航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第77.5話~その頃の勇者達と、新たな人型戦闘機~

これは、神影とゾーイ、そしてアドリアの3人が、デートのためにフュールの町を訪れた日、3人に絡んできた慎也を神影が撃退した後の出来事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~………あのお兄さんが、噂のガルムの隊長さんかぁ………」

 

慎也を殴り飛ばした神影が、機体を展開して垂直に離陸するのを、1人の女性が見ていた。

ショートボブの茶髪に赤い瞳を持った、スレンダー体型の美女だ。

 

「空を縦横無尽に飛ぶ上に攻撃能力を持つ魔道具を持ち、どんな依頼もその日の内に解決する冒険者パーティーの隊長…………そして、メンバーは皆、彼と同じ力を使える………このパーティーに入ったら、私も…………」

 

胸を下から持ち上げるようにして腕を組み、飛び去っていく神影を興味深そうに眺める。

 

「ミカゲ君、か……フフッ…………面白い人、見ぃ~つけた………」

 

ご機嫌な様子で、誰にともなくそう言うと、女性は踵を返し、人混みの中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此処は、フュールの町に幾つもある宿の内の1つ。

其所はフュールにある宿の中でも最大で、今はF組の勇者一行や騎士団で貸し切り状態になっている。

 

その一室で、1人の男性が椅子に腰掛け、1枚の羊皮紙を眺めていた。

騎士団長のフランクだ。

 

彼は、日々の訓練でのF組の面々の様子を見ては、律儀にも記録しているのだ。

 

「やはり、マサヨシやワタル、サナ、オウカ、カナデの5人がトップのようだな。今日、この5人がレベル100になったようだが………」

 

フランクは羊皮紙を机に置く。

「まさか、あのミカゲが5人より遥か先に進んでいたとは思わなかったな…………」

 

そう呟き、フランクは椅子の背凭れに凭れ掛かった。

 

フュールでの訓練が始まってから矢鱈と訓練に打ち込み、今日も、訓練は休みなのにも関わらず訓練に励んでいる5人の姿を見て疑問に思ったフランクは、試しに訊ねてみたのだ。

 

その際に神影の事を聞き、驚きのあまりに腰を抜かしたのは、彼の記憶にも新しい。

 

「さらに驚いたのは、あのラリー・トヴァルカインが居た事だな………まさか、あのガルムのメンバーになっていたとは…………」

 

フランクは独り言を続けた。

騎士・魔術師士官学校では、卒業生は国の騎士団や魔術師団、このどちらかへの入隊が義務付けられており、本来なら、ラリーは魔術師団に入る筈なのだが、例の事件によって力を失い、士官学校の現役生徒は勿論、OBからも蔑まれている彼を引き入れようとは思わず、魔術師団長は彼の入隊を断固として拒否。

左遷されたかの如く、ほぼ経験の無い騎士団へと回されてきたラリーだったが、彼の悪い話ばかりを聞かされていたフランクも、冷たい態度で彼の入隊を拒否してしまったのだ。

 

そうして、行き場を失ったラリーはルビーンへと帰る事となり、それから、神影と共に冒険者になって、今ではガルム隊のメンバーとして、その名をエリージュ王国中に轟かせている。

 

おまけに、F組の面々と神影が再会した時、秋彦がラリーの魔法で呆気なく叩きのめされた事も聞かされている。

 

「今の2人なら、ミカゲなら勇者一行に、ラリー・トヴァルカインなら魔術師団か騎士団に入っても、十分やっていけるだろうな………だが、2人がそれを受けてくれるとは…………思えんな」

 

ラリーは騎士団や魔術師団から追い出されたも同然である上に、神影は自らF組を去ったものの、宰相やF組の男子達から追い出されたものとも言える。

即ち、経緯こそ違えど、彼等は城から追い出されたようなものなのだ。

そんな彼等に、『お前達の力を頼りたいから、自分達の側に戻ってこい』等と言えばどうなるか?

答えは単純明快。

 

「…………殺されてもおかしくないな」

 

自嘲気味にそう呟いていた時、フランクの部屋のドアがノックされた。

ドアを開けると、其所に居たのは宿の従業員と思わしき男性が1人と、フュールの衛兵2人だった。

 

「一体、何事だ?」

「それが…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衛兵2人に連れられて宿の受付にやって来たフランクだが、其所には既に、F組の面々が集まっており、人だかりを作っていた。

そんな彼等に近づき、この人だかりが出来た原因を確かめようとするフランク。

 

そして、この人だかりの最前列へ到達すると、その原因が明らかになった。

 

「…………シンヤ?」

 

縄で両手を拘束され、赤いシミを作った包帯を鼻に巻き付けている慎也が居たのだ。

怪我をしているのと、普段掛けている黒縁の眼鏡が無くなっているのを見て、何か、いざこざにでも巻き込まれたのだろうと予測するが、現地人より遥かに高いステータスを持っている勇者が一般人と喧嘩して、こんなにもボロボロにされるのかと、疑問が沸き上がる。

 

一先ずフランクは、慎也を拘束している縄を解き、回復師の天職を持つ者に治療魔法を掛けさせ、彼から詳しい話を聞く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治療が終わると、フランクは慎也から話を聞いた。

 

慎也は、『町を散歩している時に神影に会い、戻るように言ったものの拒絶され、其処から喧嘩に発展し、一方的に殴られた』と話した。

実際は全く異なっており、彼が神影からゾーイとアドリアを寝取ろうとして起こしたいざこざが原因なのだが、神影に殴られたと言うのを利用して、彼の立場を悪いものにしようと考えつき、そのように言ったのである。

 

 

「最低だな彼奴。人様の好意を無下にした上に殴るとか」

「全くだ。無能な奴が帰ってこれるチャンスだってのになぁ」

「中宮が態々『帰ってこい』って言ったのに、自分でチャンスを無駄にするなんて……………だから彼奴はゴミなんだよ」

「どうせ、自分には戦闘機があるから大丈夫とか思ってるんだろうよ」

「この前会った時もそうだが、戦闘機使えるからって調子に乗るなって話だよな」

「全くだ。それ以外何の取り柄もねぇ癖に…………」

 

これ見よがしに神影を貶す男子達。

彼の帰還など少しも望んでいない癖に、勝手極まりない言葉を交わしている。

そんな彼等を見る女子生徒達の視線には、最早軽蔑や諦めの色すら見えていた。

 

そんな時だった。

 

「おい、お前等。そんな大勢で屯されたら邪魔なんだけど。通れねぇだろうが」

 

後ろから、女性の声が聞こえてくる。

彼等が振り向くと、其所には若干の癖っ毛が見えるショートボブの金髪に、金色の瞳を持つ女性が立っていた。

真っ黒の作業着らしき服に身を包んでおり、服の胸の部分に出来ている2つの山から、彼女のスタイルの良さが窺える。

 

軍隊に居そうな、凛とした雰囲気を醸し出す女性の姿に、男子生徒の殆んどは神影を貶す事すら忘れて鼻の下を伸ばし、女子生徒も、一部が彼女に見惚れていた。

「何だよ?そんなボーッとして…………変な連中だな。つーか退けっつったろうに」

 

苛ついた様子でそう言うと、女性は溜め息をつきながら、F組の面々を避けて歩き、受付カウンターに立っている男性に声を掛ける。

 

「この町に、ガルムって冒険者パーティーの隊長さん………まあ、ミカゲって言う奴で、ソイツが居るらしいんだが…………この宿に泊まったりしてねぇか?」

 

受付の男性に問い掛ける女性に、F組の面々は目を見開いた。

この女性は、どうやら神影をご指名のようだ。

 

「い、いえ………彼はこの宿には来ておりません。それに、この宿は現在、勇者様ご一行と王国騎士団の方で貸し切りになっておりますので、彼等以外の宿泊客は…………」

「そうか…………ソイツは失礼したな」

 

そう言うと、女性はF組の面々とフランクの方をチラリと見た後、再び受付の男性に向き直って軽く頭を下げると、踵を返してF組の面々へと近づいてくる。

どうやら宿を出るつもりらしく、F組の面々を避けて、ドアに手を掛ける。

 

「すまないが、少し良いか?」

「あ?」

 

フランクが、その女性を呼び止める。

 

「んだよ?エリージュ王国の騎士さんが、オレに何か用か?」

 

振り返り、ぶっきらぼうな口調で言う女性。

そして、まさかの一人称が"オレ"である女性、所謂"オレっ娘"の登場に、オタクの男子達は目を輝かせる。

慎也もその1人で、この女性も自分のハーレムに……と考え始める。

 

そして、彼女の名前を聞こうとした慎也だが、それより若干早いタイミングで、フランクが言葉を続ける。

 

「ミカゲを知っているのか?」

「あ?そりゃ知ってるよ。つーか彼奴、今じゃエリージュ王国の連中で知らねぇ奴は居ないぐらいに有名だぜ?ミカゲって奴も、ソイツが率いるガルムって冒険者パーティーもな…………お前等も聞いた事ぐらいあるんじゃねぇのか?」

 

分かりきった事をと言わんばかりの表情を浮かべて、女性は言った。

 

「ああ、知っている…………ところで、ミカゲとはどういう関係なんだ?もしかして、知り合いなのか?」

 

女性の言葉に頷きつつ、フランクは疑問を投げ掛ける。

 

「いいや。残念ながら、実際に会った事はねぇな」

 

そう言って、女性は首を横に振る。

 

「だが、どうやら彼奴とオレは、波長が合いそうなんでな……………ちょっくら、会いに行こうかと思ってたのさ。まあ、残念ながら此処には居なかったみたいだがな………」

 

そう言うと、女性は踵を返してドアに手を掛ける。

 

「さて、もう良いだろ?オレは行かせてもらうぜ。彼奴が居ないってんなら、これ以上此処に留まっても意味ねぇからな」

「あ、おい!」

 

未だ聞きたい事でもあったのか、呼び止めようとするフランクだったが、女性は彼の制止を無視して宿を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ…………」

 

宿を後にした女性は、そのまま町を出ると、町を囲む壁に凭れ掛かった。

 

「あの宿の従業員の口振りからして、あの屯してやがった連中が勇者で間違いないだろうが…………ありゃ完全に駄目だな。男共なんて鼻の下伸ばしやがってたし………全く、"ヒューマン族の希望"とか言われてる勇者ともあろう連中があんな体たらくじゃ、この国、終わりだろうな」

 

忌々しげに言って、その女性は壁から背を離す。

 

「まあ、そんなモンは"人型戦闘機"のオレにとっちゃ、どうでも良いんだがな…………」

 

自らを"人型戦闘機"と称した女性は、周囲に誰も居ない事を確認する。

 

「さて………んじゃ、ミカゲを探すとするか」

 

そう言うと、女性は目映い光を放つ。

周囲に人が居れば、あまりの眩しさに間違いなく目を覆うような光が消えると、その女性の体に、機械染みたものが装着されていた。

コレが、彼女が使える戦闘機である。

 

「彼奴が率いるパーティーは、皆オレみたいな奴ばかり…………なら、オレも受け入れてくれるかな…………?」

 

そう言うと、女性は 足の裏からタイヤを出現させると共に、エンジンを始動させる。

甲高い音が其処ら中に響き渡り、アフターバーナーが火を噴く。

 

「良し…………行くか」

 

そう言って飛び出した女性は、轟音を響かせながら離陸して、何処へと飛び去っていった。

 

この女性と、フュールの町中で神影を見た女性。

この2人が神影と接触するのは、この日から数日後の事である。




今回の話で、本作では最後の擬人化架空機の登場です。

さてさて。彼女等は其々、何の機体になるのかな…………?
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