また、今回は短めです。
ユグドラシルには、低レベルモンスターを中心とした初心者向けから、雑魚敵だけでなく、ダンジョンボス–非常に高い体力や多彩な
街や都市の近くにあるようなダンジョンは多くのプレイヤーに知られているため、殆どが攻略済みであり、ダンジョンの詳細なデータも流出していた。
しかし、全てのダンジョンがそう簡単に発見される訳でない。
例えば、ダンジョンに、トラップ式と呼ばれるものが存在する。
一般的にはプレイヤーが特定の条件を満たすと強制的にダンジョン内に転移させられるタイプのものを指すこのダンジョンだが、難易度は凶悪とも言われるものが殆どだ。
また、状況によってはその凶悪ダンジョンを1人でクリアせざるを得ない事態も起こりかねない。
そのため、トラップ式が初めて実装された時には、多くのプレイヤーから「まともにフィールドを進めない」だの、「初見殺し過ぎる」などのクレームが殺到したため、運営がトラップ発動の条件を複雑にし、そう簡単にはこの類のダンジョンには入れなくなった。(今度は低過ぎる、などのクレームも多少はあったようだ。)
この修正のせいもあり、元々難易度に報酬が釣り合わないものが殆どであるトラップ式のダンジョンは、少しずつプレイヤーの頭から消えていった。
しかし、いくら運営がトラップ式ダンジョンの発動率を下方修正しようと、それはゼロになった訳ではない。
彼女もその中の1人。
数あるトラップ式ダンジョンの中でも一際難易度が高いであろう、『魔牢』シリーズの一つ。
何気なく立ち寄った狩場の一つ。
「そのフィールド内のモンスターを一定の時間に一定の数だけ狩り続ける」
シンプルだからこそ、その「一定」の基準はコンマ単位で決められていた。
だが、繰り返すようだが、ユグドラシルのプレイヤーにとってはあり得ない話では無かったのだ。
それを、その僅かな可能性を彼女が引き当てた、それだけの話。
「………っ、ぁ、あ?」
何処までも広がる闇に、1筋の光が差し込む。
ダンジョンをクリアしたプレイヤーを探知したAIが、ダンジョンの出口を開いたためだ。
「やっと…やっと、ここから出られるの?」
その声に答えるように出口の扉が完全に開かれる。
その身を包んでいた闇が外の光に溶かされるように消えて行く。
太陽の日が照らしたのは1人の人間型のアバター。
異業種である彼女の人間形態時にとる姿である。
「…遅いって怒られちゃう、かな?」
その声は、どこか無理をしているような明るさ、そして、隠しきれない悲しみ。
今日は、ユグドラシルのサービス終了日である。
ナザリック勢の登場は次回に。