航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第38話~TACネームを決めよう!~

さてさて、盗賊に浚われたエメル達を無事に救出し、ファルケンやアドラーとの和解を済ませてから、早いもので1週間が経った。

俺達ガルム隊は、相変わらずルージュの宿を活動拠点とし、ある時には依頼を受け、またある時には、レベルアップのためにダンジョンに潜ってトレーニング、さらには、他の冒険者と遊んだりして過ごしていた。

 

 

そんな、ある日の事だった…………

 

「『TACネームが欲しい』だって?」

「はい」

「お姉様もお持ちのようですから、私達にも、TACネームを付けていただけないかと…………」

 

俺とラリーの部屋には今、ファルケンとアドラーが来ている。

 

部屋でラリーとのんびりしているとファルケンとアドラーが突然訪ねてきて、『自分達にTACネームを付けてほしい』と言い出したのだ。

 

「(そういや俺、ずっと2人をコードネームで呼んでたもんな………)」

 

俺はそう思いながら、2人を見た。

察しの良い方はお気づきだと思うが、"ファルケン"や"アドラー"と言うのは、其々、"ADF-01"や"ADA-01B"と言う戦闘機のコードネームであって、2人のちゃんとした名前ではないのだ。

『人に名乗るような名前は無い』って、言ってたもんな…………

てか、それだったらエメルに名前があったのは何故だって話になるのだが…………うん、皆目検討もつかん。

 

「……駄目、でしょうか…………?」

 

不意に声を掛けられた俺は、ふと顔を上げる。

其所には、不安そうな表情を浮かべた2人の姿があった。

どうやら黙り込んでいる俺を見て、あまり気乗りしていないと思われてしまったようだ。

 

「ああ、いや。別に駄目って訳じゃないんだ」

 

そう言って、一先ず2人を安心させる。

 

「てか、名付け親が俺で良いのか?お前等で名乗りたい名前って無いのか?」

 

そう訊ねるものの、2人は首を横に振った。

 

「いいえ。貴方に決めていただきたいのです」

 

うわぁ~、和解前の態度から180度引っくり返って、スッゲー信頼されてますよコレ。

………俺、夢見てる訳じゃないよな?

 

「ああ、分かった。取り敢えず、良さそうなの考えとくよ」

「「はい!」」

 

満面の笑みで頷くと、2人は部屋を出ていった。

 

「良かったね、相棒。あんなに信頼してもらえて」

 

さっきまでベッドに寝転がって、面白そうに様子を見ていたラリーが話し掛けてきた。

 

「まあ、そうなんだけどな………」

「………そうなんだけど、何?」

 

ラリーが怪訝そうに聞いてくる。

 

「どんな名前にすれば良いと思う?」

「何だ、そんな事で悩んでいるのかい?」

 

俺が言うと、ラリーは苦笑混じりにそう言った。

 

「別に、そんなに深く考えなくても良いと思うよ?余程酷いものでなければ、彼女等は喜んでくれると思うし……………取り敢えず、何か女の子らしい名前を考えてあげたらどうかな?」

「成る程な…………」

 

流石、エメルの名前を考えただけの事はあるな。ラリーは、こう言うのに慣れているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうしたモンかねぇ…………」

 

一旦宿を出た俺は、町中を歩き回り、声を掛けてくれる人々に挨拶を返しながら、2人のTACネームを考えていた。

 

まあ実を言えば、ファルケンのTACネームは考えてある。

『エースコンバット3DS クロスクランブル+』で苦戦させてくれた強敵の名前に因んで、"ゾーイ"だ。

その理由は、"ゾーイ"と言う響きに女の子っぽさを感じたから。

 

しかし、問題はアドラーだ。どんな名前が良いのか検討もつかん。

エメルの本名がエメラリア・モルガネードだったように、アドラーに本名があれば、其処からTACネームを考える事も出来たのだが………………

 

「(敢えて、日本人の名前を使ってみるか?…………なんてな)」

 

そんな事を思い浮かべては、内心苦笑を浮かべる。

何処の世界に、日本人の名前をTACネームにする奴が居るんだっての。

もし居るなら、是非とも会ってみたいモンだぜ。

 

 

そうこうしていると、俺は冒険者ギルドに来ていた。

何と無く中に入り、声を掛けてくれる他の冒険者達に挨拶を返し、これまた何と無く、ギルドの壁に貼られている地図の前に立つ。

その地図には、このエリージュ王国での町や平原、湖、川の名前があちこちに書かれていた。

それを見た俺は、ある事に気づく。

 

──何も人の名前に拘る必要は無い。地名を参考にすると言う手もあるではないか──

 

そう閃いた俺は、地図に書いてある地名を片っ端から眺めていく。

アドラーに良さそうな名前が無いかと、兎に角地図にかじりついた。

 

そうして眺めること、10分……………

 

 

 

 

「遂に見つからなかったぜ……………」

肩を落としてギルドを出た俺は、そう呟いた。

10分も地図にかじりついて地名を片っ端から見ていったのだが、とうとう、アドラーに良さそうな名前を見つける事は出来なかった。

 

俺が元々居た世界の地名で、アドラーに良さそうな名前なんて………

 

「ん?」

 

其処で俺の頭に、ある事が浮かび上がった。

 

「(そういや、アドラーとよく似た名前の地名があったような………)」

何だっけ?確か、ヨーロッパの海の名前だ…………だが、どの国だっただろうか?

ギリシャ?いや違う。

ロシアでもドイツでも、スイスでもない…………

 

「(そうだ、イタリアのあれだ!)」

 

イタリアの南に面している海、"アドリア海"だ!

 

「(あれなら、アドラーと名前の響きが一緒だし、何より女の子っぽい響きがある!)」

そうとなれば、アドラーのはコレで決まりだ。

俺はアドラー達に伝えるため、宿へ向かって走り……………

 

「(…………って、ちょっと待てよ?)」

 

………………出そうとしたところで立ち止まる。

 

「(よく考えたら、コレTACネームじゃなくて、ただの愛称なんじゃないだろうか……………?)」

 

そんな今更な事を思い出す俺。

 

「(いやいや、そんな事言うならエメルだって似たようなモンだし、それじゃあ何の問題も無いよな、うん!)」

 

なんて、誰に向けているのかも分からない言い訳をしながら、俺は宿へ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「良し、来てくれたか」

 

あれから暫く経ち、夕食を終えて、後は部屋で各々のグループ(と言っても男女別)で過ごす事になっているのだが、俺は女性陣全員を、部屋へと呼び出していた。

俺とラリーは、俺が使っているベッドに腰掛けており、エメルとファルケン、そしてアドラーの3人は、ラリーが使っているベッドに腰掛けている。

 

「何か話があるらしいけど、それって何なの?」

 

不思議そうな表情で首を傾げたエメルが聞いてくる。

 

「ああ。今日こうやって、ガルム隊メンバー全員に来てもらった理由なんだが…………」

 

そう言って、俺はファルケンとアドラーの方をチラリと見る。

すると、2人も俺を見て頷いた。

2人には事前に、『2人のTACネームが決まったから、時期を見て発表する』と伝えておいたのだ。

 

「ファルケンとアドラーのTACネームを決めたから、それを発表しようと思ったんだ。今後はそれで呼ぶ訳だから、ちゃんと知っておかないとな」

 

俺がそう言うと、エメルは納得したように頷いた。

 

「それで?2人のTACネームはどんなの?」

 

ファルケンとアドラーのTACネームなのに、何故かエメルが一番興味津々の様子だ。

 

「それはだな………………」

 

そう言って、俺は用意していた羊用紙取り出して広げる。

その紙には、こう書かれてあった。

 

 

ファルケン:ゾーイ

アドラー:アドリア

 

 

『『……………………』』

「…………あれ?」

 

俺が広げた羊皮紙を、俺以外の4人がジッと見ている。

………………無反応で。

 

「(あれ?なんで?何か変だったか?)」

 

沈黙の時間が長引くにつれて、俺も段々と不安になってくる。

 

「(……もしかして、気に入らなかったのか…………?)」

 

そう思い、何か気に入らなかったのかを訊ねようとした時、ファルケンが徐に手を伸ばしてきた。

そして、俺から羊皮紙をヒョイと奪い取る。

 

「………………?」

 

その行動の意図が理解出来ず、ただ呆然と、羊皮紙を眺めるファルケンを見る。

すると、ファルケンはクスッと微笑み、今度は羊皮紙をアドラーにも見せる。

その羊用紙を見たアドラーは、ファルケンと同じように微笑んだ。

 

そして、羊皮紙が再びファルケンに渡り、俺に返…………されなかった。

何とファルケンは、その羊皮紙を真っ二つにしたのだ。

 

「ちょっ、おい!ファルケン!?」

 

思わず声を上げてしまう俺だが、ラリーに止められる。

そしてラリーは、軽く微笑んでファルケン達の方を指差した。

そちらに顔を向けると、2人はファルケンに真っ二つにされた紙を俺に見せていた。

ファルケンは"ゾーイ"と書かれた方を、アドラーはアドリア"と書かれた方を、名札サイズにして持って微笑んでいる。

 

「…………?」

 

俺はまたしても首を傾げる。

 

「相棒、コレを見ても未だ分からないのかい?」

 

ラリーが、苦笑を浮かべながらそう言った。

 

「2人共、君が考えたTACネームが気に入ったようだよ」

「え?」

 

そんな間の抜けた声と共に、俺は2人の方を向く。

 

「……そう、なのか…………?」

「「…………………」」

 

俺の問いに、2人は顔を赤く染めながら頷いた。

 

「…………良かったぁ~」

 

そう言って、俺は仰向けに倒れた。

 

「もしかして相棒、2人がコレを気に入らなかったのかと思ったのかい?」

「いやいやいや!いきなり目の前で紙真っ二つにされたら、普通はそう思うだろうよ!?」

 

俺が起き上がってツッコミを入れると、4人は笑い出した。

 

そして気がつけば、俺もつられて笑っていた。

何故笑っているのかは、俺にも分からない。だが、少なくとも、この空間には、俺達5人の笑顔が溢れていた。

 

そして、俺とラリー、そしてエメルの笑い声に混じって、こんな言葉を聞いた気がした。

 

 

 

「「素敵なTACネームを、ありがとうございます。ミカゲ様」」

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