家来ダーバー1号2号はダニエルが作り立ての牢屋に収容される様子を見て、この牢屋はアンダーバーに刃向かう者のために作られていることを改めて理解した。
2人が思わず作業の手を止めて見つめていると、その視線に気付いたダニエルは泣き腫らして充血したままの目で弱々しい笑顔を見せた。
「家来ダーバー1号、2号。少し休んだ方がいいよ。体中ボロボロじゃないか。」
催眠術の解けたダニエルから自然と発せられたのは、今までは当たり前だったはずの労りの言葉。
それを聞いた2人の瞳がまたしても潤み始めた。確かに家来ダーバーの体中は「もう限界だ」と悲鳴をあげている。それでも、たった1人の主の顔が浮かぶだけで体が動いてしまう。
「ねぇ!お願いだから、目を覚ましてよ!女の子2人でこんなこと無茶だ…!」
作業をやめない2人に、ダニエルは思わず鉄格子を掴んで叫んだ。
ダニエルの純粋な思いが響いたのか、少しばかり躊躇いながらも家来ダーバー1号は作業の手を止め、鉄格子を挟んでダニエルの目の前に立った。
その様子にダニエルは思わず身構えるが、家来ダーバー1号からは全く敵意が感じられない。
「ダニエル、今、私たちがこの牢屋に入るわけにはいけないの……。」
家来ダーバー1号の悲しみと慈愛を含んだ視線に、ダニエルは驚愕した。
「王様をひとりぼっちに出来ない。」
後ろで家来ダーバー2号が深く頷いた。
ダニエルは状況が分からず戸惑うばかりで、家来ダーバー1号の言葉の意味を理解出来ていない。
その様子を察した家来ダーバー1号は数秒考えてから、意を決したようにダニエルをしっかりと見つめた。
「……私たちの催眠術も、ほとんど解けてると思う。」
「えっ!?」
地下にダニエルの驚愕の声が響く。家来ダーバー1号は慌てて自らの口に人差し指を当て、ダニエルの声を制した。
「シーッ!…静かにして。……このこと、王様には絶対ばらさないで。私たちが牢屋に入ってしまったら、あの方は本当にひとりぼっちになってしまう。……分かるでしょ?」
今のアンダーバーなら、家来ダーバーの2人を閉じ込めてしまったとしても、闇で支配され始めたこの世界で、完全なる独裁国家を作り上げてしまうだろう。
それはもう、今のアンダーバーを一目見た者は誰しもが感じていた。
「闇の心は消え始めてるけど、私たちの忠誠心は未だに駆り立てられてる。でも、だからこそ、王様を救いたいの。」
家来ダーバー1号のアンダーバーへの強い思いが鉄格子越しにダニエルに伝わり、家来ダーバー1号もその後ろで黙って見ている家来ダーバー2号も本気でアンダーバーを救うために動き始めていることを知った。
「……分かった。協力できることがあったら、言ってね。」
「うん、ありがとう。」
微かながらも笑顔を浮かべた家来ダーバー1号を見て、ダニエルは今度は安堵によって涙がこぼれそうになった。
後ろで何も言わなかった家来ダーバー2号も、涙ぐみながら小さな微笑みを浮かべ、二人の側に寄ってきた。
「……アンダーバーは?」
「最高です…!」
声を潜めて小さく呟かれた魔法の合言葉は、顔を見合わせた3人の希望だった。