メイドさんと小さなご主人様   作:ハニトラ

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メイドさんは質問する

才香がトリステイン魔法学院でルイズの使い魔……というよりお付のメイドとして生活を始めてから十日が経った。才香のメイドとしての一日を簡単に説明するとこんな感じである。

 

朝早く起きる。寝床はルイズがわざわざ運び入れた新調のソファーベッドである。才香程度の体格の女性なら二人並んでも寝れる。もちろん部屋は狭くなった。こんな立派なもの勿体無いと才香が言えば、一緒のベッドで寝ていた方がいろいろとまずいとご主人様は言うのだった。いろいろと我慢の限界だったかもしれない。

 

才香は起きるとルイズを起こさないように物音一つ立てずに部屋を出て厨房に向かう。それからコック長のマルトーなる男性に挨拶をして、調理場の一角でシエスタと一緒にルイズの朝食を作る。日本でいえば才香が洋食、シエスタが和食担当だがなんだかんだでいつも二人で作っているのである。

 

シエスタとは朝食を作り終えると別れる。なんでも学院を警護している女性といつも見回りをしているらしい。「ルイズ様をよろしくお願いします」と言って、シエスタは去って行った。

 

朝食を作り終わると部屋へ引き返しルイズを起こす。ルイズは起こされると才香の目を気にしながら着替える。才香に男だとばれてからは下着はもちろんのこと制服も一人で着替えるようになった。

 

ルイズは見かけはとんでもなく可愛らしい美少女だ。女物の下着を穿き、ブラウスとプリーツスカートに着替えている様を見ていても違和感はない。が、ルイズは男である。才香は微妙な気持ちになった。男が女の格好をしている。やはり思うところはある。うっかりそれが顔に出てしまうこともある。

 

ルイズはそれを見逃さない。『女性には優しく接するべし』なんて言われて育ってきたルイズである。才香を責めることなく、逆に「ごめんなさいね……」とあやまったりするのであった。

 

朝食を食べ終えるとルイズと才香は学園の授業に出かける。初めはルイズの背後に控えていた才香だったが、いつも背後から才香の視線をびしびし感じていたルイズは隣の椅子に座るように命令した。そして暇なら授業でも受けていなさいと。

 

才香は最初はおとなしくしていた。だけど地球にはなかった魔法の授業である。魔法が物珍しくて気付けばルイズと一緒に真剣に授業を受けていた。そのうち遠慮しながらもルイズに魔法のことについて質問するようになった。

 

魔法が使えないゼロのルイズなんて言われていても、魔法の知識だけは誰よりもあるルイズである。ルイズは才香の質問に独自の解釈を交えつつ分かりやすく応えてやった。褒める才香に照れるルイズ。

 

やがて才香から遠慮がなくなり、ルイズは得意気にどんな質問にも的確に応えていった。才香からの問いがどんな高度なものになっても、ルイズは詰まらずに淀みなく応えていく。

 

授業中にあーだこーだ言い合っているのに教師からの注意はない。なぜなら才香とルイズの魔法問答はいつしか教師を加えた魔法談義になっていた。教師の名はコルベール。頭がやや寂しくなった中年の男性教師である。

 

そんなものだから、授業が半ば中断されて生徒たちは思い思いの行動をとっている。授業がなくなったと教室でだらけて話をしている者、教室から出て行った者、そしてルイズたちの話に耳を傾けている者……

 

「ほう!するとなにかね、水の力だけでも爆発を起こせるというのかね!」

 

「そうなの才香!じゃあわたしって水のメイジなのかしら!?」

 

なんて興奮気味のルイズとコルベール。いつの間にか才香の隣の席に座り、無言でガリガリとノートの筆を走らせているモンモランシー。

 

「簡単に説明しますと、密閉された空間の中で水が高温になるとこの現象は起こります。蒸気の逃げ道が無いのに熱で外に外に追いやられ、それが空間を遮る壁の耐久を越えることで今まで溜まっていたものが一斉に外へと出て爆発を引き起こすのです。逆に冷却された水の中に金属などの高温度の融合物質が触れることでも似た現象が発生します」

 

モンモランシーは才香の隣で一言一句間違えないようにノートに書き綴らせる。よく見れば才香たちの周辺の足元にはいつしか使い間たちがいて主人の代わりに聞き耳をたてている。

 

「火山の噴火などがこの現象にあたります」

 

「ほう!ほうほうほう!」

 

「ア、アカデミーにいるねえさまに知らせなきゃ……」

 

才香は足元にいた猫においでおいでをした。膝に飛び乗ってきた猫の背を優しくなでなでする。

 

「水も条件次第では恐ろしい威力を発揮するということです」

 

教室のあちこちで、おー……という感嘆の声が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、才香たちが教室で魔法談義に華を咲かせていた頃、学院長室で学院長のオスマンと女性二人が向かい合っていた。シエスタとマチルダの二人である。

 

オスマンは白い口髭と髪を揺らしキセルをふかしている。年寄りの身体には少し毒だろうがシエスタもマチルダもそんなことどうでもいいのである。二人が守るのはルイズでありオスマンの老い先短い身体のことではない。

 

「破壊の人形の封印解除じゃと」

 

「あーそうだよジジイ。さっさと宝物庫の鍵を開けな。相当協力なメイジが固定化の呪文を掛けたのか私の錬金を受付けやしない」

 

「一言あってもいいと思うんじゃがの……」

 

「姫さんの命令だよ。ジジイが入り込む余地なんてないだろ」

 

うぬ、とオスマンは渋面で頷く。

 

「じゃが破壊の人形はメイジの手にすら余る代物じゃ。人形なのに意志を持ってはいるが友好的とは言えん。それはアンリエッタ様も知っておるはずじゃ」

 

オスマンの声に余裕はなく、その表情は厳しい。それに合わせてぶつぶつと小声で不満も呟く。

 

「才香さんをぶつければいいじゃありませんか」

 

今まで無言だったシエスタが口を開く。

 

「封印を解く時には破壊の人形の相手は才香さんにしてもらいましょう。加えて周りにメイジを数人配置しておけばどうにかなります」

 

「あんたはあいかわらずだね……」

 

「もちろんマチルダさんは才香さんと一緒に頑張ってください。あの女の命令ですからマチルダさん戦力に数えられているはずです。あとは被害が拡大しないように各々が努力するだけでしょう」

 

そんなことを言いながらシエスタは考える。ルイズのためと言えば才香は言うことを聞くはず。上手くいけば破壊の人形がルイズの味方になるし、そうならなくても損をするわけでもない。むしろあの女の愚策だったとルイズにマイナスイメージを植えつける材料にする。

 

こんなことを考えているなんてルイズを前にしたら絶対に口に出して言うことはできない。今まで清純な幼馴染みをやってきたのだ。こういう部分そ知られるなど冗談ではない。

 

「才香さんとマチルダさんには奮起して破壊の人形をおとなしくしていだだきませんと」

 

「あんたはどうすんだい」

 

「もちろん安全な場所に避難したルイズ様に付いておりますわ」

 

「だと思ったよ……あんたは姫さんと同じで可愛いのは自分とボウヤだけだからな」

 

「それがわたしですもの」

 

シエスタはくすくすと笑う。

 

「でもマチルダさんのことは割と気に入っていますので、できればあとちょっと長生きしてくださいね」

 

「あーはいはい、そういや今度の酒代は私持ちだったね」

 

マチルダは呆れてやれやれと苦笑する。友人とはいってもシエスタはマチルダのために命はかけないし、マチルダもシエスタより大事な者はいる。だけど、割り切ったこの関係はどこか心地良い。

 

「まーあれだ。あのメイドを援護して上手いこと立ち回るさ」

 

「はい。頑張ってくださいまし」

 

そうやってオスマンを蚊帳の外に、二日後に学院から離れた山奥で破壊の人形の封印が解かれることが決定したのだった。




仕事で中国に行ってました。10月になったらまた行かなきゃならんのだよなぁ……

お気に入りの、パピコ バニラのフローズンをもぐもぐして気力を回復中です。
おいしいけど甘すぎてお茶必須だけどね……

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