Fate/SN GO【本編完結】   作:ひとりのリク

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五節 未来を背負い続けて

 

壱、女人の土俵入りを認める。

 

弐、場外で敗北とする。

 

参、敗北即ち退去とする。

 

『幽けき桃時山の殺鬼土俵』における決まり事。

 

禁じ手は既に両者の脳内に共有された。神事に仇なす行為は使用不可、英霊同士の規格外の取組にて。

 

発気揚(はっけよい)────」

 

桃時が両手を土俵に付ける。

マシュは自分のタイミングで始めるために、敢えて後手を選んだ。目の前で構える漢の熱気を浴びて、より深く姿勢を沈み込ませる。吹き飛ばされないように、そして気迫を爆発させるために。

 

「やあッ────!」

 

土俵を叩き、巨岩を砕かんとする勢いで掌を突き出した。

掴まれては力負けするのを隆起した筋肉が報せてくる。初手は相撲界最凶の打撃、鉄砲を選び。

 

「肩と腰が乗ってねェ。鉄砲はこうだ」

 

額で軽々と受け止めた桃時は、間髪入れずに左手を構え、そして。撃鉄を落とした音と遜色のない速度を伴って左掌をお見舞いした。

気をつけろ、の一言も挟む余地がない。火花が散ったと錯覚したのは、宙に巻き上がる砂埃のせいで。打撃音は子が(いわお)を叩くような瞬きほどの響きだった。

 

「おっっ…こいつァ!」

 

土俵に減り込む勢いで踏ん張り、負けじとマシュも額で受け止めていた。一歩間違えれば首が折れていた。それでも額を選んだのは、タイマンを選んだ敵への敬意に他ならない。

 

「たアアアアアアアアッッ!」

 

反撃に対する追撃。

額から流れる血を吹き飛ばし、足腰を落として桃時のアドバイスに習う。勤勉過ぎる適応力に気迫が相乗して、本場を知った少女の鉄砲が打ち出された。

着弾点は心臓部、岩盤を砕いた手応えを感じながら桃時の表情を伺うと、口元から流血しつつ笑っている。土俵際まで飛ばされたというのに晴れ晴れとしていて。

 

迦陵頻伽(かりょうびんが)がいたら、お前さんみてぇだろうな」

「かりょ……それは、ありがとう…ございます?」

 

聞き慣れない言葉を使い、マシュに関心の高い視線を向け始めた。嫌な予感だ、立香は言い知れない苛立ちを覚えつつ、その言葉の意味を聞く。

 

「迦陵頻伽って?」

「空想の鳥。要は口説いてんの」

「あんにゃろ!」

「行ってどうする!落ち着け!」

 

思わず乗り込もうとしたところを神楽に止められる。立香だけではない。聞いていたらロマニやダ・ヴィンチだって怒る。マシュの愛され具合は大正文学よりも重いものなのだ。

 

「さあ、のこった────!」

 

桃時の掛け声は威勢を増し、メリケンを鳴らして盾も使えと囃し立てた。ここからは第二幕、迷うことなく背後に突き立てていた盾を手に取り、土俵では観ることのない得物の薙ぎ払いが炸裂する。

逃げ場なしの振る舞いは届かない。

右拳のストレート、ボクシングの見事な技術が大盾ごとマシュを弾き飛ばした。

 

土俵際の交代。

本来なら歓声が上がる熱い攻守も、マシュにとっては今際の際。土俵の外淵である勝負俵を足場にして勢いを殺せた。

だが、目前には土俵上の王迫る。その両腕はボクシングの構えで、両手に備えたメリケンサックに相応しい姿だ。土俵際でボクシング?ロープのない隅っこでどうやって躱せというのか。答えは限られてくる。

 

「やっ!!」

 

勝負俵を踏みしめて身体を前に蹴飛ばす。無謀な突撃に見えるが、マシュは易い行動をする子じゃない。伸ばしかけた手を下ろして、2人の衝突を見守る立香。

右拳を構える桃時に対して、マシュも右拳に力を込める。右と右、真正面から打ち合えば一撃K.Oは容易いが、リスクがデカすぎる。息を呑んだ瞬間、両者の右拳が放たれた。

桃時は利き足を土俵に根ざして右拳一直線に放ち。マシュは右腕を横に伸ばしてそのまま突進を続行した。

 

「ラリアットォ!?」

 

その場で一回転、百点満点の宙返り。

鼻から口から血を流して、マシュのラリアットが直撃した桃時は、脊髄から土俵に激突して悶絶している。

 

「マシュって繊細そうなわりに、アレよね。夜兎もびっくりの脳筋っていうか」

「あはは……格闘技マニアがウチに何人か居てね」

 

神楽の引きつった笑いに苦笑いで返す。豪快なマシュの攻撃方法は、カルデアに召喚された近接戦闘大好き聖女とか、救護イズパワーの婦長、筋力を対話と認識している英霊たちによる影響が大きい。

 

「……ねえ、これでマシュの勝ちじゃない!?」

 

そんな裏話はさておき、神楽の言う通りだ。

相撲は土俵に足裏以外が着いたら負け。桃時はこれで退場となる筈なのだが退去する気配はない。

 

「ルール弐を思い出してみろ」

「場外で敗北とする……ってことは」

「本来の相撲のルールじゃ勝敗つかねえらしい」

 

極端な話、土俵内なら逆立ちしても負けないんだ。

マシュは盾を構えている。起き上がる前に仕掛けて早々にケリをつけてもらう!

 

「マシュ、追撃だ!!」

「……躊躇っている訳じゃありません」

 

マシュは背を向けたまま答えた。自身でも分からないものに緊張していて、しっかりと敵を見据えている様子だ。そうさせる原因は間違いなく桃時にある。ダウンから起き上がろうとするボクサーのような姿勢というのに、マシュは防御の構えを解けないほど警戒させられている。

あんな体勢から攻撃できるってことなのか?

 

「ふ〜っ。決着まで駆け抜けようぜ」

 

直後、両手を着き、ブレイクダンスを彷彿とする挙動で回りながらマシュを右脚で蹴り上げた。

マシュの予想通り、この一撃は大盾で受け止める。大盾にぴったりと引っ付いた足裏は、右脚を囮にしたことを意味する。入れ替わりで跳ね上がる左脚に即座に反応したマシュだったが、大盾が持ち上がらない。

 

「なっ!?」

 

桃時の左手が大盾の下縁を掴んで大盾を離さず、更には蹴り上げの威力上げに利用した。

跳ね上がるマシュの顎。今度はマシュが宙を舞い、土俵に転がり落ちる。

人間のあるべき姿勢と逆さまになりながら、人間の最も強力な一撃を放てる脚を駆使する桃時。この一撃でダメージ差が帳消しにされかねない威力だ。

格闘技マニアがいれば、桃時の柔軟な動きをカポエラと評しただろう。

 

(土俵とメリケンサックに気を取られました…!)

 

口内の血を飲み込みながら盾を構えるマシュと、立ち直って姿勢を屈める桃時。

再び見合った両者、ひと呼吸。土俵の中心を挟んで視線を交わし、桃時が先に爆ぜた。

 

一歩踏み込めば拳が届くところに二歩飛び込んで、その盾邪魔だと言わんばかりの荒々しい殴り。ボクシングの打ち方を捨て、喧嘩腰の迫力だけで魅せるそれは、マシュの大盾を揺らして後退させる威力を待っていた。

叩き、叫び、闘争を求めて、マシュの行動を抑圧している。ここは土俵、外に出られないのは広々とした戦いが出来ないということ。そんな制限を受けずに戦ってきたマシュには不利もいいところだ。

それに加えて、桃時の荒々しい攻撃になにか隠されていることを感じ取っていた。だから大盾を構えて踏ん張っている。

 

相撲、拳闘、舞踊そして喧嘩。どんどん競技から離れていき、桃時の強さも比例して上がっている。

現代から神代、都会から山奥へ。野性に還っていくほど桃時の戦闘形態は馴染んでいるように見えた。

 

「踏ん張りすぎ」

「うぇっ!?」

 

かと思った矢先、この数十秒の猛攻から覚めた桃時は、深く腰を落とすマシュを見て大盾を抑えつけて内側に入り、細かくショートパンチを浴びせた。

大盾を手離してしまったマシュが土俵際に追い詰められる。今度は身を守る盾はなく、遠慮なく接近する。

桃時が拳を握った瞬間、内側を最短距離で駆け抜ける黒い鉄…マシュの右脚による上段蹴りが直撃した。

空振りする右ストレート。マシュの負けん気は盾を落とされても健在だと知らしめた。

 

(手応えはあります。だけど…!)

 

頬に蹴り跡を残された桃時は、犬歯を覗かせながら戦意を上昇させる。

土俵を双方譲らない。相手を叩き出すには、マシュの体力が尽き果てるか、或いは。

 

「俺さまが砕けんのは負けた時じゃねェ。

俺さまの魂が適任だって認めた時だけだ」

 

桃時へと江戸城に入るに相応しい者…強者として認めさせるだけの、心から納得させる戦いではければならないときた。

 

「タフだな」

「ムカつく」

 

土方と神楽、其々の感想は真逆のようで、桃時の精神を褒めるところが共通していた。

立香も同意見だ。取組前の宣言通り、強いヤツと未来を語るために立っている。桃時が納得しない限り、無理やり勝っても立香たちが未来を取り戻せることはないのだ。

 

「自分の意志があると言うのなら。正鬼と仁鉄の行動を止める側に立つ人間のはずです、桃時さん」

 

真っ直ぐな瞳で遠回しに、お前は正気じゃないと吠えたマシュに笑い返し、筋肉に力を篭めた。

拳を開いて突撃し、張り手の雨霰をお見舞いする。言葉に出来ない肯定を表すような、不自由な攻撃だ。

 

「漢は突っ張ってよオオオオオオ!!」

 

マシュは躱さない。避ければ盾を拾えるチャンスが作れるのに、その選択肢を捨てた。ここには居ない誰かに向けた抗議か、はたまた矛盾した行動をする桃時に自覚を促すためか。或いは、信念だけは貫きたいという桃時の心を買ったのだろう。

 

「その背中で倒れたヤツら引っ張りあげるのさ!

世界が倒れたんなら! 土俵ひっくり返すくれェ踏ん張って進んでくんだ!!」

 

一直線に迫る敵を真正面から迎え入れ、慣れない近接戦へと臨んだ。

桃時の巨岩をも貫ける張り手…鉄砲は一打で必殺の威力を誇っている。それが何十と連打出来るのだ、盾のないマシュは直撃で意識ごと吹き飛ばされるのが分かっていた。

 

「ハッ、ア、アアっ────!」

 

故に、相手から見て身体を縦に身構えて、身体の見える面積を減らすことで手数に対抗。踵と体重移動を活用したカルデア仕込みの挙動で、移動距離の稼げない土俵上での機動をカバーする!

 

鉄砲、紙一重で躱す。次、肘で重心をズラす。その次、肩を引き寄せて反対に避ける。次も、続々と躱していく。

 

円形の孤島、不自由な世界での戦法をカルデアでの経験則から即座に組み合わせ、自己流に昇華した。

想いをぶつけに来た桃時への最高の応えだ。世界を救うため、世界から授かったものをぶつける。立香があれこれと策略を巡らせる前に、マシュだけで解決してしまった。想いへの返答も、そして土俵上の結果もすぐに出る。

 

「マシュ……」

 

立香の呟きは肝心から。成長した後輩は遂に桃時の必殺を躱すだけでなく、足払いを仕掛けるまでに至る。崩れた体勢を見逃さず、一気に投げ飛ばした。

桃時は土俵上で踏ん張った。倒れる気配はない。マシュの攻撃では霊気に届かないほど硬いのだ。

 

後輩の想いに報いるため、魔術礼装を起動した。

オーダーチェンジは当然使えない。ガンドもだ、これを当てても桃時とマシュは納得しないだろう。

残された強化の魔術をここ1番で使う。最後のひと押しには足りると判断した。けど、もしも可能なら。桃時なら、その想いを抱いたまま…。なんて勝手な願望を抱いてしまったので、聞かずにはいられない。

 

「桃時!! 一緒に引っ張り上げよう!!!」

「あ? ンなこと今更……」

「僕たちが諦めない限り未来は取り戻せる!」

 

言葉では何度でも言える。

言葉だから嘘かは分からない。

立香が伸ばした手を、懐柔のためだと言い張れば終わることを。桃時はニカリと笑ってみせた。仲間内で誰も言葉にしなかった、有言実行してきた少年の夢物語に敬意を表する。

 

「…………ハッ。大馬鹿野郎だなアアアアアア!」

 

返事は行動で。

表情は提案を受諾しているのに、行動は真逆。立香の提案を拒否する宣言を、鉄砲玉にして掌に乗せた。

 

立場がそうさせるのか。違う、桃時は敵でしかなかった。中身が行動と噛み合ってくれない。土方 歳三の例…仁鉄への裏切りは二度も生まれないと分かり、心が寂しくなる。

 

「強化────!」

 

だが、マシュは確かに受け取っていた。桃時の微かな希望を、立香の狙い目を。場外で手を伸ばしていた立香が魔術礼装を起動し、マシュへと強化の魔術を付与する。

取組前、土方が魔術礼装の援護を提案した。刀が持ち込みありなら、ルールで禁じていない援護も許容範囲だと。半信半疑だったソレも、敗北条件のルールを確認して確信に変わった。

 

故にここ1番で援護し、マシュの膂力に躍動を上乗せする。桃時のあからさまな大ぶりの右に潜り込んで。

 

「や────!」

 

右腕を畳んで上半身を回し、強化を施されたマシュの強烈な肘打ちが桃時の顎を薙ぎ払う。

かくり、膝が落ちた。刹那、潜り込んでいる体勢を利用して、桃時の襟をしっかりと掴んだ。

 

「その心意気だ、こっちも託すぜ」

 

一投場外、文句なしの背負い投げが坂田 桃時を土俵の外へと追放した。

 

江戸城本丸御殿、玄関前の大一番、これにて決着。

 

「良い想いだ。悔いはない。

……消える前に聞きたいことあんだろ」

 

寝室を見上げる桃時は、先ほどまでの迫力が失せていた。退去直前で仁鉄の呪いが剥がれかけている。

半ば崩壊する身体を引きずって耐えているのは、この取組に対する懸賞金といったところか。

 

「桃時さん。坂田 銀時という方をご存知ですか」

「────!」

 

マシュは桃時の厚意に甘えて、最も重要な人物の行方を問う。神楽が身を乗り出すくらいに価値のあるもので、僕たちにとっては打倒すべき……。

 

「名前はぼかせ。正鬼のヤツ、その名前に過剰反応しやがる。すっ飛んでくるぞ」

「しらばっくれないで。江戸城のどこかに潜んでるって情報を掴んでるのよ。早く出しなさい」

「此処には居ない。仁鉄が鍛った形跡もないから、正鬼に聞くのが早いぞ。命の保障はないが」

「…じゃあ何か、野郎は逃げたってのかよ」

「俺さまが来たのはこの世界が塗り替えられたあと。類名の侍のことは教えてもくれん」

 

嘘は言っていないと思う。

けど、どうしよう。正鬼に致命傷を与えた、銀時の皮を被った何かがここにいなければ、元々のこの世界の問題は片付かない。

特異点の原因になっている正鬼のほうを解決出来ても、銀時を倒さなければ振り出しに戻りかねないんだ。

 

…………おかしい。

 

………かぶき町に戻るか考えないといけないのに。

 

……その必要はないって確信だけが胸の中にある。

 

…どうしてだろう?

 

「今は悩んでも仕方ない。正鬼に聞くしかないよ」

 

勝手に方針を江戸城の中に仕向けている。自然と口を突いて出た言葉だけど、疑問はない。…いいか。

 

隣を見ると、神楽は肩を落として桃時に興味を無くしていた。土方とマシュも同意してくれた。

 

「まだ空は曇っててよ。遠くまで見えんのも、大地のカラ元気でしかねえのさ。

お前さんらが行けば変わる。成せるさ」

 

桃時は右拳を突き出して激励を送ってくれる。

土方に向かって「テメェはもっと気ぃ引き締めろ」と指差して、大変不服そうな返事をしていた。

まだまだ元気で、本当はもっと戦えるであろう英霊に見送られながら、僕たちは江戸城の玄関へと歩き出す。

 

「未来を任せた」

 

ふと、懐に手を伸ばして数秒。

仕舞っておいた伍丸の◾️◾️が見当たらない。

誰かに預けた訳じゃないけど、気にしても仕方ないか。

 

この後、追いついた剣と合流して玄関を開け放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠に続く殺戮。未来永劫を約束された白世界。呪いを祓うために整えられた好待遇の大地に、1秒毎に鮮血が塗りたくられる。

殺戮の徒は呪いの使者に何万回と振るった拳を叩きつけ、臓物を撒き散らしながら死ぬ光景を見届けた。

 

「」

 

微かな嗚咽。呪いにあるまじき人間らしい顔を蹴り上げて、蘇った男を再び冥界に送り返す。

 

「ガ…………ッ……」

 

半年間だ。

半年間、この殺戮は続いている。

殺戮の徒、真祖正鬼は半年間、ずっと、有り余って漲る殺意の捌け口として、白世界にたった1人の呪い/人間を殺す。そして同時に命令してきた。

 

『諦めてよ』

 

『地球を助けて』

 

『家族が死ぬよ?』

 

『仲間が苦しんでる』

 

『死んだ魂も蘇ったよ』

 

『星崩しが見つからない』

 

命を手放す選択を、延々と。

 

呪いに懇願をして、死の痛みを。

 

延々と、永遠に続くと、心に擦り込む。

 

「────────しつこい」

 

長く暴虐を尽くしてきた真祖から、半年間聞くことはなかった拾った言葉。真っ白な長髪を逆立たせて、苛立ちを吐き捨てる。魔王の言葉だ、気を害した者は概念だろうと消滅を選んでいなければならない。

 

「此処は凡ゆる枷から逃れられる、地球最後の温情だよ。消滅を選べば白詛からも解放される」

 

この半年間、正鬼は毎日説明をした。理解を得ようとした。真祖の全力を何度も浴びせて、一瞬でもいいから楽になりたいと思う程の残虐を施した。

それでも呪いは、呪いに縛られている被害者は、地獄を手放さない。

 

「みんな頑張ってる。ね、君だけだよ。早く受け入れて。そうすれば白詛が消滅するんだよ、坂田 銀時」

 

半年間で初めての言葉、初めての休憩。

呼吸をする暇を与え、意志ではなく言葉を吐かせ、嘘の言葉を引きずりだすべく方針を変えた。

 

白世界に散らばった肉片が集まり、霧散していた意識が這ってひと塊りになる。彼方まで飛んでいった心臓も漸く戻ったタイミングで、呪いの使者…坂田 銀時の目蓋が上がる。

 

「────────」

 

心臓が機能を思い出す、くたびれた血液が流れる。

 

久方ぶりの呼吸、鉄屑を呑み込んだように喉が痛い。

 

何を言う、たった半年間で邂逅の機会が回ってきた。

 

地球を滅ぼしかけた贖罪にしては、些か短すぎる。

 

白詛が消滅する。それは希望でしかない。願いの部類だ。然し、選択肢にある。誰かが運んできてくれた。

 

「…………やっと」

「?」

「声を掛けたな、真祖」

「………」

 

掠れた声、いいや、信号と言う他ない雑音。正鬼の眼差しが銀時の意思を汲み取り、言葉に自動翻訳しただけの肺の音。邂逅1番憎い声を聞き届けて、魔王の眼差しとなり白世界を歪めた。

会話などしたくもない。そう言いたげに。

 

「返事は?」

 

厳かな問いかけに、痛んだ喉を鳴らす。

この痛みは始まりの鐘の音だ。

片付いた床には今度こそ青写真を貼り付けよう。

正鬼の気変わりが“外”の影響だということを魂が察した。全ての終着は直ぐそこに迫っている。

 

「通させて……もらうぜ。テメェのケツ、他人に見せんのが……俺ぁ大っ嫌いなんだ。

新八と、神楽じゃねェと、ケツ拭かせねえ…!」

 

坂田 銀時の胸の内に刻まれた契約(パス)が静かに灯る。

木刀を掲げて、やっと繋がった身体を起こして、坂田 銀時の眼差しが真祖正鬼を射抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






お久しぶりです、ひとりのリクです。
ちょっとしたご報告を。
2024年中の完結いけそうです。長らく執筆が止まっていた原因の四節と五節を書けたので、ここからはスムーズにいけると思います。

愚痴。五節のような、本命直前の戦闘が大好物なのでこういうシーンだけ永遠に執筆していたい。
大好物だけ執筆していたら話が進まず話が偏ってしまうので、筆の乗らない伏線張りや戦闘前の導入を書いて整えなきゃ…。こういうシーンが苦手なんですけど、苦手なことをやらなきゃ物語は終わらない。
これまでもそうでした、好きを書くために今日も苦手に着手します。そんな執筆活動中。

幣作をここまで読んでいただけで感謝します。
完結までラストスパート!
精一杯頑張りますので、どうか最後までお付き合いください。





【オマケ】
坂田 桃時のプロフィール

クラス:ライダー

身長:188cm 体重:100kg

出典:二次創作オリジナルキャラクター

属性:中立・善

好きなもの:相撲、家族、鬼ごっこ

嫌いなもの:鬼退治、雨雲

ステータス(村田 仁鉄ver)
筋力:D 耐久:C 敏捷:C 魔力:D 幸運:D 宝具:A

保有スキル(村田 仁鉄ver)
十界 四聖・仏:-
導く者に与えられる席。この席に座る者は十界のなかで最も少なく、時には空席だったこともある。
人格者であることを意味し、超越者であることを許された。
様々なバフを選んで5個まで取得することが出来る最上級のスキル。
仁鉄に反発して自ら封印した。

大赤熊のツメ:C
幼少期に相撲で倒した大赤熊から貰ったツメを、鍛治屋に頼んでメリケンサックにしてもらった。
他にも弓矢、短刀、笛、鍬がある。
ストックがあるので壊れても直ぐに補填出来るのが特徴。陰陽術との相性が良く、付与して怪異を殴ったりしていた。

童話の英雄:-
童話に語られるほど知名度がある者に付与されるスキル。知名度がない土地に召喚されても、本来の知名度補正を受けることが出来る。
仁鉄に反発して封印し、ステータスが下がっている。

陰陽道:-
結野晴明に匹敵する陰陽術の使い手。
村田 仁鉄のやり方に猛反対のため封印。


宝具(村田 仁鉄ver)
幽けき桃時山の殺鬼土俵:A
桃時山の大相撲『百鬼夜行』を勝ち抜いた逸話が宝具に昇華した。
無双の桃時を倒すべく怪異たちが人質を取り、褌だけで相撲勝負を求めた。陰陽術を身につけていた桃時は是を全て捨てて、裸一貫で朝まで戦い抜いたという。

銀の大地を魔改造して土俵を作るため、しこたま魔力が要る。十二の試練フル装填分くらい必要。コスパ最低最悪。半分は仁鉄への嫌がらせで真名解放した。
怪異の呪いを吸収、放出する特殊な陰陽術が組み込まれている。保有スキル『陰陽道』を封印していても適用されるため、立香がガンドを打っても通用しなかっただけでなく、マシュがガンドを受ける羽目になり……。


童話道歌の偶像檄:-
かつて屈服させた怪獣や怪異を召喚する。
魔力が許すのなら竜種も呼べる。召喚する怪異たちはマスターとの相性が悪ければ暴走するため、宝具使用前にしっかりと桃時と打ち合わせすることを推奨。
なお、仁鉄はこの宝具を再現出来なかった。
ライダークラスの所以である宝具。61話後書きの桃時のプロフィールと違うけどご勘弁を。


その他①
桃の木の下に捨てられていた生後間もない赤子を、近くに住む老夫婦が拾って育てられた。桃の木にちなんで桃時。
幼少期から力持ちの桃時は、村の困りごとをその腕力で解決して頼りにされ、餌を求めて山から降りてきた大熊を相撲で投げて追い払った。だが相撲や剣道などを習うことはなく、村で怪異や獣と戦いながらすくすくと成長を遂げる。
桃時は村の皆んなに愛される子だった。

その他②
噂を聞きつけた四代目結野晴明が村を訪れることで、桃時の人生はより波乱な人生へと進んでいく。
鬼退治のスペシャリストとなるまでを綴った物語が童話『桃の木』だ。
物語では触れられていないが、その後として十界の席に就いて政に参入していった。
坂田 銀時とは無縁。子孫とかではない。





【次回予告】
江戸城の玄関を潜ることに成功した立香たち。
異様な城内で彼らを出迎えた真祖正鬼と死徒仁鉄、最大の難敵と最後の戦いが勃発する。

「なぜ死徒を欲した。人類災星計画に必要なのか?」

ボロボロになっても戦い、手を伸ばせ。
真相に辿り着くために、声を張り上げろ。

「そもそも、カルデアが未来を取り戻したとして。
この世界が白詛によって滅びゆく運命は変わらない」

絶望を叩きつけられても、火花が闇に消えようと。

「天文学的数字。いいや、それ以下だ。地球が敢えて隙間を設定した。壁を越えるなど、前提が間違いだ。
何があろうとも坂田 銀時は地球の空気すら吸えない。大気圏外を永遠に彷徨うのがヤツの最期なんだよ」

その言葉が正しくあろうとも、理不尽な強さに押し潰されそうになっても。

「斬れやしない。お前さ剣、どこに刃を仕舞おうと息子斬る刀は持てやしないんだ」

真名を否定されても。

親子の絆を証明するために、江戸を守るために。

侍は決して魂を腐らせないと、ここで叫ぶんだ。


六節『人類災星計画』 2024.7.29(月) 摘出開始





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