航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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サイドストーリーです


第6.5話~神影の居ないF組~

それは、神影がエリージュ王国の城を出ていった日の出来事である。

 

 

 

 

「あばよ、無能。2度と帰ってくんじゃねぇぞ」

「キモオタ~、大変だろうけど頑張れよ~!"1人で"な!」

 

エリージュ王国宰相のグリーツやF組の男子生徒達からの嘲笑を背に受けながら、神影が謁見の間を去る。

 

「ふむ…………では皆さん、私は少し用事があります故、失礼しますぞ」

 

男子達と一緒になって一頻り笑った後、グリーツはそう言って、謁見の間を出ていく。

それを見送ってから、男子達は楽しそうに、神影の悪口を交わしていた。

 

「へへっ、あのキモオタ野郎、やっと出ていったか」

「ああ、あの目障りなのが居なくなると清々するぜ」

「雑魚で無能な戦闘機マニアの癖に、天野達と仲良くしやがって……………ムカついて仕方無かったぜ」

「そーそー、マジで調子乗んなって感じだよな。ただの戦闘機マニアの分際でよぉ」

「いやぁ~、それにしても、謹慎喰らってる富永達にも見せてやりたかったよなぁ。出ていく彼奴の惨めな姿をよぉ!」

 

ニヤニヤと憎たらしい笑みを浮かべて、男子達はそんな会話を交わす。

その中の1人である黒縁眼鏡の男子生徒──中宮 慎也──に、F組きっての不良である元浜 秋彦(もとはま あきひこ)が近づき、ニヤニヤしながら声を掛けた。

 

「おい、中宮。お前あれで良かったのか?」

 

そう問われた慎也は、眼鏡をクイッと持ち上げながら、秋彦の方を向いた。

 

「"良かった"とは、どういう意味だい?」

 

そう聞き返す慎也だが、秋彦は相変わらずニヤニヤしている。

 

「どうもこうもねぇよ。お前と彼奴、前はそこそこ話す間柄だったろ?なのにお前、彼奴が出ていくって言った時には、一番に賛成してたじゃねぇかよ。"元"がつくとは言え、友達の誼もねぇのかと思ってな」

 

そんな秋彦の言葉を、慎也は鼻で笑った。

 

「フンッ、そんなの僕の知った事じゃないね。たとえどんな仲でも、邪魔になるなら消えてもらうまでさ。誼とか、そんなのどうでも良いんだよ」

「ウハッ!こりゃ厳しいなぁ」

 

慎也の言葉を笑い飛ばし、秋彦は他の男子の方へと歩いていった。

 

「それにしても、"あの計画"を実行する必要も無かったってのが、ちょっと残念だな……………どうせだから、本気で彼奴の居場所を潰してやろうと思ったのにな」

 

男子達と楽しそうに話す秋彦を眺めながら、慎也はそう呟いた。

 

彼は神影を追い出すため、朝早くや夜遅く等、誰も居ない時間を見計らって神影の部屋の前へと向かい、『早く出ていかないと殺す』、『無能が調子に乗るな、身の程を弁えて自殺しろ』等と書いた手紙を毎日送り込んでいたのだ。

他にも精神的苦痛を与えようと、『足手まといだから、神影には消えてほしいと女子が言っていた』等の嘘を神影に言う事もあった。

他にも、富永一味にこっ酷くやられた事をネタにして嫌みを言ったりしたのだが、効果は無かった。

そのため、冤罪で彼を嵌めようとしたのだが、それを実行する前に彼が出ていったのだ。

計画は不発に終わったが、御影が城を出ていったと言う事実は変わらない。

結果オーライだと割り切る事にした。

 

 

 

 

 

そもそも、何故F組の男子達──正確には神影が通っていた学校の男子達──は、こんなにも神影を目の敵にするのか、先ずは其処から説明させていただこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、夏休みを終えて2学期に入った、ある日の朝の事だった。

 

「神影君、おはよう!」

「おはようございます、古代さん」

 

何時ものように教室に入ってきた沙那と桜花が、スマホで曲を聞いていた神影に声を掛ける。

 

「おう、おはよーさん」

 

一旦曲を止めた神影が挨拶を返し、そのまま再開しようとするのだが、机に荷物を置いて戻ってきた沙那達が話し掛けてくる。

 

「ねぇねぇ、神影君」

「…………?何か用か?」

 

またしても話し掛けられた神影は、此処からの話は長引くだろうと悟り、スマホの電源を切って机の中に入れ、2人の方を向く。

 

「う、うん……………それがね?」

 

恥ずかしそうにそう言いかけると、沙那は隣に居る桜花と目配せして、後ろ手に隠していた、可愛らしい柄の小さな紙袋を同時に出し、神影の机の上に置いた。

 

「はい、コレ。私達から神影君にプレゼント!」

『『『『『ッ!?』』』』』

「…………はい?」

 

教室内の男子達がフリーズする中、いきなりの事についていけない神影は、目を丸くする。

 

「プレゼントって…………何だ、どっかの土産か?」

「ううん、そうじゃないよ」

 

神影の問いに、沙那は首を横に振る。

予想が外れた神影が怪訝そうに首を傾げていると、今度は桜花が口を開いた。

 

「古代さん、今日は何月何日ですか?」

「今日?9月7日だろ?」

「その通りです」

 

神影がそう言うと、桜花は頷く。

「それで、その日って神影君の誕生日だよね?」

「………あっ」

 

今思い出したらしく、神影は間の抜けた声を漏らした。

 

「そういや、今日って俺の誕生日だったな。すっかり忘れてた」

神影は染々と呟いた。

 

「まあ、そう言う訳だから………」

 

そう言うと、沙那は一旦桜花と顔を見合わせ、神影の方に向き直った。

 

「お誕生日おめでとう、神影君!」

「おめでとうございます、古代さん」

「………………………」

 

そう言われ、少しの間呆然と2人を見ていた神影だが、やがて笑みを浮かべる。

 

「おう。ありがとな、2人共」

 

そんなやり取りが交わされると、近くで話を聞いていた他の女子生徒も、神影の誕生日を祝う。

「お誕生日おめでとう、古代君!」

「おめでとう!」

「お、おう。ありがとな」

 

次々祝われて戸惑いながらも、神影は彼女等に礼を言う。

 

「いやぁ~、それにしても、天野さんも雪倉さんも、今日は中々攻めましたねぇ~」

「うんうん!」

「まさか、去年同じクラスだった私ですら忘れていた、古代君への誕生日プレゼントでアピールするとは…………いやはや、2人共考えたねぇ~」

 

そして、沙那達が神影に寄せる想いを知っている女子生徒達が沙那達をからかい始め、2人は顔を真っ赤にして胸の前で手をブンブン振る。

 

「ち、違っ!そう言うのじゃないよ!」

「そ、そうです!コレは、日頃お世話になっているお礼ですから………」

「はいはい、もう私達にはバレバレなんだから、誤魔化さないの」

 

沙那達が必死に誤魔化そうとするものの、他の女子生徒達からの冷やかしは止まらない。

 

「おっ、スゲェ!このハンカチ、メビウス1のマークが描かれてるじゃねぇか!うおっ!此方のはアクィラのマークだ!俺が欲しいもの知ってるとか、彼奴等マジで凄すぎだろ!」

 

沙那達が他の女子生徒達に冷やかされている傍らでは、プレゼントを開けた神影がホクホク顔を浮かべていた。

 

『『『『『…………………』』』』』

 

そんな光景を見ていた男子達は、此処で漸く、沙那と桜花は、異性として神影に好意を寄せていたのだと確信した。

 

実を言うと、3人の関係についての噂はこれまでに何度か立っていた。

 

基本的に、奏を加えた3人で行動する沙那と桜花だが、傍に奏が居ない場合は、決まって神影の所にやって来るのだ。

他にも朝、学校に来たら必ず声を掛ける。昼食や、テスト勉強に誘う事もあったのだ。

そして極めつけに、今回の神影への誕生日プレゼントだ。

もうこの辺りまで来たら、2人が神影に好意を寄せているのは火を見るより明らかな事。

 

そうとなれば、2人と仲良くなり、あわよくば"その先に"進む機会を狙っていた男子達からすれば、神影は自分達の恋敵にして、排除すべき存在となる訳で、結果として、今の神影の立ち位置が出来上がったのだ。

 

 

 

 

 

「まあ、それももう終わりなんだ………彼奴が居なくなって、やっと湧いてきたチャンスなんだから、みすみす逃して堪るか」

 

慎也はそう呟いて、どうにかして沙那と桜花を手に入れようと考え始めた。

そして同時に、隙あらば他の女子生徒や担任のシロナ、さらには、この世界に居る女達も自分のハーレムに、と………………

 

 

 

 

「あら、男子は既に終わっていたのね」

 

不意に聞き慣れた女性の声が聞こえ、男子達は会話を中断する。

謁見の間に、F組担任であるシロナと、他の女子生徒達がやって来たからだ。

「ああ、先生。女子の方も終わったんですね」

「ええ、待たせてごめんなさいね。少し授業が長引いてしまったの」

「いえいえ、別に構いませんよ」

 

すまなさそうに言うシロナに、その男子生徒は笑みを浮かべてそう返した。

シロナもかなりの美人でスタイルも良いため、彼女に好意を抱く男子生徒も多い。

沙那や桜花は勿論だが、彼女も、男子達からは是非とも手に入れたい女の1人だった。

そんな中、沙那が女子生徒の集団から抜けて、男子生徒の集団に近づいた。

神影を今日の昼食に誘うためだ。

 

だが、あちこち見回しても神影は居らず、沙那は怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「あれ?神影君は?」

 

辺りをキョロキョロ見回しながら、沙那は男子達に訊ねる。

 

『『『『『………………』』』』』

 

だが、その問いに返事は返されず、男子達は、ただ黙っているだけだった。

 

「……………?ねぇ、皆どうしたの?なんで黙ってるの?」

 

尚も訊ねる沙那だが、返される反応は変わらず、無言だ。

 

「おや、女性の方々も、授業を終えたようですな」

 

其処へ、まるでタイミングを見計らったかの如く、グリーツがぬうっと姿を表した。

 

「あの、宰相さん。神影君は何処に行ったんですか?」

沙那はグリーツが来ると、開口一番に神影の所在を訊ねる。

 

「ああ、それなのですが…………」

 

そう言って、グリーツは少しの間を空けてから口を開いた。

 

「異世界人、ミカゲ・コダイは、先程、城を去りました」

「えっ!?」

「う、嘘ッ!?」

『『『『『…………ッ!?』』』』』

 

グリーツの言葉に沙那と桜花は酷く動揺し、他の女子生徒も驚いている。

それは奏も同じで、目を見開いていた。

 

「こ、古代君が……………一体、どうしてですか!?」

 

自分の生徒が1人居なくなった事を受け、シロナはグリーツに詰め寄る。

 

「ミカゲ・コダイは、どうやら自分がクラスの中で足手まといになっている事に負い目を感じていたようでしてな。授業が終わって戻ってきた後、別行動に移りたいと言ってきたのです」

「そんな……………何かあったら相談してと言ったのに、どうして………」

シロナは後退りしながら、相談してもらえなかった事に表情を悲しみに歪める。

自分の生徒が1人居なくなったのは、生徒思いな彼女にとっては余程ショックだったのだろう。

 

シロナの悲しみように、流石の男子達も先程のような態度は取れないようだ。皆して黙り込み、シロナを見ている。

そんな中、1人の女子生徒がこんな発言をした。

 

「本当に、彼は自分から出ていったのですか?」

 

そんな発言に、謁見の間に居る全員の視線が、その声の主に集中する。

彼等の視線の先に居たのは、奏だった。

 

「男子達や貴方が、彼を追い出した……………と言う事はありませんか?彼は以前から、男子達からぞんざいな扱いを受けていましたし、貴方も、古代君への態度が私達より悪かったですよね?」

「そ、それは…………」

 

奏はそう言って、男子達とグリーツに鋭い視線を向ける。

彼等は彼女の視線に怯み、押し黙る。

神影が自ら出ていったのは事実だが、彼が出ていく事に反対する者は居らず、寧ろ、彼が出ていく事を喜んでいたのだから、彼女の意見に、誰も反論出来なかった。

「そんなの……酷いよ………」

 

不意に、沙那が声を震わせながらそう言う。

全員が沙那に視線を向けると、彼女は俯いて震えていた。

 

「どうして!そんなに神影君に酷い事をするの!?神影君が何をしたって言うのよ!?」

 

沙那の悲痛な叫びが、この謁見の間に響き渡る。

 

「神影君は、他の男子達より何倍も良い人だった!私を"天野沙那"として見てくれた!特別扱いせず、普通に接してくれた!それに比べて男子達は、私の顔や体しか見てなかったじゃない!私は今まで、ずっとそれが気に入らなかった!目障りで仕方無かった!だから神影君以外の男子と話したくなかったのよ!」

 

此処で、沙那の本音が炸裂する。

長い間、ずっと抑え込んできた怒りが、此処で爆発したのだ。

相変わらず黙っているだけの男子達。だが、それは沙那にとっては火に油だった。

 

「………大嫌い」

 

小さく、でも、はっきり聞こえた単語に、その場に居た全員が反応する。

 

「嫌いだ………嫌いだ!嫌いだ!!神影君に酷い事した男子達も!今謹慎を受けてる富永君達も!男子なんて、皆嫌いだ!!!」

 

そう叫び、沙那は泣きながら謁見の間を飛び出していく。

 

「ちょっと、沙那!?」

 

飛び出していった沙那を追って、奏も謁見の間を出ていく。

 

そして、この謁見の間に少しの沈黙が訪れたのだが、それは早くに破られる。

 

 

「ステータスが低い事が…………勇者じゃない事が………そんなに、悪い事なのですか……………?」

 

沙那に続いて、今度は桜花が口を開く。

 

「し、しかしですな。勇者として召喚した以上、それに相応しい能力を持っていないと困る訳d……「関係ありませんッ!!」……!?」

『『『『『『『ッ!?』』』』』』』』

 

グリーツの言葉を遮って、桜花が怒鳴った。

普段は温厚で、滅多に怒らない彼女が怒鳴った事に、グリーツは勿論、クラス全員が驚いている。

 

「そんなのは貴方の都合ではありませんか!勝手に呼び出しておいて、勇者じゃなければ要らない?ふざけないでください!」

 

そう言われ、グリーツは黙り込んでしまう。

だが、桜花の怒りは彼に怒鳴っただけでは鎮まらない。

今度は男子達に矛先を向けたのだ。

 

「貴方達もです!何時も古代さんを邪魔者扱いして、先日は富永さん達が、古代さんの魔力や魔耐が低いのを知っていて魔法をぶつけていたのに、誰一人として助けませんでしたよね!?彼処で古代さんが亡くなるような事があったら、どうするつもりなのですか!『見ていただけ』では済まされないのですよ!!」

「で、でも、富永達は『ただの稽古だ』って……………」

「1人を相手に複数で寄って集って魔法をぶつける事の何が稽古だと言うのですか!!」

 

往生際悪く言い訳しようとする慎也を、桜花が封殺する。

 

それからも桜花は何かを言おうとしたが、埒が明かなくなったためにシロナによって止められた。

そして近々、神影をこの国に連れ戻すために彼の捜索をする事を男子達に納得させ、この場は一先ずお開きとなった。

 

暗い雰囲気で食堂へと向かう女子生徒達。

 

そして彼女等が去った後には、桜花と沙那の物言いに、悔しげに歯軋りするグリーツと、握り拳をワナワナと震わせ、この場に居ない神影に理不尽な怒りを抱くF組の男子達が残された。




サイドストーリーが本編より長いってどうなのさ……

神影「俺が知るかよ」
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