Fate/SN GO【本編完結】   作:ひとりのリク

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五節 其々の場所で

 

異変が起きたと理解しても衛宮 士郎とアーチャー、両名の姿が消えたことは誰も解明できない。

生きているのか、死んでしまったのか。答えてくれる相手は最悪の辻斬りだけで…。

 

「おい、何しやがった」

「ヒヒっ、生憎と見てなかヅ⁉︎」

 

近くの似蔵に掴みかかった土方は、答える気のない鉄屑の騒音を一方的に黙らせる。数が減り、動揺を隠せないカルデア一行を是好機と襲いかかる。

 

「マシュ防衛‼︎」

「はいっ!」

 

立香とマシュの意思が一致する。

似蔵の侵攻を抑えて、少しでも状況整理する人数と時間を作ること。その為にマシュを真っ先に動かした。

 

攻撃を仕掛けた人物をターゲットに発動する反撃型トラップ。いち早く目星をつけた桂は、手元の爆弾複数を桜の木へと放り投げた。

 

「おい桂!?」

 

勇みすぎだと飛び出した罵声、だが爆弾のうち1つが桜の木に届き、豪と音を立てて起爆した。

結果、傷無し。桂、無事。桜の木の並々ならない耐久値に加えて、仮説が反証された。

 

「攻撃を仕掛けた者を強制的に消す訳ではないらしい。任意の相手を指定した場所に飛ばす、そんな仕掛けと考えていいだろう」

「アレが2人を選んで何処かに飛ばしたって?

他のサーヴァントの仕業もあるだろう」

「よく見てみろ。似蔵の生産数が減っている。魔力を別のことに回している証拠だ」

「……まさか、各個撃破しにきたのか」

「なら尚のこと伐採して助けなきゃじゃない!」

 

神楽の意見は最もだ。2人が同じところに飛ばされたのなら、あの木を伐採すれば済む話。

 

「よっと」

 

どこから取り出したロケットランチャー。

総悟なる人物が後方で構えたソレを、躊躇なく土方へ向けて放ち────「ぐおあっ!?」間一髪で避けた土方。弾は群がる似蔵を越えて桜の木に着弾した。

爆煙が晴れ、桜の木は粉々に…。

嘘、対死徒用ロケランが通じない!?

 

「これが答えでィ」

「総悟テメェあとで覚えとけよ」

 

桜の木。ここまで耐久値が高いのは想定外もいいところだ、立香はその耐久性に別の仕掛けがあると思い、その要因を探そうとする。

 

「奥に行くぞ。このロケランで傷つかないなら俺たちじゃ伐採は無理だ」

「多分ですけど、似蔵以外に倒さなきゃいけないサーヴァントがいると思うんです。見つけて叩くしか…」

「だろうな。下手すりゃ内側にいる可能性もある。ンなもん悠長に探してられん、だから進む。

それに………土方歳三の霊気が大丈夫と、そう言ってる。あの2人なら倒せるって」

「倒せるって誰を…。あぁもう分かったわよ!」

 

僕の仮説は信憑性皆無、神楽は一刻を争う事態に言葉を謹む。ロマニやダ・ヴィンチちゃんと連絡が取れない悪影響がここで出てきた。解析や探知が居ないのは……。

 

(っ止めろ考えるな、進むしかない)

 

伍丸の顔を思い出した。

彼の事前調査に外でどれほど助けられたのか身に染みる。預かった手帳もまだ読めていない、早くひと息つけるタイミングを作らないと。

 

「あっちの桜の木を───ん?」

 

取り出した無線機に耳を澄ませていた土方は、短く応答して次の進路を宣言する。

 

「………あっちの桜の木は後回しだ」

「どういうことよ」

「他のヤツが行った。俺たちは今から本丸に向かう」

「アンタらで無理なのに誰が伐採出来るっての?」

「伐採はあくまでも似蔵を減らすための寄り道だ。伐採出来なくても似蔵を俺らに寄せつけなきゃどうとでもなる。

本丸の仕掛けは既に破れてるって話だろ」

 

アーチャーの言葉を思い出す。

『その様子だと城の入り口まで打ち抜いたか』

鎌をかけたソレに仁鉄は狼狽えた。あの時は桜の木を配置した直後だ、仁鉄はそこまで見切られたと勘違いしていたとしたら…!

 

確信はないけど1番しっくりくる。全員が納得して行き先を本丸へと変更した。

さらに数分後、本丸に近づいている時、1人の足が立ち止まる。

 

「どうした総悟?」

「先行っててください」

 

鞘に添えた手、視力に頼らない構え、据わった瞳。見たことがある、感覚が覚えている、あれは沖田総司の戦闘態勢。…と触覚代わりの犬歯を見て、これが沖田総悟の本性と知る。

土方は大物が近くにいると察したが、居場所が分からない。分からないから叫ぶ。「伏せろ‼︎」の怒号は全員の反射神経を刺激し、無意識のうちに姿勢を屈めていた。

立香の頭上で閃く総悟の居合い斬り。誰も居ないはずの場所から響き渡る甲高い音。

 

「鉄屑じゃ寝起きの肩慣らしにもなんねェ。殺るならやっぱ大物じゃねぇと」

「お、沖田さん…」

 

組織の心臓に無言一振り。暗殺は未遂、

カルデアで見慣れた浅葱色の羽織り。総悟に重なって見えた少女は、厄介な敵として健在だ。

騒々と迫る殺意の最中、人斬りが憎を吐き出した。

 

「臭い」

「…あ?」

「血生臭い」

「なんだお前」

「私達の臭いだ」

「俺のパクりか」

模造刀(パクリ)はお前だ」

 

同類同志、唾棄。

一度は鉄屑として再現された人斬りが、同名の羽織りを授かった者と対峙した。真贋に執着はないと思っていた性格が燻られるのだ、生涯はお前に無し!刀は握られる存在でしかない!と。

憎い、後先に自分の意志がないことが。

 

「そうかもな」

「……?」

「パクリに負けたらお終いでェ」

「────!」

 

自分以下…紛い物より落ちればあとは無い。

自分が紛い物だとして。現実の二番煎じ(パクリ)であろうと。自分以外を足元に置けば一緒。

当然だろ、と。蔑む微笑みで答える。

 

言いたいことを叩きつけ合った2人は、次の瞬間には視界から消えていた。純真の人斬りと性悪の人斬り、2つの表情を見れば分かる。あそこに入る余地はない。

だけど相手は沖田総司。秘剣使いだ。

 

「心配すんな。あの手の輩に総悟は負けねえよ」

「……はい!」

 

立香の不安を払拭した土方は前を向く。本丸へと歩を進めんと号令を飛ばした背中に、色違いの不明瞭な殺意が駆け抜けた。

 

「急ぐ───!?」

 

今度は土方の背後で飛び散る火花。

気配を殺しきった必殺は、桂の居合いによって地面に叩きつけられた。

 

「う〜ん、もしかして見えた?」

「俺なら狙う。そう思っただけだ」

 

返す刀を躱した十右衛門が距離を取って立ち止まる。気配遮断を見破られるとは思っていなかったと首を傾げた。狙っていてもタイミングは図れない、今の居合いは読みきったものなのだ。

 

「………桂」

「そう怒るなよ、副長殿。暗殺し易い背中をしてる方が悪いとは思わんか」

 

突き刺す視線を気にも留めず軽口を飛ばす桂。

その態度、底知れない脅威を感じた十右衛門は、暗殺の成功を以って精神を揺さぶる方針を選ぶ。

 

「おい油断するな桂ッ」

「っ────」

 

真正面に居ながら、誰の視界からも消えた。

高速移動か、はたまた気配遮断なのか、或いは転移? 誰も答えを見つけられないまま、義賊の刃は真正面から土方を捉えた。

 

「そうだぞ、トシ。総悟に狙われすぎて変なスキルでも付いたんじゃないか?」

 

未遂。二度三度、生前でも無かった暗殺未遂の記録が積み重なっていく。ただの侍に、ただの組織の長に。ほぼ直感で止められた。

 

「真正面から狙われるくらいだ、そう思われても仕方ないさ」

「近藤さん────!」

 

軽口への返礼に十右衛門へと斬りかかる。後方からもマシュが仕掛けるが、難なく躱した。

 

「この歩法もかぁ」

「お前みたいな手合いばっかり相手してきたからな! ちょっとの変化球じゃ動じないよ俺らは」

 

十右衛門は挑発に手を合わせる性格ではない。生前であれば障害物に身を潜め、次の策を練るところだ。

 

「おもしろ〜。ノッた、相手してしんぜよう」

 

だが、この場所に義務はない。守る民は対峙する彼らで、唾棄していた存在が上に就く有り様。

民のことを知る為に、2つの組織の長と殺し合う。その想いが仁鉄の指示を捻じ曲げた。

 

「つ〜訳だ」

 

(さや)けた笑みで2人の長が立香たちへと宣言する。

 

「コソ泥はお巡りさんと」

「攘夷志士に任せて行け」

 

ここで迷う方が野暮というもの。

霧に迷いかけた心は既に霧散した。2人に強敵を任せて先へと駆け出した。

 

「皆んな…」

「心配なのは分かりますが、どうか堪えてください。隠れている本物の似蔵を倒せば、偽物も消えるはず」

「うん、そうだよね、定石だもんね。せめて江戸城の中に待ち伏せしてくれてたら助かるけど…」

 

都合よくことが運ぶとは思えない。晴太が本物似蔵を倒すために来てるんだ、ここで下手に無視したら1人行動してしまうかもしれない。そういう雰囲気がある子だ、万が一があれば日輪さんに顔向け出来ないぞ。

 

「分からなくても、晴太くんが見分けられるとのことですから!頼りにして、いま……せん!?」

「晴太が居ない!!!」

「えっ嘘!本当だ!?」

 

走り出してから1分弱も気づかないとか、どんだけ焦ってんだよ僕!?

戻ろうとする僕の肩を掴んだ土方。彼はずっと本丸の方を見つめている。

 

「アイツなら大丈夫だ。仇を見つけたんだよ」

「相手はサーヴァントですよ!?」

「お守りされるタマじゃない。

勝つ見込みは自分で付けてきてる。ヤツがそう言うんだ、信じて先に進むしかねぇ」

 

土方歳三と同じ眼差しを向けられて、思わず頷きたくなる。…ダメだろ、いくら強くても、さっきは上手くいっただけ。僕にはそう見えた。

 

「………立香。行くわよ」

「神楽さんは、いいの?」

「良くない! けど晴太は、助けてほしい時は助けてって言える子だから。行かせてあげて」

 

神楽が走る。

土方に苛立ちながら足を踏み締めた。

一言も声をかけなかった晴太に激を飛ばすように鼻を鳴らしながら。

 

彼女が言うなら、もう止まらない。

マシュと視線を合わせて走り出した。

志村 剣、衛宮 士郎、アーチャー、沖田 総悟、桂 小太郎、近藤 勲、晴太と別れた僕たちは、真選組の護衛もあって漸く本丸…いわゆる本丸御殿の玄関へと辿り着く。

 

「………おいマヨラー。一行は辿り着く!じゃないんだけど。もう4人しか居ないって護衛舐めてんの?税金返しなさいよ」

「納めてから言え。ちゃんと後から来るって、大丈夫信じろ、腐った縁はそう簡単に切れねぇって」

「土方さん汗かいてますよ。思ったよりも居なくなっちゃったけど僕は嬉しいですから。ありがとうございます」

 

皆んな戦ってくれている。ここに居なくても、心の中の心強さが薄れることはない。

 

 

 

「桃の木から産まれた!

俺さまアアアアアア!!

坂田ーーーーーー!!!

桃時ーーーーー!!!!」

 

 

 

感謝を掻き消しにきた大騒音。

道場破りの名乗りでもこんな声量は出さない、早朝の鶏のように煩い挨拶が出迎えた。

 

「は!? えっなに!?」

「うっせェ! こちとら寝起きだ! 気ィ遣え!」

 

頭がクラクラする…!

名前聞き取れなかった、逆に。

皆んな両手で耳を塞ぎながら顔を上げる。

 

玄関前に1人の男が佇んでいる。

桃髪のなかに黒い葉模様のあるセミロング。

手の甲には五指それぞれを潜るメリケンサック。

腕を組み、堂々たる威風で僕らを出迎えたのは、夢の中で見た人物、十界の坂田 桃時だった。

 

「お前らの想いは見させてもらった。

うだうだ話す気はない、俺さまがここに居るのは語り合うため!! 心と心で!!」

 

開豁な笑みは場違いにも思える。魔術王と戦っていた時と変わらず、彼の眼差しは江戸を守ることを命題としていた。仁鉄にそう吹き込まれたのか、はたまた本気かまでは分からない。

 

「マシュ。彼はソロモンに物怖じしなかった」

「っ…! 油断はしません、全力で対処します」

 

全員が臨戦態勢を取る。十界の桃時、それを聞いただけで超がつく強敵だと認めた。

 

「俺さまの世界を守りたい想い、お前らの世界を救いたい想い。2つの心をぶつけて答えをだそうか!」

 

景観には全く合わない武器、メリケンサックを構えた桃時。問答不要、シンプルに実力を求めてくる場で、少しの寒気を感じながら。

 

「本丸の門番、坂田 桃時との戦闘を開始します!」

 

未知数の相手との戦いは幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目蓋を閉じた一瞬で場面が転換した。双六のマスを移動するように大きく進んだ気にさせられる空間は、杉戸で囲まれた大広間。江戸城本丸御殿の造りだと感覚で理解した。

 

江戸城の櫓が見えていた場所から、自分だけ転移させられたらしい。

晴太は大丈夫だろうか。さっき本物らしき似蔵が遠くに見えた。多分、追うな。勝つ手段だけは身につけてる、心配は今更か。

立香たちは…きっと大丈夫。真選組がいるし、それに…。だから俺は自分のことに集中だ。

 

無重力感を終えて分かった事は、自分が招かれざる客だということ。

その時、少年の瞳は世界の垣根を越え、共鳴しなかった運命と出逢う。

 

「不愉快だ」

 

邂逅一番に浴びせられた理不尽な罵倒に抗議の視線を向けると、罵倒の主が無視出来ない人物と知る。

金色の屏風と見紛う、王の佇まい。月明かりを浴びる錯覚に包まれながら、その真名を言い当てた。

 

「アンタ、アーサー王だな?」

「貴様を見ているだけで胸の奥が寒気を覚える。私に何をした」

 

真名が的中したことで鋭さを増す視線。あらゆる時代を制した騎士王の片鱗だ、視線を合わせただけで足が(すく)む。心臓が高鳴るのは高貴な姿に見惚れてだろうか、そうだったらよかった。

足が竦むのも、心臓が高鳴るのも、決して恋などという甘いものではなく。遥か遠い…並行世界では、きっと彼女が俺の正式なサーヴァントになっていたと確信があるからだ。

 

「………ここに遥か遠き理想郷(アヴァロン)がある」

 

確かな繋がり。

アーサー王が言葉にした寒気の原因。即ち、開戦のきっかけを自ら曝け出していく。

 

「───────────」

 

納得がいかない、だが確かにアヴァロンを認めた。そんな視線だ。鞘を埋め込まれた人間に大袈裟な表情を見せるところは、まるで本物の霊気だ。

 

「それを何処で手に入れた」

「切嗣。衛宮 切嗣が埋め込んだ」

「きり、つぐ…。…っ…知らん」

 

齟齬の生まれた眉の動かし方をして、自分を騙すように姿勢を屈めた。言葉を紡ぐのは難しい状態だ、こちらも撃鉄に指をかける。

魔術回路は程よく冷めている。張り詰めた雰囲気と直列に繋がった青信号だ、アーサー王の挙動なら視えない鞘の動きに合わせて投影を実行する自信がある。

 

勝負は初手で決まる。投影、迎撃、問題はどこを攻めるか。準備が整ったアーサー王を迎えるべく、投影魔術を行使する────

 

「見たところ二の間か。我々を随分と高く見積もっているわりに何も分かっていないときた」

「お前、いたのかよ…」

「間抜け」

 

直前、後ろの杉戸を突き破った矢がアーサー王を迎撃した。姿を現したのはアーチャー、呑気に俺たちの会話を聞いていたらしい。恥ずかしいのは、アーサー王が余裕で気づいていたことだ。迷わずに矢。斬り落としやがった。

 

「アーサー王、事態は把握しているのか。

どこにあるかも分からん聖杯を求めて、この馬鹿げた戦いに協力していると?」

「私はマスターの命で動いている。どれだけ馬鹿げていようとも続ける理由がある」

「自分に責任はない、と言っているのか」

「まさか。誤っていれば口を挟む。人道に背けば斬りもしよう。でなければ貴様らの相手などしない」

 

本気だ。アーサー王は正鬼も仁鉄も、正しいことをしていると宣った。

正鬼の考えは読めない。空想具現化に人類を詰め込んで護ろうとするのは意図が解らなくもないが、魘魅を斬り伏せた銀時を追放したのは全く意味解らない、絶対説得する。

…問題は仁鉄。アーサー王のマスターは彼だろう。似蔵を改造して大量生産し、英霊を次々と鍛つ姿。はっきり言って許容出来ない。偽物が悪い訳ではない。偽物を越えた禁忌に手を伸ばしたことだ。

 

「聖杯が無ければ。或いは取り返しのつかない呪いに変わり果てていたら、斬れるのだろうな」

「────貴様には関係のない話だ」

 

……だとさ。彼女は貴様の可能性だ、答えてやれ。そんな視線を送りやがる。

あぁ、言ってやる。

 

「あるさ。大ありだ。

俺は銀時を救って、それ以外も拾い集める」

 

人類を捨てようとするお前も、人類を素材にするお前の主人も許せない。

 

「アーサー王。アンタのことも諦めない」

 

アーサー王と対話して、どうしたかった?

そんなもん決まってる。全員トュルーエンドだ。

 

「軟派な。主人たちの世界ならいざ知らず、私個人を指すと? 私の何を知っている、アーサー王伝説しか知らないだろう」

「銀時が割り込んだせいでここにいるんだ。知らぬ存ぜぬはもう出来ない」

「ふざけるな……今更…」

 

怨嗟の眼差しをぶつけてくる。

本当だ、当人からしたら俺は調子の良いことを吐く詐欺師みたいなもんだ。見方によってはマッチポンプにもなる、とんだ恩の押し売りだろう。

会話での和解はもう無理だと分かり、アーチャーは双剣を投影して一歩前に出た。

 

「貴様の願いと我々の願い。切り捨てられるという点では似通っているとは思わないか。

理想を掲げて戦い果てた夢の住人」

「っ────巫山戯るな」

 

アーチャーの言葉に魔力放出の威嚇で応える。

アーサー王が見せた、本来の魂(騎士王)の癇癪。負け続けて、夢に縋る旅人に引導を渡そう。

 

「本気だよ。俺も、コイツも」

「ここからは封印指定だ、誰の横槍もさせない。

どっちの想いが夢を見続けるか…決めよう」

 

人生にやり直しは無いんだ。

過ちを贖い、続きを選ぶための戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杉戸の前に、錆びれた闇を携えた男は佇んでいた。

 

「おかしいねェ。ここに来るヤツは鬼か侍くらいなもんだ。迷子の坊やが探検する場所じゃないよ」

 

その声は金切り音のように聞こえる。

一音、耳にするたびに腹の傷が開きそうだ。

恐怖に震えるしかなかった夜を思い出し、笑う。

 

「あぁ、槍のお兄さんのこと? 似蔵を殺すって言ったら気前よく通してくれたよ」

 

粋がる。強がる。なんでも良い、格好悪く見えても、恩人から学んだ魂の在り方は曲げない。

深呼吸、調子が戻る。安い挑発にまんまと顔を歪めた似蔵を見て、悪質な方法で呼吸が落ち着いた。

 

警戒しつつ辺りを見渡す。場所は室内。吉原、鳳仙の居城に似た造りだが、様相が寺子屋で学んだ江戸城のものと似ている。さっきいた所から似蔵を追いかけて、3本目の桜の木に飛び込んだ出先がここ。江戸城の何処かに入った。さっきみたいに逃げるなら江戸城ぶっ壊してまわるぞ。

 

「さっきの太刀筋といい、お前さん人が違うみてェだ。魂の色は同じ、だが()()()()が見える」

「勝手に覗くなよ、屑鉄野郎。死にたいの」

「酷いね。人を殺してから言わないから凄みに欠ける。そう言うやつは俺に殺されてきたよ」

「へっ。偽物の自分がやられといて言えるセリフじゃねェ!もうお前は斬り飽きた、お前で最後だ」

「あんなガラクタを斬って満足してんなら、そのまんまが幸せだったよ。斬る時は首を落とす。もう生きる余地なんざ与えないからな」

「じゃあよ!一対一の仕合いを受けろ、似蔵!」

 

本物に刃を突き出す。

己の鼓舞でもあり、正々堂々という舞台への誘導。そして、本物かを確かめる最終確認。

 

「………いいよ。好きなだけ付き合ってやる。

ただし───俺1人になったら、な!!」

 

俺の言葉を朝の露(あしたのつゆ)のようだと嗤った。

似蔵の合図を皮切りに、四方の杉戸を不躾に切り裂いて、偽物の似蔵が指示通り襲いかかってくる。

目の前の泥ん子を、弱者だと決めつけて。

 

「安心したよ。クズはオイラだけじゃないな」

 

コイツは自分の分身をなんとも思わない。偽物だからと敬意を払わず、死んでも屑鉄ならばと湯水の如く浪費する。偽物の価値も知らずに…!

 

「なに…を───は? こいつっ」

 

その音は号砲だった。

全方位から飛びかかる似蔵たちを蹴散らし、江戸城の造りに傷をつけながら弱者を鼓舞する声援だ。

懐から取り出したのは水平二連散弾銃。撃鉄は一度しか落としていない。然し、ただの散弾銃にあらず。

 

「銃だと…!?」

「源外特製の対死徒用全方位散弾銃“雁之間(かりのま)”。お前をぶっ倒すために作ってもらったオイラの武器さ!」

 

当てたヤツと同じヤツに片っ端からダメージを共鳴させる、1人相手にはただの散弾銃、然し似蔵相手にはチートとなる武器。説明してやる義理はない。

 

名前の通り空を晴らそうなんて大層なことは願わない。人斬りと泥ん子、せいぜい天霧らった景観のまま、血みどろの斬り合いに落とし込んでみせる。

 

「銀さんの背中を追うオイラたちを、無機質に見ることしか出来ないお前じゃ、なにも消せない」

 

其々の場所で。

 

「銀さんの光は消させないぞ」

 

大地を穿つための、其々の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 






【オマケ】
桜の木のギミック

一本目
桜の木に攻撃を仕掛けた者、その周辺の者をアーサー王の任意の数だけ所定の場所に転送する。
桜の木を伐採しても転送は破棄されない。
伐採或いは対象を退去させた場合、似蔵の製造を停止する。


二本目
ヘラクレスの宝具の一部分を共有する。
また、この桜の木から製造された似蔵にも一部分を共有する。
一部分とは“十二の試練”で得た耐性のこと。
伐採或いは対象を退去させた場合、似蔵の製造を停止する


三本目
守護する者の全ステータスを一段階上昇させる。
宝具の再現が間に合わなかった(似蔵を除く)模造刀の場合、似蔵の生産を一時中断して宝具を再現できる。対象は江戸城全域とする。
伐採或いは対象を退去させた場合、似蔵の製造を停止する


江戸城本丸
3本の桜の木を伐採しなければ開門しない。
エミヤのネオアーム以下略はこのギミックをぶち壊したため、桃時が門番に急遽配置された。


Q.なんで本編で説明しないの?
A.書く場所が分からない。



【次回投稿】
2024.5.6(月)を予定しています。執筆状況によっては1週間延期します。私のTwitterをご確認ください。




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