主人公はエクソシストだもん。しょうがないよね。
家が燃える。
ようやく住み慣れてきた家は猛火に包まれて燃えていた。猛火に包まれながら崩れていく家の音は、まるで俺を嘲笑っているかのように聞こえた。
この炎は家族の思い出を、父さんと母さんが大切に育てていた花を、妹と一緒に遊んだ庭を、多くのものを壊していく。
燃え盛る炎に揺らめく影が俺を見ていた。
その目は愉悦に浸る狂人の目だ。
炎に焼かれる人を、親が焼かれているのになにもできない俺を、まるで壊れた玩具のように見ていた。
その姿を馬鹿にするかのように影は炎の中で笑いだした。面白そうに、愉快そうに、腹の底から笑っていた。
その光景を、途切れていく意識の中で俺はただ茫然と眺めていることしか出来なかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「--ください、リュウ--ん。起き--ださい、リュウガ--起きてくださいって、ミカエル様が呼んでいますよ。早く起きてください、リュウガさん!!」
「五月蝿い、喧しい、もう起きている。耳元で喋りかけるな、鬱陶しい」
「ならそうと早く言ってください。何度声を掛けたと思っているんですか!」
「知るかそんなこと。……で、ミカエル様はどこで待っているんだ」
「はあ、ミカエル様は教会にいますよ」
その事を聞いた俺は、自室のソファーから立ち上がり、欠伸をしてから教会に歩いていった。
教会に向けて歩いていると夢の事を思い出した。
さっきの夢……そうか、あの日からもう十年以上も経つのか。時間が進むのは速いな。
あの日以来、俺は教会に敵対する異教徒に悪魔、吸血鬼を狩り続けているが、いまだにあの影と同じ目を見つけられない。
いつになったら見つけられるんだ。これまで俺が狩ってきた奴等の数は一万を越えているんだぞ。
まだか、まだなのか。いつになったら見つけられるんだ。早く出てこい。そしてこいつらで、お前の目をえぐり出してやる。
っと、教会に着いたか。気持ちを切り替えろ、これから会う方は熾天使を率いる天使長で、四大熾天使の1人だぞ。こんな状態で会うのは失礼だ。
気持ちを落ち着かせ、教会の両開きの扉を開けた。
中に入り、祭壇の前にいるミカエル様の元に近づいた。
「来ましたか、戦士リュウガ」
俺はミカエル様がそう言い終わると、方膝をついて頭を垂れた。
「は、戦士リュウガ、ミカエル様の命により御身の前に参りました。本日はどのようなご用件でしょうか」
「その前に頭を上げて立ってください。ここで話すのはなんですから中庭で話しましょう」
立つように言われた俺は、ミカエル様の後を追う形で中庭に出た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いつ来てもここはにぎやかで綺麗ですね」
「お褒めいただきありがとうございます。そのお言葉は是非、妹にも言ってあげてください」
俺とミカエル様は辺り一面に咲き誇る花の中を歩いていた。
この中庭には世界中から集めた花を植えている。特に両親が好んでいた花を……。
「やはり、あなたにここの管理を任せて正解でした。おかげで子供たちの笑顔が多く見れます」
「そんな、子供たちの笑顔が見れるようになったのは妹とここに住んでいる神父たちのおかげですよ。俺はなにもしていません」
俺はこの教会に滅多に居ない。一年のほとんどは、世界中にいるはぐれ狩りに使っているんだ。しているとすれば、毎月、教会に金を振り込んでいる事くらいだ。
「それでもあなたは子供たちに笑顔を与える場所を作ったのです。それは誇るべきことでしょう?」
「そんなことありませんよ。笑顔が戻ったのは、周りの奴等がそうなるように頑張ったからです。誉めるのでしたら、俺ではなく、彼女たちにしてください」
子供に笑顔が戻ったのは今も中庭の芝生で子供たちと遊んでいる妹たちのおかげさ。
「ふふ、そうですか。長年の旅であなたが変わっていないようで安心しましたよ。では、今日来た目的を話しましょう」
ミカエル様は先程の物腰の柔らかい雰囲気から、天使を統べる者の顔つきになった。
「あなたにはしばらくの間、私の護衛をしてもらいたいのです」
「護衛……ですか」
これは驚いた。まさか、ミカエル様直々に護衛を頼んでくるとは。
「なにか重要なことでも行うのですか?」
「ええ、近いうちに三大勢力で会議が行われるのは知っていますか?」
三大勢力の会議だと?なぜそんなことが行われるんだ。
「いえ、知りません。なぜそのようなことが行われるのですか」
それからミカエル様は駒王町と呼ばれる町で起きた事件を事細かに話してくれた。
グレモリー家の領地で堕天使の幹部、コカビエルが魔王の妹を殺して再び、三大勢力で戦争を始めようとしていたことを。
なるほど、もしコカビエルが魔王の妹の殺害に成功していれば、魔王が黙っているわけがない。そうなれば堕天使と悪魔が戦争を始め、それを止めるために天界が動くことになる。
だが、それはグレモリーとシトリーの次期当主、それと教会の戦士の活躍によって阻止できたと。
「それにしても、赤龍帝に白龍皇ですか。その二人が出会うとは思いませんでしたね」
「ええ、私もその事を聞いた時は驚きましたよ」
もしこれで戦争が起きていたら天龍同士の死闘が起きていたのか。悪魔を誉めるのは教会の者としては可笑しいが、よくやった。特に派遣された教会の戦士よ。
「それで、その事件がきっかけで会議が行われるということですか」
「そうです。会議をしているときに何者かが襲撃してきたら大変なので、あなたに護衛をお願いしたいのですが、いいですか?」
護衛か。今までやったことはないが、ミカエル様が直々に頼んできたんだ。断るわけにもいかないだろ。
「わかりました。その護衛、お引き受け致します。それで、いつから始めればいいのですか?」
ミカエル様はにっこりと微笑むと--
「今日からです」
……………え?
「今日からですか?明日からではなく?」
「そうです。まずは先程の話にもあった駒王町に行きます」
なぜ駒王町に?会議はまだ先の筈なのに……。
「そこで赤龍帝にこれを渡そうと思っています」
布にくるまれたものからは聖なるオーラが漏れていた。
このオーラはそんな、まさかこれはっ!?
「聖剣を悪魔に渡すのですか!?それもただの聖剣ではなく、聖ジョージが使っていた龍殺しの聖剣アスカロンを!」
ただの聖剣ならまだしも、教会で最も厳重に保管されてきた聖剣の一つを渡すなんてっ!?
「どういうつもりですか、ミカエル様!!」
「これは悪魔側とより親睦に付き合っていきたいという意思表明です。私たちが大切にしている物の一つをあちらに渡せばこちらの意思を理解する筈です。そのためにこれを赤龍帝に渡そうと思ったのです」
「いえ、ですが--」
「それに、今の赤龍帝では白龍皇と、まともに戦うことはできません。少しでも差を縮めるためにも、これは必要だと思います」
「………………」
確かに、駒王町での事件の話を聞いて、コカビエルにダメージを与えられなかった赤龍帝と意図も簡単に倒した白龍皇のどちらが強いかと聞かれれば、簡単な答えだ。
それに、ミカエル様の言っていることも分かる。これからの会議をより話しやすくするにはそれなりの事をしていたほうがいい。
そうなると俺の答えは決まっていた。
「はぁ、まあ、話を聞く限り赤龍帝はそこらの悪魔とは違うみたいですし、粗末に扱わないのなら良いですよ」
聖剣を雑に扱うやつは斬首待ったなしだ。異論は認めない。
「そうですか。では、先にこの聖剣を赤龍帝に渡してしまいましょう。渡した後、私は天界に戻って会議に向けての話をまとめないといけないので、そこまでは付き合ってください」
ミカエル様が手のひらを差しのべる。
その手に触れるとミカエル様と俺の全身を光が包み込み、その場から一瞬で消えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
光が止むとそこは、日本の神社と呼ばれる場所だった。
「ここは、神社ですか」
「ええ、ここは駒王町にある神社で、グレモリー眷属の女王が住んでいる場所でもあります」
グレモリー眷属の女王がいる神社か……。ここだったら、他の場所と比べたら比較的安全に赤龍帝に聖剣を渡せるな。
周囲に危険な存在がいないかを警戒していると、鳥居の近くに巫女服を着た黒髪のポニーテールの美女がいた。
あの気配は悪魔か。グレモリー眷属の女王かもしれないが、そうした考えのせいで味方を殺すときがある。そういうときにすることは決まっている。
「ミカエル様、暫しお待ちください」
その場から一歩で悪魔の懐に踏み込み、袖から刀身のない柄を取り出した。
悪魔が俺に気付く前に柄から光の刀身を展開し、そのまま一気にその首を--
「お止めなさい、リュウガ!!」
はねる寸前で止めた。
今のミカエル様の反応……。それにこの悪魔、俺が地を蹴った音でやっと気が付いていた。
刺客だとしたら反応が遅い。顔に出ているこの表情は、殺されそうになったことへの恐怖ではなく、なぜこんなことをされているかという困惑の表情か。となると、刺客ではないな。
「突然あなたに斬りかかってすまない。今の反応で、敵でないということは分かった」
「そ、それはよかったですね?」
さて、彼女が味方だと分かったが、もしかしたら、何かが周囲に潜伏している可能性がある。
この辺りを少しだけ索敵しておくか。
柄を閉まい、ミカエル様に頭を下げてから索敵にあたった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いいですか、リュウガ。またあのようなことをしたら私でもさすがに許しはしませんよ」
索敵から戻ってきたらなぜかその場で正座をさせられた。
なぜだ?俺はミカエル様のことを思っての行動を取ったんだぞ。
「本来なら、今この場で小一時間は話をしたいところですが、赤龍帝がいつ来るのか分からないので、戻ってからゆっくりと話をしましょう。いいですね?」
はい、と答えるしかない。
目の錯覚だと思うが、ミカエル様の背後に日本の般若のようなものが見えた。目が笑っていない笑顔に般若は怖すぎる。
いくつもの死地を乗り越え、死を覚悟する程の恐ろしい目に会ってきたが、正直、今のミカエル様以上に怖いものは見たことがない。
「では、そろそろ来ると思うので、警護に戻ってください」
「御心のままに」
こうして俺はミカエル様の警護に戻り、赤龍帝が来るのを待ち続け、10分もしない内に赤龍帝が境内に入ってきた。
俺はミカエル様が赤龍帝と話している間は、邪魔にならないように距離を取りながら周囲を警戒し続けた。
特に気配を感じないと思い、一瞬だけ話し合いの様子を見ると--
ズキッ!!
頭が突然痛みだした。
前触れもなく襲いかかってきた痛みに頭を抑えていた。
そして痛みが治まると、知らない光景が頭の中にあった。
赤、いや、紅と言うべきなのか?そんな髪の色をした女性にさっきの赤龍帝、それと他にも何人か人がいるが、そいつらが魔術師と戦っている光景がある。
金髪の男は剣を振るい、黒髪の女は雷を放ち、白い髪の少女は殴り飛ばし、青髪の女は大剣で凪ぎ払っていた。
これはいったい………なんなんだ。ダメだ、この光景に靄がかかっているのか断片的なことしか見れない。
どこかで見たことがある気がするが、なぜか思い出せない。どうしてなんだ。これ以上のことを思い出せない。
「リュウガ、終わりましたよ」
っ!?
「リュウガ?どうかしたのですか?」
「い、いえ、何でもありません」
俺としたことが、何をしているんだ。今はミカエル様の護衛をしているんだろうが。光景のことなんか気にするな。
「………そうですか。では、戻りますよ。リュウガ、手を」
ミカエル様が差しのべた手をとり、俺は光に包まれて教会に帰った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして、数日の日が過ぎ、駒王町の駒王学園にて、三大勢力の会議が始まろうとしていた。
主人公がコカビエルの回で関わらなかったのは、他の仕事をしていて手が回らなかったからです。
そして原作キャラとの会話が一回だけだ。(白目)
じ、次回は頑張って行こうと思います。