午後7時30分、エリージュ王国上空3000フィートにて………
「それにしても彼奴等、マジで何処行ったんだよ………」
行方不明になっている、エメルとファルケン、そしてアドラーを探すため、F-14Dを展開してタロンの町に向かっている俺は、そう呟いていた。
飛んでいる最中、3人に僚機念話を試してみたが、何れも応答は無かった。
「エメルはおろか、ファルケンやアドラーも応答しないなんて………何かあったのかな……」
そう呟いていた時だった。
《相棒、聞こえる?》
ラリーから連絡があった。
《おう、どうした?そっちに居たのか?》
《いや、居なかったよ。一応、この町には来たらしいけどね》
成る程、あの3人ルビーンに行ってたのか。
《そっちはどう?見つかった?》
そう言われた俺は、ラリーからは見えないと分かっていながらも首を横に振りながら言った。
《いや、未だだ。そもそもタロンに到着すらしてないからな》
《そっか………》
ラリーが落胆したように言った。
《なあ、ラリー。彼奴等が王都に行った可能性って無いかな?》
試しに聞いてみる。
《まあ、有り得なくはないね。3人は王都に行った事は無いから、僕達が王都に遊びに行くって言った時に王都に興味を持って、其所に向かったと言うのも否定出来ない》
一応、可能性はあるようだ。だが、どうやったら其処から帰らない上に、僚機念話にも応答しないと言う状態に繋がるのかが分からない。
《王都の騎士団に捕まった…………とかは?》
《それは流石に無いと思うよ?そもそも彼女等は、騎士団にも勇者にも会ってないからね》
言われてみれば、確かにその通りだ。
《でも、王都には嫌な奴も居るものだからね………特に彼奴とか》
《………ああ、あの銀髪ナルシスト野郎か》
俺は、王都に遊びに行った時に、天野達をナンパしてた銀髪を蹴り倒した事を思い出した。
《他にも、同期でゴルドってのが居るんだけど、彼奴も中々ねぇ……》
《ゴルド?聞いた事ねぇな………それ、誰なんだ?》
新たに耳にした名前に、俺はそう聞き返す。
《ああ。ゴルド・コアンと言う奴で、コアン伯爵の息子なんだけど、彼奴がね………》
それから話を続けるラリー曰く、甘えん坊且つ我が儘な性格で、コアン家を継いだら家は1週間で潰れるとか言われてるらしい。
因みに、ゴルドとか言う奴は、王立騎士・魔術師士官学校騎士科を最下位で卒業したのだが、魔術科で最下位卒業した(謹慎受ける時の事件もあって、無理矢理最下位にされたらしい)ラリーと比べると総合的な点は上らしく、士官学校全生徒では、最下位から2番目らしい(当然ながら、最下位はラリー)。
《彼奴、僕の事を『女にモテない醜い奴』とか言ってたけど、僕から言わせてもらえば、彼奴の方が何倍も醜いよ。背は低いし、デブだし、何より顔キモいし…………一言で言えば、彼奴はオークの子供だね》
「ぶははははっ!」
口汚く愚痴り始めたラリーの言葉に、俺は盛大に笑った。
こんなにも悪口を並べ立てるラリーは、初めてかもしれない。
《まあ、取り敢えずだ。一旦王都に行ってみてくれねぇか?もしかしたら、王都に居るかもしれねぇからさ》
《ああ、うん。了解だよ、相棒》
ラリーの愚痴が長くなりそうなので、話題をすり替える。
そして念話を終えると、俺は、軽く溜め息をついた。
「(彼奴、俺等が召喚される前からスッゲー苦労してたんだな……)」
今度、ミノタウロスのステーキでも奢ってやるか。何時ぞやの約束もあるからな。
そうしていると、漸くタロンの町が見えてきたので、俺は町の門より数百メートル手前で着陸する。
それから機体を解除して町に入り、捜索を始めた。
「………この町にも居ないか」
町に入り、捜索を始めてから30分。
あちこち走り回ってみたものの、やはり、3人の姿は見当たらない。
此所でもないとなれば、一体何処に………?
「おや、この前来てた子じゃないか!」
「ん?」
突然声を掛けられ、俺は声の主の方へと振り向く。
其所には、この町の住人と思わしきおばちゃんが居た。
「こんな時間にどうしたんだい?一応言うけど、もう怪物は居ないよ?アンタ達が見つけてくれたからね!」
そう言って、快活に笑うおばちゃん。
「あ~、実はですね…」
「うん?」
何やら話を聞いてくれそうな雰囲気だったので、俺は、エメル達が遊びに出掛けたきり行方不明になっている事を話した。
ファルケンとアドラーは、度々この町の上空を飛んでいたのもあるので、この辺に居るのではないかと思って来たと言うのも説明した。
「…………と言う訳なんですよ」
「成る程、そう言う事だったのかい………」
俺が話を終えると、おばちゃんはそう言った。
「てっきり喧嘩別れでもしたのかと思ったけど、そうでもなかったんだね」
「…………?それは、どういう事ですか?何か知ってるような口振りですが………」
「知ってるも何も、飛んでくのを見たからねぇ。この目でバッチリと」
そう言うと、おばちゃんは3人が飛んでいった方向を教えてくれた。
おばちゃんが指差した方向は、南西だった。
「此処から南西に数十㎞行ったら森があってねぇ。もしかしたら、其所に居るんじゃないかい?」
「成る程………ありがとうございます!」
よっしゃ!漸く有力な情報が得られた!早速向かお……
「あっ、ちょっと待ちな!」
「………え?」
おばちゃんに礼を言って、早速機体を展開して向かおうとした時、突然呼び止められてしまう。
「何ですか?」
そう言いながら振り返ると、おばちゃんが不安そうな表情を浮かべていた。
「アンタ、まさか………行く気なのかい?」
「そりゃ勿論」
「そうか…………なら、気をつけるんだよ?ちょっと前に、その森で盗賊らしき集団を見かけたって、結構噂になってるからね」
「盗賊?」
黒雲なら、結構前に俺とラリーがアジトごと消し飛ばした筈なんだがな………
「何でも、別の地域から遥々やって来た連中でね、今は何処にも被害は出てないんだけど、何時動くかも、そもそも何処を根城にしてるのかも分からないからね、森に行くと言うなら止めはしないけど、気をつけるんだよ?」
そう言って、おばちゃんは念のためと周辺の地図をくれて、そのまま去っていった。
「……………」
その後ろ姿を見ながら、俺は立ち尽くす。
ヤバい、スッゲーフラグ臭がするんだけど。
「取り敢えず、向かう前にラリーに連絡を入れなきゃな……」
そう呟き、俺はラリーに連絡を入れるのであった。
場所を移して、此処はエメル達が連れてこられた森林地帯の奥地。
エメル達が閉じ込められている牢屋がある洞窟の隣には、比較的大きめの家が建っていた。
其所は、エメル達を拐ってきた盗賊のアジトだった。
「午後8時か………時間まで1時間ってトコか」
壁に掛けられた時計を眺め、1人の男がそう言った。
「クククッ…………にしてもコアンって奴等もワルだよなぁ……この国の貴族でありながら、こんな盗賊団に手を貸すなんてよぉ」
ソファーに腰掛けて酒を飲んでいるリーダー格の男がそう言った。
「そうッスよねぇ。まあ、そんな連中であるお陰で、俺達は安全なアジトを手に入れられる上に、ヤバくなったら教えてもらえるんだから良いじゃないッスか」
「だな!」
「後は、あの3人をちょっと味見する事も許してくれりゃ完璧なんだけどなァ……」
「文句言うな。『美女3人を新品の状態で引き渡せ』ってのが、向こうの要求なんだからよ」
「そりゃ分かってるんですけどねぇ………」
最早、エメル達を"商品"として見ている男達。
成る程、この世界においては、人の命など軽いものだと言う、何時ぞやのラリーの言葉にも頷ける。
彼女等の仲間が向かってきているのも知らず、男達は依頼人の到着を待つのであった。
《………と言う訳だ》
《成る程、それなら何れだけ時間が経っても帰ってこなかった事や、何処を探しても見つからなかった事にも説明がつくね》
俺は機体を展開して離陸準備を済ませながら、僚機念話でラリーに連絡を入れていた。
《それにしても、他所から来た盗賊団か………黒雲を壊滅させた事に安心して、それの事をすっかり忘れてたよ》
ラリーが染々と言う。はっきり言うと、俺もラリーと同じだ。
《それで相棒、盗賊団のアジトの場所は分かるかい?》
《いや、其処までは聞いてない。何時動くのか、何処を根城にしてるのかも分からないって、おばちゃんが言ってたからな》
《そっか……》
俺が言うと、ラリーが残念そうに返してくる。
《だが、多分森の何処かに潜伏してると思う。おばちゃんから貰った地図によると、この周辺には、盗賊共がアジトに出来るような場所は、この森以外には無いからな》
《だとすると………多分、森の奥地だろうね》
ラリーがそのように予想を立てた。
《魔物が出るかもしれねぇのに、よく森の奥なんて選んだよな、その盗賊共》
俺がそう言うと、ラリーは同感だと返してきた。
《取り敢えず、僕も直ぐに向かうよ》
《了解。さっさと来ねぇと俺が全員殺っちまうぞ》
そう言うと、俺は念話を切り、道の真ん中に立つと、F-14Dを展開した。
エンジンノズルから、甲高い音が撒き散らされる。
「(また、人を殺す事になりそうだな………)」
目を瞑って、俺は内心そう呟いた。
だが、黒雲の連中を皆殺しにしたのが原因なのだろうか?
あの時のような戸惑いを、全く感じない。
寧ろ、連中に対して思いっきり殺意を抱いているのを感じる。
それは何故?そんなの簡単だ。
ソイツ等は、俺の僚機を……俺の大切な仲間を奪った。
エメルは兎も角、ファルケンやアドラーからの扱いは、酷いものだった………だが、F組の男子共と比べると、大したものでもない。可愛いものだとすら言える。
それに………
「1番機として、僚機を見捨てる事なんて出来るかよ、アホが」
そう吐き捨てると、俺はブレーキをキツく掛けた状態でアフターバーナーをフルで噴かした。
轟音が町一帯に響き渡ると、その音を聞き付けた町の人達が、何事だと家から出てくる。
だが、今は彼等に構ってる暇は無い。
俺はブレーキを解除する前、深く息を吸い込み、アフターバーナーの轟音を上回るような大声で怒鳴った。
「死にたくなけりゃ、其所を退けぇぇぇえええええっ!!!」
そう怒鳴り、俺はブレーキを解除した。
勢い良く飛び出すと、町の人達は皆、一斉に家の中へと引っ込む。
離陸した俺は、ハイGターンで向きを変えて、森の中へと突っ込んでいった。
捕らえられた僚機達を、救い出すために………
次回で蹂躙と言ったな?あれは嘘だ
あ、ごめんなさい石投げないでください。次こそはちゃんと蹂躙しますから!