その時に海の中で夕月を受け止めてくれる人がいたんだ。
『気持ちを落ち着けて、暴走してこのまま海上へ出たら深海棲艦になってしまうわ!』
「しんかいせいかん?」
『お帰りなさい、ユヅキ』
「ほえ…ウソ~!」
夕月を抱きとめたのは夕月。
上から下まで全く同じ姿かたちをした彼女。
彼女は、夕月に名乗ったの。
『私は睦月型駆逐艦12番艦
「えー、菊月ちゃんの?」
『ハイ、末の妹になります』
「夕月ももしかして菊月ちゃんみたいに…」
『ご説明いたしますね』
『森美幸さんは菊月姉様の、つまり駆逐艦菊月の艦長だった森幸吉少佐のこちらの御世での同一存在になります。
だから姉様は美幸さんの助けを求める声に呼応したんですね。
そして森少佐は私の艦長でもありました。
なので美幸さんの助けを求める声は私のところにも届き、深海で眠っていた私は目覚めて彼女を助ける為にこの御世へ参ったのですが…
美幸さんの魔法伝信は世の隔たり、そして時間の隔たりをも越える強力なものでした。
私がその御世に現れた時、実はまだ事件の起こる15年前で美幸さんは一歳。
扶桑皇国はいたって平和で助けが必要ではなかったのですね。
でも15年後には事が起こり、その時、美幸さんには助けが必要なのを知っていたのでどうするか思案しました。
私はこの御世で眠りに付き、時を待つ事にしたのです。
そして私が目覚めるまでの間、
私に代行して美幸さんを助ける存在が必要と判断して、その時はまだ美幸さんのお母様の母胎の中にいた小さな胎児に私の霊性を与えることにしたのです』
「え、それ夕月のこと?」
『ハイ、貴女はウッチ森
「えええええーっ!」
『菊月姉様の御霊を受け入れて後天的に艦娘化した美幸さんと違い、貴女は先天的に私の霊性を持って生まれた艦娘ということになりますね』
「かんむす…菊月ちゃんや夕月みたいに船の魂を持ってる人のこと?」
『ハイその通りです。それより夕月、実は今菊月姉様、そして姉様と同化した美幸さんが危険な状態です』
「菊月ちゃんから聞いてる!
アナタと同化して受け入れれば、かんむすになって復活できるんだよね!」
『だいたいそういうことです』
「やる、菊月ちゃんも美幸ちゃんも助ける!」
『では切迫しているので急いで参りましょう』
駆逐艦夕月、
夕月のこといきなり抱き寄せて、唇を重ねて…
夕月、チューされちゃった!
しかもけっこう長く!
「…な、何するのよ」
『儀式ですので』
睨んでみてもサラッとした笑顔で受け流す駆逐艦夕月にちょっとだけ腹が立ったけど…
それから駆逐艦夕月も、夕月も青白く光だして…
…………………
「で、目を開けたらひとみちゃんがいたってわけ」
「で、人格が変わってないのは…」
「駆逐艦夕月と、ウィッチの夕月はもともと同じ御霊なの。扶桑の神様がよくやる分霊ってやつね。だから、美幸ちゃんと菊月ちゃんみたいに御霊が入れ替わったわけじゃないの。
それより菊月ちゃん、憎しみのあまり暴走して深海棲艦になっちゃったんだよね。
普通の兵器でも、たぶんウィッチでも止められない。
今の菊月ちゃんを止められるのは睦月型12番艦夕月だけだから。
行ってくるね。
菊月ちゃんと美幸ちゃんを助けてくるよ!」
ひとみは行かせまいと夕月を遮るように抱きつく。
「ダメ、行ったらおまえ…殺されるかも知れない。そうなったらオレ、今度こそ耐えられねえよ」
ちょっとだけ困ったような顔をする夕月だが、ひとみの後頭に優しく手を回して引き寄せて…
唇を重ねた。
ひとみ、驚いてジタバタと暴れるが、しっかりと身体を抱きよせる夕月の力が強くて離れない。
抵抗しなくなるまで、夕月は存分に唇を堪能。
やがて動きが無くなったひとみを離すと、彼女は力無くヘナヘナと膝を付いてその場に座り込む。
「艦娘の契約の印。ひとみちゃんの御霊は駆逐艦夕月のもの、死んでも離れないよ」
サワッと頭を撫でて夕月は行く。
もう止めない、
というか思考が…大混乱を起こしてそれどころじゃない。
「やっぱり、ちょっと人格変わってるよ……な」