これは生前の話だ。
蝉の声が遠退いて薄着から離れる時期だ。
怪談の見物に行ったあと、久方ぶりに仁鉄の工房を尋ねた。暫く仁鉄の鍛錬する姿を眺めていると、珍事に遭遇した。
「剣聖なんざ大雑把な定義だ。誰もが認める剣の達人はきっと、人知れず辿り着いて死んでる」
まだ鍛錬の途中だというのに槌を置いて語り出す異常事態。刀を鍛ち始めたら周りに目も向けない、刀バカな男の気まぐれに目を剥いて驚いた記憶がある。
まだ青年だというのに達観した精神を持つ男は、三十路手前の無気力な男のように立ち上がり、ふらりと歩いてきた。ある筈もない刀を振りかざされる気がして、思わず問いかける。
「いきなりなんだ……」
「名を馳せる必要はない。ただ、テメェが鍛った刀がくだらねぇ事に使われるのが我慢なんねぇ。
剣聖と認めた相手なら、その心配はない。きっと……いいや、なんの憂いもなく刀を鍛てる。
ただ一心不乱に刀を鍛ってみたいんだ」
言葉通りに聞けば呆れたもんだ。
ロクな刀も鍛てない鍛治屋が刀匠のような心配事を口にする。
いつも喋りかけても返事しないくせに何を言うんだ。この時代に剣聖に至った者は居ないのに。
「あの男…なわけない、度胸のない男だ。お前に深手を負わせられるヤツなんざ居ない。
とくりゃあ、黄泉都市の怪談か」
一発で
「…………珍しく喋ると思ったら。…なあ」
「喧嘩してから半年経った。たかだか半年だ。
なのにダチが10歳も歳食って現れた。怒り治まんねぇからテメェの野望ぶち撒けたのさ」
視線を手元に落とす。
多少なりとも大きくなった身長。鍛錬に磨きがかかった身体。剣聖について、自分の病いの在り方で意見が食い違い、大喧嘩してから顔を出さなくなったこの半年間で、絶対に手に入れることの出来ない成長。
それは病いが進行したことを意味していた。それも、一度は死ぬような、壮絶な闘病を。
当時、巷で噂になっていた怪談があった。
もう2度と現れない怪談、黄泉都市の残滓に入り、この病いの真相を得ようとした。
仁鉄との仲を戻せたら。きっかけ作りにと向かい、偶然にも都市に迷い込み、そして死んだ。手ぶらだ。
「知りたがってただろ、この病気のこと。剣聖云々には協力できねぇけど、伝説の都市になら…」
「鉄患い。お前の病気をそう名付けた」
「……良いじゃねぇか。お前らしい名付けだ」
言い訳がましい言葉に被せて、病いに名称を付けたことに一握りの希望を見る。もしかしたら、と。
「仁鉄、俺ぁ」
「胸中の企みを吐き出したのはよ、潰える直前に知って欲しかったからだ。
花火が空で一瞬の輝きを見せるように、しがない刀匠見習いが独り火花を散らせた。それだけだ」
だが、叶わなかった。
鉄患いという名前は、仁鉄なりの手向けだった。
「もう此処には来るな。
お前ェが眩しくて修行が捗らねェんだ」
剣聖の道を閉ざすと決めて、仁鉄との仲は決裂してしまった。
その後も何度か訪ねてみたが、陽射しを嫌う吸血鬼のように顔を見せることはなかった。
火花散る鍛治工房で、きっと男は独り、生涯を賭して理想の刀を鍛ち続けていた。
「鍛つしかねェ。自分で、剣聖、剣を」
己が満足する侍に出会う日を、夢見て。
▼
生命を燃料に火花が散る。
鼻腔に突き刺さる臭いは思考を赤色に塗り潰す。向こうの景観を揺るがす熱気が、一瞬にして2人の身体から生命を噴出させた。
身体の原型を留めたまま床に転がり落ちる。
「ひ、土方さん!!!!」
仁鉄のことなんて考えずに駆け寄る。
いつ爆発するかも分からないのに。止める者はいない。3人とも、安全確認も忘れていた。
幸いにも、顔を認識できるくらいの傷で済んでいる土方は、囮のために生かされた訳ではなかった。もし仁鉄が本気なら今頃は……。
「…大丈夫です、息はあります」
そう考えつくより早くマシュが報告する。
意識はないが浅く呼吸はしている。焼け焦げた口の隙間から唸り声のような呼吸が繰り返されていた。
表皮の損害は爆発した光景に反して少ない。点々と焼け焦げた痕はあるものの、素人目でも重症より軽いと言える。それでも土方は気絶している。
「なんで爆発したのよ……」
神楽の疑問に短く「あの火花を浴びたからだ」と言い当てた。目を見開いて驚く2人に点々と焦げた痕を指を差せば、すぐに2人とも合点がいく。
「これも鉄患い…そうだろ」
「私の散らした火花は、人間の皮膚に付着すると患部となる。この槌で私を鍛錬するとな、共鳴して患部が鉄患いを発症するのだ」
「じゃあ土方さんは…」
「死徒に近づいた。……筈だが、土方歳三の霊気が守ったな。ヤツの宝具が消滅しただけだ」
羽織りの恩恵を無くした土方は、もう立ち上がることさえ困難に…!
「その男は回収する。貴様らは死ね」
そう言って、錆びが落ちて刀身の形が浮かびあがってきた刀を振りかざし、剣が斬撃を阻んだ。
仁鉄は目下の剣を一瞥する。嫌悪感たっぷりの眼差しをぶつけて、当人同士にしか分からない言葉を交わして。剣は唇を噛みながら返事をする。
「火花に包まれて、お前ェの想いを見たよ。
……すまない。刀を握ってやれなくて」
鉄患いが消失して、死の渦のなかに飛び出した。剣が見た過去から何を察したのかは明白で、仁鉄は苛立ちに心を荒立たせる。
「鉄患いに魅入られた。俺らの時代、人外の強さを誇る侍はいても、剣聖には届かない。
握ってほしいじゃねェかよ、自分の作品を、歴代江戸最高峰の侍に! お前こそ相応しいんだ」
仁鉄の瞳は光を直視していた。
いいや、光しか見ていなかった。剣聖という憧れを待ち続け、想い続けた果ての死徒化。人間の頃から何一つ変わらない憧れを、志村剣に見続けて、積年の怒りを吐き出した。
「剣、剣聖を越える剣、鞘を使えない剣、お前が往生に納めた剣は鞘を泣かせた。
遅いよ剣、なんで俺の前に出てこれた。今更だよ、侍の恥晒し。侍の礎となって死ね」
千年にも及ぶ想いを堰き止めていた堰が開き、怒りのままに剣へと斬りかかっていく。
全てを受け止めんと、歴代剣聖にも勝る実力へと到達した剣は刃を返した。
片や還暦を迎えた、鉄患いが完治し、剣聖の域に足を踏み入れた侍、志村 剣。
対峙するは怪物、先ほどの火花を吸収、鍛錬して死徒の階梯を駆け上がる村田 仁鉄。
2度の焼死を経て超抜能力に耐性を得た剣は、仁鉄が不意に撒き散らす業火をものともせずに斬り進む。
もう鉄患いを発症しない剣は次の致命傷で霊気が砕ける。仁鉄はそれを望み、ひと時のみ魂で繋がった旧友を未来の糧とすべく侍の絶頂へと理解を広げていく。
「────……………ッ」
次の行動を考える脳が思考停止した。
口元は結ばれて、流し目を向けるのは火花か魂か。乱舞する2人に付け入る隙は無くなっていた。
「互角だ」
ここにきて、火花が散る回数が激減している。
絶え間ない金属音から火花が散るのみ。仁鉄の身体から溢れる命の残花によって逞しく育っている。超抜能力で開花し始めた侍としての感覚が仁鉄に嵌りかけている。
まだ辛うじて剣が上をいっている。だが、この勝負の結末は間もなく訪れようとしていた。
「火花が無くなって近づけは出来るけど、だからどうするって話よね…」
神楽の呟きに唸る。
確かに2人に接近は出来る。今から数分限定の快晴だ。…だが足りない。出来ることがない。
剥がれかけた魂を断つことは剣にしか出来ない。手札は尽きてしまった。
歯痒い思いを振り払おうと2人を見ていると、足元を誰かが引っ張った。
「みぎて……………使え………」
「ひ、土方さモゴッ!?」
息が絶え絶えの土方が、無理やり足を払って顔を近づける。意識を取り戻すだけの体力に驚きだが、それ以上に耳打ちされた情報で目を見開いた。
「え────こ、これは…!」
右手の甲に、消滅した筈の令呪が一画だけ復活している。
神楽は首を傾げているが、マシュは驚きで口元を抑えていた。
「……!? うっ──」
令呪に気づいた直後、金切り音が聴覚を支配した。
▶︎林 流山の手帳が開示されました。
マシュに身体を支えられながら、胸元に手を当てる。なぜ短期間でその存在を忘れていたのか、自分でも分からない。伍丸弐號から貰った手帳のことを、数時間ぶりに思い出した。同時に、藤丸立香の脳裏に潜む情報量に精神がパンクしかける。
『私を信じて詠唱を始めるんだ』
そんな声が聞こえた気がして。直後、仁鉄には空白が生まれていた事に気づく。
「……!? ヅ……! そう、なんだ──」
機関銃に身体を穴ボコにされた気分だ。
捻れた貫通の痕が真相に覆い被さり、
「先輩! 返事を…」
「大丈夫、心配かけてごめん。それより、聞いて」
色々と教えたいのは山々なのだが、これは口外禁止の情報。漏らす、或いは引き抜かれる直前で僕は殺される。だから、簡潔に。
「今から仁鉄に近づく」
「……! はい、援護します」
眼差しで伝わった。彼女からの信頼がこの時ほど嬉しいことはないだろう。
なにも聞き返してこない出来すぎる後輩に頷き返す。
そして、神楽にも目を向ける。
「……」
「……」
交差した視線、言葉は出てこない。それを向こうはどう受け取ったのか、ため息を吐いて言う。
「好きにしなさい。合わせたげる」
「…ありがとう」
少しだけ息を吐く。生きた心地を身体に呼び戻して、前を向くことだけを考える。
あの手帳にはこの特異点の真相の一部始終が記されていた。伍丸が僕に手帳を渡して、記憶改竄まで施した理由にも納得した。ここからは時間に追われる、早急に仁鉄を倒すんだ。
『走れ』
「────────」
内側から己を食い破ろうとする魂によって、必死に平静を取り繕っている。ここが仕掛け時だ。
ここが正念場、最後の真剣勝負へと突入する。均衡を破るために令呪が光った。
今から新八を覚醒させる。呼び掛け続けることが正規の道だと思っていたが、違った。新八を覚醒…仁鉄から剥がす手順を1つ誤っていた。
気づける点は幾つかあった。
死徒が大勢の英霊と契約していること。
新八に鉄患いがあると誤認していること。
そして、新八を未だに生かしていることだ。
見誤っていた。
英霊と契約していたのは仁鉄じゃない。
勘違いしている。
鉄患いは新八にもあるのだ。
だから。
新八は利用されている。
「我が命運は汝の……」
「? なんだ、何をぶつぶつと」
仁鉄が漸くこちらに気づいた。
剣に加勢する実力のない者が3人、近いたところで何の弊害もない。だから無視しようとした…
「────貴様」
仁鉄は剣との斬り合いを経て、鉄患いによる最強の経験値を手に入れた。だが、それは身体能力に起因する経験値だけ。小細工に不慣れなことは、彼が鍛ってきた刀を見れば一目瞭然だ。悪いけど、弱者との戦闘経験の浅さに付け入らせてもらう。
右手を敢えて掲げる。見せびらかした手の甲、令呪を見た仁鉄の瞳が動揺で見開かれた。それが答え合わせ、無かった隙をこじ開けた。
「っ退け仁鉄‼︎」
「ぬっおおお‼︎」
ただの木っ葉を敵……足元を揺るがす戦力だと見抜いた。それは遅い、手を出すのに2秒も遅れた。刃は剣が抑え込んでくれている。問題はこのあと。
「この意、この理に従うのなら……」
「ッ‼︎ 焼け果てろ‼︎」
今度は剣を抑えた仁鉄が、無差別焼却へと乗り出した。浴びれば焼け死に、守れば宝具を焼却する炎。
然し、一瞬さえ凌げれば良い。その準備は万端だ。
「
振り翳した噴火に巨大な壁が打ち立てられる。
宝具はその存在ごと焼却されてしまうが、マシュの宝具は触れた時点で焼却されない。
死徒が人理焼却の不燃物であるように、キャメロットは人理焼却に抗うための壁となる。たかだか千年に届くかという死徒の炎ではその壁の歴史は葬れない。
ならば噴出した炎の爆風で吹き飛ばすまでのこと。
「なぜ踏み止まれる!?」
大盾を支えるだけでは吹き飛ばされる。それだけの自力の差が仁鉄とマシュにはある。だから床に神楽の大傘を突き立てて、大盾を支えにいった。
死徒の噴火を一瞬だけ凌いだことで、伸ばした右腕の令呪が契約先の英霊へのコネクトが成功する。
「僕に力を貸して。お願い、連れて行って」
「これはっ!? き、さま────」
唱えていた再契約の相性が終わり、伸ばした先にある仁鉄……否、志村 新八へと令呪は反応を示した。
▼
【林 流山の手帳】
謝罪を割愛する。
諸々を差し置いて、いま必要な項を自動編集して君の頭で開く。
ここでは村田仁鉄と志村新八、そして英霊について纏めたものを伝えていく。
岡田 似蔵たちには魔力が供給されていた。
英霊だから当然だ。ならば必然、マスターが存在する。はぐれサーヴァントという考慮は後述の理由で除外された。
なお仁鉄がマスターでないことは夜の襲撃時に解析した。彼にも当然だが魔力はある。大英雄を従えるのも訳ないだろう。では何故、マスターではないか。答えは魔力消費に対しても鉄患いが発症するからだ。
その性質上、魔力供給に歯止めがかかり、次第に英霊への魔力供給が満足に行えなくなることを考慮したからだろう。
では誰がマスターなのかを掘り下げていく。
似蔵…模造刀にのみ当たったガンドを覚えているか。源外庵前での出来事だ。
この接触の条件を『マスターが空想世界の出身』とした。
マスターではない神楽、正史出身のマシュ、立香を外すためだ。見事に似蔵たちには該当した。
彼らにはマスターが存在し、仁鉄以外と契約している事となる。
以上から私は仮説を1つ立てた。
『模造刀のマスターもまたサーヴァント』。
正鬼ではない。真祖は既に英霊を頼るつもりはない。
もう1つ思い出してほしい。なぜ藤丸立香の令呪を消滅させたのか。
1つはカルデアを観測し続けるためだろう。生かさず殺さず、立香の支援を奪うことを狙っていた。
然し、支援の妨害だけが目的ではない。マスターが契約を結べるサーヴァントが身近に居るからだと推測する。それも、何らかの理由で生かしている、普通なら英霊とも思わない英霊だ。
肉体ではなく
鳳仙のマスターの令呪を一画、君に預ける。
上手く活用して死徒に一泡吹かせてやれ。
これが終わったら続きの項を開示する。
あとの話は君がつけてくれ。
待っているぞ。
───
──
─
脳内に流れてくる手帳を読み終えて目蓋を開けた。
ここは泥臭い道場。
いつも主人を見守ってきた物が創り出した、苦し紛れの離島だ。
薄暗い室内には、1箇所だけ人工的な光で照らされた場所がある。光の下では1人の青年が項垂れている。
暗闇から伸びる鎖に両手両足を拘束されて、背もたれには場所に不釣り合いな真剣が数本。抜いて斬ってみろという挑発に見えるが、鎖に繋がれた者は手に取る様子はない。
「きみ、は…」
「藤丸 立香。カルデアのマスターだ」
こちらに気づいた青年が顔を上げる。
顔を合わせた瞬間、目から光が遠退いていった。期待していた人物じゃなかったからか。相手に気遣うことも出来ないほど弱り果てている。話に聞く志村 新八の人物像とは程遠い。何よりもメガネが掛かっていなかった。
「どうしてここから出ないの?」
「……このかたな、おもくて……さびてて」
項垂れる青年の手のひらをよく見たら、痛々しい血豆が出来ている。刀の柄には何度も血を擦り付けた痕が確認できた。何度も刀を引き抜こうと足掻き、それが引き抜けない造りだということを認められなかった結果の今なんだ。
「剣の声が届いたんだね」
「けん………父上…を、どうして」
「っ! 聞こえてないのに、ここまで?」
剣、その名前に反応する。
「誰かが、僕を呼んで……。
鎖をはずそうと、でも出来ない………」
理解した。
聴覚は働いている。だが識別が出来ていない。声音は一色、聴力を一定の音で聞き取れるまで抑えつけて、仁鉄は新八の覚醒を妨害していたんだ。
だが、言葉は理解できている。ここまで来たら言葉を尽くすだけだ。
「聞いて。いま剣が戦っているんだ」
「ちち、うえ……は、もう、、、」
「サーヴァントになって君を救い出そうと必死なんだ! このままじゃ剣が死んじゃう!!
ここから出るよ!! もう一踏ん張りだ!!」
「………」
「気をしっかり持つんだ。お願い、僕は君の味方…」
出かけた言葉は、新八の眼差しを受け止めて思わず飲み込んだ。僕は、新八に疑われている。
視力が定まっていないから、情報量は大幅に減っている。こんな所に訪れる人物は仁鉄のように疑われて当然だ。声も届きにくい、顔を見ることも出来ないとなれば、無色の言葉にどれだけの意味があるだろうか……。
令呪も反応しない。
恐らく、この道場の主人が僕を認めていないせいだ。
僕が味方なんだって新八に認められないと契約はしてくれない。
「………………────!」
どうするか。明白だ。
新八の本能を呼び覚ます。
色のない言葉に、自分自身で色を付けてもらう。
「実は、新八のメガネがサーヴァントでさ」
「……………………え?」
「契約したくて同意を求めたら此処に来たんだ」
「………………は?」
「ずっと志村新八を守っていてくれたんだよね。ありがとう。でも守る時間は終わろう。
じゃないと、剣が負けちゃう」
「…………父上」
「お願い。僕と契約してサーヴァントになってよ」
「……?」
そして、叫んだ。
「英霊、黒髪短髪の人間を掛けたメガネ!」
外にいる仁鉄に届くくらいの声量で、ありったけ!思いつくかぎり!銀魂の世界に寄り添うボケを!
そう、ここは“志村新八のメガネ”が創り出した空間。
本来なら英霊になどなる筈もないメガネだが、ここに例外が1つ。
死徒、村田仁鉄の存在である。仁鉄の超抜能力に充てられて、鉄患いを発症したのだ…新八のメガネが。人理の悪戯が重なり、鉄患いを持つ、弄られがちな新八のメガネとして英霊となり、主人である新八を守り続けていた。
だから先にメガネの説得が必要だったんだ。
「────────だ」
新八に言い放ったあと、彼の肩が震える。
外したか、やってしまったか。
俯く新八を覗こうとすると、顔面が飛び起きた。
「誰がメガネが本体じゃああああああ!!!」
約5年ぶり、仁鉄の鉄患い換算で千年ぶりとなる、短髪童貞のツッコミが炸裂した。