Fate/SN GO【本編完結】   作:ひとりのリク

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※投稿間隔が空いたため今回の補足。
1/4章終盤、アインツベルン城の戦いが起きていた頃の話。





門番と弓兵

陽が許される限り天高く昇った頃、風が静かに止んだ。髪をなびかせる力が消える。目を閉じた世界。五感だけが頼りで、遠い昔を思い出す。

肺に取り込む冬の空気。手足の先の冷えは敏感に、敵意と季節を触れ分けた。図ったようなタイミングに、閉じていた目蓋をゆっくりと開ける。

一度目、季節を忘れた。広がっていた光景は桜が舞う春のよう。門の前に立つのは可憐な少女。やけに胸が痛くなる。

現実と空想の区別が曖昧になるような状態でもない。それは、とうの昔に過ぎた。きっと、うたかたに遊ばれているのだろう。

 

「日中、門をくぐる少しの出入りを傍で監視するだけの存在。よくもまぁ、味気のない幻影に不思議な興味を抱くものよ」

 

風に交じり、本当の今が耳に届く。掻き消された幻覚のあとに、殺風景な冬の山門が映る。そこに立つ門番は、男性。胸のざわめきが止まらない。沸かない後悔。何か確信しているのに、諦めきれないオモい。

オレ()は、この軟弱な心に見切りをつけるために立つ。

 

 

 

 

それは、図々しくも猛き瞳をした二度目の訪問者。

形のないなにかを探し求める焦り。小さな線の上を渡るように、こちらを慎重に見上げる姿に頬を緩めた。

どうしてもない。僅かな動作、呼吸、瞳を見ただけで薄らと答えが浮かび上がる。

門番、佐々木 小次郎は思考を巡らせる。

 

二度の訪問は、その探し求めた存在が私であるか否かを確かめるためか?…と。

キャスターは聖杯へ王手をかけるために、郊外の森へと出かけた。やつの目は、ここにない。

はて。好機と見たのは、誰だったか。

…今は、関係のないこと。

たった二人の会合がために、この瞬間(隙間)があると確信する。

 

「こうも暇を持て余すと、このような身を訪ねてくるのなら誰であれ茶の一つは振る舞いたいが」

 

門を背に、右手に長刀を携える小次郎は薄く目を開けて訪問者を見る。

視線の先には、段下の踊り場で両腕を組み、小次郎の話を聞く姿勢を示しているサーヴァント、アーチャー(赤い弓兵)。表情を全く変えずに小次郎を睨む。

 

「生憎と、この門から離れることを許されぬゆえ、無礼を許せ。代わりに、こちらも以前の忍びごっこは言及せんよ」

「あれでもかなり無理をして忍んでいたんだがね。それもこれも、キャスターの仕業だろう。神殿まがいの陣地のせいで、ここしか訪問口がない。入り口の景色だけで、主人の器が知れる」

 

小次郎は、数秒の間の後。

アーチャーの言葉を噛みしめるように二度、ゆっくりと頷く。疑問に、自答する。

 

「……はて。それはカマをかける言葉ではない。最早、知っていて当たり前のような口ぶり。あの女狐が尻尾を見せるとは思えんが」

「アレは実に厄介だからな、できれば長期戦は避けたい」

「やけに急ぎ足だな。こんなにも天晴(あっぱ)れだというのに、会話くらい楽しめばどうだ」

「その必要はない。この声を、笑納されるために敵地へ赴いたとでも?」

 

遊びがなかった。

事の真偽を確かめる。他のモノに目もくれない。

 

「それにしては、武器の一つ手に取らぬか」

 

だから、小次郎は心地が悪いと感じていた。死地に赴く面構えでありながら、武器を取ろうともしない。長刀の範囲外かつ段差があることを考えても、無防備すぎる。間違いなく、落とそうと思えば抵抗する暇を与えずに散らせる命。

躊躇う理由はない。小次郎は、セイバーとの再戦のみを待ち続けている。令呪により制限を受けた身であれ、セイバーなら笑って刀を構えるだろう。

 

「よい、話を進めよう。我が主人は今、出掛けている。要件があるなら手短に聞くぞ、アーチャー」

 

振ったのは、キャスターの話題。小次郎にとっては、普通の結論。その話をするだけで、自ずと解決する。

門番である者が、主人を訪ねてきたと考える。そこに違和感は……まず抱かれない。

もし、小次郎が。″遊び″の一つにすら興味を持たなければ、という話だ。

 

「……」

 

アーチャーの無言は、心地の良い反響となった。

誰にも話すことのない、刹那の高揚感を覚える。表には出ないものだ。それは可能性に気づいたという、心の手段。馳せるのは、いずこ。

 

「んん、ほう、ほほぉ…。アレにはまるで興味がないか。いや、少々驚きを隠せないが。間違っていないようだ」

「…?」

 

首をかしげるアーチャーは、視線で強く訴える。武器はあくまでも、必要ないらしい。

 

「セイバーの口から弓兵の名を聞いたのだが、私にはそう見えなんだ。というだけさ、違わないか?」

「正面から斬った張ったとする弓兵を見かけるようになるのは、遠い未来ではない」

「おかしなことを言う、闇雲に言葉を濁そうともその身なりは変わらんぞ」

「あぁ、私もどうかと思うよ。いったい、どこから行く道を間違ったのか。つくづく疑問だ」

 

自嘲するように笑っている。深くは、探らない。

 

「こうして過去をなぞり、追憶し、疑問を解決することに浸かる。故に問おう、アサシン」

 

 

言い終えるやアーチャーは、組んだ腕を楽にする。僅かに姿勢を屈め両手を開くと、一呼吸の間が訪れた。

味気なく乾いた摩擦音が発生する。

場の雰囲気が反転した。小次郎は長刀の揺れを気にも止めず、石段を駆けるとも表現できる疾さで間合いを詰めた。長刀の遅れなぞ、小次郎にとって不利にはなり得ない。それだけしか持っておらず、それは逆に突き詰めた技、英雄に引けを取らない。

一瞬の勝負といえる踏み込みで、階段の上より一線を描く。それを不意打ち、或いは得物を持たない相手にやるべきではないと、口を挟む隙間はない。

 

「その真名、沖田 総司であるか?」

 

鳴り響いたのは、金属音などではない。段階を踏み飛ばす、アーチャーの問いだった。

小次郎は笑った。それは己の一刀が、カタカタと震え喜ぶさまをみて堪らず漏れた表情。視線の先、物干し竿と鍔迫り合うアーチャーの刀。

小次郎の長刀が円弧を描き、アーチャーの刀をいなす。姿勢を崩すことなく、段差の上で長刀を振るう。問題は、刀の返し。セイバーのクラス、侍として生きた銀時が攻め崩すことのできない技量。

それは、気づけば回り込まれていたという感覚。刀の数を間違えかねない主張に、アーチャーは斬りあげる形で小次郎の狙いを逸らす。

 

「…!」

 

次までの間がない。姿勢を正す瞬間も、長刀の行く末すら、見切ることが到底困難。アーチャーの見識を軽々と越える実力に、堪らず苦悶の声を漏らしていた。

片や小次郎。予想しなかった侍との交差に、静かに頬を緩める。刹那三度、火花が散る。小次郎の長刀に合わせて捩じ込まれる刀。小次郎はその動きを見送り、アーチャーは踊り場に後退した。

 

「聞こう、この腕に覚えはあるか?」

「……それだけでもう、十分だ。視界から消えないという点で、全て受け入れた。そして」

 

左肩を視線を向けるアーチャー、浅く肉が切れて出血していたのを確認するや更に一つ下の踊り場へ飛び退く。

これが意味することを理解したが故に、謙虚な選択を取った。自信のあった防御を、己に弾いたと錯覚させるほどの技。深い驚異を与えるのには十分すぎる。そして、敢えて見逃された事実が生まれたことで、謙虚にならざるを得なくなっていた。

 

「どうやら今の私では、準備が足りないらしい」

「そう言うな、アーチャー。せっかく、二人目の侍と斬り合えるのだ。セイバーの元へ向かったキャスターが帰ってくるまで、私の暇を潰させてくれ」

「…なに?」

 

 

小次郎の言葉で、再度、アーチャーの思考が揺れる。

 

 

「選れば選り屑だとアレは心得ている。そう時間をかけるとも思えん。なんでも、聖杯戦争にケリをつけると(のたま)っていた。

もし、キャスターの言動が実現すれば、セイバーとは決着がつけられん」

 

小次郎が何を考えて、セイバーの危機を明かしたかの意図は分からない。そう考えていると、アーチャーの顔を見た小次郎は容易に想像がつく。

 

「貴様が散れば、この町の住民が被害を被ることもなかろうて。どうした、やはり弓と矢がなければ本気は出さぬか?ならば早くしろ、私は」

「チ…」

 

アーチャーは更に距離を取る。半信半疑の目で、門を睨む。そうだろう、こうもあからさまに誘っているのだ。上を通れと言ったのだ。

こうして距離を空けさせて、キャスターの行く先を知れば、やるべきことなど言うまでもない。

 

「本当にサーヴァントか貴様」

「残念。サーヴァントであり、偽りの存在だ。欲望のままに生きてみたいと、そう願っては可笑しいか?」

 

異様な雰囲気の中、微笑する小次郎。

怪訝な顔、状況を理解した顔を見せた後、アーチャーは小言で何かを呟く。すると、微弱な光を纏い手元に一本の短剣が出現する。

稲妻形のそれを、高らかに放り投げた。

山門の上を通り奥に消えるや、音をあげて爆煙が空へと上がる。

 

最早、それが何を意味するのかは言うまでもない。

 

「疾く去るがいい、アーチャー」

 

二人目の侍が去る姿を見送り、空を仰いだ。

 

「さて、慌てて帰ってくるキャスターめの様子でもみて楽しむとしよう。よもや、絵巻中のように、あと一歩が届かぬとは思ってもいないだろうよ」

 

アインツベルンの森へ向かう侍と、今頃、柳洞寺の異常に気づいて帰ってくるキャスターを待ちながら思う。

坂田 銀時が無事であればいい、と。あの首を断つのは、この刀でなければならない。

 

 

 






1/4章終了記念にサーヴァントの設定を僅かながら公開します。どこまで出したものか未だに悩んでいる次第…特に、宝具説明については意図的にぼかしているところがあるため、分かりにくいかもしれません。
原作と同じステータス、スキルのサーヴァント(ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー、英雄王)は今回省略しています。


【セイバー】
真名:坂田 銀時

ステータス
筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力:D 幸運:E 宝具:A

クラススキル
対魔力:B
騎乗:A

保有スキル
銀色の魂:A+++
第10話にて公開のため省略。又、第10話の方ではランクがEXのままとなっていますが、敢えて未修正としています。
(A+++(こっち)が正しい)

業・侍の第六感:E〜A(new)
ランサー、バーサーカー、英雄王を相手に見せた跳躍に関するスキル。
諸事情により、スキル名のみ公開します。


宝具
式神召喚・悪鬼外道:A
第30話 テン知ルにて公開のため略称

万事屋の絆(ヨロズノキズナ):A(new)
坂田 銀時の生涯を集結した宝具。
使用方法は数種類あるが、主に二つを使い分ける。
彼と関わった人物、あるいはモノの召喚。

-人物-
依頼人に真名を明かすことで、生前の万事屋を再現する。万事屋としての縁を元に、過去関わり合った人物の召喚を行う。
万事屋の再現度により効果の幅が広がる。
銀時の真名を知るか否かは関係ない。真名を明かす場合もあるというだけであり、銀時が依頼を受けるかどうかで決まる。己が色、生前の記憶を無くさない限り……。

今回の魔力消費は、間桐 慎二が持っていた魔道書より必要な分だけ。
結野 晴明を召喚するため、半分以下の規格に落としている。

-武器-
諸事情により未公開とします。
洞爺湖はこの類に含まれない。

Profile その1
身長/体重:177/65
出典:銀魂
出身:江戸(?)
属性:善・混沌 性別:男
武器:◆◆◆『洞爺湖』
マスター:衛宮 士郎
「俺とやり合うってんなら、魔術や宝具なんざあしまっとけ」

ちょこっとメモ
・ランサーの宝具『刺し穿つ死棘の槍』を解放されると避ける術はない。朱い槍は、必ずその心臓を穿ち、銀時が死ぬ。
・甘味に限り、魔力変換が大幅に上がる。士郎がいないときは、宇治銀時丼を作っているとか。藤村の備蓄が徐々に減っていく。
・英雄王のストパーが羨ましい。慎二とは分かり合える気がする。



【アーチャー】
真名:???

ステータス
筋力:D 耐久:C 敏捷:C 魔力:B 幸運:E 宝具:-

クラススキル
対魔力:D
単独行動:B

保有スキル
魔術:C-
千里眼:C
心眼(真):B
幻術:-
-:-

Profile その1
第五次聖杯戦争にアーチャーのクラスとして現界。
マスターの遠坂 凛との接触をやや避ける面が見られるも、身の回りの世話をやるなど面倒見がいい。
時折、身勝手な行動をするせいで凛は振り回されている。
やたらセイバーと士郎に絡んでくるが、果たしてその意図は…。

ちょこっとメモ
・ステータス、クラススキルは原作と変わらない。
・戦闘では双剣(干将・莫耶)よりも弓、刀を好む節がある。条件が合わなければ双剣しか使わない。
・聖杯がほしい。
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