九九式二五番爆弾は50ミリの鉄板をぶち抜く貫通力を備えた対艦爆弾。
この一撃は命中すれば必殺、
乾坤一擲の急降下爆撃だった。
常人の数十倍という視力を発揮する固有魔法《千里眼》は着弾観測にも役に立ち、
実は夕月、養成学校時代は爆撃が得意科目の一つであった。
今、
夕月の手によって、九九式魔導爆弾は放たれた。
空母ヌ級は保田ひとみの迎撃にビームを放っており、それは連射が出来ないことは先の広開土大王との戦闘経験から知っている。
ひとみの獅子奮迅の活躍と固有魔法《影分身》によって、艦載機群の注意を夕月から逸らせることに成功。
駆逐イ級は菊月と戦闘中ですぐにヌ級の元へと駆けつけることは不可能…
つまり、
この瞬間、
空母ヌ級は全くの無防備だった。
ヌ級は最後の悪足掻きと言っていい抵抗を試みた。
駆逐級にはない手、
左手を振りかざして爆弾を払いのけようとして爆弾に触れた瞬間に、
炸裂した!
戦場全体に、
青白い閃光が走り抜ける。
次の瞬間に巻き起こる、激しい大爆発。
「魔導爆撃!」
「やったか?」
夕月は確かな手応えを感じていた。
舞い上がった海水が潮吹雪を形成し辺り一面真っ白になる。
視界が利かないのでヌ級の姿が見えず、気になってはいたが早急に離脱しようとしたら…
目の前を、ヌウッと現れた巨体な手に塞がれた。
「キャアッ」
夕月、回避できず掌に衝突、
指が閉じて身体を掴まれてしまう。
巨大な黒い影が徐々に露わになる。
「ゆっ……
夕月ぃいいいいいいいーっ!」
菊月の悲鳴の様な絶叫がこだました。
空母ヌ級は健在だった。
左半身を中心に船体の3分の2を吹き飛ばされ、赤く輝くコアが剥き出しになっていたが…
まだ、生きていた。
「イヤァッ、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛いィイイッ!」
夕月の表情が苦痛で歪んで悲鳴をあげる。
掌が強く閉じられ、
夕月の身体を握り潰そうと…
重症のひとみは、海面を漂いながらなす術なくその悲鳴を聞かされる。
菊月は血相を変えて駆けつけようとしたがイ級に阻まれて近づけない。
北郷らも異変に気がつくが、
艦載機の相手で精一杯とても助けには行けない。
形勢は逆転した。
最期の切り札だった夕月による魔導爆撃は、
独島の撃破には至らず…
失敗に終わったのだ。
「夕月、死んじゃうんだよね?
もう、これじゃ助からないよね?
コアが…
ネウロイのコアがすぐ近くにあるのに、何も出来ずに殺されちゃうの?
すぐそこなのに、
手が届かない…
何でもいい、
アレに、
コアにもう一撃だけできたら…
………あ!
できるかも!
後一撃、
できちゃうかも?
手は届かないけど足ならっ!」
キッとコアを睨み、
覚悟を決めた表情の夕月。
魔法力を集中、
瞳が赤く輝きを放ち瑞雲がフルパワーで発動する。
更にリミッターを外し、機械限界以上の魔法力を瑞雲に送り込む。
両足をヌ級のコアに向け、
魔導プロペラを急速逆回転。
「瑞雲、お願いぃっ!」
夕月の脚から勢いよく飛び出した瑞雲が、
剥き出しになっていたヌ級のコアに衝突、
そのまま突き刺さった。
『その覚悟と根性に心から敬服する…』
魔法力の過剰供給で暴走状態の瑞雲が、
青白い閃光を撒き散らしながら激しい爆発を起こした。
その衝撃でヌ級のコアが砕け散る。
残ったヌ級の身体は、
爆発とともに粉々に砕け散って銀色の細かい破片になった。
辺りを飛び交っていた艦載機型ネウロイも一斉に砕け散っていく…
「やった…」
「やったぞーっ!」
歓声が上がった。
ウィッチたちも、
一般搭乗員たちも、
敵旗艦撃破に喜色を上げた。
海の守護神《独島》は撃破されたのだ!
…………………
ひとみはよろけながらも何とかシールドを展開して海面に立った。
すぐ近くに落ちてきた夕月のところまで歩き、身体を掬いあげる。
「夕月、大戦果だぜ!
スゲエよ、姉妹揃ってスゲエよ!
………………
だから、
目を開けろよなぁ…
寝てんじゃねえよ、
頼むから…
もうこれ以上はイヤだ…
仲間がいなくなっちまうのは、
イヤなんだ…
聖川丸飛行隊の皆も、
昇子さんも、
おまえまで…
居なくならないでくれよ…
ううううううううぅぅ…
イヤだ、イヤだよぉ…
わあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
夕月の身体を抱きしめ、泣き叫ぶひとみ。
左眼からは血が、
右眼からは涙が流れる。
独島は撃破された。
しかし、
代償は大きかった。
神殺しの代償は、
余りにも大きかった…