DW   作:委員長※永琳は俺の嫁

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明晰夢、その2-3

※第三視点

 

=おお何とおぞましい事か、それはこと人間の声帯から出るような声ではなく、また正気の人間が言えるようなものではなかった。聞いているだけ吐き気がする、ここにとどまりたくない、おお神よ。願わくば私を守るならば今すぐ私の耳を切り落としてくれ、来る、狂う、やつが来る、そうそれは名状しがたきもの、それは、これ以上この世界にこのものを指す言葉が幾つあるだろうか、このものと敵対するくらいなら崇めよう、崇拝しよう、さああ、叫ぶのだ自らの命が惜しければ、『いあ! いあ! はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ふるぐとむ あい! あい! はすたあ!』=

 

 生暖かい風が七瀬燐子の周りから吹いている、否、彼女の足元に風元があるのだ。彼女の描いた陣のようなものがまるで『門』の役割を果たすかのように、風元はおおよそ一人の人間は入れるくらいの穴で、この薄明かりから見える限りでは螺旋状に渦まく階段が数巻きほど見える。彼女はそのおぞましい詠唱を唱え続け、身振り手振りでその中に入るように指示する。平田愛彦は峯月亜瑠葉を背中に抱えながらその中を降りていった、おおよその一人の人間が入れるくらいと描写したが、無理をしたら二人でいけるものであった。充分に二人が降りていくと七瀬燐子は詠唱を続けながら降りていく、数巻きほど降りていくと彼女はフェードアウトするように呪文の声を小さくし、そして絶えた。すると、陣を刻んだ『門』はその役割を終えたかの様に、その瞼を閉じるかのごとくゆっくりと元の地面へと戻っていった。もう、陣は描かれていない。

 

 

※亜瑠葉視点

 

 暖かい……揺れている。安心する……何故だろう。男の人……『チチオヤ?』。背中が大きい……心地がいい。私は無意識のうちに強くそれにしがみついていた、もう放さない、もうどこかに行かないで、お願い私を……お母さんを一人にしないで……ひとりに。

 

「独りに……しないで」

「ああ、独りにはしない」

 

 ふと、私の声に答えるように男の声が降ってきた。ようやく瞼を開ける、そこには心配そうに見つめているラヴ彦の顔がある、その顔は歪んでいた、いや、私の目に溜まった涙のせいだろう。ラヴ彦は私の目尻に溜まった涙を片手で丁寧に掬い取ってくれる、そしてどこからかハンケチを取り出し渡した。私はそれを受け取ると半身を起こし、それで涙をふき取った。クリアな視界にはやっぱり心配そうな顔をしている。私は無理に笑顔をつくるとラヴ彦に向かって微笑んだ。唇が震えている、でもそれを隠すように微笑んだ。そのとき、なにか硬いものが顔に押し付けられた瞑っていた目を開ける、目の前は真っ暗だった、でも私にはわかった。ラヴ彦は私を抱擁している、頬になにか冷たい水が垂れた、それは口元に落ちてくる、しょっぱい、涙だ。私は泣いていない、ならこの涙は? ラヴ彦? なんで泣いてるの、何で、何で。そんな疑問は私の心を揺さぶり一層唇を振るわせた、耐えた、泣いちゃだめだ、今は聞きたくない言葉が降ってきた。

 

「俺が亜瑠葉を守る、俺が守ってやる、だから感情を抑えるな。無理に笑おうとするな、泣きたい時に泣いてくれ」

「っぅう!!」

 

 声にならない声が漏れた、ラヴ彦の胸は大きく私をすっぽりと包んだ。そのとき、封印されていた記憶の一部がよみがえる、そこには『チチオヤ』がいたそしてラヴ彦と同じことをいっている「俺が亜瑠葉を守る、俺が守ってやる、だから感情を抑えるな。無理に笑おうとするな、泣きたい時に泣いてくれ」っと、一字一句違わず。急に不安感に駆られた、この言葉は私の前から大切な人を離れさせていく、駄目、ダメ。

 

「だめぇえええええええ!!」

 

 私は怖くなりラヴ彦を突き飛ばしてしまった、不意の突き飛ばしで軽くラヴ彦は飛んでいく、そして背中を壁に思いっきりぶつけた。私は心にもない言葉を叫ぶ。

 

「私に近寄らないで! これ以上親しくならないで! おねがいだから」

「……わかったよ」

 

 そういうと、俯いたままラヴ彦は去っていった。部屋から出て行くその身体は大きくて、それでいて悲しみがただよっていた。直ぐに私は取り返しのつかないことをしたと痛感する。追いかけようと思った、でも何故か足は動かない、動いて! 願っても動かない、まるでなにかが私の腰に絡み付いてここから出すのを拒んでいるような、それは妄想、空想的なことではなく、現実のものであった。私の下半身、いやこの場合は全身といえるべきか、それぞれ四股に鎖、腰に鋼鉄のベルトと拘束具が付けられていた。まるで、私が危険生物のように厳重な管理をしている。鎖の稼動範囲は部分により異なって手足はまだ自由が利くほうだが腰に関しては浮かせるや最小限の動きしかできない。鎖が音を立てる、引っ張ってみるが強固な鎖なのかびくともしない。その鈍い銀色に光るそれは地獄の猟犬すらもおとなしく伏せることしかできないという印象を受けた。それから一時間ほどいろいろなことをして気を紛らわしたが、強固な鎖に阻まれて何もすることが出来なかった。何もすることができない嫌悪感と何もされない疑心暗鬼が心に座り込み、程なくして私の意識は消えかけの電球のようにぽつぽつと途絶えていった。

 

※???side

 

 今宵はこれにて閉幕する、謎を知りし者、謎を知らぬもの、そして異形の神々、この世界もまた魔王の夢なのか……それも一興。夢なら楽しいほうがいいすなわち物語は楽しくなければならない、日常で起こるようなことをしてもいいが物語りは劇的であるべきだ。この世界の真実にたどり着けるものはいるのか、果たしてそれは本当に真実なのか、虚実の皮を被った真実なのか、真実の皮を被った虚実なのか、それは神のみぞしることであり、はたして人間がしっていいものではない、故に知れば宇宙の深淵を垣間見ることになろう。

 さあ、謎知らなきものよ。戦き、恐怖し、自我を滅し、そして深淵を垣間見るがいい、その果てにまっているのもやはり……。

 

おどろおどろしいフルートの音、狂気の沙汰としか思えない悪魔の太鼓、ちらりとみるだけでその精神を汚染する奇怪な踊り、その真ん中で玉座に眠りしは魔王であり、恐怖の根源だ。彼はまだ夢を見ている、目覚めぬことをただただ祈るばかりだ。

 

 




第三視点の正体?

作者「俺だよ」
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