Fate/SN GO【本編完結】   作:ひとりのリク

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五節 集え馬鹿ども‼︎ かぶき魂‼︎

 

消音器を取り外した発電機の如きけたたましさ。

然し城攻めを決行する立香たちの胸奥には無限の想いが供給される。誰が言わずとも真選組と名乗る集団が味方だ、誰と知らずとも億兆の意志が背を押してくれたと確信した。

 

「アンタら…………!」

「待たせたなチャイナ娘、外からのお客さんたち。

ちぃとばかし寝こけちまった。正直すまんかった」

 

数は無限を誇るであろう似蔵の群れが立ち止まる。骸なりにも製作者を気遣っているらしい、死徒の身体を焦がした正体に生唾を飲んでいた。

無数の似蔵を存在感だけで足止めする黒い光は輝いていて、感謝の念を注ぎたい気持ちになるだろう。

 

「今まで迷惑かけた分、キッチリと────」

「おんどりゃああああああああ!」

 

そんな近藤の顔を掴んだ神楽は、似蔵の群れに投げ飛ばして蹴散らした。

 

「「えぇーーーーーっ!?」」

 

敵味方顔面蒼白の行為だが神楽は至極当然といった様子を崩さない。

 

「局長オオオオオオ!」

「なんでぇーー!?」

「今頃出てきて良いとこ取りたァ調子良いにも程があるでしょう。読者の好感度上がるのムカつくから締めたの。もっかい寝てなさい」

 

神楽の奇行…釘刺しに黒い光が段々と汚く、頼りなく見えてきた。しかし!フォローに入る男が1人。

 

「か、神楽ちゃ……さん!困るってば!俺たちは今、新撰組の力を貸してもらって動いてるんだから!」

「だから何よ。山崎のどこが変わったっての」

「!よくぞ聞いてくれました。こういうのは奇を(てら)えばいいってもんじゃない。

伸び代を伸ばすことにしたんだ」

 

山崎はバーベルを両肩に載せてスクワットを始めた。その重量なんと40kg!

 

「何してんの」

「筋トレだよ。主人公と俺の髪型同じだからブリンバンバンすればいい線いくと思って」

「いや何も伸びてないわよ、どこ伸ばしてきたの」

「パクリという銀魂のお家芸(ハムストリング)さ」

「上手くも格好良くもないわよ。いつもの流行りに乗じるやつでしょうが!!!」

「山崎がボーリングみたいに扱われてる!?」

 

山崎も似蔵の群れに放り込まれた。似蔵を薙ぎ倒し見事ストライク。10本しか倒せない辺りが山崎だ。

 

「もういいわよ。どーせロクな強化ないでしょ。銀魂よ銀魂、他所様とコラボっても必殺技なんてせいぜいストライクショッ○とか○めはめ波だし」

「そ、そんなことないよ!fateだよfate!宝具とか色々あるって!そ、そうですよね…!?」

「ンなもん知るか。起きたらなんか沢庵臭えし、ヘンテコな羽織りが置いてあるくらいで、事情を教えてくれそうなヤツはもう居なかった」

 

そう語る土方の背後には、もう1人の土方が見えた気がして。真選組の復活は、彼が遺した想いだ。新撰組は未だ健在と心に刻み込む。

 

「ただ、分かったよ。江戸を守れって想いは。

伝わったよ。俺たちの正義を成せって激が」

「世界が違おうとも、宿した(もん)が一緒だってんなら有り難く掴わせてもらうぜ。

コイツら全員ぶった斬って俺たちの江戸を取り戻す」

 

それが我らの使命。

立香たちの前に繰り出した真選組の背中が語る。心強いと思う反面、この場の問題は片付いていない。

 

「…………荒くれ者の集まりは見飽きた。

お前たちの宿す魂は確かに一緒だ。均一で輝いてる。

人類を存続するために必要な人材だ、さっさと死んで真祖(おや)の元に戻ってやれ」

 

身を包む炎を払った仁鉄、握りしめた刀によって再び今際の際に立たされる。

一時的に怯ませるだけではダメだ。仁鉄の動きを封じ込めるか、撤退させるだけの理由がいる。

 

「また来ます! 皆さん、私の背後に……っ…」

「マシュ!? 無茶はダメだ!!」

 

真名を解放しかけたマシュに異常が起きる。仁鉄の仕業だ、宝具で防いでも死徒の影響が和らぐことはないらしい。マシュを支えていると、エミヤが宝石のようなものを割ってマシュに手渡す。

 

「落ち着け。ヤツのひと振りは真っ当なサーヴァントでは敵わない。半端者の私ですらだ」

「……さっきの爆発が?」

「そう。真っ当に生きていれば知ることのない」

 

体調を取り戻したマシュを横目にするエミヤが笑った。真選組の先頭に立つ2人が前に出た。

仁鉄の刀を前にしても犬歯を剥き出しに笑っている。

 

「総悟‼︎」

「りょーかい」

 

総悟、そう呼ばれた男は、担ぐ米俵3つ分相当の近代兵器、ロケットランチャーのトリガーを引いた。治安維持組織にはあってはならない蛮行、御上の象徴たる江戸城に向けて大筒を放つなんて。ただ、先ほどは仁鉄の動きを止めた一発だ、当たれば深手を負わせられるかもしれない。それは仁鉄とて百も承知。ロケットランチャーの発射に合わせて錆びた刃を振るい、呆気なくあ終末の際がかか放たれた。

 

「っ────!?」

 

刃が弾を切り刻む直前、弾が無数の散弾へと変化する。仁鉄の刃は不発に終わり、鋼鉄よりも固い死徒の身体に直撃、硬直を与えた。

 

「焼却炉の中も歩ける身体だぞ…!

いったい何を込めたら───『憑依より醤油』?」

 

散弾の1つを拾い上げて確認すると、表面にびっしりと『憑依より醤油』という短文が刻まれている。

 

「……なんだ、これはァ」

 

憑依批判。

醤油がいかに優れているかを書き留めたベタベタの弾丸。TKGを作る際の極意が記されている、源外秘蔵の一品である。

とある埋葬機関のカレー中毒者から教わり、最初こそ『憑依かっこわるい』と書いていたものの、いつの間にか好きな食べ物の話になり、討論しているうちに『憑依より醤油』で落ち着いたらしい。

この説を覆さない限り死徒は醤油に勝てない。

 

「源外特性、対死徒仕様の弾さ。

否定には否定を、化け物に機械技師だ」

「いやそれTKGの拘りの作り方じゃないか。あの爺さん吸血鬼殺しの専門から何を学んでんだ!?」

「いつの間にそんなものを!?」

「この特異点が出来てからさ。源外も、オイラも、そして師匠たち。皆んな、今日のためにずっと前から準備してきた。

今は信じてくれ。必ずアンタたちの道は切り拓く」

 

一拍の落ち着きを置いた晴太の背中。

鉄屑の山を押し留めた真選組。

2つの自信が立香たちの心の余裕を生み出し、

 

「ねえ!憑依ってことは、もしかして!」

「あぁ、メガネの身体から仁鉄は引き剥がせる」

「なら、やる事は1つだね!」

 

更に希望を1つ追加して。

全員、進むべしと立ち上がる。

体力回復気力充分。鉄屑を越える準備万端。

 

「進むぞテメェら‼︎ 道を切り拓け‼︎」

 

土方の号令に呼応して黒い光と鉄屑、2つの巨大勢力が圧し合い死力をぶつけ合う。

 

「巫山戯るなァ‼︎ どうしてテメェらがいるッ‼︎」

「んなもん、こっちがトュルーエンドに続くからに決まってんだろ」

 

似蔵の怒号、黒い光に引き込まれて動き出した出遅れた集団、負け犬の遠吠え正しく、ひと目見て分かる悪役を熟す辻斬り1つ斬り伏せて。近藤の言葉に轢き殺される似蔵たち。雑な口撃、戦力差の脅し、それら悪の都合を近藤は笑って突っぱねた。

 

「辻斬り似蔵、テメェは問答無用でお縄だ」

「土方さん、どいつもこいつも似蔵でさァ。全員逮捕してたら牢が幾つあっても足りませんぜ」

「今のは本体に言ったんだよ。ここに居るのは全部偽物。斬って斬って斬って斬りまくれ!」

 

土方の声に呼応する多勢。その勢いは近藤、総悟、終らを先陣に勢い増す。

 

「俺ら束になっても勝てない相手ですよ?!」

 

されど鉄屑。人斬りの骸なれば、その刃に命を落とした仲間を知る者たちもいる。彼らは刀の錆び、人斬りの心を満たす獲物、覆らない死に尻込みをしてしまう。

退けば切腹、人理を守るために、どんな大義あろうとも恐怖に身を強張らせてしまい────

 

「正史の英霊つっても本来の性能はない!

慎二がマスターのライダーみてぇなもんだ、気迫で斬りかかれ!!」

「なんか行ける気がしてきたぞ!!」

「ものは言いようだーー!!!」

 

一喝。比較による格下げ。慎二を引き合いにした戦意の底上げを土方は叫んだ。

結果、表。数で優位を取っていた屑鉄の波がどんどん押し返されて、ゆっくりと歩み進めていった。

 

「凄い…似蔵の集団を押し返してる!」

「これなら行けます‼︎ 似蔵を大量生産している桜の木にも、これで近づけそうです!」

「聞こえる…ライダーの不服申し立てが。すまんが上手く使われてくれ…あとで慎二が名誉挽回するさ」

 

思わぬ助っ人に興奮の立香とマシュを横目に、未来の慎二にカバーを託して士郎も勢いに乗る。

 

敵は無限に雪崩れ込んでくる屑鉄。必死の抵抗よりも、宝具の一撃がほしい場面。

 

「だ、そうで。景気付けに、いっちょサーヴァントの力ってのを使ってみやすか」

「使うのは初めてだ。慎重にな」

 

無双の強さを発揮する総悟は、集団相手に得手ありと名乗り出た。丸メガネを取り外す仕草に立香は首を傾げる、メガネ掛けてたっけ?と。よく見たら学ランを着ている気がしたが、錯覚だった。

 

「お前いつの間にメガネしてたの?」

「───っく」

「おい大丈夫か? ソレ使っていいヤツ? 明らかに雰囲気がヤバいんだけど?? ねぇ沖田くん?」

 

青ざめる土方の声は総悟に届かない。

出し惜しみは無しと言わんばかりの気分で取り出したナイフを、土方への返事とする。

 

「はっ───!」

 

誰の耳にも届いた音は1つ。

ナイフを突き立てる不可能(こえ)だ。

 

「地面が割れる!?」「逃げろおい押すな!」「挟まれ、ぎゃだ───」「どうして真祖の大地が!」

 

ゴン、と音を立てて世界のズレが起きた。

ナイフを刺した地面から先、似蔵たちの足元が訳も知らずに崩壊して墓標を立てていく。

 

「おい、何したんだ総悟」

「あたり一帯の『死』を刺した」

 

大事をした総悟は地上から落下する鉄屑に一瞥をくれて、土方の問いかけに簡潔に答えた。

その容貌、まさに殺人キ────!

 

「いや何してんだお前エエエエエ!!」

「直視の魔眼でさぁ。

つつ…眼鏡してないと頭が割れちまいそうだ」

「なんで直死の魔眼持ってんの!?

丸眼鏡なんざ掛けたことないだろうが!!」

「型月の二次創作に片足突っ込んだんですよ、ここはブランドに肖っていきましょうぜ土方さん。

銀魂だってガン○ムに鬼○、クリ○松村や小栗○の足舐めて名声上げたんですから。こっちも声をツテにしていかねーと終わるモンも終わらねーです」

「下げる頭あってのことだから!!あっちはゴリラの後ろに編集長いっからアレで済んでんの!!

こっちは遅筆の頭1つだけ!!下げるモンないから下手なことしてっと後悔するぞ!?!」

「そうだぞ総悟。周りの迷惑を考えてパクらにゃならん。それが俺ら治安維持組織の努めだ」

 

声優を媒介としたパクりならリスペクトを、という意味合いで前に出た近藤。「その発言がもうダメだ」と項垂れる土方を他所に盛り上がる。

 

「誠意を待てば大丈夫!真っ黒なとこも灰色に薄めてくれるさ!俺の新しい力を見てくれ!」

「おい待て!念を使ってゴレイ○とかは無しだぞ!

ゴリラがゴリラ召喚すんのは擦られすぎてる……」

 

不気味な笑いを合図に後ろ首から黒い影が身体中を這い、逞しい身体を鬼に変貌させていく。

黒い影が全身を覆った後には夕焼け色の皮膚となり、頭部にはツノ2本、額当てに『♪』のマーク、腕は左右3本の怪物が現れた。

予想しなかった姿に誰もが茫然とするなか、近藤は威勢よく『印』を結んだ。

 

「口寄せの術!!」

「……は!?」

 

空に呼び出されたソレは巨大蜘蛛。

腹から生み出した人間の顔ほどの大きさの小型蜘蛛を似蔵に注ぎ落としながら、自らも大地に着地する。

 

「巨大蜘蛛!?」「糸吐いたぞ!」「なんだコイツ!?ケツからなんか出てるぞ!」

 

小型蜘蛛の撒き散らす蜘蛛糸に絡まり、一纏めになった似蔵たちを近藤の作り出した矢が一掃した。

締めの「どうだ、凄いだろ」顔に拍手する一同。

 

「いや型月に肖れやアアアアアアアアア!サーヴァントだろ! 宝具出せ!チャクラ練ってどうする!!」

「ゴリラ召喚したら腕6本だけど足も6本になるしさ。目ん玉も6つになって大変なんぜよ。

こっちは腕と目ん玉増えるだけだし、ケツからチャクラ分泌するのが俺には合ってんだ」

 

ケツから蜘蛛粘金の矢を大量生産し、増えた腕でこねくり回している姿はヤバかった。

詳細な描写などゴリラには不要である。

 

「治安維持組織の長がゴリラですら無くなったぞ」

「ゴレイ○は試したんだな…」

「それ以上は近寄らないで」

「ジャンプがチェンソ○マンになったり領域展開してる間、俺たちはなにをしていた?

銀八先生の新アニメ放送を世間にチラつかせて教師枠を攫おうとしたくらいだろ。

それじゃ足りん!教師枠だって○ヴォトスが迫ってきてんだ、どれだけ汚れてもなりふり構うか!ガラ空きの蜘蛛忍者に黒髪魔眼持ち辺りは狙っていくべきだ!」

「なんで汚れ被りにいかにゃなんねーんだよ!

救い出した江戸がパクり塗れになってたまるか!」

 

叱責された近藤は呪印が剥がれ落ち、容姿も元通りになった。

そんな真選組のふざけ振りを嘲笑う者が1人。

 

「ふん。どいつもコイツも浮かれおって。これでは新撰組も草葉の陰で泣いているだろうな。

こういうのは過去作品の繰り返しだけじゃ置いていかれる。流行りに乗っかるだけが銀魂ではない」

「て、テメェは……桂!?」

 

不遜な顔立ちに似合わない白装飾を纏う男。短くはない白髪を揺らしながら、太々しく名乗りあげた。

 

「桂じゃない。魔攘教大罪司教『逃げ』担当、レグルス・ヅラニアスだ」

 

自己中な宣言で場の雰囲気を掻き乱し、それを満足げに見て腕組みをする。後ろからは『同志』と記された看板を持つエリザベスが確認できる。あ〜ぁ、やっちゃった。

 

「いや魔攘教ってなんだよ!? 型月とジャンプの垣根越えたよね? クロスしすぎて放置された作品みたくなっちゃうやつじゃん!!」

「何を言っている魔攘教大罪司教『ニコチン』担当、トシ・オニノフクチョー」

「母音すら合ってない強引な改名辞めろ! つか俺も魔攘教かよ、入った覚えはねえぞ」

「真選組が攘夷党として我々と合併した時だ。魔攘教を発足し幕府を陥落すると誓ったじゃないか!!」

「誠組じゃなかったか?? お前も近藤さんと一緒に捕まってただろ」

 

細部を指摘されて額に汗を流すヅラニアスは、「細かいことは気にするな」勢いで乗り切る。

 

「こうして『志士の心臓』を引っ提げて帰還した!

どこぞの猗○座などに捉われる俺ではない! 型月コラボで500億円の映画を作ってみせる!」

「猗○座意識してる時点でお前の負けだから。所詮は400億の脛齧りなんだよ俺たちは」

 

因みにヅラニアスは単なるコスプレだ、無敵でもないし短髪はヅラ「ヅラじゃない桂だ‼︎」だそうだ。

 

「たわけ!遊んどる場合か!」

「ほら怒られた!ほんっとすみませんっ!」

 

馬鹿どものフォローに入る土方。

怒号を飛ばしたアーチャーは最前線に飛び出すと両手を胸の前で合わせて、後ろを向いて唱える。

 

「急ぐぞ、ついて来られるか。

────領域展開・伏魔御厨○」

 

その光景は数秒後に辺りを焦土としてしまう程の破壊であった。江戸城の大地に刻まれた無数の傷痕が容赦無さを似蔵に伝達し、彼らの調子を落とすことに大いに貢献した。

 

「ふん。鉄屑では追うことも叶わんか」

「ついてく訳ねえだろオオオオオオ!!!」

 

士郎の蹴りがアーチャー後頭部に炸裂する。

 

「ジャンプに戻れば良いってもんじゃないぞ?」

「どうした小僧。早く構えろ、不愉快だ」

「俺!?ここで俺を巻き込むか普通!?

くっ………今は写輪眼くらいしか!」

「やらなくていいやらなくて!!

だいたいどうやって斬撃真似した!」

「志村 剣に斬撃を飛ばしてもらった」

「頑張りました」

「他力本願!?」

 

各々が斬った張ったの合間にボケる姿を見たマシュは目を輝かせる。ボケと戦闘、2つをこなす技量は己にもある、マシュにはその確信があった。

 

「先輩!私も!私もやりますね!」

「なにやるつもりなの?」

「──エクスプロー「言わせねぇよ!?」…ぶー」

 

ツッコミの鬼、土方歳三のツッコミを味わいたかったマシュは、思わぬ伏兵による阻止に頬を膨らませて抗議した。

クロスオーバーにも限度があるのだ、すまない。

 

「こいつら一緒に行動したら異世界カ○テットになっちまう。上手いこと敵戦力に当てねえと…」

 

多重クロスオーバーになりかけて世界の均衡が崩れることを恐れた土方は、十界にあたる敵を探して周りを見回し、その咆哮を目撃した。

 

鉄屑の山を掻き分けて一直線に敵を狙う巨軀。

蘇った不屈の大英雄、その疾さとパワーはバーサーカーを再現出来てしまっている。剣の奥義を受けても躊躇なく向かってくる姿勢を立香は懐かしさすら感じる。

 

「なんだあの鳳仙みてェな化け物は」

 

土方の溢した言葉通り、この場では最も化け物と呼べる脅威だ。Aランク以上の攻撃しか通じないうえに、通った攻撃には耐性を獲得する。大英雄を倒すには多種多様な高火力の攻撃が求められるが、この場で条件を満たせる者はいても“十二回”には届かない。

 

「あの化け物は剣が倒したじゃない!」

「12回倒さないとダメなんだ。それも…」

「来るぞ────」

 

まだ猶予があると思った距離が一瞬で詰められる。足元に影を広げた大英雄は、余りある勢いを石斧に乗せて立香たちへと────

 

「こいつァ俺が倒す! 他のヤツは任せたぜ!」

「剣!!!」

 

石斧を振り降ろすより先に剣が投げ飛ばす。そのまま斬りつけて大英雄を連れて駆け出した。

 

剣は自身の弱点を自覚している。

無双にも思えた剣は、怒涛の波状攻撃を捌ききれない。骸の無限行進、無限に斬り続ける作業に生まれる隙をカバー出来る味方が必要だ。

剣に付け入る隙を作り出していたアーサー王、総司、十右衛門が今も彼を狙っている。ならば、大英雄という爆心地に自ら突っ込んでしまえ!

 

「行くぞ。あの化け物は俺らじゃ骨が折れる。

天に抗うくらいの被害だ、御免蒙るね」

「江戸城の前で集合だよ!!」

 

ゴッドハンドという不安材料を残してしまったが、剣なら死ぬことはないと判断した。

 

「いいの!? さっきの3人が加勢したら…」

「大丈夫。敵味方の区別出来てないから!」

 

似蔵を轢き殺しながらの突撃で確信した。

アレはバーサーカーのヘラクレスを模倣しているが、恐らくバーサーカーよりも低い精度で現界している。簡単な命令だけを受け付ける機械と言っていい。

 

「マシュの宝具に真正面から突撃してたのが証拠。本能が無いから登るって発想が出てこないんだ」

「納得。夜右衛門の模造刀も本家越えは出来てない。数を用意するんなら質も落ちるってわけか」

 

剣製で模造刀を解析した士郎が真っ先に言いたいことを汲んでくれた。バーサーカーの宝具がであることを願うしかない。でなければ、剣の応援に行かないと永遠に決着がつかなくなる。

 

「…はぁ。助っ人に来といてこれか。護衛の1つくらいは果たさないと、羽織りを捨てなきゃならん」

「悲観することもないさ。守られてだけいるヤツらじゃないのは分かってた事だ。

ほら、目的地の1つには連れてこれた」

 

護衛する側が化け物を任せたことを嘆く土方に、近藤は30メートル先の桜の木を指差す。

近藤の言う通り、ついに辿り着いた。彼ら無くして似蔵の湧き出るココに来ることは困難だった。

 

目標を見据える。

今も大群を生み落とす鉄の木、辻斬りを苗床に種子を造る悪趣味な鍛治場を今度こそ伐採してみせる。

 

「それ以上は近づくな」

「さっきと同じにならないか?」

 

矢を番えるアーチャーに士郎が懸念を投げた。

 

「無策ではないさ、次は(あて)る。それより、別の妨害が入るのは困る。周囲を警戒してくれ」

「了解です!」

「あいよ」

 

ぶっきらぼうに、然しリベンジに燃えるアーチャーにマシュと真選組が応える。似蔵を退け、仁鉄は砲撃隊が抑え、十右衛門たちの暗殺に気を張った今なら、アーチャーも射撃に専念できるというもの。

投影したのは偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)。一見しても瞬きしようと同じだ、さっきと変わらない。仕掛けがあるように見えないけれど、アーチャーが必中を宣言したからには種があるのは確実だ。

 

「おい桂、気配遮断は?」

「遠くに確認した。今からじゃ間に合わん」

「油断はするな。成り上がりの俺らじゃ簡単に裏を突かれる、スキル頼りになるなよ」

 

土方の警告を聞きながら、全員が頷く。

似蔵を蹴散らし、アーチャーの射線上から各々が退避した瞬間、引き絞った矢が解き放たれる。

 

偽・螺旋(カラドボル)───」

「っこれ───!?」

 

……ハズだった。

アーチャーの詠唱が途切れ、士郎の狼狽した声を聞いて、アーチャーを囲っていた全員が振り向くと2人が消えていることを知る。

 

「アーチャー!?」

「し、士郎さんも消えました…」

「おいヤニカス、羽織り捨てなさいよ」

「副長の座は俺に任せてください」

「………まじで?」

 

存在ごと消えた2人。気配を辿るも遠くにいる訳でもない。何が引き金となったか、誰の仕業なのか、一切が不明のまま責任を追求された土方の目元は暗くなっていた。

 

 

 

 

 

 





【おまけ】
魔攘教ボツ

ボツ①
魔攘教大罪司教『便器』担当
ナメルヨウニ・トイレセイソウ
↑隈無清蔵。ただの嫌がらせ。外れの押し付け。

ボツ②
魔攘教大罪司教『ラップ』担当
チェケラ・チェケラダ・ワルガキ
↑佐々木鉄之助。『人質』担当と迷った。



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