初めてのオリジナル作品ですが、生暖かい目でご覧ください。
プロローグ~日常の終わり~
『♪~』
「まさか、徹夜してクリアしちまうとは思わなかったな……………気がついたらもうエンディングだよ…………」
テレビ画面に流れるスタッフロールに目を通し、全部英語のエンディング曲を聞きながら、俺--古代 神影(こだい みかげ)--は、コントローラーを床に置いて、苦笑混じりに呟いた。
部屋の時計に目を向けると、時刻は朝の5時15分。俺が平日に起きる時間だ。
「まっ、取り敢えずエンディング終わったら寝るか」
そう言って、エンディングが終わるまでの暇潰しを兼ねて、ベッドメイキングをするべく立ち上がったのだが、此処で、ふと疑問に思った事が1つ。
「そういや、今日って何曜日だっけ……………?」
そう呟き、何時でも使えるように充電していたスマホの電源ボタンを押す。そして、画面に表示された日付は……………
「2月14日、月曜日」
今日は月曜。つまり……………
「学校あるじゃないですかヤダー」
思いっきり棒読みで言うと、俺はガックリと項垂れる。
まただ…………また、味わいたくもない地獄の1週間(正確には5日間)が始まるのだ。
「はぁ…………学校、行きたくねぇなぁ………あの地獄の日々がまた始まっちまうんだからなぁ…………」
深い溜め息をついてから、そう小さく溢し、テレビの電源を切ると、俺はゲーム機とコントローラーを片付け、1階へと降りていった。
1階のリビングに降りると、既に親が居た。
台所で母さんが朝食を作り、父さんは椅子に座って、ニュース番組を見ている。妹も居るのだが、今日は振り替え休日とかで学校は休みだそうだ。
マジで羨ましいな、代わりやがれコンチクショー。
テーブルへと近づくと、それに気づいた母さんが振り返り、声を掛けてきた。
「あら、おはよう神影」
「おはよう、母さん。父さんもおはよう」
「ああ、神影。おはよう」
両親に挨拶すると、俺は父さんの向かい側の席に座る。
「それにしてもお前、昨日は徹夜でゲームしてたのに、ちゃんと起きてきたんだな。てっきり、そのまま寝てしまうかと思っていたが…………」
「まぁ、今日は学校だからな。そう言う訳にもいかないよ」
父さんにそう言って、俺は母さんが持ってきてくれた朝食を食べ始めた。
「えーっと、教材と鞄良し。制服良し、財布と定期も良し………っと!」
朝食を終え、洗顔と歯磨きを済ませた俺は、部屋で今日の用意を終わらせていた。
全てが揃っているのを確認すると、クローゼットの中からダウンジャケットを取り出して学ランの上から着ると、ネックウォーマーを首に着けてから眼鏡を掛ける。
別に眼鏡が無くても行動自体に支障は無いが、何故かプライベート以外では眼鏡を掛けてしまう。
自分で言うのも変な話だが、何故だろう………………?
そして鞄を持ち、リビングに降りると、母さん達に一言掛ける。
「それじゃあ行ってくる」
「はーい、行ってらっしゃい」
「神影、今日はバレンタインだ。ちゃんとチョコ貰ってこいよ?」
「そんなモン貰える訳ねぇって」
朝食時の真面目そうな雰囲気から一転、茶化すようにニヤニヤしながら言う父さんにそう言って、俺は家を出た。
家から駅まで徒歩10分、それから電車で40分。さらに駅から徒歩で20分程歩いた所に、俺が通う学校──市立帝塚東高校──はある。
全校生徒956人の公立高校で、俺は、其所の2年F組に所属している。
「(さてさて、来る時も大概だったが、此処から本当の地獄が始まるんだよなぁ…………)」
靴箱で靴を履き替えて校舎に入り、2年生のフロアである3階(因みに、1年生が4階で3年生が2階になっている)に着くと、俺は肩をガックリ落として盛大な溜め息をつく。
学校に着いてから此処に来るまでの間、俺は、この学校の道行く男子生徒から敵意丸出しの視線を向けられてきた。
それだけでも十分キツかったのに、極めつけに彼処だからな……………
此処に来るまでは視線だけで済んだが、教室に入れば、それだけでは済まない。
俺の立場を悪くするための言葉が、容赦無く、そして大声で投げ掛けられるのだ。
「(だがまぁ、此処でウジウジやっても仕方無いし…………行くか)」
俺は意を決して廊下を進み、教室へと足を踏み入れる。
『『『『『……………………』』』』』
うっわぁ~……………この教室に居る男子の皆さん、俺の事スッゲー睨んでますよ。
『テメーなんぞお呼びじゃねぇんだよ、失せろや』と言わんばかりの視線ですよコレ。俺が何したってのさ…………
鋭い視線の雨に晒されながら、床に荷物を下ろして席に着いた俺は、教材を入れている鞄とは別に背負ってきたサブバッグの比較的小さなポケットから愛用のゲーム機──New 3DS LL──を取り出すと、視線の雨を無視して電源を入れ、画面に光が点るのを待つ。
すると、この時を待ってましたと言わんばかりに、1人の男子がムカつく声色で言った。
「おーいキモオタ!朝っぱらから教室でエロゲーしてんのかよ!」
「うわっ、キモー!近づいたらエロが伝染するぞ~!」
すると巻き起こる、教室に居る男子達からの嘲笑の渦。つーかテメェ等、マジで五月蝿ェから黙っとけ、ゲームに集中出来ねぇだろうが。
苛立ちながらも中々収まる気配を見せない嘲笑を無視していると、漸く画面に光が点り、上画面のトップを飾るかの如く、今挿しているゲームが表示される。
表示されているのは、『エースコンバット3D クロスランブル+』。
俺が大好きな、戦闘機を使ったフライトシューティングゲーム、『エースコンバット』の3DS版だ。
因みに、俺が昨夜から徹夜してクリアしたゲームもエースコンバットで、タイトルは『エースコンバット・アサルト・ホライゾン』(Xbox360版)だ。
「おいキモオタ!どうした、図星だから言い返す事もねぇのk………あ、ヤベッ!」
嘲笑の渦を無視して黙々とボタンを操作する俺が面白くなかったのか、さらに言おうとした男子が突然笑うのを止め、それに連動して他の男子も静かになる。
ふと、画面に向けていた顔を上げると、奴等が静かになった理由が分かった。ドアから3人の女子生徒が入ってきたのだ。
先ず、腰辺りまでの長さを持つ黒髪をストレートに下ろした美少女、天野 沙那(あまの さな)。
他2人と共に『学園三大美少女』と呼ばれている。テニス部のエースだ。人当たりも良く、俺のような1人が好きな奴にでも話し掛けてくれる。実を言うと、彼女とは1年の時にひょんな事から知り合っており、2年で同じクラスになってからは、矢鱈と俺に構うようになり、知らない間に名前で呼ばれるようになった。
次は、銀髪に透き通った紫の瞳、クールな佇まい。そして何よりも人目を引く、グラビアアイドル顔負けの圧倒的スタイルの良さを誇る、白銀 奏(しろがね かなで)。
彼女は此処、2年F組の委員長で、学力は全国模試トップ5に入る程の秀才。この学校には入試首席で合格し、入学式で新入生代表をしていたのを今でも覚えている。正直な話、なんでこの学校に来たのか全然分からん。此処も偏差値は65と結構あるが、白銀なら偏差値70クラスの学校にも普通に行けただろうに………………
さて、最後になったが、艶のある黒髪をポニーテールに纏め、『大和撫子』という言葉を体現したような美少女は、雪倉 桜花(ゆきくら おうか)だ。
雪倉神社と言う所で巫女をしており、実は彼女とは、高校入学前からの知り合いだ。
知り合った経緯については…………まぁ、また機会があれば話そう。
まあ、何はともあれ、3人が来てくれたお陰で、喧しい嘲笑が止んだ訳なので、俺も清々しく、ゲームに集中出来る……………筈なのだが、そうは問屋が卸さない。
天野が小走りで、俺の席に近づいてきたのだ。
「おはよう、神影君!」
満面の笑みで話し掛けてくる天野。コレを無視する訳にはいかないので、俺は3DSを一旦閉じて天野に視線を合わせた。
「あ、ああ…………おはよう、天野」
俺がゲームに集中しようとしていたからか、天野は顔をズイッと近づけていたため、返事がしどろもどろになってしまう。
「今日も、何時ものゲームやってたの?本当に好きなんだね」
「まあ、な」
「それが好きなのは分かるけど目悪くしちゃうから、あんまりやり過ぎちゃ駄目だよ?」
「お、おう………肝に命じとくよ………」
「うん、よろしい!」
満足げにそう言って、天野は自分の席へと戻っていった。
因みに、俺の席は黒板向かって一番左で、後ろから2番目。対して天野はちょうど中央の最前列だ。此処まで態々、ご苦労様な事で…………
そうして、再び3DSを開いてゲームを再開しようとするのだが、ふと時計を見ると、時間は既に8時25分。予鈴が鳴るのも時間の問題だ。
これでは、大したミッションも出来そうにない。
「はぁ…………仕方無い、昼休みにでもやるか」
溜め息混じりにそう言って、俺は3DSの電源を切ってケースに入れると、サブバッグのポケットに押し込む。
その瞬間に予鈴が鳴り響き、廊下に居る生徒達が、バタバタと音を立てながら自分達の教室に戻っていった。
それからはゲームの代わりにスマホを取り出し、G○o○○eでエースコンバットの画像を眺める。
天野達が来る前にコレをすると、さっきの奴から『エロ画像見てんじゃねぇよ!』と言われるのだが、流石に3人が居る状態では、言おうにも言えないようだ。
「(やっぱ、ガルーダ1仕様のF-15Eはカッコいいなぁ……シュトリゴン隊仕様のSu-33や、黄色の13仕様のSu-37も捨てがたいが………いや、それを言うなら、メビウス1仕様のF-22だって………)」
内心でそう呟きながら画像を見つつ、帰ったらエースコンバットのオンラインをしようと考えている間に30分になり、本鈴が鳴り………………
「おはよう、皆。さあ、席に着いて。朝のHRを始めるわよ」
そんな声と共に、先程紹介した白銀と同じように、長い銀髪を持つ女性が教室に入ってきた。
彼女は、このクラスの担任である夢弓 シロナ(ゆめみ シロナ)先生だ。
この先生は、『学内で担任になってほしい先生ランキング』で1位と言う称号(?)を持つ先生で、外国人の血が混ざっており、それ故か美人な上にスタイルも抜群。さらに人柄の良さから、男女問わず生徒からの信頼も厚いと言う完璧教師だ。
つーか今思ったんだが、担任と言いクラスの女子生徒と言い、このクラスには美人が集まりすぎではないだろうか?
天野や雪倉、白銀や先生は勿論だが、このクラスに居る他の女子のレベルも、結構高い。
何か、誰かが仕組んだみたいで若干怖いんだが……………
そう考えていると、何時の間にか先生の話が始まっていた。
その内容は、やれ『今日はバレンタインデーだが、羽目を外しすぎないように』とか、『学年末テストが近いから、しっかり勉強するように』とかだ。
「さて、それではこれで、先生からの話は終わり…………あら?」
話を終えようとした先生だが、突然、先生の視線が、あるものを捉えた。ふと床を見ると、何と、不思議な模様が描かれていたのだ。
「(コイツは、もしかして…………魔法陣、か…………?)」
ファンタジー系のネット小説を読み漁った事がある俺は、そんな仮説を立てる。
だが、俺が知らない間に物好きな誰かが悪戯で描いた可能性も捨てきれない。取り敢えず、それに1回触ってみようと手を伸ばした、その時だ。魔方陣が行きなり光り出したのだ。
「ちょ、ちょっと!何なのよコレは!?」
「うわっ、眩しっ!?目が!目がァ!!」
「皆、落ち着いて!教室から出るのよ!」
パニックを起こすクラスメイト達をどうにか落ち着かせようと夢弓先生が声を上げ、教室のドアへ向かって駆け出そうとした時、魔方陣が一層強く光り、俺達は光の中へと飲み込まれてしまうのだった。