「ええっ!?それじゃあ天野さん達、盗賊に捕まったの!?」
「う、うん…………」
神影やラリーが、降りてくるゾーイ達を出迎えている間、F組生徒達は、沙那達が昨日帰ってこなかった理由を聞いていた。
盗賊に捕まったと言う話に驚いて聞き返す女子生徒の1人、相川春菜に、沙那は、ばつが悪そうに頷いた。
「天野さん達って、女子の中ではトップレベルで強いから、負けるとは思わないんだけど……………盗賊、そんなに多かったの?」
もう1人の女子生徒、赤崎涼子が訊ねる。
「まあ、多かったのもあるんだけど………私が足を引っ張ったと言うのが大きいかな…………」
沙那はそう言って、水浴びを終えて洞窟から出ようとした時の事を話した。
「成る程…………つまり洞窟の外から聞こえた悲鳴は、盗賊が天野さん達を誘き出すための罠だったのね?」
「ええ。それで真っ先に出た沙那が捕まって、人質にされたのよ」
涼子の言葉に、奏が頷く。
「それから、奏さんが相手に隙を作ってくれたので、何とか応戦したのですが…………やはり沙那さんを人質にされている上に、私達には、人を殺す覚悟がありませんでした。それに、沙那さんを人質にした男が仲間を呼んだので…………」
「そう…………まあ何にせよ、皆が無事で良かったわ」
目を伏せる桜花に、涼子はそう言った。
「ええ、それはね…………」
シロナがそう言って、アリステラと神影の方を向いた。
「どうやら、お呼びのようだね………」
シロナからの視線を感じ取ったアリステラは、ラリー達と談笑している神影に声を掛けた。
「ミー君、ちょっと良いかな?」
そう言われた神影は、アリステラの方を向く。
「君の先生が、私達をお呼びのようだ」
「了解ッス」
そう言うと、神影はアリステラと共にシロナ達の元へと歩み寄った。
「何か用かな?」
「ええ」
アリステラの問いに頷き、シロナは生徒達に言った。
「この2人が、私達を助けてくれたの」
そう言って、シロナは当時の事を語ろうとする。
だが其処で、涼子が待ったを掛けた。
「先生、その2人は…………?」
「ああ、それはね………」
シロナはそう言って、2人に視線を向ける。
「………はいはい」
そう言って、先ずはアリステラが名乗った。
「やあ、諸君。私はアリステラ・リューズ、ルージュ冒険者ギルドで支部長をしている者だ」
アリステラがそう言うと、勇者一行や王都住人達は表情を強張らせた。
「あらら、随分と恐がられているようだね…………」
苦笑を浮かべ、アリステラは頭を軽く掻いた。
「ああ、其処まで怯えなくても良いよ。別に私は、君達に罵詈雑言を叩きつけに来た訳じゃないからね」
アリステラはそう言った。
「さて、それじゃあ次はこの女の子だけど……………」
そう言いかけて、アリステラは神影の耳に顔を寄せた。
「ミー君、どうする?誤魔化しておくかい?」
そう聞かれた神影は、首を横に振った。
「いや。誤魔化そうとしても、既に天野達にはバレてますからね、意味無いですよ」
そう言って、神影はクラスメイト達の前に歩み出た。
「えー、久し振りだな。お前等」
神影はそう言うが、沙那達4人を除いたF組生徒達は、首を傾げるばかりだ。
「こんな姿だから分からなくて当たり前だが……………俺は、古代神影だ」
『『『『『『『『『『………………はあ?』』』』』』』』』』
その言葉に、ガルム隊メンバーや沙那達4人、そしてアリステラを除いた全員の、間の抜けた声が重なる。
そして、全員が神影を凝視した。
「いや、それは無いだろ」
「うん、流石に有り得ないわ」
「本当だったら嬉しいけど、コレは流石に無理があるかなぁ……………」
「てか、あの古代がこんな美人になる訳がねぇ」
「そもそも彼奴は死んだんだぜ?それがどうやったらこんな美人になって戻ってくるんだよ?」
F組生徒達は、口々にそう言った。
「君が誰だか知らないけど、死んだ人間をネタにして遊ぶのは止めてもらえないか?クラスメイトは、古代が死んだ事で内心傷ついているんだ」
終いには正義が出てくる。
「"傷ついてる"、ねぇ………………都合が良い時だけ相棒に頼ってただけの癖に、何仲間面してるんだか」
ラリーが嘲るようにそう言った。
「まあまあ、ラリー君。気持ちは分かるが落ち着くんだ」
アリステラが宥めた。
「まあ、口で言っても信じてもらえないなら、実際に見てもらった方が早そうだね……………ミー君」
「はい?」
急に話し掛けられた事に内心戸惑いながら、神影が返事を返した。
「君のステータスを見せてもらえないかな?」
「ああ、良いですよ」
そう言うと、神影は自分のステータスを、立体映像として右手に映し出した。
「さて……………では皆、目を瞑ってごらん。今から私が"視覚共有"を使って、君達全員に映像を送るから」
そう言われた正義達は、取り敢えず目を瞑った。
全員が目を瞑った事を確認したアリステラは、復活時に見せられたものより格段に上がっているステータスに内心驚きながら、全員に映像を送った。
神影のステータスは、以下の通りだ。
名前:古代 神影
種族:Unknown
性別:女
年齢:18歳
称号:異世界人、
天職:航空傭兵
レベル:420
体力:212500
筋力:206800
防御:208400
魔力:166000
魔耐:170000
俊敏性:265000
特殊能力:言語理解、僚機勧誘、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化、錬成『アレスティング・ワイヤー』、錬成『カタパルト』、拡声、アルコール耐性、気配察知、馬鹿力、
『『『『『『『『『『………………………』』』』』』』』』』
「(おっ、盗賊共全滅させたのもあって、ステータスもかなり上がったな。称号や特殊能力も増えたし……………てか、"成長速度向上(極)"って、コレ今更じゃね?俺スッゲー前から急成長遂げてるんですけど?)」
「いやぁ、流石はミー君。特殊能力もあってか、凄い成長速度だね」
「まあ相棒って、こう言う奴ですからね。急成長してるのは今に始まった事でもないですよ」
「ミカゲ様、相変わらず凄いです!」
「こりゃ、ルージュの連中が知ったら驚くだろうな」
「しかも、このステータスはノーマルでのものだからね。
「はわわわ………ミカゲさん、やっぱり凄いですぅ……」
自分のステータスに感心しつつ、今更な特殊能力に内心ツッコミを入れている神影や、普段から神影の強さを目にしている他のガルム隊メンバーやアリステラとは違い、F組勇者達や王都住人は唖然としていた。
「お、おい…………コレ、本当に、彼処の女のステータスなんだよな?」
「いや、考えられねぇよ」
「い、いや。こんなの嘘だ!偽装か何かの特殊能力を使ったに決まってる!」
「ちょ、ちょっと!レベル420って何コレ!?こんなステータス1回も見た事無いわよ!?」
「其々のステータス値も、桁が全部十万に達してる!」
「それに見てよ、この称号の数!幾つあるのよ!?」
戦慄する男子達の傍では、女子生徒達がはしゃいでいた。
「皆、ちょっと待って!」
其処で、沙那からの言葉が飛ぶ。
「ステータスが凄いのは私も同感だけど……………でも、その前に見るべき欄があるよね?」
そう言われてハッとした生徒達は、"名前"の欄に目を通した。
「古代………神影…………」
「本当だ………古代君だ…………」
「"異世界人"の称号も、"航空傭兵"の天職も…………」
そうして、女子生徒達の視線が神影に注がれる。
「……本当に、古代………なのよね……………?」
「ああ。今はこうして女になってるが、正真正銘、古代神影だよ」
おずおずと訊ねてきた涼子に、神影は頷いた。
「…………ッ!良かった………」
そう言って、涼子はその場に座り込む。
「お、おい。赤崎?」
そんな涼子に、神影が戸惑いながら声を掛ける。
「アンタが……ッ……生きてた…………ッ!」
「……………まあ、正確には"生き返った"んだけどな」
「どっちでも、良いわよ………馬鹿……」
そう言いながら、涼子は顔を上げる。
その両目は涙で溢れていたが、表情は笑っていた。
それから女子生徒達は、神影が生き返った事への嬉しさで泣き崩れたり、激情に任せて抱きつこうとしてゾーイ達に止められたり、暫くその場は混沌とした状態になるのであった。
さてさて、赤崎や他の女子達が落ち着いたのもあり、俺は生き返った経緯を話していた。
「………………とまあ、こんな事があって、こうして生き返ったって訳なんだよ」
俺が話を終えると、皆は唖然としていた。
死後の世界でゲームの中の登場人物に会って、しかも、それが男だと思ってたら実は女で、ソイツの体を借りて生き返ると言うものだ。
あまりにも非現実的な話だが、そもそも異世界に召喚されると言う事自体が非現実的な事なので、皆は普通に信じてくれた。
「それじゃあ、古代君の元々の体はどうなってるの?」
相川が訊ねてきた。
「ああ、コイツに修理を頼んでてな。今はルージュに保管してるよ」
そう言って、ラリーの肩を軽く叩いた。
「それでラリー、俺の体はどうなってる?」
「もう直ぐだね。不眠不休でやれば1日と少しで終わるよ」
「いや、ちゃんと休めよ。それでお前が体壊したら本末転倒だろうが」
俺はそう言った。
「相棒、早く元の体に戻りたくないのかい?」
「そうじゃねぇよ、早く戻りたいさ。だがな、俺が元の体に戻るのが遅れる事より、俺のためにお前が体壊すのが嫌だって言ってんだよ。俺の心配してくれるのはありがたいが、先ずはお前自身の体の事を考えろ」
「……………ッ!」
そう言うと、ラリーは顔を真っ赤に染めてしまった。
「(あ~あ、またやっちまったな…………)」
しかも、よりにもよってクラスメイトの前って…………はぁ、どんな反応されるのやら…………………
「うわっ、台詞が超イケメンだ」
「ねえ、見て!金髪の人が赤くなってるよ!」
「TSバージョンの古代君と金髪魔術師のイケナイ関係……………ヤバい、コレはメモしないと!」
「いや、いっそ此処で書いて売れば良いんだよ!」
「成る程、同人誌in異世界ってヤツだね!」
………………あれ?意外と好評だ。
てか、このクラスにも腐女子って居たんだな。
このクラスの女子って皆かなりレベル高いから、そう言うのって居ないと思ってたぜ。
"人は見かけによらない"ってのは、正にこの事だな。
「ねえ、皆。それよりも!」
なんて考えていると、天野が声を上げる。
すると、キャイキャイはしゃいでた女子達が一気に静まり返り、俺の目の前に並び始めた。
しかも、その中には先生の姿もある。
「………えっ、ちょ…………?」
クラスの女性陣全員に見られると言う状況に戸惑い、俺はラリー達と顔を見合わせる。
コイツ等、一体何するつもりなんだ………………?
まさか、ルージュの人達みたいに『お帰りなさい』って言ってくるとか?いや、流石にそんな都合の良い話は無いだろう。
だが、だからと言って俺を非難する……………と言う訳でもないだろう。
「(それなら、コイツ等はマジで何する気なんだ?俺、何か変な事でもやらかしたかな…………?)」
なんて考えていると……………
『『『『『『『『『『ごめんなさい!』』』』』』』』』』
「…………………え?」
急に女子達が頭を下げて謝ってきた!?
「ちょちょちょっ、いきなり何だよ?なんで謝るんだ?つか、先ず頭上げろって。色々気まずいから!」
王都住人やF組男子、はたまたガルム隊メンバーやアリさんがポカンとしてる中、俺は必死になって彼女等に頭を上げさせるのだった。
それから暫くして、取り敢えず頭を上げさせた俺は、いきなり謝ってきた理由を説明してもらった。
どうやら彼女等は、この世界に召喚される前から男子達に嫌がらせをされていた俺に何もしなかった事を悔いているらしい。
それと、富永一味からのリンチや、先日の王都での戦いで、富永一味や中宮、そして元浜の7人が俺を殺すのを止められなかった事への謝罪も含まれていた。
俺としては、彼奴等や他の男子から嫌がらせを受けている中でも普通に接してくれていただけで十分な救いになっているから、その辺りについては別に良かったのだが、それでも虐めを見て見ぬフリしていた事には変わりない、との事だ。
「結構前から、王都での私達の立場が悪くなったの。何度も陰口叩かれたし、子供から石を投げられる事もあったわ。おまけに、他の町……………特に、古代君達と交流がある所からは、町に入れてもらう事も出来なくなったの」
「それに、ルージュとか、他の町や村の人からの抗議文が届いたりしたのよ。『よくも俺達の家族であるミカゲを殺してくれたな!』って………『恩人を殺すようなお前等なんて勇者じゃない!ただのクズだ!!』って…………そう言われたわ………」
「ま、マジですか…………」
ルージュの人達、コイツ等に抗議文なんて送ってたんだな。
まあ、コレについて言及する気は無いが………………中々大変な目に遭ってたんだな、コイツ等も。
「そ、それでね……?」
其処で、天野が再び口を開いた。
「私達、気づいたんだ」
「……………何に?」
「それは……………」
少し視線をさ迷わせてから、天野は言った。
「私達が、神影君を…………都合の良い存在として見ていたって事、なの……………」
『『『『『…………………』』』』』
その言葉に、俺等ガルム隊メンバーやアリさんが言葉を失う。
「男子から嫌がらせを受けてるのに、何もしないで………その癖自分達がピンチになったら、頼って……………そんな私達が、情けなくて……………!」
「…………………」
天野の表情が歪む。
その表情には、悔しさやら怒りやら、そんな感情が含まれていた。
他の女子達も、そんな表情を浮かべている。
《勇者達も、案外考えてるモンだね》
《ああ、そうみたいだな》
僚機念話で話し掛けてきたラリーにそう答え、俺は頬を掻いた。
ラリーに相談された時とは、また話の内容が違うからな。
さて、どう答えたものか……………
「古代君………」
「はい?」
すると、今度は先生が前に出てきた。
「私からも、謝らせてほしいの」
そう言うと、先生は深々と頭を下げた。
「本当に、ごめんなさい……………教師なのに、貴方を守ってあげられなくて…………………それにあの時、私は白銀さん共々、貴方に命を救ってもらったのに……………貴方を、見殺しにして………」
「…………………」
何と言うか、こうも大勢から謝られると、居たたまれない気持ちになる。
しかも先生から謝られているんだから、尚更だ。
勇者嫌いなラリーも、コレばっかりは居心地が悪そうにしていた。
「勿論、こんな謝罪程度で許してもらおうなんて思っていないわ。此処で貴方が、私を責め立てると言うのなら……………全部、受け入れるつもりよ……………満足するまで、言ってちょうだい」
先生にそう言われ、俺は思わずたじろいだ。
まあ、別に不平不満をぶつけてしまう事自体は簡単だ。
富永一味からリンチを受けた際、助けが来る事を期待してた訳ではないが、その場に居た連中……………女子を含めてクラスの連中には見て見ぬフリされていたのは確かだから、それを責め立てても良いだろうし、ラリーにやらせるとしたら、容赦無く色々と言いそうだ。
だが…………………
「(そう言うのって、性に合わねぇんだよなぁ……………)」
コレが盗賊とか、俺が心底嫌ってる奴が相手なら話は違ってくるとは思うが………………少なくとも俺には、不要なまでに相手を追い詰める趣味は無いし、人にやらせると言う卑怯なやり方だってしたくない。
ふと、ラリーの方に目を向ける。
「………………………」
ラリーは何も言わず、ただ俺を見ていた。
その視線は、『やりたいようにやれば良い』と語っていた。
同時に、俺がどうするつもりなのかも分かっているように見える。
「先生、頭を上げてください」
そう言うと、先生はゆっくりと頭を上げる。
「俺は、先生を責め立てるつもりはありません。もう過ぎた事ですし、今更責め立てても、意味は無いですよ」
それに彼女等には、後でドン底に突き落とすような
「だから、もう気にするのは止めてください……………他の女子もな。男子から嫌がらせ受けてる俺と仲良くしてくれただけでも、俺としては結構助かってたからな」
俺はそう言って、話を終わらせた。
「君ならそう言うと思ってたよ、相棒」
そんなこんなで話を終えた後、ラリーは俺にそう言った。
「やれやれ、ミカゲは寛大なのか、ただお人好しなだけなのか、全く分からねぇな」
苦笑を浮かべながら、ギャノンさんが言葉を続ける。
「まあ、悪になりきれないと言うのが、ミカゲ君だからね……………私は好きだよ?こう言うの」
グランさんが言った。
「そう言えば、ミカゲに嫌がらせしてたのは男子だけだって話だったものね」
「ああ、そうだよ。エメル」
そうやって話をしていた時だった。
「ミー君、ミー君」
天野達4人を伴ったアリさんが話し掛けてきた。
「彼女等の話も一段落したし……………そろそろ、
「……………ああ、確かにそうですね」
俺はそう言うと、未だに顔を赤くしているラリーを落ち着かせ、それから声を掛けようとした、その時だった。
「ところで、古代達が此処に来たのって、天野さん達を送り届けるのとアンタが生き返った事を知らせるため?」
不意に、赤崎が訊ねてきた。
「いや、それだけじゃない。実は、後1つあるんだg……「待って」………何だ?」
突然、白銀が口を挟んできた。
「後は、私が言うわ」
「……………そうか、分かった」
そう言って俺は引き下がり、白銀とバトンタッチした。
「今日、こうやってガルムの人達や支部長さんに来てもらった、本当の理由はね…………」
そう言いかけて、白銀は言葉を詰まらせる。
それから暫くの沈黙の後、再び口を開くのだった。
「この前、古代君達に持ち掛けた依頼の、報酬の話をするためなの」