Fate/SN GO【本編完結】   作:ひとりのリク

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五節 英霊乱舞Ⅰ

 

 

数多の英霊たちが城門の開門を目指して、多くの英霊が城門の前に散り、そして真祖の空想具現化の前に為す術なく敗れた。

空想の世界において最悪の難題だったソレは、最低な逸話を持つ宝具によって英霊たちの想いに応えた。

 

門番との死闘の果てに城門を打ち破った立香たち。

破れた城門の向こうに飛び出した一行を出迎えたのは、死徒仁鉄、そして、最果てまで続く剣山の骸…江戸城の敷地を埋め尽くさんとする似蔵だ。

 

「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲。とんだ隠し球だ、してやられた完敗だ。

……それで紅い人、だいぶ魔力を消耗してるね」

 

真祖の絶対に傷を入れた不遜な男を褒め、仁鉄は鋭い眼光で代償の重さへと切っ先を突き出した。

刀の先は肩、僅かに疲弊した動きをしていることを見抜き、お前が1番の獲物だと伝える。

 

「江戸一の鍛治職人にお褒めに預かり光栄だ。その様子だと城の入り口まで打ち抜いたか」

「っ」

 

対するエミヤの返しを立香は一拍置いて理解した。

 

城門を破って突入し、この似蔵の群れを押し退けたとしても、江戸城の門に施されていた仕掛けに阻まれる仕組みだったらしい。考えたくもないパターンだけど、ソレをぶち破るあの宝具が魔力の消耗が激しいのも事実のようだ。

 

「実力よりも慧眼を振るうか。

参ったよ、城門を破ったのは伊達じゃねェ」

 

事実を早々に押しつぶしたいだろうに、辻斬りのセンスに任せた数の暴力に頼らないは、源外庵での戦闘を見て警戒しているからだ。

固有結界、無限の剣製。衛宮 士郎が似蔵の群れを一掃した大魔術。アレがここで発動すれば、手持ちの似蔵…刀は一掃される。あの出来事を知っているばかりに、士郎の存在は大きな牽制となっている。

 

「数にも対抗出来るなんざ戦国の世なら天下取りも夢じゃない。剣聖とも呼べる。次に鍛つのはお前だ」

「いい加減な気持ちだね。皆んなのガワは作れても、中身が伴わない理由がソレだよ。

教えてあげる、アナタは想い方を間違えた」

 

戦国時代の合戦を彷彿とさせる数に、拳を握りしめて絶対勝利宣言をした。

 

(僕たちの世界での魔術の知識がこっちは疎い。固有結界の弱点は魔力消費量しか気付きようがない筈だ)

 

士郎を見て嫌な顔をしているのが証拠だ。

正鬼なら見破れるが、正鬼以外に見破ることは到底困難だろう。

 

(初動でバレる。牽制が効くのは剣製が使えない士郎が戦い始めるまで────)

 

見破ることが困難なら先手必須。先手になにを打つか、この数の似蔵と仁鉄を退けるかを逡巡したとき。仁鉄が手持ちの似蔵を湯水のようにしか見ていないことを思い知らされる。

 

「俺の刀ァ廃棄した外法見せろ」

 

右腕を城門に掲げる仁鉄を皮切りにして、捨て駒となるために似蔵たちが紅桜を挙げて飛び出した。

士郎の剣製を洗いざらい調べ上げるつもりだ。レンジから継続時間、刀に対する理解度を。その為なら似蔵の百や二百は惜しくないと、そう言外に示している。

 

「マシュ‼︎」

 

僕の声に間髪入れず反応するマシュ。

源外庵での攻防、あの二の舞になるわけにはいかない。どうすれば回避出来るのかをマシュも理解していた。

 

いまは遥か理想の壁(ロード・キャメロット)‼︎」

 

有無を云わない真名解放、白亜の城の顕現。

城壁と並行に、隙間なく横一面に展開した。

江戸城の中にキャメロットを建てるなんて暴挙、状況が状況なら打首獄門もいいところだが、傾城よりも遥かに難易度は上だ。誰も咎めはしないよ。

 

マシュの城は女神ロンゴミニアドの聖槍をも止める。当然、大英雄ヘラクレスの剛力は跳ね飛ばす。続く死徒仁鉄の馬鹿げた一振り、息を呑んで身構えるがこれも防いだ。

 

「コイツぁ良い!仁鉄が目ぇかっ開いて驚いてる!」

 

剣が手を叩いてマシュを賞賛するが、誰も手放しには喜ばなかった。マシュの横顔に余裕の文字はなく、意気込みだけで仁鉄の一振りを耐えていることが見て取れる。

仁鉄は似蔵の後ろに隠れて見えなくなってしまった。次々と城に斬りかかる似蔵の群れも対処しないと、マシュの限界がすぐに来る。

 

「…んでどうする? 上から江戸城に直接入るか?」

「やめておけ。江戸城の侵入経路は入り口のみだ。あそこに見える格子窓は真祖特製と見た、蹴破れんぞ」

「ねぇ、桜の木? あれから出た似蔵、動きが単調だ。前に進む、攻撃するの2つしか知らないみたいに」

「アレは鍛治工房だろう。それも大量生産に重きを置いた、粗悪品工場だ。目視3本、アレを伐採しない限り本丸に近づくのは難しいと見た」

「悠長に説明してる場合か! 何か手は!?」

「こうするのさ」

 

そう言ってエミヤが白亜の城の上に飛び上がる。

普段使っている弓と矢を投影すると、矢を番えて。

 

「シュウウウウウッ‼︎」

 

普段聞かない抑揚とともに鏃を射る。

空を舞う。人間が描くことの出来ない軌道で地上に落ちる鏃は、1本が無数に枝分かれしていき、地上に降り注ぐ頃には白亜の城に群がる似蔵を片っ端から射抜いていった。

撃ち漏らし、無傷の似蔵に向けて第二の鏃を番えて射る。射ては番えて、もう残り少ないはずの魔力を似蔵殲滅に注いでいく。

 

「凄いですエミヤさん。先程の投影の疲れを微塵も感じさせない弓道の姿勢、感服しました!」

「エミヤ、なんかテンション高くない?」

「あぁ、アイツはちょっと訳ありでさ…」

 

士郎の苦笑いの意味を立香は知る由もない。

あのエミヤ、実は鼻くそ付けた衛宮で、半分人堕ちしたあとだなんて。

 

「上から援護するから隙を見て城に入れ…ってことみたいだ。似蔵の群れを退かして城に転がり込もう」

 

白亜の城の上のエミヤから意図を汲み取って、江戸城に侵入する算段を教えてくれた。

だけど、マシュを置いていくわけにはいかない。この城を維持しないと立ち所に似蔵たちに押し潰される。

 

「行って! エミヤが狙われてもマシュは守れない!」

「助かる!」

 

僕にいま出来る最善は、マシュの近くで魔力を多く届けること。僕の提案をすぐに理解した士郎は、刀を投影して白亜の城を駆け上がっていった。

 

「城の維持は無理すんな。

いざとなりゃ俺がなんとかしてやらぁ」

「うん。剣も行くんだね」

「城を越えるバカを叩っ斬ってから、ちょっくら仁鉄と話してくる。

神楽はマシュと立香を守ってやんな」

「剣、無理はダメだよ」

「応とも」

 

剣も城を飛び越えていく。

着地の直前に抜刀し、忽ち数百の似蔵が鉄屑となり果てた。無双する姿を見届けて、敵の動向に注視する。

もうマシュと神楽しか居ない。敵は僕たちを叩きに来るはずだ。攻めて守りと成す苦渋の策。裏目に出ないことを祈りつつ、魔術礼装の再起動を待つ。

 

 

 

 

 

───

 

 

──

 

 

 

 

 

 

 

弓を引いては射る。射ては弓を引いた。

紅い外套が翻るたびに数十の鏃が砂埃を起こす。

無数の似蔵、そして取るに足らない不出来の英霊たちが砂埃の中に消えていった。

知っての通り、これで怯むほど相手の心は熱していない。自らの意思を持ちながら、無数に別れた自我を持つ似蔵。人斬りの心にも宿っている恐怖心は、刀になった時から熱砂とともに弾かれた。

アーチャーが鏃を射てから次を構えるまで、僅か3秒の隙が生まれる。番えた矢を目視するや次々と似蔵たちが跳び上がり、まずは肉の盾と変わり果てた。遠目には砂粒、近くから妖の群れと見紛う対処に、アーチャーは宝具を投影する。

 

赤原猟犬(フルンディング)‼︎」

 

残り少ない魔力を使い、似蔵に標的を絞って番える鏃。第五次聖杯戦争、最後の戦いで魘魅の分散した霊気を追従、射抜いた標的必中の鏃。肉の盾として誘う似蔵たちに向けて、その誘いを知って射出した。

 

「馬鹿だねぇ」「魔力を搾り出して」「知識浅い俺にも」「誰にでもガス欠って!」「分かっちまうさ」

 

狙った対象…似蔵に向かって飛び続けるフルンディングを消し尽くすか魔力が果てるまで、爆散していく似蔵たちは恨み嫉みを吐き続ける。事実ど真ん中、アーチャーの心を見透かす言葉を投げつけるのだからタチが悪い。

 

(魔力を補給しろ)

 

懐から取り出そうとしている物が魔力補給のためだと、宝具の矢先を掻い潜る英霊たちに教えているのだから。

 

「ちっ、間に合わん…」

 

アーチャーの絶え間ない射撃を掻い潜り、似蔵の影で隙を窺っていた猛者たちが飛び出す。アサシンにセイバー、ランサーと、名を轟かせられなかった正史と空想の英霊が戦果を求めて猛き刃を振るう。

 

「っ言い訳に────」

 

するか!と。

魔力保有量が少ないことを嘆く自分に喝を入れて、息切れの干将・莫耶を投影しようと向き直った時、「しゃがめ!」乱雑な命令に反射で動く。

 

「はあ─────やァっ‼︎」

 

頭上で聞こえた気勢に目を向ける余裕はアーチャーにない。しゃがんで避けるも踏ん張りが効かず、膝をついた。

だが、誰がなにをしたかは分かった。懐に取ってある宝石を取り出しながら、刀に変貌しても戦果を貪する英霊を返り討ちにした馬鹿野郎を睨みつける。

 

「お前は射撃に集中しろ。撃ち漏らしは俺がやる」

 

時代にそぐわない服装の自分に助けられて、羞恥に腹立たしくなる想いを忘れようと宝石を口に放り込む。

 

「………言われずとも!」

 

ひと飲みで魔力を回復し、ひと息の間に悪化させた城下に再び鏃の雨を降らせる。

 

宙空には飛び出した似蔵を貫く赤原猟犬。

白亜の城からは地上を狙撃する爆撃機、爆撃機を守護する侍1人。

こうまで火力を殲滅に回して、似蔵たちの数はまだ1割も削れていない。それどころか数は増していた。原因は明らか紅桜…江戸城に現れた複数の大樹の花弁から、似蔵が無限に湧き出ているせいだ。

 

(今の魔力なら伐採できる)

 

目視で一番近い大樹に狙いを定める。

放つ二矢、片方は似蔵を、もう片方で伐採する。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)

 

弓に番えた矢は、第五次聖杯戦争の最中に投影した伝説の剣。一度はオリジナルに近いものとして手にしたものの、燃費の悪さゆえに矢として放つしかなかった、自慢の投影だ。

それを戸惑いもなく矢にする様は、空想の英霊たちが見れば異常者と勘違いする。単なる起爆剤とは思わず、放たれた螺旋剣に桜の木ごと呑まれる。

 

夭遁(ようとん)写御神楽(うつしみかぐら)

 

────はずだった。

 

宙空を染める炎天。瞬きのうちに螺旋剣を照らした陽光は、螺旋剣を掴んで世闇の裏に潜んでいく。

 

「今のは………」

 

音も立てずに消えた。桜の木を守ったソレは、暗に伐採されると不都合があると言っている。

アーチャーは螺旋剣の分は魔力量が減っているのを確認した。

手応えのない矢から、ただの防御ではない。デメリットありきか、相性が悪かったのか。考えなければいけないことは多々ある。然し、アーチャーは驚愕に時間を盗られた。

 

(宝具が使えたのか!?)

 

サーヴァントであれば必ず保有している宝具。

疑問に思う余地のない常識は、村田 仁鉄の鍛った刀には当て嵌まらないはずだった。

死徒村田 仁鉄。

人類を糧に生き、人理を貪る吸血鬼。死徒はサーヴァントとは正反対に位置する存在だ。死徒による人類の叡智の結晶、宝具の再現は不可能である。

これまで仁鉄が送り込んでいた刀、朝田 夜右衛門や富田 勢巌、沖田 総司が使っていた対人魔剣が仮説を裏付けている。三者とも人智を超越した絶技ではあるが、これらは宝具の枠組みから外せる。故に対人魔剣ならば再現することが出来たのだ。

 

アーサー王という例外を除いて。

 

(何処にいる。どのサーヴァントが)

 

情報を整理しきれないアーチャーは、早々に宝具持ちを倒さねばと目下の群れに意識を戻す。

仁鉄がサーヴァントを鍛てる理由、真祖と対等な関係にあることを後回しに、飛びかかってくる似蔵たちを迎撃しながら殲滅範囲を広げた直後、鳥肌が立つ。

 

なぜ飛びかかる似蔵を自分が処理している。

衛宮 士郎はなにをしているのか、と。横を向いて。

 

「ん〜、めんどいから真名解放・火雷噬嗑(からいぜいごう)

「……いっ」

 

いつの間に。

 

気づいたら手遅れだった。

 

音すら気づかせない曲者が1人、必殺を成す。

 

駆けるよりも疾く、曲者の宝具が士郎を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空から降り注ぐ星屑の如く、弓兵の鏃が地上の花弁を射抜いている。

同じ衛宮 士郎でも、射手としての力量が段違いだ。弓兵に徹した時の恐ろしさを垣間見た。

第五次聖杯戦争を通して知ることのなかったアーチャーの本領に意識が吸い込まれつつ、次々と飛びかかってくる似蔵たちを斬り伏せていく。

 

一瞬で立て直したアーチャーは、俺が動きやすいように位置を変えながら似蔵の殲滅のために射手いる。お陰で下の状況把握に思考を割ける。

無数に現れる似蔵、その大元の桜の木は目視3本。距離は1本が50メートル、2本目90メートル、3本目は…150以上離れている。アーチャーの宝具は、3本から現れる似蔵と同等の数を射抜いていく。ここにアーチャーの地上射撃で漸く数を減らせているが、これも魔力が保つ今だけだ。

桜の木。耐久力は不明だが、直ぐにでもアーチャーは射撃を試みるだろう。

全部を伐採したあと、恐らくアーチャーの魔力は尽きる。足りない人手を補う代償だ。まだ手はあるものの、人海戦術で押し負ける現状を打破するには、あまりにも人手が足りない。

 

今のところ目立つサーヴァントはヘラクレスだけ。ひたすらマシュの宝具に突撃しているのは、単に思考するほどの再現性がない。…そう考えたが、心臓の鼓動が俺の考えに異議を唱えている。

剣聖富田 勢巌の再現に限りなく成功している仁鉄が、あんなおざなり極まる刀を鍛つのだろうか。

 

「…あれ、あいつ」

 

疑惑の目で観察していると、内側に疑問を持った。

再現性を優先したのは内側…宝具じゃないか?

もしかして、十二の試練(ゴッドハンド)を持って───

 

「なっ、なんだぁ!?」

 

城の壁面に吹き飛んできた複数の物体。ヘラクレスの猛攻でも揺れなかった壁を揺らしたのは、似蔵たちの亡骸だった。

何事かと視線を江戸城のほうに向ける。

似蔵の群れを落ち葉を攫う突風の如く吹き飛ばし、周囲にいた似蔵や英霊は漏れなく消滅している。

 

あの爆心地にいるのは剣と仁鉄に違いない。

人物を断定出来ないのは、錆びついた霧に爆心地が覆われているせいだ。剣が無事であることを祈りつつ、後ろの気配を察して気合いを入れ直す。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)

 

起爆剤が宙を切り裂く。

鏃の威力は想像を遥かに越え、見たもの感じた者を鏃に吸い込まんとする回転力を発揮している。

当たれば江戸城も吹き飛ばせる代物だ。

間違いない、一本目の桜の木はこれで────

 

夭遁(ようとん)写御神楽(うつしみかぐら)

 

射出から僅か0.1秒。人智の編み出した射撃速度を上回る光の速さによって、アーチャーの宝具は何処かへと消滅した。

 

「なんだあれ……ふざけてる」

 

射る起爆剤。触れれば爆発する螺旋剣を、デタラメな光が散り散りにした。発光周辺の似蔵が消えていないことから察するに、条件で対象絞り込める反則級の防御宝具…‼︎

 

「ちょえ〜! 剣の強さ、ふざけすぎじゃない」

「────え」

 

その感想を放った相手は、味方の誰でもない。今の眩い光を気にも留めず、今も似蔵たちを消し飛ばしながら斬撃の嵐を生み出す爆心地に呆れた声を上げていた。

親しい間柄と思わせる位置に立ち、江戸城内を破壊する2人を悠々と見つめているサーヴァントが一騎。

 

「なっ!?」

 

義賊、石川 十右衛門だ。

雰囲気で分かる。彼女は刀だ。仁鉄の刀だ。

座で稽古つけた雰囲気とは別者。早く…動け。

 

「……気配遮断、解けてるぞ」

「ん? あぁ〜、そういうのあるらしいね」

 

言葉を投げて帰ってきたのは気さくな返事で、らしくもなく濁りのある声音。座で鍛われ覚えた光景が、脊髄反射を叩き起こして刀を振り上げていた。

 

「ど? 消えてた?」

「ッーーーーー⁉︎」

 

目の前で爆発した火花が身体の痛みを代弁した。

短刀を弾いた刀が悲鳴を上げる。刀の振動が周囲に警鐘を鳴らすものの、射手はこっちを見もしない。

 

「あ、後ろの? 気づかないよ。隠してるから」

 

アーチャーが気づかないのは十右衛門の宝具か?

座では知り得なかった。

勢巌も十右衛門も、本気を出すことはなかった。

鍛錬をつけてくれる相手は皆んな英霊だ。スペック差を埋めるための技術を付けるだけで精一杯。ヘラクレスとクー・フーリン、2人の宝具を使えるようになったのは、俺の心臓に刻まれた傷と、内側に今も眠っているアヴァロンのおかげだ。

十右衛門の初手で激鉄は落としてある。会話の裏側で大英雄の絶技を起動して、

 

「ん〜、めんどいから真名解放・火雷噬嗑(からいぜいごう)

「なっ、くそ────!」

 

そういうとこある‼︎ 会話をしろくそったれッ‼︎

 

火雷噬嗑(からいぜいごう)

悪鬼羅刹を退け続けた十右衛門の生涯が宝具に昇華されたもの。

魔力を注ぐだけ火力が上昇するデタラメな性能を持っていて、死徒仁鉄から魔力を吸い上げるとすれば、白亜の城ごと持っていかれる。

 

破る手段はある。だけど準備が足りない。タイマンじゃ当てられない。

泣き言を推進力に換えろ、どのみちアーチャーは間に合わないぞ。

 

是、射殺(ナインライブス・)────」

「あ〜ぁ、もう終わったよ」

 

背筋が凍る。視界が白黒になった。

手にした剣の記憶を置き去りにした十右衛門は、焼却されたことに気づけない哀れな男に死を説く。

ブレイドワークス、と言葉は続かない。詠唱は死後の世界には不要だ。それは生者の特権、俺はもう。

 

「っとと。させっかよ」

「あらま? 仁鉄とお話した? もしかして殺せた?」

 

軽口を叩き合う強者たちの声が聞こえて、視界に色彩が戻る。心に灯る魂が現実を見た。

十右衛門の百手走撃を全て捌ききり、無傷の防衛を果たした存在は剣だ、剣! さっき城の前まで行ってたのに。

十右衛門の宝具を見て戻ってきてくれたんだ。

 

「逃げられちまった。腹いせに刀振んのは好かんが、緊急事態じゃ仕方ない」

「特技の忍び足を見破られてアタシゃ悲しいよ」

 

言外に、実力では死徒仁鉄を上回っているということだ。俺は水を差したことになる。

 

「剣…」

「取りこぼしは嫌い。だろ?」

「────ああ!」

 

感謝と謝罪、どちらも後回しにしろという眼差しを受け止める。失態を取り戻すために前を向くと、十右衛門の背後からアーチャーが双剣を振るっていた。

注意を惹きつけるため剣も飛びかかる。

 

「まぁま、早んないでよ」

 

死角からの攻撃がなくとも、剣の攻撃を受けるだけで十右衛門は致命傷を受ける。そこを、背後からのアーチャーの一撃どころか、剣からの攻撃を受けも避ける素振りも見せない。

 

「っ後ろ」

 

殆ど直感だった。

少しの経験則が混じった。

座での経験。十右衛門なら何をするか分からない奇抜さを知っているから、後ろだと思った。

無闇に刀を振るうと、重い火花が発生する。発生した火花を裂いて通り過ぎた音は、跳躍してアーチャーの背後に降り立った。

 

「2人がかりなら殺れると思ってさ。いっちゃん速い人を連れてきたんだ。ん〜、ダメかぁ」

 

剣の手数に対抗して不意の剣を振り下ろしたのは、なりを潜めていた剣士。

 

「沖田 総司!」

 

真名を叫ぶアーチャーの振り下ろしを躱して一閃十刃、命危うし剣戟をひと息で弾く。

アーチャーは弾いていたが、きっと斬撃の半分も見えていない。同一人物だから分かるんだ、アレは慣れとか親しみ、沖田総司との戦闘経験があるから身体が動いた。

 

「………どこの藩の者だ」

「見覚えのない動きか? 本人なら今のやり取りで分かりそうなものだが」

 

明らかな挑発に易々と乗ったのは、仁鉄が鍛った沖田総司だからだろう、間違いない、沖田総司…幕末の治安維持組織、新撰組一番隊隊長その人がアーチャーの言う通りであれば口車に乗せる側であって流される人物ではない。

ここに来る前、源外の爺さんから話は聞いていた。カルデアの連れてくるサーヴァント3騎のなかにその名はある。全員敗れているから、あの沖田は鉄屑の餌食になったんだ。

虚実混ざる仁鉄の作品なら、本物を知るアーチャーにも分はある。即ケリ着けるためにも俺はアーチャーに手を貸す。

 

「好き勝手に気配を消せるな!」

「はは〜、さあ? そうかも?」

 

後ろで剣が声高く言い放つ。

気配遮断の付与、或いは貸し出し。

 

それが本当なら、気配遮断を沖田だけに付与したとは限らない。

 

嫌な予感がする。早く沖田を倒さねば。

沖田の後ろから斬りかかり、アーチャーが隙を突こうとガラ空きの背中に刃を向けた瞬間、アーチャーへと飛び込んだ黄金が1つ。

 

「2人は嘘。信じちゃって、良い子ちゃん!」

 

十右衛門の声が脳に痛いほど響く。

沖田の向こうにいるのは誰だ。

 

「アーチャー……!」

 

アーチャーが吹き飛ばされた。

生きているか? 視線を向ける余裕はない。向けたら沖田に殺される。俺を守ろうとした剣が狙われる。

目の前の人物を見ることしか出来ない。

 

「次は貴様だ、志村 剣」

 

黄金の騎士。

独りで疑問は解決した。誰あろう俺のなかで鼓動する遥か遠き理想郷(アヴァロン)が喜んでいる。

いつか夢で見た正規の英霊、勝利の剣を携えた伝説の騎士王、アーサー王だ。

 

戦場激化。

源外庵の攻防を上回る圧倒的な数は、もはや別種の戦法としてカルデアを追い詰めていく。

 

 

 

 

 

 

伍丸弐號が手帳に記した『裏切る者』は誰?(予想)

  • 鳳仙
  • 神楽
  • 日輪
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