さて、ラリーを僚機にし、盗賊団--黒雲--に囚われた女達の救出に乗り出す事に決めた俺は、早速、ラリーを俺の僚機にするため、俺の能力の1つである『僚機勧誘』を使おうとしていた。
「それじゃあ、始めるぞ?」
右手をラリーの額につけて、俺はそう言った。
「ああ、何時でも良いよ」
ラリーの言葉に頷き、俺は能力を発動させる。
すると、様々な色を含んだオーラのようなものが、腕を伝ってラリーの額に向かっていく。そして、右手とラリーの額が触れている場所につくと、オーラのようなものは、そのままラリーの額に吸い込まれていった。
「…………ぐっ!?」
オーラのようなものが完全に消えると、ラリーは突然、頭を抱えて蹲る。
恐らく、『航空傭兵』と言う天職に関する情報や、戦闘機の纏い方や飛び方、今のラリーのレベルで使用出来る戦闘機などが、ラリーの脳に一気に流れ込んでいるのだろう。
蹲るラリーに、俺は慌てて話し掛けた。
「お、おい、ラリー!大丈夫か!?」
「はぁ、はぁ………ああ、大丈夫だよ………ちょっと、頭が痛くなっただけさ」
そう言って、ラリーはゆっくり立ち上がろうとしたのだが、やはりふらついている。
俺は無理にでも立とうとするラリーを制した。
「無理すんなよ、ラリー。今のお前は、頭の中での情報の処理が間に合ってない状態なんだからな。ちゃんと落ち着いてから立つんだ、良いな?」
そう言うと、ラリーは小さく頷き、そのまま地面に腰を下ろす。
未だ痛むらしく、表情は優れない。
だが、次第に痛みは無くなっていったようで、段々と表情が良くなっていき、数分後には普通に立てるようになっていた。
「良し、もう大丈夫だよ」
そう言って、ラリーはスッと立ち上がって伸びをした。うん、これなら大丈夫そうだ。
「了解。それじゃあ先ずは、シルヴィアさんに言っておかないとな」
そう言って、俺達は再びギルドへと入っていった。
ギルドに入ると、やはり先程とは空気が違っていた。
ギルドには酒場があるのだが、其所の雰囲気も、俺が登録しに来た時と比べると、どんよりしたものになっている。
「さて、シルヴィアさんは何処に……………ああ、居た居た」
ギルド内を軽く見回していると、隅っこで項垂れている銀髪シスターを見つけた。シルヴィアさんだ。
俺とラリーは互いに顔を合わせて頷くと、シルヴィアさんに歩み寄っていった。
「シルヴィアさん、ちょっと良いですか?」
「………はい」
俺が話し掛けると、シルヴィアさんはゆっくり顔を上げた。
俺とラリーが外で話している間に泣いていたのか、目は若干充血している。
「話があるんです、ちょっと来てもらえますか?」
「…………分かりました」
誰にも依頼を受けてもらえなかったのか、半ば投げ遣り気味に返事を返して立ち上がる。
シルヴィアさんを一旦ラリーに任せ、俺は受付カウンターに行き、エスリアさんに空き部屋を1つ貸してくれるように頼んだ。
最初は怪訝そうな表情をしていたエスリアさんだったが、事情を話すと、先ずギルド支部長を呼んできた。
改めて事情を話すと、支部長は奥の部屋を貸すと言ってくれた。エスリアさんに案内してもらい、ラリーとシルヴィアさんを伴って、部屋に入る。
そして、クレアさんを椅子に座らせ、俺はエスリアさんに、誰も部屋に近づけないように頼んだ。
そしてエスリアさんが部屋を出ると、俺とラリーは、シルヴィアさんと向かい合う形で椅子に座った。
「………それで、私に何かご用でしょうか……………?」
暗い表情を浮かべ、投げ遣り気味な態度で、シルヴィアさんがそう聞いてくる。どうやら誰にも依頼を受けてもらえず、自棄を起こしているようだ。
此処で変に言ったら話を拗らせてしまうので、俺は率直に言う。
「実は…………シルヴィアさんの依頼を、受けさせてほしいんです」
「はいはい、そうですか…………って、え?」
思いっきりいい加減な返事を返したシルヴィアさんだが、次の瞬間には、間の抜けた声で聞き返してきた。
「い、今……何て…………?」
「シルヴィアさんの依頼を受けさせてほしいと言ったんです」
そう言い直すと、シルヴィアさんはパァッと表情を明るくした。
「ほ、本当ですか!?」
声を張り上げ、身を乗り出して聞いてくるシルヴィアさん。
「はい、本当です」
「………………ッ!」
俺が答えると、彼女の両目から大粒の涙が溢れた。
「良かった…………依頼を、受けてくれる人が……居た…………ッ!」
嗚咽を漏らしながら、シルヴィアさんはそう言った。マジで追い詰められてたんだな、精神的に………
その後、俺達はシルヴィアさんが泣き止むのを待ち、黒雲についての詳しい情報を要求した。
彼女曰く、数は30~40人ぐらいで、捕らえた女達は、洞窟内に作った牢屋に閉じ込めているそうだ。
それと、昼間は村を襲いに行ったりしているので、助けるだけなら昼間、潰すのも含めるなら、連中が帰ってくる夜が狙い目だそうだ。
「…………と言ったところです」
「成る程…………分かりました、ありがとうございます」
そう言って立ち上がり、俺はラリーと一緒に部屋を出ようとする。
「あ、あの!」
「ん?」
ドアを開け、いざ出ようとしたところでシルヴィアさんに呼び止められる。ラリーを先に行かせ、俺は彼女の方を向いた。
「あの、えっと…………」
しどろもどろになっていたシルヴィアさんだが、一旦深呼吸して言った。
「依頼を受けてくれて、本当にありがとうございます!エレインや他の方々の事、よろしくお願いします!」
そう言って、シルヴィアさんは深々と頭を下げる。そんな彼女に、俺は敬礼して言った。
「了解。必ず連れて帰ってきます」
そう言って、今度こそ部屋を後にすると、エスリアさんに礼を言って、出口で待っていたラリーと合流する。
「さてと……それじゃ行くか、ラリー」
「ああ!」
そうしてギルドを出た俺達はルージュの町を出て例の山岳地帯へ向けて歩き出した。
「…………良し、もうこの辺りで良いだろ」
ルージュの町が見えなくなると、俺は歩みを止める。
「ラリー、ルージュの町から十分距離を取ったし、此処からは空を飛んで移動しよう」
「賛成。何時までも歩いていたら、夜までに着かないからね」
そう返してきたラリーに、一先ずステータスと、現時点で使える航空兵器を見せてもらった。
名前:ラリー・トヴァルカイン
種族:ヒューマン族
年齢:18歳
性別:男
称号:追いやられし者
天職:航空傭兵
レベル:29
体力:155
筋力:125
防御:130
魔力:500
魔耐:650
俊敏性:120
特殊能力:詠唱破棄、全属性適性、魔力感知、空中戦闘技能
ふむ、勇者基準だからよく分からんが、現地人のステータスは、大体こんな感じなのだろうか?
まぁ、取り敢えず魔力と魔耐が高いな。これで力を失ってる状態って言うんだから、もし完全に力を取り戻す事が出来たら、コイツの魔力や魔耐は、何れ程にまで跳ね上がるのだろうか?
まぁ、少なくともF組の連中が束になっても惨敗しそうだな。
多分だが、王都の魔術師団が相手でも、コイツが力を取り戻したら圧倒されそうだ。
等と考えながら、今度は使用出来る航空兵器を見せてもらう。
『戦闘機』
F-16C Fighting Falcon
Mig-21-93
Typhoon
F-14D Super Tomcat
F-15C Eagle
『攻撃機』
F-2A
F-117A Nighthawk
AV-8B HarrierⅡ plus
Su-25 Frogfoot
Su-34 Fullback
『多用途戦闘機』
F-4E
F/A-18F Super Hornet
『レシプロ機』
A6M5 零式艦上戦闘機52型
Bf 109 G-10
Spitfire Mk.ⅠXe
『攻撃ヘリ』
レベル不十分のため、使用不可
「うへぇ~…………」
ラリーのステータスと使用可能な機体を見せてもらった俺は、感嘆の声を漏らす。
レベルの高さやその他のステータスについては、この世界で生活した年月が桁違いな訳だから仕方無いが、問題は機体の方だ。俺より使用可能な機体が多い。
まぁ、ラリーの方が俺よりレベルが高いんだから、当然と言えば当然だが…………何だろう、何か納得いかねぇ………これが嫉妬と言うものなのか?
「え~っと………ミカゲ?」
「…………ん?」
ずっとラリーのステータスやリストとにらめっこしていた俺は、さっきから肩をポンポンと叩いていたラリーに気づかなかった。
「おお、悪いなラリー………んで、何だ?」
「いやいや、『何だ?』じゃないよ。どうだったの?僕のステータスは」
ラリーは、自分のステータスを気にしていたようだ。
「あ、ああ………そうだな、何と言うか…………」
そう言いかけて、俺は少し考える。
「(体力とか筋力とかは、俺がラリーと同じレベルになったら恐らく追い越すとは思うが、あのチート染みた魔力と魔耐はなぁ………)」
「………?」
黙り込んでいる俺を見て、ラリーは不思議そうに首を傾げている。
取り敢えず、それらしい事を言っておくか。
「うん、そうだな………良いと思うぜ?レベルも俺の倍以上あるし、前に魔力を9割以上失ったって言ってたけど、それでも魔力は500、魔耐は650もあるんだ、十分やっていけると思う」
「そう?それなら良かったよ………じゃあ、戦闘機の方はどうなの?」
この質問に対する答えは決まっている。
「使える機体多くて羨まし過ぎるから、取り敢えず1発殴らせろ」
「コレだけ即答!?と言うか殴られるなんて絶対嫌だからね!?」
「大丈夫だ、問題無い。本気でやるから」
「いやいや!それ全然大丈夫じゃないじゃないかァァァアアアアアッ!!」
盗賊討伐に乗り出すまでに、こんなやり取りを交わしていたのは2人だけの秘密だ。
それから数分後、落ち着きを取り戻した俺達は、改めて盗賊討伐&捕らえられた人達の救出に乗り出そうとしていた。
「さて、それじゃあ行くぞ、盗賊討伐&捕らえられた人達の救出に」
「了解!」
そうして、俺達はリストを開き、『攻撃機』の欄からハリアーを選び、展開する。
2人共眩い光に包まれ、その光が消えると、展開されたハリアーが装着されていた。
若干斜めになっている主翼が背中から生えており、脛に水平尾翼、腰に垂直尾翼が付けられている。
そして、ハリアーの大きな特徴である4つのエンジンノズルが、腰に2つずつあった。
「(成る程、ハリアーは展開したらこうなるのか………そういやガンポッドが付けられてないな、後から展開する形なのかな………)」
纏っているハリアーを眺めながら、俺はそんな事を考える。隣に居るラリーに視線を移すと…………
「うわぁ……凄い…………」
信じられないと言わんばかりの表情で、自分の体のあちこちを見ていた。
俺は、そんなラリーを見ながら離陸体勢に入る。
主翼が地面と水平になるように角度を変えると、腰のエンジンノズルも下を向き、垂直離陸の準備に入る。
「さて………おい、ラリー。感動するのは分かるが、そろそろ行くぞ」
「あ、うん。了解」
俺が言うと、ラリーも俺と同じように離陸の準備をする。
てっきり、『やり方が分からない』とか言われるんじゃないかと思っていたが、そんな事にはならなかった。
普通に主翼が地面と水平になるように角度を変えているし、エンジンノズルも下を向いている。
多分だが、『僚機勧誘』で俺の能力をコイツにコピーした時、各機体の扱い方とかも、一気に叩き込まれたんだろうな。
「(なら、武装の展開とかの説明も必要無さそうだ)」
内心そう呟いた俺は、ラリーに話し掛ける。
「離陸準備は出来てるな?」
そう言うと、ラリーは此方を向いて、力強く頷く。
「ああ、準備万端。何時でも行けるよ、ミカゲ!」
そう言うラリーに頷くと、俺はエンジンノズルに意識を強く向ける。
甲高い音が大きくなり、それによって強さを増すジェット噴射によって砂埃が巻き上がる。
「良し………離陸!」
そう叫び、俺はゆっくりと離陸する。ラリーも少し遅れて離陸し、俺の横に並んだ。
そして、主翼とノズルを地面と水平になるように向けて飛行モードに移し、俺達は、黒雲のアジトである山岳地帯へ向けてかっ飛ばすのであった。