愚答だな。
岐路ならば何度かあった。
夜王らしからぬと、ソレらは血の河に流した。
戦場なら答えは転がっている。
夜王が立てば勝手に貢がれに来た。
欲求を満たし、血肉が潤い、渇かない。
願いは叶っていた。
万歳が傷を癒していた。
晩年、太陽の如き女と出会うまでは。
『聖杯に懸ける願いなど無い。召喚される理由なんぞワシにあるものか。貴様、よもや対価も無しに夜王を扱き使おうなどとは言うまいな』
だから腹立たしかった。
夜王鳳仙は太陽に喚ばれなかった。
太陽を欲する地球人に引き摺り下ろされた。
『細やかな宴を準備するよ。太陽を仰ぎながら片手に徳利。昼間から良い御身分! どうかな、ね?』
手持ち無沙汰で、ごめん。
夜王相手に値切り交渉をする
見当違いの謝罪を無視して、この召喚を引き受けた。
召喚者の狙いは理解した。
だから生かした。殺すのは惜しかった。
よもや、地球に
これは召喚時の記憶。
不細工な証明を空に昇らせた咎。
誰に言われるでもなく真祖を討ちに来た理由。
『行くんだね。…はあ?止めやしないよ。男ってのはどの星でも変わんないもんさ。
ビシッと決めて、そんで帰ってくるんだよ。
負けるな、ありがとう、────』
忌々しい。
あぁ、忌々しい…。
日輪、貴様より眩しいものなど────
▼
空が暗い。星がはっきりと見える。
大地は赤い。空とは大違いだ。
……配色は、衛宮士郎の始まりと同じだった。
一面の炎が記憶を呼び覚ます。
────脳が焼き切れそうなほど痛い。
死の匂いが脳を満たしてくる。
────何もかも焼かれた、あの日。
絶望の中で沸いた想いを叶えてくれた、あの顔。
────自分の物は、ソレだけ…だった。
自分のものと同じだが、少し違う。
この炎にあてられて、記憶が混濁しちまった。
これは、アイツの…?
────だから。…聞かないと。
あの日、燃え盛る世界から這い出る悲鳴とは違う、そう、大違いの叫びが耳に届く。
「起きろ、たわけが……!!」
「────────!?」
ガツンと脳天に響く怒号が意識を引き戻した。
切嗣と同じように覗き込むのは憎たらしい顔。寝起きに悪いものだから本能で飛び退くと、ドンと背中に当たる壁のようなもの。不思議に思って振り返ると、そこには鳳仙が出入りしていた吉原の門があった。
状況が飲み込めずに振り向いて、やっと寝ぼけていた頭が周辺の惨状を視界に捉える。
「な、なんだよこれ……」
地獄だ。
いつか見た地獄とそっくりだ。
言葉では動揺していながら思考は鮮明だ。
きっと、見てはいけない深淵を知っていたから。
目の前に映る世界、そしてソレを直ぐに受け入れた。
第四次聖杯戦争の結末に瓜二つの地獄の真っ只中に、ソレは佇んでいた。
青い星のように廻る服の絵柄は赤く黒く、そして暗い色が地表を抉るように落ちている。皮膚を丁寧に剥いだ人体と見紛う様相は意外にも、見る者の五感に嫌悪感を抱かせない。細くて白い滝のような長髪と、月から見た地球を模した両目を認識して、ソレが正鬼であることを知り、正鬼という存在を神秘に昇華している全てだと分かった。
「ぇ…」
正鬼だと理解して、それでも信じられない。
意識が落ちる数秒前までは説得しかけていた。なぜ一点を見つめてほくそ笑みを浮かべているんだ。
視線の先には誰が…?
奥で今も焼かれている巨躯は…!
「鳳仙!」
「近づくな!
あの炎に巻き込まれたら、私たちも死ぬ。
触れるだけで全てが焼けて消えるぞ」
「……あの火は、なんなんだ」
「恐らく、人理焼却の炎だ」
本能で理解していたのに、態々言わせるあたり俺も混乱していた。記憶が混濁して昔を思い出したのなんて、あの炎が俺の過去に手を伸ばしていたからじゃないか。
いいや、落ち着いている場合じゃない。今も人体が焼け焦げる臭いは止まらない。
…それどころか、もっと酷い臭いがある。血を煮詰めるような、大地を焦がすような熱い臭いだ。掴めない原因は後回しにしよう、幸い我慢すれば活動出来る。
鳳仙はうつ伏せのまま動かない。
鳳仙と正鬼の間に俺が立っていたのに、どうして無事なんだ。そもそも、あの炎はどこから?
「何処からか現れた青い光線が、正鬼の心臓を撃ち抜いた。直後、正鬼がこの炎を放出し、貴様と私は鳳仙に庇われて吉原に守られた」
共闘する気のなかった鳳仙が、託された責任を果たせもしない俺を助けた…?
なんの意味があるのか。誰かを庇うなんて、聞いていた話とは大違いの天人だぞ……。
いや、そもそも間にいた俺が助かっているなら、鳳仙も身を守れた筈だ。
「どうして…」
「鳳仙の退避を正鬼が邪魔しやがったんだ」
「消す手段は」
「……」
返事はない。
当然だ。そんなものあれば正鬼が実行してる。
事の顛末を聞いて、己の無力さに腹が立つ。腹が立つだけで、どう動くか迷う自分に頭痛がする。
正鬼のやつ、ここでも意図的に俺たちを生かしやがった。頼まれてもいない待遇に我慢ならない。
「あれか…」
ふと目に付いた、正鬼の胸元に光る青いもの。球か、印かは判別不明だが、あれが正鬼を射抜いた青い光線の跡だと分かった。ともすれば傷とも言える。
あの外皮。燃え盛る炎のようなものが正鬼の全身を覆っている。炎の揺らめきから漂うのは溶けた肉の臭い。焼けたではなく溶けたと表現するのは、あの炎が溶岩だと当たりをつけたからだ。見た目が人体模型以上の生々しい様相で嫌悪感が少ないのは、あれが溶岩の表面だと見抜いたせいだろう。触れれば取り込まれ、溶かされる粘性の高い外皮に違いない。
直感が言う、あれは地表だ。ひたすら分厚い土壁だ。自然の脅威を身に宿し、強大な物理防御を打ち立てている。魔術すら、あれに触れれば暴発するだろう。
そこまでして守りを固める必要があるのか。烙陽を焼いたあとなのに。
「士郎にアーチャー!!!」
「2人とも大丈夫ですか!?」
最悪の状況下で駆けつけたのは立香とマシュに神楽、そして仁鉄……いや雰囲気が違う、新八か。
良かった、新八の方は上手くやれたらしい。
事情は…あとで聞こう。
「何があったの。それに、あれは……」
「正鬼だ。青い光線に打たれたあと、ヤツの体内からあの炎が噴出してご覧の有り様だ。私たちを庇った鳳仙は…」
「そんな!?」
ありのままの現実を聞くや、マシュは悲鳴に似た声音で狼狽える。思考も一瞬にして覚悟の喉を鳴らし、静かに駆け出そうとするものだから慌てて制した。
「火に触れちゃダメだ。アレの消化方法はない」
その言葉だけで意味を汲み取ってくれた。
悔しさに怒りが沸き立つ表情をして、もう一度もう起き上がれない鳳仙の静かな退去を直視する。
「どうして正鬼がこんなことを…」
「銀の大地が焼かれているのは、正鬼が焼かれているのと同じなんだ」
新八は拳を握り、暗に手遅れだと伝えた。
仁鉄の内側から見ていた向こう側の内情を知るが故に、正鬼の凶行を認めないと叫んでいる。
「正鬼はやろうと思えば幾らでも炎を吐き出せる。けど、そんなのやったら意味がない。
真祖なら1人だって蔑ろにはしない。それが例え天人でも、星の代表として戦った。
正鬼はもう、真祖じゃなくなったんだ」
「そ、それって────っ!?」
立香の言葉は途中で途切れた。
喉が振動を許さない。明らかな異常事態に駆け寄ろうとしたマシュ含めて、全員の身体が硬直していることに気づく。
「がっ………ウ……っ!?」
肉体、言うまでもなく指一本動かず。
魔術、行使不可。
魔力で
アダムの魔眼が見開かれる。
確認せずとも、全員が頭で理解させられた。
此方を見てすらいないのに、場の全員が魔眼に射抜かれた。まさしく頂点に相応しい反則だ。
「最後の生存者。さあ、おいで我が子ども。
地球の……人類始祖アダムのもとに」
床に手を伸ばし、手探りの素振りをする。
人類始祖アダムなんて情報をぶっ込まれて頭が混乱しそうなのに、整理が追いつかないうちに床下から何かが迫り上がってくる。間も無く江戸城の柱を掛け合わせて作った掌が床を押し上げて、1人の女性を手中へと納めていた。
「ヒ、、の……………ゎ……!」
眼球から取り込んだ情報が最悪の未来を想像した。
掌に攫われた日輪は、アダムの一瞥で銀の大地に保管される。その方法は言う必要もないだろう。
それなのに身体が言うことを聞かない。
全てを振り絞ったあとのように全身鉛だ。
鳳仙が守ってきた人すら、守り通せない。
こんな体たらくで、銀時を助けられるわけが…。
「こんなになるまで戦って。
本当に、相変わらず………バカなひと」
緊張感で騒々しい静寂のなか、死に直面した彼女が発した言葉は、1人の男に宛てた悔恨だった。
▼
「こんなになるまで戦って。
本当に、相変わらず………バカなひと」
死地において、ひと握りで消える命は地面に向かって呟き、その瞳から悲しみを流した。
太陽を憎んだ男は、歴史を焼却する炎に包まれている。悲しんだところで消火しない。触れたところで先に逝くだけ。だから率直に、膝枕すら許されない状況で、太陽を罵倒した男へと向けた言葉と同じように微笑みかけた。
それだけが吉原の太陽に許される、同じ結末を辿ろうとする者に送る最後の言葉だった。
「────────────」
アダムは傍観していた。吉原から呆気なく引き上げた太陽は、自らの苦手とする太陽よりも弱い光でいて、強い輝きを放っていたから。
天人にも、人類にも、仲間にも、息子にも、そして魔王にさえ。彼女は等しく同じ想いを抱いている。それが輝きを放ち、夜王が手を伸ばした者の本質と通ずるのだと知る。
全てを読み取ったうえで、アダムは無差別に作用する拘束の魔眼が効いていない日輪を警戒した。殺気を浴びただけで呼吸を忘れるのに、日輪は身体を向き直して見つめ返すのだ。
「アンタも、私たちの為に戦ってくれてたんだね。そうとも知らずにごめんよ」
「……………要らん」
早く仕舞えばいいものを、その口を閉ざすには最後まで話させなければならない気がして。アダムは、自分が場を支配する魔王だということを忘れかける。
「ダメだよ。私はアンタに言いたいことが沢山ある。思考が読めても、直接言わなきゃいけない。読んだだけじゃ伝わらないものがきっとあるさね」
「……………………全部、分かっている」
全てを読み解けるというのに、彼女の一挙一動が神秘的なもののように思えて、最後まで許してしまう。
「ありがとう」
言いたいことを云わず、伝えたいことを言う。
日輪のソレは、光々の微笑みと被る。強い過去が一瞬だけ、アダムを正鬼へと引き戻した。
感情が開花した魔王には、彼女の笑顔は眩しすぎた。眩むのではない、心が焼けてしまいそうなのだ。苦手な太陽の如く輝いていて、魂を暖めてくる向日葵のような微笑みが、飢える衝動を加速させる。
嘗て、自分が欲したものを持つ魂を見せられて、喉の渇きが限界に達した。
何故こうも鳳仙を憎いと意識したのか。
アダムは、鳳仙の生き様を認めたくなかったのだ。
「…………夜王。戴くぞ、貴様の太陽を」
掌へと視界を戻す。
常世の太陽を保管すれば、全ての人類が次の段階へと移行できる。何か大切な想いを仕舞ってはいけない場所に置き去りにして、魔眼を解放する。
なぜ晴太を含めていないのか。それは晴太が半死半生で座に入り、神秘を利用して回復したことが原因にある。正鬼には晴太のことは死んだものとして扱われ、保管もされなかった
「それでも……」
息子が星から外れたというのに、あと1秒で自分は消えてしまうというのに。抗議の声1つ上げずに手のひらの太陽は、最期まで常世を照らす。
「アンタは立っちまうんだね、鳳仙」
自らを縛っていた、満たされた兎にも、等しく。
「ガッ────!?」
掬い上げた魔王の掌へと振り下ろされる鉄槌。業火は一撃で霧散し、桜の葉のように舞い散った。
魔王の魔眼を振り払い、人類を虐げてきた最強の天人、鳳仙の手にある大傘が太陽に陰を落とす。焼け焦げた顔は、ついにしてやったと実に満足げだ。
「貴様を外に出すのは。
地下に縛るのは夜王の特権…。気安く身体を許すな」
「鳳仙……。バカ言ってんじゃないよ。アンタにも落ちなかったんだよ、吉原の太陽は。
いまさら星の1つに気をやるもんか。
…なのにさ、いまさら笑った顔なんて見せて」
二度と訪れない別れを、再び微笑みで告げる。
相も変わらず太陽を笑う。懲りずに笑ってみせた。
「世迷言を。夜にあたりすぎだ。
戻れ。太陽を落とす役目は────」
さきの言葉は日輪には届かなかった。
吉原の門が、主人の初心なものを守るために、安全を確保するために早々と日輪を地下へと連れ戻した。
腹立たしい気遣いを一瞥して、眼と焦げ跡の見分けが難しい顔をアダムへと向ける。
「人類の頂点というには、傲慢さがない。見下す心が無いのは、異常だった」
「……その傘。江戸城を取り込んだな。
吾を殺す為に隅で骨子を作っていたか、盗人め。
侵略者。ねぇ、地球を踏み砕いてきた君は、どうして地球の子どもたちを守る?」
「……知れた、ことを」
たった1人だけを愛しむ眼差しを上げて、星に覆われた天蓋を見る。
遠退く視界を夜兎の血で引き戻し、笑いながら。
「ここは、烙陽よりも暗い」
「………?」
「ワシの願いは、聖杯では叶わぬ」
────それは、詠唱ではない。
生前、鳳仙が浴びた陽だまりに想いを馳せる、戦場に生きた男が唯一手に入れられなかった悔恨だ。
「戦いだけが人生だった。陽光のない世界で、血に反射した敵を見続ける、華やかな一生だ」
「────去ね」
魔王が手を振り上げた。殲滅の合図だ。
あと数分の命を1秒でも早く狩る。質問に対する返答ではない。聞く時間など初めからなかったと遅かれ理解してしまった。地球の直感が総動員して鳳仙を消せと訴えて、アダムは反射的に上げた右手を振り下ろす。追従するのは江戸城の屋根、偽りの太陽を遮る真祖特製の城が魔王の意志に則って崩壊した。
降り注ぐ屋根は魔王の加圧によって10トンを越える。殺意を与えられた無機物の雪崩れが鳳仙の頭上に間断なく突撃した。
「その全て、要らぬ。太陽を知っては、要らぬ。
ワシは、日向ぼっこのために余生を過ごしたのだ」
江戸城に咲く一輪の花…鳳仙の大傘が開き、焼けて果てそうな両腕が花弁を支え、水ぶくれで自由の利かない両脚で大地に根を張る。
一塊りが大傘を圧すたびに腕の筋肉が欠けていく。焦げて炭となった場所から歴史の奥に消えていく。
だが、殺意ある無機物の雪崩れが全て降り注ごうと、鳳仙の霊気には傷1つ付かなかった。残った左腕と両脚が、夜王が健在であると雄弁に語る。
悔恨は終わり、余生の願いは叶い、そして。
「────は」
瓦礫の真ん中で、鳳仙は倒れた。
開いた空を見上げるように、仰向けに。
「この夜王が屈した太陽を、吸血鬼如きに落とさせるものか」
鳳仙が戦場で仰向けに寝転がるのは、即ち。果たすべき決意が天蓋を抉じ開けた証明であった。
侍が夜王から未来を勝ち取った証である。
「な、んだと………!?」
いつ現れたのか。いつ昇ったのか。
夜の如き天蓋に、輝き放つ惑星が1つ。
人理焼却をも凌駕する、唯一の焔が名は。
「なんで此処に、本物の太陽がッッ!?」
それは、宝具である。
生涯でたった一度の敗北を再現する、夜王鳳仙にとっては不本意極まりないものだ。
「……貴様の作った世界なぞ。己の作った決まりごとなど、銀の魂に染まる愚か者は打ち破る。
ワシとてそうだ。夜王の楔は案外脆いぞ?」
喉が焼けて、言葉が炎に掻き消される。だが、確かにアダムには届いた。止まぬ興奮とともに脳髄に叩き込んだ。
『目の当たりにしろ。貴様が守ろうとする人類が如何に脆く、ソラにどれほど無力で、そして。
己が無力を数だけで覆す、か弱い種族かを』
極光が語る。
炎を蹴散らしながら笑う。
『陽、出ずる刻』
夜が眠る。陽が昇る。
暗い天蓋に存在しない筈の輝きが、銀の大地を燦々と照らす。
「………太陽だ」
誰かが呟いた。空はこうあるべきだと。
「────眩しい」
彼女は呟いた、本物にも勝る極光に。
「鳳仙、感謝するわ」
「…うん。絶対に止めよう」
太陽の顕現とともに風が吹く。
悪臭漂う江戸城を吹き抜けて、いっときの清々しい環境を作り出して、夜は沈んでいった。
「見ろ。アダムの身体を」
「か、身体が動く!」
そして、正義の味方が気づいた。
陽光に跪き、魔眼を閉じている姿に。
「これ……はァ………焼かれ……ッ」
片膝を付いて、だらしなく身体を放り出し、その外皮の重みに引き摺られるように動かない。
溶岩に似た守りはドロリと溶け出し、周囲の床を焦がしている。
「じ、人類始祖アダムがうつ伏せになっています! 鳳仙さんの宝具が天敵と見て間違いないかと!!」
「あの宝具は自身の最期を再現したもの。吉原の天蓋を開き、太陽の射光によって鳳仙は身を焼かれ、坂田銀時の一振りに敗北した。
……成る程。“アダムは太陽が弱点”だと気づいていたのか。だから鳳仙が選ばれたと」
細胞を縛り付ける感覚は消え失せた。
水中のような息苦しさには身体が馴染んだ。
アダムの一瞥が士郎たちに届く前に霧散する。
ならば次は、次こそは。その刃を、その想いを、江戸の言葉を人類始祖へとぶつけられるだろうか?
「アダムは弱ってる。今なら行けるかな!?」
「…………いや」
衛宮士郎の脳は否定した。
あり得ない。鳳仙の霊気を賭した宝具でさえ、アダムの衝動は聖剣の一振りでも擦り傷が付く程度だ。
あの外皮が消えていない。太陽に焼かれない為の守りと考えるのが普通だが、アダムは空に君臨する偽りの太陽で悶絶中だ。
「変だな、だが原因が掴めん」
「
違和感だ。あの守りは機能しているが、アダムは太陽に焼かれている。この大地の何処かに、アダムの別の何か……本体に準ずるものがあるのかもしれない。
歯痒い。悔しい。ここまで見ていることしかできず、動くこともままならなかった自分が恥ずかしい。
だが、アーチャーの言う通り飛び出さないで良かった。強がって安堵してみせた。その理由は、床面に現れる。
「うわっ!? 床に何か出た!?」
「先輩、私の後ろに!!」
それは、大魔術を展開する間際の眩さだった。
今度は誰もが下を見る。まるで、焼け果てた烙陽の燃え残りを探すように、その眩き紋様が夜王の意志を継ぐように収束していく。
鳳仙、戦場にて散る。
それ即ち────
「夜王鳳仙の散る時、天には輝く一輪の花ありき」
アダムと士郎たちとの間に青白い炎が発生する。
地面に刻まれる炎は形を成していき、円を形成した直後、空へと燃え上がり、そして霧散した。
炎の霧散した場所に現れた影が1つ。
「夜王は倒れ、此処に太陽は取り戻された。
然し、銀色の侍を呼び戻すには足りない。魔王の権限がある限り、楽園から追放された者が足を踏み入れることは不可能だ」
影から飛び出したのは右手と、開かれた扇子。その扇子は白を基調に、中央には五芒星が刻まれている。
次に左腕が炎を薙ぎ払い、紺色の法衣を纏う柔和な顔立ちの男性を見れば、皆んな「あっ」と声を上げる。
「あぁ、不可能なんだ。道理がある限りは。
ならば簡単だ、解いてしまえ。この不条理を、皆の言の葉で。帝に認められた、我が陰陽術で‼︎」
その者、陰陽術の始祖にて。
対神十界、四聖・菩薩の席に着くキャスター。
初代結野 晴明、ここに帰還。
戦うにつれてエグめの初出しギミックが判明する展開が好き。
で、ソレを初見突破するのがもっと好き。
書き溜めなくなりました。
次の投稿は遅れます。
11.30(土)には再開したい所存です。