赤ん坊を背負った男は斜落を蹴り飛ばして壁にめり込ませた様だ。はっきり言って人間技ではない。
依頼人は倒され報酬は前払いだった。うん、もうここにいる必要がない、それに無駄な喧嘩は趣味じゃない別に相手にビビった訳じゃないよ、ホントダヨ。
斜落を抜いて帰るため、写真集を隣のハゲに渡し斜落の方に歩いている時に声が響いた。
「動くんじゃねぇ、
振り向くと先程写真集を渡したハゲが
「おい、何言ってん…」
否定の言葉を言おうとした時に言い切る前にハゲが吹き飛んだ。
「今後聖石矢魔の生徒に手出したら、うちらが黙ってないよ」
傘を俺たちに向けながらハゲを吹き飛ばしたであろう美女が啖呵を切ってきたが、頭に入って来なかった。気づいたら俺は走っていた。
「黒霧さんに続けー」
「帝毛舐めんなー」
様々な自分たちを奮い立たせる言葉が聞こえ、次々と人がゴミのように壁に飛んでいく。
俺は立ち止まり、しゃがみこんだまま動けなかった。俺の手の中には切り刻まれ、ボロボロになった写真集があった。
俺の頬から涙が伝い気づいたら傘を突き付けられていた。
「とっとと連中をつれて行きなさい」
どうやら俺以外は全滅したらしい。
「何でだよ、クソがぁー」
俺は写真集がボロボロになったことの怒りに、叫びながら立ち上がった。
「なっ」
彼女は驚いた表情をし、傘で切りかかってきた。
俺は傘を顔面の前で受け止め握り折り無理やり手から引き離した。
「何すんだよ」
写真集の文句を言ってやろうとした時に俺の腹部に衝撃が走り壁に激突した。どうやら後ろから蹴り飛ばされたらしい。
今日はイライラすることが多すぎる。頭が上手く回らない。見ると赤ん坊を背負った男が俺の事を蹴ったらしい。傘の女は顔を赤らめている。なにこのラブコメ、塩撒きたいんだけど。取り敢えずリア充はぼこるのが俺の流儀だ。制服を脱ぎ、ららこたんに十字を切り勝利を約束し殴りかかった。
俺は身体中ボロボロになりながら家に向かっていた。結局赤ん坊を背負った男を倒しきることが出来なかった。殴れば殴り返してくるし、蹴れば蹴り返してくる。気づけばお互い笑いあって殴りあっていた。
きりがないと感じた俺は幻術で終わらそうと針を取り出した。その時に赤ん坊が騒ぎ始めた。
「ダァー、ダブダブダァー」
「おぉ~彼奴がいいんだな!そうかそうかじゃあ決まりだな」
そお言うと赤ん坊を背負った男は赤ん坊を俺に押し付けてきた。
「いや、なにやってんの?」
思わず口から出た言葉だった。
あの後何を言っても赤ん坊を押し付けようとしてきて、余りのしつこさに赤ん坊に針を1本渡すことで許して貰った。赤ん坊をベル坊といい背負っていた男は男鹿という名前らしい。傘の女は石矢魔東邦神姫の邦枝だった。
その後針を渡した事をリリンに報告すると目茶苦茶怒られた、急に家に押し掛けてきたかと思うと、泣きながら、何回も目の前でららこたんに嫌われるという恐ろしい幻術をかけられた。
何回謝っても許して貰えず、泣き止むまで頭を撫で続ける事しか俺には出来なかった。
こうして俺の長い不幸な1日は終わった。
最後まで読んでくれた人ありがとうございました。