航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第149話~決着と、魔人族の動き~

此処は、エリージュ王国上空10000フィートの世界。

王都を荒らし回った後でも、神影とギムレーの熾烈な空中戦(ドッグファイト)は、相変わらず続いていた。

ミサイルや機銃弾が高速で飛び交うが、それらは全て避けられて地面に吸い込まれていき、地面に着弾した機銃弾は弾痕を刻み、同じく地面に着弾したミサイルは、爆発して地面を焼き払うと共に、砂埃を巻き上げる。

両者共に手加減せず、出し惜しみ一切無し。つまり、本気の戦いだった。

 

「Fox2!Fox2!」

「Drop flares!(フレア放出!)」

 

ギムレーが発射した2発のQAAMを、神影はエルロンロールやシザーズを繰り出しながらのフレア放出によって避けようとする。

すると、まるで花火のように、フレアが空に撒き散らされる。

 

少し高めの誘導性を持つQAAMだが、全方位に撒き散らされたフレアを全て避ける事は出来ない。

神影を追おうとするが、2発共フレアに当たって誤爆する。

 

「チッ………まさか、あんなにフレアをぶちまけるとはな…………ッ!」

 

2発共当たらなかった事に舌打ちをするギムレーだが、その隙に神影に背後を取られる。

そして、頭の中でロックオンアラートが鳴り響くと、直ぐにブレイクしてロックオンから逃れようとする。

だが、神影がピッタリと背後についているために、ロックオンアラートは消えない。

 

「Fox3!」

 

おまけに、神影が構えたバルカン砲を撃ち、後ろから20㎜弾を浴びせてくる。

そして其処で、何発かが左の主翼に当たった。

カンカンと音を立てて当たった20㎜弾は主翼に弾痕を刻み込み、被弾した場所からは細々と黒煙が噴き出る。

 

「この野郎…………調子に乗るなぁ!」

 

そう言うと、ギムレーは神影がやったように、ハイGターンの要領で宙返りして神影をオーバーシュートさせる。

「お返しだ!喰らいやがれ!!」

 

そして、神影の背中を視界に捉えた瞬間、構えていたバルカン砲を乱射し、神影にやられた時と同じように、彼が纏うF-15Cの背面に弾痕を刻み込んでいく。

 

「ぐおっ!?」

 

背中から襲い掛かってくる小さな衝撃の連鎖を受け、神影は一瞬バランスを崩すが、直ぐに持ち直してブレイクする。

そして、再び神影の背後を取る事に成功したギムレーは、バルカン砲を乱射しながら神影を追い回す。

 

「オラオラァ!この俺から簡単に逃げられると思ってんじゃねぇぞ!神影ぇッ!」

 

そう言って、さらにサイドワインダーを発射するギムレー。

後ろから次々に飛んでくる20㎜弾を、神影はバレルロールやブレイク、急降下で避けていく。

そんな2人は完全にのめり込んでおり、この空中戦が、()()()()()()()()()()()と言う事すら忘れていた。

 

だが、幾ら人並み外れたステータスを持っているとは言え、人とは何時か疲れるものだ。

それは、種族が"Unknown"である2人も例外ではない。

頭の中に浮かべたレーダーで相手の動きに注意しつつ、荒い呼吸をしている。

「(流石と言うか何と言うか……………ギムレーの奴、こうやって機体を展開するのが初めてだとは思えねぇような操縦技術だな………正直、こんなにも手こずらされるとは思わなかったぜ………)」

「(天国から見ていたからこんな事を思うのも今更だが…………やっぱ彼奴は、ただの餓鬼じゃねぇな。ちょっと甘く見すぎてたぜ…………)」

 

一旦相手から距離を取りながら、2人は内心そう呟いた。

其処でギムレーは、神影に僚機念話で通信を入れた。

 

《よお、神影…………お前、俺の名前名乗ってるだけあって、中々やるじゃねぇか》

《ははっ………お褒めに預かり、光栄ってな》

 

ギムレーが言うと、直ぐに返事が返された。

この短い会話で、2人は、其々がかなり疲労している事を悟った。

《何だよ、神影…………疲れてんのか?》

《まあな……………つーか、疲れてんのはそっちだって同じだろうが》

 

からかうように言うと、神影から苦笑混じりの返事が返される。

 

《そりゃ、お前が想像以上に粘ってくるんでな。俺も結構神経使わされたぜ…………》

 

そう言ってから、ギムレーは提案した。

 

《さて、神影…………この楽しい空中戦にも、そろそろ決着をつけねぇか?》

《そうだな…………お互い、機体も体もクッタクタだからな》

 

神影も同じ事を考えていたらしく、彼女の提案にはあっさり乗ってきた。

 

そうして、暫く2人は無言のまま、どんどん離れていく。

そして………………

 

《それじゃあ、行くぞッ!!》

 

ギムレーの言葉を合図に、2人は反転してアフターバーナーを全開で噴かして突進していった。

速度もマッハ2に到達し、2人が通り過ぎれば、超音速飛行による爆音が其処ら中に響き渡る。

それから瞬く間に、2人の肉眼に其々の姿が見え、一瞬にして近づく。

そして、そのまま正面衝突するかと思われた時………………

 

「「…………ッ!」」

 

2人は体を傾け、スレスレのところで擦れ違う。

そして再び反転して向かっていき、またしても擦れ違った。

その後、神影は体を捻って急上昇を始め、ギムレーも後を追う。

 

「Guns Guns Guns!」

 

神影の背後を取ったギムレーは、直ぐ様右腕のバルカン砲を構えて引き金を引き、耳をつんざくような音と共に、20㎜弾をぶちまける。

 

「そう簡単に当たるかっての!!」

 

掠めていく弾丸を見ながらそう言うと、神影はエルロンロールしながら左右にずれて弾丸を避けていく。

 

「流石は神影だ。相変わらずやってくれるじゃねぇかよ…………だが、絶対に逃がさn………!?」

 

──必ず神影を撃墜して、この勝負に勝ってやる──

 

そう意気込んでいたギムレーだが、突如として頭の中で響いた、ロックオンアラートともミサイルアラートとも違う警報に目を見開いた。

そして、その警報の正体に気づくと、ギムレーは舌打ちした。

 

「(畜生、こんな時にストールかよ…………ッ!)」

 

急上昇し続けた事によって速度が落ち、遂に機体がストールを起こしたのだ。

 

「くっ………!」

 

獲物を仕留めるチャンスを阻まれた事に歯軋りしつつ、ギムレーは降下する。

神影は、その好機を見逃さなかった。

 

「(ギムレーが降下し始めた……………なら、コイツを仕留めるのは今しかねぇ!)」

 

そうしてエアブレーキを展開し、一気に降下に移ろうとするが、エアブレーキは開かない。

 

「(エアブレーキが開かねぇ、何故だ………?まさか、故障か?)」

 

内心で疑問を呟く神影だが、そんな事を悠長に考えている場合ではない。

ハイGターンで反転し、ギムレーを追う。

 

「(やっぱり追ってきやがったな………………こうなったら、ハイGバレルロールで………)」

 

猛然とした勢いで追ってくる神影をレーダーで捉え、内心そう呟くギムレー。

だが………………

 

「あっ…………!?」

 

神経を磨り減らす程の激しい空中戦で、彼女の体は既に悲鳴を上げていたらしく、ギムレーは一瞬、バランスを崩してしまう。

 

「Fox3!」

 

その隙に、神影はバルカン砲を構えて即座に引き金を引く。

 

「ぐあっ!?」

 

避けられずに何発も被弾し、その衝撃がギムレーを襲う。

 

「コレで終わりだ……………Fox3!」

 

そうして神影は、止めの4AAMを呼び出し、直ぐ様発射する。

胴体のパイロンから切り離されて一瞬自由落下したミサイルだが、直ぐロケットブースターに火が入り、物凄い勢いでギムレーに襲い掛かった。

 

「…………ッ!クソッ!」

 

何とか体制を立て直した瞬間、ミサイルが飛んできている事に気づいたギムレーは、ブレイクしながらフレアをぶちまけて逃れようとした。

 

「(頼む、外れてくれ……………!)」

 

発射された4AAMの内、3発は彼女が願った通りにフレアの方へ向かっていって誤爆したが、不運にも最後の1発は、フレアに引っ掛からずギムレーに襲い掛かり……………………爆発した。

 

「あああぁぁぁあぁっ!!」

 

爆発によって右の主翼をや尾翼を粉々に吹き飛ばされたギムレーは悲鳴を上げると、そのまま錐揉み回転しながら墜ちていく。

そして、彼女が纏っていたF-15Cは光を放って消え、それを見た神影は、顔を青ざめさせた。

 

「……ッ!ギムレー!」

 

神影は、損傷の酷いF-15Cを解除して、加速力のあるF-14Dを展開すると、アフターバーナーを全開で噴かしてギムレーを追い、瞬く間に追い付いた。

「おい、ギムレー!しっかりしろ!!」

「………………」

 

そう呼び掛けるものの、ギムレーからの返事は返されない。

全力での戦いで体力も殆んど残っておらず、落下している時に失神してしまったらしい。

 

「(呼び掛けても無駄か………………それなら!)」

 

神影は一旦機体を解除すると、魔力弾を横向きに撃ち、その反動でギムレーに急接近し、抱き留めた。

それから再びF-14Dを展開すると、ギムレーに負担を掛けないように、ゆっくりと体制を立て直して速度と高度を落としていき、着陸体制に入る。

その際、普段艦上戦闘機を使ったら、着陸時に必ず使用するアレスティング・ワイヤーは使わず、足の裏から競り出てきた車輪が地面を転がり始めると、ブレーキを掛けて速度を落とし、ゆっくりと動きを止めた。

 

「ふう…………まさか、こんな形で勝負が終わるとはな……………」

 

纏っていた機体を解除すると、神影はそう呟いた。

 

「(それにしても、自分でやった事とは言え、魔力弾撃って、その反動を利用して移動するとか……………よく考えたよな)」

 

そうして神影は、抱き締めていたギムレーを地面へ下ろし、膝をついて彼女の顔を覗き込んだ。

 

「………………」

 

ギムレーは未だに気を失っており、表情や呼吸も若干苦しそうな上に、身体中傷だらけになっていた。

 

「(取り敢えず、コイツは早めに回復させた方が良いよな。俺の特殊能力で"魔力応用"があるけど、上手く使えるか………………ん?)」

 

彼女を回復させようとした神影だが、其処で目を丸くした。何故なら、彼女の傷が少しずつ治り始めたからだ。

 

「おいおい、一体何が……………………あっ、そう言えばコイツの特殊能力に、"高速回復"があったな。それなら、こんなに早く傷が治っていくのも納得だ」

 

思わず疑問を口にした神影だが、ギムレーの特殊能力を思い出して1人で納得する。

 

傷が癒えていくに連れて、ギムレーの表情も、先程と比べて幾分か楽なものに変わり、呼吸も徐々に落ち着いていく。

そして傷が完全に癒えると、苦しそうになっていた呼吸も整った。

 

「さて、それじゃあ戻るか」

 

神影はそう呟くと、アパッチを展開する。

それからギムレーを抱き上げると、メインローターやテールローターを回転させて飛び立ち、ルージュへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、此処は魔族大陸にある城。

その城の謁見の間にある玉座に、魔王グラディスは座っていた。

 

「それにしてもロイクの野郎、重要事項の連絡サボりやがって…………ミカゲ・コダイ率いるガルムは、此方の方でも重要人物として見ているって事を伝えてあるのに、何ポカやらかしてんだよ………」

 

周囲に誰も居ないためか、プライベートでの喋り方で、グラディスはそう呟いた。

因みに、連絡を怠ったロイクは、グラディスから説教と拳骨を受けて、今は部屋で撃沈状態にある。

 

「(何はともあれ、ミカゲ・コダイが生き返ったと言うのは嬉しい知らせだな。休暇を与えているセレーネやゲルブも気が楽になるだろうし、俺としても、あの話をしやすくなる。だが、王都での一件もあるし………それに、仮に会談を申し込んだとしても、ミカゲ・コダイは受けてくれるだろうか……………?)」

 

表情を曇らせ、グラディスは内心そう呟いた。

 

「(それもそうだが、取り敢えずミカゲ・コダイにアポを取らなければ始まらないな。だが、俺や他の奴等が出向いても、怪しまれたら終わりな訳だし………………)」

 

そうしていると、彼の頭の中で豆電球が光った。

 

「此処は1つ、彼女の力を借りるとしよう」

 

そうして、グラディスは懐から、念魔石で作られた水晶玉を取り出して魔力を注いだ。

 

「ナターシャ殿、聞こえるか?」

『グラディス殿…………どうされました?そちらから連絡を入れてくるなんて』

 

水晶玉から、ナターシャの声が聞こえてくる。

 

「ああ。実はミカゲ・コダイの事で、そちらに協力してもらいたい事があってな………………」

『ミカゲ殿の事………………!?な、何でしょうか?』

「あ、ああ…………それがな………………」

 

神影の名を聞いた瞬間、若干興奮したように聞いてくるナターシャを疑問に思いつつ、グラディスは内容を話した。

 

「…………………と言う訳で、ミカゲ・コダイ達ガルムの者達と会談がしたいのだが、生憎、私には彼等との繋がりが無い。部下を回すと言う手段も考えたが、それで彼等に怪しまれたら終わりだ」

『成る程………………それで私に、彼等と会談が出来るように取り計らってほしいと?』

「ああ、そう言う事だ。頼めるか?」

『勿論です』

「助かるよ。会談の日には、此方側の極上ワインを土産に用意しよう」

 

そう言って、グラディスは通信を終えた。

 

「さて………………それじゃあ、彼奴等にミカゲ・コダイが生き返った事を伝えてやるとしようか」

 

そうして、グラディスはゲルブとセレーネを呼び出し、神影が生き返っていると言う事を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その際、セレーネとゲルブに掴み掛かられた上に、何故今までその事を言わなかったのかと問い詰められ、ロイクが連絡を怠った事を伝えると、2人は謁見の間を飛び出していき、その数秒後には、ロイクのものと思わしき絶叫が響き渡ったのは余談である。




此処で一応の設定

《》:念話(僚機念話)での会話→口では話さない
『』:念魔石での会話(相手側)→口で話す
「」:普通の会話
『『……『』……』』:3人以上の人間が同時に発言した時
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