今では、きっと死ぬまで働いてくれるよ。」
パンダーバーを押さえ付けた二人の体は確かにボロボロであった。
それでもアンダーバーからの命令を遂行するために全力以上の力で働いてみせたのだ。
そして、今も地下で持てるはずもない鉄骨を運びながら作業をしている。
「素晴らしい催眠術だよ、パンダバ。そうだ、何かご褒美をあげないとね。」
「……ありがとうございます、だば。」
なんて恐ろしい人だとパンダーバーはアンダーバーに完全に降伏し、心の内で改めて服従を誓った。