さてさて、ラリーとの話を終えた俺は今、F-15Cを展開して、ラリーと共にエリージュ王国上空を飛び回っている。
ソブリナとの約束の時間は真夜中であるため、その暇潰しとして誘ったのだ。
夜間飛行を断ったから、その代わりと言うのも兼ねている。
「ねえ、相棒。1つ聞きたいんだけど、良いかい?」
不意に、隣を飛んでいるラリーが話し掛けてきた。
「おう、何だ?」
「相棒ってさ………女の子に告白された事って、あるの?」
俺が聞き返すと、ラリーがそんな事を訊ねてきた。
「いや、無いぞ」
ラリーの問いに、俺はそう答えた。
「………本当に?」
「ああ」
「1回も?」
「おう。1回も無いぜ」
俺はそう答えた。
つか、2回も聞き返す必要は無いと思うんだが……俺、そんなに信用無いのか…………?
なんて考えている内に、俺達は王都上空に差し掛かった。
「おっ………相棒、あれ見てよ!」
突然、ラリーがある方向を指差す。
ラリーが指差す方向に視線を向けると、其所にあったのは、俺等がガチバトルしていた時にラリーの流れ弾を受けた上に、俺のミサイル攻撃でブッ壊れた、王宮の訓練場だった。
どうやら修理中らしく、大工と思わしき人達が忙しなく動き回っている。
…………って、待てよ?王宮の訓練場が使えないとなれば…………
「彼奴等、何処で訓練するんだ?」
確か女子達は、御劔パーティーと富永パーティーが迷宮攻略を進めていて、他の連中は俺を探したり、訓練場での訓練に励んでるって言ってたよな?
なら、それが使えない今、御劔達のような迷宮攻略組は兎も角、居残り組はどうするのかが疑問だが…………
「………ま、良いか。考えても仕方無い事だし」
ラリーに聞こえないような声で呟き、王都の町並みを見下ろしながら飛んでいると、あっという間に王都を通過してしまった。
「相棒。王都から南南東に40㎞行った先に、フュールって町があるんだけど、行ってみない?」
唐突に、ラリーが提案してきた。
特に断る理由も無いため、俺は頷き、南南東へと進路を取り、フュールの町へと向かった。
それからの出来事を簡単に言うと、俺達はフュールの町の数㎞手前で引き返した。
その理由は、F組全員と王国騎士団の連中が其所に居たからだ。
フュールの町上空に差し掛かろうとしていた所で、そこそこ強めの反応をラリーが感じ取り、レーダーをONにして詳しく探ってみたところ、その反応の正体が、F組の連中だったのだ。
コレには俺もラリーも驚いて、言葉を交わす事も無く、俺達は反転して、ルージュへと舞い戻っていた。
昨日、男子陣と一悶着起こしたばかりだから、姿を見せるのが憚られるんだよなぁ………
「いやぁ~……まさか、あの町にF組の奴等が居るとは思わなかったな」
それから宿に戻って部屋に入り、ベッドに腰掛けた俺はそう呟いた。
「そうだね、あれには僕も驚いたよ」
もう1つのベッドに腰掛けて、ラリーが答えた。
「それにしても、彼奴等には気づかれたかな………?」
「いや、それは無いだろう。彼奴等の中には、『魔力感知』や『気配察知』を持ってる奴が居るけど、俺等は数㎞前で引き返したからな。たとえ気づいても追ってこれねぇよ」
不安そうに呟いたラリーに、俺はそう返した。
「そう?それなら良いんだけど」
そう言って、ラリーは安堵の溜め息をついた。
「ところで相棒、昨日の一件は覚えているかい?」
「"昨日の一件"?」
俺が聞き返す。
「昨日、ソブリナと約束したんだろ?それだよ」
「………ああ、その事か。ちゃんと覚えてるよ」
俺がそう言うと、ラリーは満足げに頷いた。
「それなら良いんだ」
そう言って、ラリーは急に神妙な表情を浮かべた。
「相棒。さっきも言ったように、今夜のソブリナの話は、きっと、君の今後すら左右するものになる筈だ。だから、真剣に聞いてあげて。そして、焦らず、よく考えた上で答えを出してあげるように……良いかい?」
「お、おう」
ラリーの気迫に圧されつつ、俺は頷いた。
それにしても、『俺の今後すら左右する』と言う言葉が凄く気になる。
一体、ソブリナは俺に何を言うつもりなんだ…………?
神影とラリーが宿で休んでいる頃、女性冒険者達との買い物を終えたガルム隊女性陣とアルディアの3人は、エメルとリーアを先に宿へと帰らせ、冒険者ギルドを訪れていた。
「あれ?何か変わった組み合わせですね」
5人に気づいたエスリアがそう言った。
「ええ。元々エメルやリーアも居たんだけど、先に戻ってもらったわ」
ソブリナが答え、カウンターに凭れてエスリアに顔を近づけた。
「実は、貴女に話があるのよ」
「私に、ですか?」
エスリアが聞き返すと、ソブリナは頷く。
「今から、少し時間を貰えるかしら?」
「は、はい」
そうして、エスリアはもう1人の受付嬢にその場の引き継ぎを頼み、ソブリナ達と共に、奥の部屋へと入った。
「それで……お話と言うのは…………?」
部屋の鍵を閉めたエスリアは、ソブリナ達の方へと向き直って訊ねた。
神妙な表情を浮かべている5人を見て、かなり重要な事なのだろうと、エスリアは予想する。
「実は、私達………」
そう言いかけたソブリナは、他の4人の方に顔を向け、互いに頷き合うと、エスリアへと向き直る。
「今夜、ミカゲに告白するの」
「…………へ?」
あまりにも突拍子も無い話に、エスリアは間の抜けた声を漏らす。
「え、えっと…………今、何て………?」
「私達は今夜、ミカゲ様に告白するのです」
聞き直したエスリアに、ゾーイが頬を若干赤らめながらそう言った。
「…………ぇぇぇぇえええええええっ!!?」
暫く沈黙していたエスリアだったが、ゾーイの言葉の意味を理解するや否や、目を見開いて驚いた。
「ほ、本当に………ミカゲさんに、告白を?」
あれから少しして、何とか落ち着きを取り戻したエスリアは、未だに信じられないと言わんばかりの表情を浮かべて訊ねた。
「ええ、そうよ」
「と言っても、ついさっき決めた事なんだけどね」
頷いたソブリナに、エリスが言葉を付け加える。
「そ、そうですか………ミカゲさんに……告白…………」
途切れ途切れに、エスリアは呟く。
其処へ、今度はニコルが口を開いた。
「……エスリアも………する」
「え?」
「エスリアも……ミカゲに告白、する………」
「わ、私もですか!?」
まさか自分も含まれているとは思わなかったとばかりに、エスリアは聞き返した。
「だってエスリアも、ミカゲの事が好きなんでしょう?」
「ッ!?」
エリスにそう言われ、エスリアは顔を真っ赤に染め上げる。
それから少しアタフタした後、小さく頷いた。
「なら、今夜はミカゲへの告白大会ね」
話を締め括るようにソブリナが言うと、全員が頷いた。
そして、ソブリナが本番の流れを全員に説明し、全員の賛成を得た上で、一行は解散した。
「「ただいま帰りました」」
「お帰り~」
ゾーイとアドリアが帰ってきたのは、ラリーが俺の部屋を出てから少しした辺りだった。
もう夕食時になっている。
「エメルとリーアを先に帰らせたらしいけど、何かあったのか?」
俺は2人に問い掛けた。
そう。実を言うと、俺とラリーが話している最中に、エメルとリーアがやって来たのだ。
何故2人が先に帰ってきたのかを訊ねてみたのだが、2人は教えてくれなかった。
一応、危ない目に遭っている訳ではないと聞いたので安心したが、それなら尚更、何をしていたのかと気になっていたのだ。
「はい、少し………ね?」
「え、ええ」
「……………?」
だが、俺が訊ねても、帰ってきたのは誤魔化し笑いだけ。
そんな2人に、俺は首を傾げるしかなかった。
その後、2人は今夜、アルディアの3人に用事があると言っていたのだが、コレについても教えてはくれなかった。
てか、ソブリナは既に俺と約束してる筈なんだが…………彼奴、まさか約束を忘れたとか言わねぇよな?
まあ、そんなこんなしている内に夜になり、俺達は夕食を終えて、部屋に戻って休んでいる。
昼間に言っていたように、ゾーイとアドリアは、アルディアの3人に会うために部屋を出ており、今は俺1人だ。
俺はベッドに寝転がり、ラリーに言われた事について考えていた。
『今夜のソブリナの話は、きっと、君の今後すら左右するものになる筈だ』
『焦らず、よく考えた上で答えを出してあげて』
昼間、ラリーに言われた事が脳内に響く。
"今後を左右する"とはどういう意味だ?
ソブリナは一体、何を言うつもりなんだ?
「…………分からねぇ」
そう呟き、俺は寝返りをうった。
《よう相棒、未だ起きてるか?》
すると、突然ラリーが念話を入れてきた。
つーかラリーの奴、あの超カッコいいエースコンバット・ゼロの名言を改造しやがったな…………
《ああ、起きてるよ》
なんて考えつつ、俺は返事を返す。
《そろそろ時間だと思うけど………未だ部屋に居るのかい?》
《ああ、今から出るよ》
そう言って起き上がり、俺はドアへ向かって歩き出す。
《そっか………》
そう言うと、ラリーからの念話が途絶える。
それを疑問に思いつつ、部屋のドアを開けて廊下に出た時、タイミングを見計らったが如く、ラリーも部屋から出て、俺の方を向いた。
「行ってらっしゃい、相棒………頑張ってね」
「お、おう………」
ラリーから謎のエールを受け取り、俺はソブリナと約束した場所へと向かった。
「え~っと、確かこの辺り…………ん?」
記憶を頼りにルージュの町を歩き回り、漸く約束の場所に辿り着いた俺は、前方に居る人物を見て目を丸くした。
其所にはソブリナだけでなく、エリスやニコル、ゾーイ、アドリア。そして、何故かエスリアさんが居たのだ。
「おっす」
取り敢えず、歩み寄りながら声を掛ける。すると、全員が一斉に振り向いた。
その時、一瞬怯んだのは秘密だ。
「約束通り、来てくれたのね。ミカゲ………」
「ああ」
話し掛けてきたソブリナに、俺は頷いた。
「大事な話が………あるんだったよな?」
「ええ」
そう言って、ソブリナは他の5人と顔を合わせる。
そして頷き合うと、俺の方へと向き直った。
『『『ミカゲ(様)(さん)』』』
「お、おう」
一斉に呼ばれ、俺は若干戸惑いながらも返事を返す。
そして6人は、頬を赤く染めながら、ある言葉を投げ掛けてくるのだ。
俺が今まで経験した事の無かった、一生縁の無い話だと思っていた、その言葉を…………
『『『貴方の事が……………
……………好きです』』』