港町の小規模艦隊(弱いとは言ってない)   作:酔いどれリンクズ

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1話・叢雲と司令官

ここは西日本の日本海側にある昔からの港町。

漁業も盛んで、毎日の様に港の市場に多くの魚が水揚げされている。

 

深海棲艦と言う、人間や船を襲う怪物が海を支配し、かつてあったシーレーンを失っているにも関わらず、港は人々の賑わいで活気がある。

艦娘と言う、深海棲艦と戦える少女たちが少しずつシーレーンを解放しており、日本の周辺海域は安全になってきているからである。

そして、ある特殊兵器を扱う極少数の人々のおかげで・・・

 

深海棲艦と艦娘たちの長く苦しい戦いの中、その彼女たちを支える提督と、提督の指揮下にある艦娘たちの日常を描いたお話である。

 

 

 

 

「Zzzz・・・」

「こら、何寝てんのよ?早く起きなさい。あんたの決済が必要な書類、持ってきたわよ?」

「・・・ぁん?ああ、おはよう叢雲?徹夜明けなんで寝かせてくれ・・・」

「そう言ってどうせ夕方まで寝るんでしょ?また朝まで書類仕事することになるんだから早く起きる!昼間に仕事終わらせて、夜は寝る方が健康的でしょ!?」

「わかったよ・・・今何時?8時?・・・1時間くらいは寝たか。あ~だり~。改めておはよう叢雲。今日も綺麗ね。」

「おはよう卜部。お世辞は要らないから早く顔を洗ってらっしゃい。

「はいよ~。あ、それ役場の議員秘書室に持ってって?昼までに欲しいやつらしいから。議会で使うんだと。」

「はいはい・・・他に持っていくのあるの?書類はこっち置いとくわよ?15時には取りに来るからね?」

「あとは市場と呉の鎮守府送るやつだから、15時に取り来るときでいいよ・・・あ~寝み・・・」

 

 

卜部と呼ばれた男は、叢雲と呼んだ少女にお願いしながら執務室から出ていった。

 

 

「全く・・・もう少し真面目にしてれば格好もつくのに・・・」

 

 

そう言って嘆くこの少女は深海棲艦と戦うことのできる『艦娘』の一人である。

卜部は彼女の上官にあたり、艦娘を指揮下における数少ない提督の一人である。

 

卜部が駐在するこの港町は人口4000人くらいの小さな町。

佐世保・呉・舞鶴と大きい鎮守府があり、そこに多くの司令官が在籍し、出撃や遠征などの作戦を多く行っている。

そのため、港を管理する、と言う名目で艦娘を指揮下においている司令官が在籍しているのだが・・・

 

 

「あー目が覚めた気がする・・・おう、叢雲、まだいたか。なんか他にあったか?」

「特にないわよ?それにしても、町の請願書とか役場からの依頼書とか、本当に軍関係の指令書はないわね・・・あんた、本当は軍人じゃなくて役人なんじゃないの?」

「しゃーないっしょ?作戦行動は主に佐世保や舞鶴の鎮守府が行うし、日本海域が解放されて数年、一度もこの辺りで深海棲艦現れてないんだから・・・それにお前合わせて6人しか艦娘いないのに出撃要請も何も来るわけないだろ。」

「大淀や明石は艤装ないから、事実上、4人しか艦娘いないわね。あとは『あれ』があるけど。」

「整備しかしてないから、埃かぶってんぞ・・・『あれ』は・・・」

 

 

この港町に駐在する卜部の指揮下にいる艦娘は全部で6人。

軍部の通信・事務を行っている大淀や、艦娘が扱う艤装や『ある兵器』の整備を行っている明石は前線に出ることはないので、戦闘が行える艦娘は4人。

 

所謂『弱小艦隊』なのである。

 

そのため、彼らが行う仕事は主に港町の警らや町からの要望を軍へ送ること、言ってしまえば御用聞きな立場にあるのだ。

 

 

「まぁ、平和なのはいいことだよ。『あれ』動かすの疲れるしな・・・」

「戦うために軍に入ったのに、やってるのは大きな企業のOLみたいだから、たまに嫌になるわ。」

「まあそう言うな。他の町や基地にいる艦娘なんて出撃・演習・遠征毎日やって休みらしい休みがないとこもあるだろ?それに、一般住民の人から恐怖されたり、邪険に扱われないこの町はいい場所だと思うぞ?」

「・・・まあ、そうね。その辺のあんたの手腕には脱帽するわ。」

「いろいろ『弄られてるけど』俺も人間だし、お前らも艤装の適正なければ『ただの人間』だしな。町とは良好な関係作っとくのは、俺らの仕事を円滑に進めるには大事なことだ・・・それに外出るのめんどいし、できるやつに任せればいいんだよ、深海棲艦と戦うのは。」

「・・・最後のがなければ素晴らしい心意気、って思ったんだけどね・・・」

「いいんだよ。上からは使えない軍人、って思われてる方が仕事しなくて済むし。」

「かつては艦娘を差し置いて深海棲艦撃墜数トップにいた男が何言ってるんだか・・・まぁ、いいわ。私は行くわ。ちゃんとその書類、言った時間までに終わらせておいてよ?」

 

 

そう言って叢雲は執務室を後にして行った。

 

 

「15時までに終わる量か、これ?」

 

 

机の上に置かれた紙の山を横目に卜部は大きくため息をついた。

 

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