港町の小規模艦隊(弱いとは言ってない)   作:酔いどれリンクズ

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2話・比叡と司令官

卜部が駐在するこの町は、港町と言うこともあり朝が早い。

 

丑三つ時と言われる時間には活動が始まり、早朝には市場へ水揚げされた多くの魚が売り買いされる。

そんな場所に彼女はいた。

 

金剛型2番艦、比叡。

卜部指揮下の艦娘の一人だ。

 

 

「ひえぇぇ・・・今日も魚が一杯ですッ!!」

「おッ!比叡ちゃん、今日はどうしたんだい?見回りかい?」

「今日は私が料理当番なので、新鮮な魚を買いに来たんです♪」

「そうかいッ!卜部のあんちゃんには世話になってるからな、これはどうだい?市場には出さない漁師の連中が食べるやつだから、持っていきなッ!」

「いえッ!それは申し訳ないですよッ!」

「いいんだよッ!今日はいつもより多かったし、美人さんばっかのあんちゃんとこで食べてもらった方がこいつらも幸せだッ!!」

「美人さんなんてそんな・・・じゃあ、ご厚意に甘えますね?」

「おう、持ってけ持ってけ。」

「何お前だけ、いい格好しようとしてんだッ!?比叡ちゃん、こっちの烏賊も持ってけッ!」

「お前らッ!?個人に勝手に商品タダであげてんじゃねぇよッ!!比叡さん、この魚も持っていってくれ。安全で快適な漁をさせてくれてる礼だ。卜部さんによろしく言っといてくれ。」

「「おやっさんもいい格好しようとしてんじゃねぇかッ!!??」」

「ひぇ~、あ、ありがとうございますッ!!」

 

 

この港町で彼女たち艦娘はとても気に入られ、こんな感じでとても良好な関係を築いていた。

これは他の地域であまり見られる状況ではなく、大概は恐れられ、軍に尻尾を振った『人間』として忌避される傾向にある。

深海棲艦の出現により、シーレーンを奪われ、人口の減少と食糧難に陥った人類が深海棲艦に対抗するために作り出した、艤装に適合する女性たち『艦娘』に対する風当たりは強かった。

かつての『軍艦』の魂を受け継いだ艤装に適合する女性たちは等しく『人間』ではあるが、適合するがために『一般の人間』ではあり得ない力と戦う意志が強く現れる。

そのため、普通の人間はその力に恐怖し、深海棲艦と同じような目で見てしまう傾向がある。

艤装を装着していれば『艦娘』であるが、艤装を装着していなければ『普通の人間』になっているにも拘らず。

 

しかし、この港町に住む人々はそのような感情を持っていない。

それは卜部が長い時間をかけて意識を変えていったこともあるが、卜部の指揮下にある艦娘たちの努力を、町の人々が見ていた事も要因である。

 

 

「なんか申し訳ないなぁ・・・あッ!!あとでみんなにも料理をご馳走しましょうッ!!お魚も一杯もらったので比叡特製シーフードかれーを「「「それだけは止めてくれ、比叡ちゃんッ!!!!」」」・・・残念です・・・」

 

 

比叡が作る特製カレーはダークマターである。

 

 

 

 

「魚の焼けるいい匂いだな・・・おはよう、比叡。今日はお前が当番か?」

「もう、こんにちは、ですよ?司令?おはようございます。朝、市場に行ったら漁師の皆さんからいっぱいお魚貰ったんですッ!」

「そっか・・・あとでお礼言いに行くか・・・他のやつらは?」

「皆さん、役場や町の巡回に出ていますよ?叢雲が司令は昼まで寝てるだろうから起きたら、机の書類片付けておきなさい、って言ってましたよ?」

「・・・何でこんな田舎の港町で毎日のように決済が必要な書類が出てくるんだよ・・・」

「それだけ町の皆さんから頼られてるんですよ、司令は・・・はい、どうぞ、朝食兼昼食です。」

「は~、市場行ってからやるか・・・ありがとうな、比叡。カレー以外なら上手だよな、料理。」

「司令までそんなこと言うんですか・・・次の私が当番だった時は絶対ぎゃふんと言わせるくらい美味しいカレー作りますからねッ!!」

「違う意味でぎゃふんと言わされるわ・・・」

 

 

艤装の適合により現在は艦娘となっている比叡だが、その前は、小さな料理屋で働いていた事もあり、料理は他のメンバーに比べるとダントツで上手である。

特に彼女の作る『カレー』は絶品で、地方にあった料理屋だったが、多くの人が来店し、評判のよかったほどだ。

しかし、艦娘として適合し『比叡』となった彼女は、料理の腕は変わらずの逸品だったが、何故か『カレー』だけはこの世の物とは思えない味を提供する程までになってしまっていた。

『他の人間より丈夫な』卜部でも完食はするが、次の日は寝込んでしまう程の物が出てくるのであった。

 

 

「今日は家にいるのか?」

「はいッ!昨日は司令が当番だったので洗濯が溜まっているので、それを片付けます。」

「流石にお前らの下着を俺が洗濯するわけにもいかんからな・・・ご馳走さま。今から市場行ってくるから、その間にやっといてくれ。」

「お粗末様でした・・・いってらっしゃい、司令。」

 

 

卜部は食器を洗い場まで持っていき、その足で外出していった。

艦娘たちが住んでいる宿舎には比叡一人となった。

 

 

「さて皆さん各々の仕事に行きましたね、では・・・今日もッ!気合い、入れて、頑張りますッ!!」

 

 

声を高らかにあげて自身の仕事に邁進する比叡だった。

 

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