「さて………」
ガルム隊加入が決まり、他の冒険者達に囲まれ、歓迎されているグランさんとギャノンさんを見ながら、俺は僚機念話でラリーに連絡を入れた。
《ラリー、ちょっと良いか?》
《ん?どうしたの?》
話し掛けると、直ぐに返事が返される。
《お前等、今何処に居るんだ?》
《宿だよ。ゾーイとアドリアも居る》
良し、それならちょうど良いな。
《悪いが、今からギルドに来てもらえないか?ガルム隊メンバー全員で》
《ああ、別に良いけど…………なんで?》
《実は、また新しい人型戦闘機が見つかったんだよ。2人も》
《ええっ!?それは本当かい!?》
心底驚いた様子で、ラリーが聞き返してきた。
《ああ、本当だよ》
そう言って、俺は2人の事を話した。
機体の事も知っているため、その事も添えて伝える。
《成る程…………まあ、
ラリーの声色が、驚きを通り越して呆れの色を見せている。
余程ショックが大きかったのだろうが、それだけでこうなるようでは未だ素人だ。
エースコンバットには、オリジナル機体や、その機体が持つ特殊兵装以外にも、トンでもないチート兵器がゴロゴロ転がってるからな。
機会があれば、教えてやるか。
《まあ、取り敢えず話は分かった。今からゾーイ達を連れて、そっちに行くよ》
《了解》
そうして、俺とラリーは通信を終える。
「さて、それじゃあ次は…………」
そう呟き、俺は2人を呼び寄せる。
「2人のステータスを見せてもらえますかね?一先ず、現段階での強さを知っておきたいので」
俺はそう頼んだ。
「うん、良いよ」
「そこそこ強いって自負してるからな…………驚いて腰抜かすなよ?」
グランさんは微笑を浮かべて頷き、ギャノンさんもからかうような笑みを浮かべながらそう言って、ステータスプレートを見せてくれた。
2人のステータスは、其々以下の通りだ。
名前:グラン・ノスト
種族:人型戦闘機(CFA-44 Nosferatu)
年齢:23歳
性別:女
称号:託すもの
天職:航空傭兵
レベル:265
体力:7000
筋力:6500
防御:4800
魔力:5900
魔耐:6000
俊敏性:8500
特殊能力:言語理解、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化、錬成『アレスティング・ワイヤー』、錬成『カタパルト』、無人機展開、
名前:ギャノン・レイフェル
種族:人型戦闘機(X-49 Night Raven)
年齢:21歳
性別:女
称号:濡烏
天職:航空傭兵
レベル:265
体力:7500
筋力:7200
防御:6900
魔力:6000
魔耐:6400
俊敏性:7000
特殊能力:言語理解、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化
「………………マジですか?」
何コレ?ガルム隊女性メンバーの中では一番レベルが高いエメルを超えてるんですけど?
「…………何モンだよアンタ等?」
「「……………?」」
つい本音を呟いてしまい、それを聞いた2人は首を傾げていた。
「え~、今日からガルム隊に加わった、グラン・ノストさんとギャノン・レイフェルさんだ」
「よろしくな!」
さて、あれから少ししてラリー達が到着したのもあり、俺は2人を紹介していた。
ギャノンさんが快活な笑みを浮かべながら言い、その横ではグランさんがニッコリと笑みを浮かべて、軽く手を振っている。
それからガルム隊のメンバーを紹介して、軽い交流会を開く。
2人は早くも架空機組と打ち解けており、女性ならではの話題で盛り上がっていた。
それを見た俺とラリーは、その場からそそくさと退散した。
「それにしても、まさか新入りが来るとは思わなかったよ」
ギルドの外に出ると、壁に凭れ掛かったラリーがそう言った。
「驚いたか?」
「そりゃもう。内容を聞いた時は、何の冗談かと思ったね」
苦笑を浮かべて、ラリーがそう返してきた。
それから2人のステータスを話し、それをエメルが知ったら、ある意味ショックを受けそうだと話していると、見慣れた3人の女性が通り掛かった。
アルディアの3人だった。
「あら、ミカゲにラリーじゃない」
俺達に気づいたソブリナが声を掛けてきた。
「おっす」
ギルドの壁に凭れながら、俺はそう言った。
恋人になってからと言うもの、こうして偶然でも彼女等に会えると、自然と嬉しくなる。
「ミカゲ………!」
目を輝かせながら、ニコルが俺に、真っ正面から飛び付いてくる。
受け止めて頭を撫でてやると、抱きつく力を強くして、頬を俺の胸に擦り付ける。
コレが、最近のニコルの甘え方だ。
めっちゃ可愛いから和むのだが、その小柄な体には似合わない豊満な胸が、ムニュムニュとダイレクトに当たる訳でして…………
「ちょっとニコル!アンタだけ抱きつくなんてズルいわよ!」
そう言って、エリスが俺の左腕に抱きついてくる。
「貴女も人の事言えないじゃない…………」
ヤレヤレと肩を竦めつつ、ソブリナが右腕に抱きついてきた。
「相変わらず、何処でも見せつけてくれるじゃないか」
ラリーがそう言い、俺は苦笑を浮かべた。
「ああ、そうだ。3人にも紹介しないとな」
『『………………?』』
そう呟くと、3人は首を傾げる。
俺は、ガルム隊に新メンバーが加わった事を話し、再びギルドに入ると、3人にグランさんとギャノンさんを紹介した。
ラリーと話している間に随分と話が盛り上がっていたらしく、エスリアや他の女性冒険者が集まっていた。
それから少しして、こう言ったイベントには目がないオッチャン冒険者の提案で、2人の歓迎会を開く事になった。
それにしても、ガルム隊のお帰りなさいパーティーや、今までに開いてくれたパーティーと言い、この歓迎パーティーと言い、皆手際良すぎじゃね?
俺が唖然としてる間に、9割程終わってるし。
それから、テーブルの上に並べられる料理の数々…………明日、ギルドで使える食材が底を突いていないか心配だな。
そして夜、未だパーティーで盛り上がっている中、俺はこっそり外に出て、風に当たっていた。
凭れ掛かっている壁越しに、パーティーの喧騒が聞こえてくる。
「ルージュって、本当に良い町だよな…………」
空を見上げ、俺はそう呟いた。
人間主義を掲げている、このエリージュ王国にある町なのに、町の人達は懐が深くて、エメルやゾーイ、アドリア達みたいな人型戦闘機ですら受け入れてくれた。
俺達ガルム隊が何かの成果を挙げると、まるで自分の事のように喜んでくれる。
最早、この町の住人全員が、1つの大きな家族なのではないかとすら思えてしまう。
「"家族"、か…………」
この世界に召喚されてから、1年以上の年月が流れている。
あれから日本では、俺達F組の面々はどのような認識をされているのだろうか?
未だ、捜索は続けられているのだろうか?
それとも死亡扱いされたのだろうか?
はたまた、召喚される際に最初から居ない者とされたのか?
今になって、そんな疑問が次々と沸き上がってくる。
この世界での生活にはすっかり慣れたが、俺の故郷が日本である事は変わらない。
何時かは、日本に帰りたい。
だが…………
「どうすりゃ良いのかねぇ…………」
あの
その役目を終えた時が、俺達が日本に帰れる時だとも。
そもそもエリージュ王は生きてるのかが問題だ。
何せ、俺達はエリージュ王に会った事がないからな。
念魔石みたいな通信手段があるんだから、せめて映像を使った通信ぐらいは出来ないのかな………………
「…………いっそ、この世界の魔王にでも聞いてみるか?」
なんて、出来る筈の無い事を呟いてみる。
魔族大陸はこの大陸から非常に遠いが、戦闘機でかっ飛ばせば1日もせずに着くだろう。
だが、着いたところで終わりだな。曲者としてブッ殺されるがオチだ。
「ヤレヤレ、どうしたものか………………ん?」
そう呟いた俺の足元に、1枚の手紙がヒラヒラと舞い降りた。
拾い上げて上を見ると、1羽の鳥が俺の頭上を旋回している。
そして、その鳥は俺が手紙を受け取ったのを見ると、そのまま何処へと飛び去ってしまった。
「何なんだ?あの鳥は」
そう呟きながら、俺は手紙へと視線を落とす。
その手紙には、"ガルム宛"と書かれていた。
「成る程、あの鳥は伝書鳩みたいなヤツだったのか」
そう言ってから、俺は手紙の封を開けて中身を取り出す。
折り畳まれた便箋を取り出し、文章に目を通す。
それは、クルゼレイ皇国の女王陛下からの手紙だった。
便箋には先ず、いきなり手紙を出した事への謝罪。その次に、長らくクルゼレイ皇国に戻らない俺達ガルム隊を気遣うような文が綴られていた。
それから、俺達が居なくなってからのクルゼレイ皇国の様子も書かれていた。
どうやら、中々俺達が戻ってこないので、姫さんが相当寂しがっているらしく、このまま戻ってこないのではないかと不安がっているようだ。
まあ、そんなこんなで文章が綴られていた訳だ。
それで、この手紙の核心とも言える文を見ると、俺は眉をピクリと揺らした。
その文は、簡単に纏めるとこうだ。
『クルゼレイ皇国とガルム隊の今後の関係について大事な話があるので、1度、国に戻ってきてほしい』
こんな内容の文だったのだ。
「それにしても、変な内容だよな。"クルゼレイ皇国とガルム隊の今後の関係"とか………」
一体、女王陛下が俺達に何を言うつもりなのかは分からんが、取り敢えず、相手は俺達が戻ってくるのを望んでいるようだ。
「まあ、明日にでも行くか…………連中の具合次第だが」
俺はそう呟いて、ギルド内の喧騒に耳を傾けた。
相変わらず、中は騒がしい。
「あ、相棒!そんな所で何してるのさ!?早く此方来てよ!君の恋人さん達が酔っ払って、『ミカゲは何処行った~』とか何とか言ってご立腹なんだから!」
ギルドの扉を蹴り開けて外に出て来たラリーが、俺にそう言った。
「あいよ、ラリー。今行く」
詳しい事は、また後にすれば良い。先ずは、目の前の問題を片付けるとしよう。
便箋を封筒の中に戻して収納腕輪に入れると、俺はギルドへと足を踏み入れるのであった。
その後、泥酔状態になっている恋人達から熱烈なキス攻めを受けて他の冒険者から冷やかされ、その意趣返しとばかりにキスのお返しをしたら、6人全員がビクンビクンしながら幸せそうな表情で気絶したのは余談である。