航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第4話~異世界式のいじめは、人殺しに限り無く近いものである~

 あれから暫く笑いまくった俺達は、互いに落ち着きを取り戻してから名乗り合った。

 

「それじゃあ、改めて……僕はラリー・トヴァルカイン。王立騎士・魔術師士官学校の卒業生の1人だよ。さっきは助けてくれて、本当にありがとう」

 

 そう言って、ラリーは深々と頭を下げる。

 

「別に良いって。アレは、俺が勝手にやっただけの事なんだからさ」

 

 手をヒラヒラ振りながらそう言って、俺も名乗る。

 

「俺は古代神影。よろしくな、ラリー」

「“コダイミカゲ”………?聞き慣れない名前だね」

「ああ……まぁ、この国だったら、“ミカゲ・コダイ”って呼び方をするんだろうな」

 

 首を傾げて言うラリーにそう返すと、ラリーはこんな質問をしてきた。

 

「その口振りからすると………君は、この国の人じゃないよね?何処の人?」

「ああ、それはだな………」

 

 ラリーからの質問に、俺は言葉を詰まらせた。そもそも俺は“日本人”であって、この世界の住人ではないのだ。

 何処の国の出身なのかと聞かれても、答えようが無い。

 

「(ヤバい……コレ、どう答えりゃ良いんだ……?)」

「…………?」

 

 目の前に居るラリーが、怪訝そうに首を傾げている。

 彼を怪しませないで済む、尤もらしい答えは無いだろうか………………

 

 そんな時だった。

 

「あ、居た居た!神影く~ん!」

「「ん?」」

 

 突然声が聞こえ、俺とラリーの声がハモる。

 声の主の方へと顔を向けると、天野がパタパタ駆け寄ってくるのが見えた。

 

「友達?」

「まぁ、な」

 

 微妙な答えを返し、俺は立ち上がって、天野が来るのを待つ事にした。

 すると、ラリーも立ち上がる。

 

「邪魔したら悪いから、僕はもう行くよ。じゃあね、ミカゲ。何度も言うけど、さっきは助けてくれて、本当にありがとう」

 

 それだけ言うと、ラリーは去っていった。

 それを見送っていると、駆け寄ってきた天野が俺の直ぐ傍で立ち止まる。そして、去っていくラリーの背中と俺を交互に見て言った。

 

「神影君、あの人は誰?友達?」

 

 その質問に、俺はコクりと頷いた。

 

「ああ。さっき、この辺でちょっと変な奴に絡まれててな………適当に追っ払ってやったんだわ」

「そうなんだ………」

 

 そう言って、天野はラリーが去っていった方を見つめる。

 

「それよか天野。お前、俺に何か用があるんじゃねぇの?」

「あ、そうだった!」

 

 どうやら忘れていたらしい。ハッとした表情を浮かべ、天野は此方を向いた。

 

「もうそろそろ夕食だから、神影君を呼びに来たの!」

「夕食?もう、そんな時間だったのか………」

  

 どうやら町に繰り出したり、ラリーを助けたりしている間に、結構時間が経っていたようだ。

 

「ホラ、早く行こう?そろそろ皆が集まってきてるから!」

 

 そう言うと、天野は俺の手を引いて食堂へと向かい、俺も彼女に引っ張られる形で後に続くのだが………………天野の奴、異性の手を握ってるって事を理解しているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 天野に引かれて食堂に着くと、既に来ていたクラスメイトからの視線が集中する。

 女子は、此方を見て軽く頭を下げて会釈してくれた雪倉を除いて、俺を見ると直ぐに興味を無くして再びお喋りを始めたのだが、男子の場合は別だ。思いっきり俺を睨んでいる。

 

「(飯の後か明日辺りにでも、彼奴等に人気の無い所に連れていかれそうだな……………)」

  

 内心そう呟きながら溜め息をつき、俺は自分の席に座る。

 そして料理が運ばれてくると、他の奴等のお喋りと言う名のBGMを聞き流しながらさっさと食べ終え、そそくさと部屋に逃げ帰ると、ベッドに飛び込み、そのまま眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、訓練まで未だ時間があったため、俺は、とある計画を実行に移すため、昨日王都内を歩き回っていた時に見つけた冒険者ギルドを訪れていた。

 

「ふむふむ、成る程なぁ………」

 

 目の前に提げられている地図を眺めながら、俺はそう溢した。

 この地図を見て分かった事だが、この王都は上空から見ると円形をしており、東西南北に1つずつ、出入口の門がある。

 それから、受付嬢からも話を聞き、別の町に移動するなら馬車を出してもらうか、少し金が掛かるが、他の冒険者に護衛を頼むかすれば良いとの情報を得た。

 だが、残念ながら俺は一文無しだ。護衛はおろか、馬車だって頼めやしない。

 どうやら暫くの間は、我が戦闘機達の厄介になる事になりそうだ。

 まぁ、馬車より遥かに早いし、空を飛んでいく訳だから、少なくとも陸上の魔物には狙われないだろうし、もし、飛行能力を持った魔物が出てきても、有効な対抗手段もある。

 それに、いざとなったらアフターバーナーを全開にして逃げれば良いしな。

 

「おっと、そろそろ訓練の時間か………」

 

 壁に掛けられた時計で今の時刻を見た俺は、踵を返して冒険者ギルドを後にし、王宮へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 王宮へ戻り、訓練場へやって来ると、もう既に、クラスメイトの何人かが来ており、剣や魔法の練習をしている。

 全員レベルが10以上になっているのもあってか、かなりの速度で動き回っているのも居た。

 

「うわっ、速いなぁ~………」

 

 それを眺めながら呟いた俺は、取り敢えず魔法の練習をする事に決める。

 初級攻撃魔法の『火球(ファイアボール)』や『水球(ウォーターボール)』の練習だ。

 

「それにしても、こんなのでも詠唱が要るのかよ、面倒だなぁ……」

 

 そう思いながら両手を前に出し、詠唱を始める。

 

「えー、我が手に現れし赤き流s……おわっ!?」

 

 初級なのに矢鱈長い上に言ってて恥ずかしくなるような詠唱をしていると、突然、目の前を赤い球が掠めていった。

 俺が撃とうとしていた火球だった。

 

「あっぶね~!一体何事………マジかよ」

 

 それが飛んできた方へと目を向けると、俺の顔が嫌悪感で歪むのを感じた。

 何故なら、其所に居たのが俺をキモオタと呼ぶ富永や、その取り巻き共だったからだ。

 表情やポーズから察するに、さっき俺に向けて火球を飛ばしてきたのは、富永と見て間違いないだろう。

 富永達はニヤニヤしながら近づいてくると、話し掛けてきた。

 

「よぉ、キモオタ。お前何やってんの?」

「………見りゃ分かるだろ、魔法の練習だよ」

 

 嫌悪感MAXで言ってやると、取り巻き共の間で嘲笑が起こった。

 

「ギャハハハハッ!マジかよ!?」

「お前、自分の魔力がドンだけ少ないのか分かってやってんのか!?」

「無能が何れだけ足掻いても俺等に追いつくのが無理だってのが分かんねぇの?」

「どうせ2、3発撃ったら直ぐ魔力切れで倒れるがオチだろうによぉ!」

「ちょ、おまっ!それを言うなら魔耐の低さだってそうだろ。5発も受けねぇ内に倒れるって!」

 

 爆笑する富永に便乗する形で下品に笑う取り巻き共だったが、その内の1人が言った。

 

「なぁ、この際だから俺等で稽古つけてやるってのはどうよ?魔力系カス過ぎて見てらんねぇしさ」

 

 クラスのいじめッ子が最弱主人公にやるような事………すなわち異世界式のいじめを提案する男子に、富永が反応した。

 

「はぁ?んだよソレ、お前お人好しにも程があるんじゃね?こんなのに稽古つけてやるなんてよぉ」

 

 そう言うと、富永は馴れ馴れしく肩を組んでくる。うん、スッゲー鬱陶しい。

 

「まっ、お前の言う事も一理あるし?やっても良いけどさぁ」

「ウヒョー!それじゃあ俺もやるぜ。無能に態々稽古つけてやるなんて、俺等マジ神ってんじゃん」

「おいキモオタ~、感謝しろよ?何たってこの稽古は無料なんだしさぁ」

 

 そう言って、俺を人目につかないような所に連れていこうとする富永一味。

 

「別に良いよ、俺は俺のやり方でやるから」

 

 流石にムカついた俺は、細やかな抵抗にと、肩を組む富永を振り払った。

 

「はぁ?お前無能の癖に何偉そうに言ってんの?」

「せっかく俺等が稽古つけてやるって言ってんのによぉ」

「そもそもさぁ、古代。お前キモオタの分際で何天野や雪倉と仲良くしちゃってる訳?」

「ただの戦闘機マニアなキモオタの癖によぉ」

 

 おい、ちょっと待て。何故あの2人が出てくる?

 

「いや、あの2人は関係n…「五月蝿ェんだよ!」……ぐはっ!?」

 

 コイツ等、俺の反論などまるで聞いてない。

 最後まで言い終わる間も無く、俺は富永に、腹を殴り飛ばされる。

 数メートル後方に吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

 クソッ、流石は勇者の称号やチート能力持ってるだけあって、殴られたら結構痛ぇな………

 

「オラオラ、何寝転んでんだぁ?稽古は始まったばかりだぜぇ~?」

 

 富永の取り巻きの1人、松田 恭吾(まつだ きょうご)が言うと、両手を前に出した。

 

「我が手に現れし赤き流星よ、此処に焔となりて彼の者を焼き払え!“火球”!」

「………ッ!」

 

 初級魔法とは言え、レベルは2倍以上離れている上に、俺の魔耐は非常に低い。

 

「(彼奴等、それが分かってやってやがるな……………ッ!)」

 

 地面を転がって迫り来る火の玉を避け、俺は奴等を睨んだ。

 

「へぇ~、キモオタの割には動けるじゃねぇか」

「だが、一斉攻撃ならどうかな!?」

 

 そう言うと、各自詠唱して火球や水球、風球(ウィンドボール)などの初級攻撃魔法を放ってくる。

 

「(チッ!一斉にやりやがって、コレじゃキリがねぇ!)」

 

 内心で毒づきながら、立て続けに飛んでくる攻撃を紙一重で避けていく。

 だが、それが何時までも続く訳も無く…………

 

「いい加減当たれっつーの…………我が周りを巡りし風よ、此処に風撃となり、彼の者を吹き飛ばせ!“風球”!」

 

 富永や松田とは別の1人が放ったウィンドボールが俺の横腹に命中する。

 

「ぐぼぉっ!」

 

 俺は横向きにくの字を描いて吹っ飛ばれ、そのまま地面に叩きつけられた。

 

「やれやれ、手間掛けさせやがってよぉ」

「そのお礼を、これからた~っぷりしてやるよ!」

 

 そうして、俺が思うように動けないのを良いことに、連中からの一斉攻撃がまた始まる。

 

 時に水球に当たり、時に自分の近くに着弾した事で巻き上げられた砂埃をかぶりながら、俺の頭の中には色々な言葉が渦巻いた。

 

 

──何故、こんな目に遭わされなければならないのか?──

──何故、俺が天野や雪倉と親しいだけで、こんなにも目の敵にされなければならないのか?──

──戦闘機好きで何が悪い?オタクで何が悪い?──

──少なくとも、力に溺れて好き勝ってやってるテメェ等よりマシじゃねぇのか?──

 

 

 そんな言葉が、頭の中に浮かんでは消える。

 

 僅かに見える視界には、笑いながら魔法を撃ちまくる富永一味と、ワタワタしながらも傍観を決めているクラスの連中。

 

 それを見た時、俺の脳内にこんな言葉が響いてきた。

 

 

 

──こんな所に居て、何になる?──

──見下され、敵視され、邪魔者扱いされるような生活に、何の価値がある?──

 

 

 そして、極めつけとばかりにこんな言葉が浮かんできた。

 

 

──此処に留まっている事に、意味はあるのか?──

 

 

「……………ねぇわな」

 

 だったら、もう此処に留まる必要は無い。誰にも明かしてないが、此方は戦闘機を使う能力がある。

 何れ程戦えるかは分からんが、簡単に野垂れ死にしたりはしないだろう。もう、この辺りで単独行動を開始しても良い筈だ。

 

 やれやれ、決断するまでに随分と掛かっちまったな。お陰でリンチに遭ってこのザマだぜ。まぁ、自業自得だけど。

 

「ちょっと!何してるのよ!?」

 

 そうしていると、何やら怒鳴り声が響いてきて、一斉攻撃が止んだ。どうやら、騒ぎを聞いた先生や天野達が飛んできたらしい。

 砂埃が目に入ったのか、視界が鮮明にならなくても分かる程の物凄い形相で詰め寄る天野が見える。一言言おう、マジで恐い!

 今後、天野を怒らせるような事はしないように気を付けよう……………って、ズタボロにされたのに、何考えてんだろうな、俺………… 

 

 

 そうして俺は、天野や先生に詰め寄られる富永一味と、此方に駆けてくる雪倉と白銀を最後の光景に、意識を手放した。

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