さてさて、盗賊団に捕まっていた天野達を救出し、感動の再会に水を差してきたローブの男を葬り去った俺は、アリさんと天野達4人、計5人と共に、ルージュの町へと歩みを進めていた。
「いやぁ~、やっと終わりましたよ」
「お疲れ、ミー君。飛び回ったり戦ったりで、大変だったね」
大きく伸びをしながら言う俺を、アリさんが労ってくれる。
「ところで、君はさっきの戦いで少し怪我をしたと思うんだけど……………あれはもう良いのかい?何なら、家で手当てするよ?」
「ああ、大丈夫ですよ。もう治りましたから」
俺はそう言うと、傷はおろか、その痕すら残っていない腕や足を見せた。
「おお、コレは凄いな………」
「へへっ………特殊能力の1つ、"高速回復"のお陰ですね」
感心した様子で言うアリさんに、俺はそう言った。
「破けた服はどうなんだい?」
「いや、服は直りませんでしたね…………まあ、ラリーが直せるだろうけど、今頼むのはなぁ………」
「ああ。確か彼は、君の体を修理していたね」
アリさんが言うと、俺は頷いた。
「そうなんですよ。彼奴、人に
俺はそう言った。
多分だが、かなりの集中力が必要だろうし、魔力だって、かなり消費するだろう。
彼奴の魔力は底無し沼レベルだが、だからと言って無理をさせる訳にはいかない。
服の修理は、俺の体の修理が終わって、彼奴も落ち着きを取り戻してからにしても遅くはないだろう。
それに替えの服もあるから、少なくとも着替えには困らないし。
「おっ、そうこうしてる間に着いたよ」
アリさんはそう言って、前方に見える門を指差した。
炬の炎に照らされて、門番が1人立っている。
そして近づいてくる俺達に気づいたのか、その門番は手を振った。
俺達は足を速めて、その門番に近づいた。
「よお、お帰りミカゲ。それから支部長さんも」
「やあ、マーキス。ただいま」
気さくな笑みを浮かべて声を掛けてくれたマーキスさんに、アリさんが挨拶を返す。
「ん?そちらの美人さん達はどうしたんだ?」
「ああ、コイツ等は…………その………」
俺が返事に困っていると、マーキスさんはハッとした表情を浮かべた。
「もしかしてミカゲ、お前まぁ~たやらかしたのか?ドンだけ女増やせば気が済むんだ?もう既に7人も恋人居るだろうが」
ちょっ!アンタ何て事……………!
『『な、7人も恋人が!?』』
あ~あ、反応しやがった。
くそぉ~、マーキスさんめ、バラしやがって………………明日、この町名物の高級菓子買わせてやる!
「まあ、ミー君がやらかしたのは否定しないけどね」
「おいぃ!?アンタ否定しろよ!!」
苦笑混じりに言うアリさんに、俺は盛大にツッコミを入れた。
そんな俺に、アリさんは『どうどう』をしてから口を開いた。
「彼女等はね、異世界の勇者なんだよ」
「ふ~ん………………って、はぁ!?」
おお、コレが乗りツッコミと言うヤツか?
「お、おいミカゲ!今直ぐコイツ等から離れろ!」
そう言って、マーキスさんは俺の首根っこを掴んで引っ張ると、町の方へと投げ入れる。
「テメェ等、今度は何しに来やがった!?」
そう言って、4人に槍を向けるマーキスさん。
「ちょ、ちょっと待ってください!私達は、古代君の友人で…………」
「その"友人"がミカゲを殺したんだろうが!」
ヤバい、コレじゃ町の人が起きてしまう。
「おいマーキスさん!ストップ!コイツ等は敵じゃないから!槍下げて!」
俺は、今にも4人に槍を突き刺しそうなマーキスさんを羽交い締めにした。
勿論、ちゃんと加減して。
「み、ミカゲ!?なんで止めるんだよ?コイツ等は…………」
「俺を殺したのはコイツ等じゃないんですってば!良いから槍下げて!」
「ミー君の言う通りだよ、マーキス。取り敢えず槍を下げてくれ。彼女等は一応、客人だからね」
「………分かった」
マーキスさんは、取り敢えず槍を下げてくれた。
「ありがとう、マーキス」
そう言って、アリさんは笑みを浮かべた。
「ああ、いや………」
そう言って、マーキスは4人に向き直った。
「…………いきなり悪かったな」
そう言って、マーキスさんは頭を下げた。
「い、いえ………」
先生も返事を返すが、何と無く気まずそうだ。
「詫びと言っちゃ何だが、取り敢えず今回の通行料は取らねぇよ」
マーキスさんは、頭を上げてそう言った。
「それからミカゲ。この4人が町に居る間は、出来る限り傍に居てやれ。今のルージュ住人が王都の連中をどう思ってるのかは……………お前も知ってるだろ?」
「ええ、分かってますよ」
俺はそう答えると、アリさん達と共にルージュへと入っていった。
「(はぁ、不安だなぁ………明日、大丈夫かな……………?)」
先頭をアリさんと交代した俺は、内心そう呟いていた。
ルージュの人達も、この4人が俺を殺した奴ではないって事を話せば、分かってくれるだろうが………………やはり、少し不安だ。
「何より、一番警戒すべきなのが、ラリーなんだよな…………」
俺はそう呟いた。
何せ彼奴は、王都の住人や、王族や貴族、騎士団や勇者を心底嫌ってるからな。
この4人も勇者だし、ラリーもそれを知ってるだろうから、視界に捉えるや否やつまみ出そうとしても不思議ではない。
「まあ、ラリー君は勇者達が大嫌いだけど、君が一言言えば、彼だって何もしないと思うよ?」
「だと良いんですがねぇ…………」
彼奴は基本的に、俺の言う事は素直に聞いてくれる。
だが、今回は相手が相手だからな。気を付けた方が良さそうだ。
「さて、着いたよ。此処が私の家だ」
アリさんはそう言うが、天野達は夜の暗さもあって、見えにくいようだ。
俺は"夜間視力向上"を使っているので、家の形は普通に見える。
それにしても、2階建てだし横にも広いな……………
「アリさん、誰かと住んでるんですか?だとしたら、その人にも話を通した方が……………」
「いや、大丈夫。独り暮らしだからね」
ふと思った疑問を投げ掛けると、アリさんは即答した。
「ああ、そうですか……………」
何か申し訳無い気分になり、俺はそれ以上言わなかった。
そうしていると、何時の間にかアリさんは家の鍵を開けていた。
「さあ、入りなよ」
アリさんがそう言うと、4人は中に入っていった。
「いやぁ~、今夜は女子会だね!」
「いや、ちょっとアリさん。俺、男だからね?」
楽しそうに言うアリさんに、俺はそう言う。
「あ、そうだっけ?うっかり"ミー君"って渾名の女の子かと思っちゃっt……「んな訳ねぇだろ!」……あべしっ!?」
取り敢えず、彼女に拳骨喰らわせた俺は悪くない。
悪くないったら悪くないのだ。
さて、全員が家に入ると、先程の戦闘もあったので、4人は風呂に入る事になった。
それにしても、一部の金持ちや宿にしか無いと言われている風呂を完備しているとは……………やっぱり支部長やってるだけあって、高給貰ってるんだな。
「それじゃあ支部長さん。お風呂、お借りします」
「うん、温まっておいで。それと、着替えは後で持っていくから」
ソファーに腰掛けたアリさんがそう言った。
「ミー君。今の君が女だからって、覗いちゃ駄目だからね?」
「覗きませんよ、何言ってんだアンタは?」
からかうような笑みを浮かべて言うアリさんに、俺はそう返した。
『『……………………』』
それを聞いていた4人は、顔を赤くしながら脱衣場へと入っていき、ドアを閉めた。
てか、4人纏めて入れる程広いんだな、此処の風呂は……………
「はぁ……………アリさん、アンタのせいで何か気まずくなっちまったじゃないッスか」
「ゴメンゴメン。何か、からかいたくなっちゃってね」
軽く笑って、アリさんはそう言った。
「まあ良いや…………………ところでアリさん、この町に着くまで、彼奴等と何話してたんですか?」
「ああ、それはね……………」
そして俺は、風呂に入った4人が出てくるまでの間、アリさんから、此処に来るまで白銀達と何の話をしていたのかを聞くのであった。
それから数十分後、白銀達が出てきたのだが……………
「お前等……………何その格好?」
出てきた彼女等を見ると開口一番、俺はそう言った。
今の彼女等の姿は、ベビードールにカーディガンを羽織っただけと言う、中々に扇情的な姿をしている。
「そ、そんなに………見ないで…………恥ずかしいわ………」
顔を真っ赤にした白銀がそう言った。
先生も恥ずかしそうに縮こまっているが、天野と雪倉は、やはり恥ずかしそうにしているが、白銀や先生のように、無理に隠そうとはしていなかった。
耐性でも出来ているのだろうか?
まあ、それはそれとして……………
「アリさん、もう少しマトモなの着せてやりましょうよ」
「う~ん、そう言われてもねぇ……………コレが此方側の世界での一般的な寝間着だからね、仕方無いよ」
「…………………」
ツッコミを入れてやりたいが、よく考えたら、ゾーイやアドリアもネグリジェ姿で添い寝してきたから何とも言えなかった。
それからアリさん、俺の順番に風呂に入った。
アリさんは4人と同じようなベビードールだが、流石に着る気にならなかった俺は、ソブリナ達とのデートで買った、黒い半袖Tシャツと紫のズボンを寝間着にした。
この6人の中では、一番マトモな服装だ。
「ちぇっ、ミー君のベビードール姿見たかったのになぁ………」
「誰得ですかそれは?」
ブー垂れるアリさんに、俺はそう言った。
そんなこんなで俺達は、天野と雪倉、白銀と先生、そしてアリさんと俺の3つのグループに分かれて部屋に入り、寝る事にした。
アリさんと挨拶を交わし、ベッドに潜って目を瞑る。
「(明日、下手したら昼過ぎまで起きないかもしれねぇな……………いや、もう既に"明日"になってるか)」
内心そう呟きながら、俺は意識を手放すのだった。
「どうしよう………どうすれば良いの…………?」
ルームメイトになったシロナが寝息を立てている中、奏は自分のベッドに腰掛けて頭を抱えていた。
彼女の膝には、アリステラから渡された請求書が置かれている。
「古代君達に依頼した時は、『覚悟は出来ています』なんて啖呵切ったけど…………こんな額、今直ぐには払えないし、他の皆に頼んで出してもらっても、絶対届かないわよ……………なんで、詳しい金額を聞かなかったのよ、私は…………ッ!」
今にも髪が抜けそうな強さで、奏は自分の前髪を掴んだ。
そもそも、どうして今の奏が報酬を払えないのか、其処から説明させていただこう。
それは、王都復興作業中のある日の事だった。
F組勇者や騎士団、魔術師団のメンバー全員が、謁見の間に集められていた。
「皆様、突然お呼びしてすみません。実は、大事な話があるのです」
集められた彼等の前に、エリージュ王国王妃、ロクサーヌ・フォン・エルダントと、娘のユミールが真剣な面持ちで立っていた。
「先日から王都復興へ向けて、国内にある町や村に、資材や人員の提供や、義援金を頼んでいたのですが……………遂に、どの町や村からも、それらを得る事は出来ませんでした」
ロクサーヌがそう言うと、勇者達の間にざわめきが広がる。
「あの、王妃様。それはつまり、此処が他の町や村から見捨てられたと言う事ですか?」
「ええ、その通りです。加えて周辺国家からも、非難の手紙が寄せられています」
ロクサーヌはそう言った。
「それに、先日ルージュへ向かった、ブルーム・ド・デシールとドロワット・デュノイスが率いる騎士団が、無惨な姿で、此処に投げ込まれました。天井の大穴は、それによるものです」
そう言われて、一行は天井を見上げる。
彼女の言う通り、天井には大穴が開いていた。
「そんな…………………そんなの酷すぎる!どうして、他の町や村の人は、皆で助け合おうとしないんだ!古代が殺されたからって、どの町も村も、王都にキツく当たりすぎだ!」
怒りに震えた様子で、正義が叫ぶ。
だが、叫んだところでどうにもならない。
「やっぱり、富永君達が古代君を殺したのがマズかったんじゃ………?」
「それに私達………古代君に、何もしてあげてないのに…………」
「虐められてるのを見て見ぬフリしたのに助けてもらうなんて………そもそも虫が良すぎたんだよ………」
女子生徒から、そんな声が上がる。
謁見の間はどんよりした雰囲気に包まれるが、ロクサーヌが話を続けた。
「王都復興には、先程申しましたように、資材や人員は勿論、その資金も必要です。ですが、他の町や村からの援助が無い今、私達自身で工面しなければなりません」
それはつまり、自分達でお金を出さなければならない事を意味していた。
「ですので皆さん、どうか……………私達に、手を貸してください」
ロクサーヌはそう言うと、ユミールと共に深々と頭を下げる。
王族に頭を下げられては断れなくなり、彼等は所持金の殆んどを、その義援金に充てた。
その結果、今度は神影達ガルム隊への報酬が払えなくなると言う、新たな問題が発生したのだ。
「兎に角、報酬の支払いは少し待ってもらうとして……………先ずは、皆に伝えないと…………でも、やっぱり言いにくいわね………」
そう決意を固めた奏だが、其処で睡魔に襲われ、そのまま倒れ込むように眠ってしまった。
結局、この6人はその日、誰1人として目を覚まさず、彼女等が起きたのは、さらに次の日の朝だった。
もうマジ無理、バイト探そう。(唐突に)