俺は、ベンチに座って空を眺めながら考え事をしていた。
2番隊は隠密機動隊、ということで正面からの直接戦闘は余りない。その分、速度が要求されるわけだが、これがまたみんな尋常じゃないレベルに速い。どんな足の筋肉してるんだろうなこいつら。
まだ訓練の段階だから助かっているものの、これ実験だったら間違いなく俺殺されてるよな。このままじゃ足を引っ張ることになるし、なんとかしないと。
………走り込み、は無駄か。俺が特訓する分、他の人だって特訓してるはずだ。同じ訓練をしても多少しか変わらない。
「………どうしようか」
「何か困ってるのかい?」
唸ってると、声を掛けられた。京楽隊長が俺の隣に座った。
「あ、京楽隊長」
この人は、霊術院に俺がいた時に一回だけ講師としてやって来た人だ。その時の訓練で、なんか知らないけどいきなり俺を飛び級させてくれた人。
「いえ、なんか2番隊に配属されたんですが、みんな速くてついていくのが精一杯なんですよね。これから先、足引っ張ることになりそうで、どうしたものかと」
「そっか……まぁ、2番隊でついていけるだけでも大したものだけどね」
「まだ、実戦の経験はないんですけど、実戦になったらいの一番に狙われて殺されると思うんですよね」
「うーん……大丈夫じゃない?」
「驚くほど楽観的な意見ですね……」
「そういうのは、訓練を繰り返しつつ慣れて行くものだよ。砕蜂隊長だって、いきなり君を実践に連れて行くわけないと思うし、入隊したばかりの新人クンはまだ、そんなこと考えなくていいと思うよ」
ふむ……そういうもんか?まぁそうだろうな。あの人に俺がどんなに嫌われてても、いきなり実戦はないか。
「………分かりました」
「うん。焦らず、のんびり行こうよ」
「はい。じゃあのんびりと……」
そう言って、立ち上がった直後、大前田副隊長が小走りに走って来た。
「おい、タッキー!」
「北本です。翼の相棒みたいに呼ばないで下さい」
「任務だってよ。砕蜂隊長から、9番隊が虚の群れに襲われて身動き取れないから、救出任務だと」
「……………」
「……………」
ジロリと横の京楽さんを睨んだが、いつの間にかいなくなっていた。
ー
と、いうわけで、俺は大前田と他数人出撃した。なんでも、少数で奇襲を掛けて迅速に隊長と副隊長を解放しろとの事です。
現在、9番隊は洞窟の中にいるらしい。隊長代理の檜佐木さんは問題ないらしいが、他の隊員達が負傷し、下手に動けない状況だそうだ。
「つまり、負傷者は俺達でなんとかしなきゃいけないわけか……」
霊圧を消して、二人で9番隊の隠れてる洞窟を見る。確かに、20〜30体ほどの虚がとたかっていた。
こういう時は、誰かが囮になるべきだろうな。こっちは隠密機動隊だし足も速い。いや、でもそしたら手間を作ることになるな。囮役を助けに行くことになる。なら、いっそ煙で敵を撹乱するか、せっかく密集してるしでかい破道で一掃するか。
グルグルと俺なりにどうするか考えてると、隊長代理の大前田副隊長が言った。
「作戦はシンプルに行くぞ。俺と他6人で虚供を引きつけ、他3人で7番隊の救出だ」
『了解!』
え?なんでそんなリスキーかつゴリ押しな方法?つか、なんで他の奴らも了解しちゃってんの?
「え、大前……」
「タッキー、お前は9番隊の救助をこっちの二人と頼む」
「あ、いや……」
「じゃ、行くぞ!」
おいおい……大丈夫かよこれ……。隠密機動なのに正面から殴り合う気だよこいつ……。
ー
が、俺の予想は大きく外れ、大前田副隊長の作戦は面白いほど上手く進んだ。
俺と他二人で9番隊の負傷者を背負い、大前田副隊長と2番隊、そして9番隊から動ける者達は総出で敵の処理に当たっていた。こっちは負傷者を背負ってんだから、何人かはこちらの護衛に回してくれてもいいだろ、と思ったが、今の所は上手くいってるので、新人の俺に発言する権利はない。
そんな事を考えながら、俺は戦闘をしてる面子とあまり距離を置かない程度に逃げようとしていた。離れすぎると、敵にこっちはいいように狙われると思ったからだ。
だが、他二人はそんなの御構い無しに、さっさと瀞霊廷に走るので、俺も仕方なくその二人について行く。
当然、問題は起きた。俺達の前に虚が回り込んで来た。
「っ! しまっ……!」
しまっ……!じゃねぇよ、こうなるの分かってたろうが。
俺は二人の前に出て、おんぶしてた9番隊の一人を左肩に担いで、右手を前に突き出した。
「縛道の二十一『垢煙遁』」
煙を出す縛道だ。相手に攻撃される前に視界を封じると、続いて攻撃開始。
「破道の五十八『闐嵐』」
手から竜巻を発生させ、敵を煙ごと吹き飛ばした。
「お、おお……」
「助かったぜ新入り!」
うるせーよ能無し。それより逃走ルートを変えよう。今ので倒せてたら苦労はない。
すると、ようやく後ろの連中が追いついた。
「待たせたな、タッキー!」
「あの、あんま離れないでくださいよ。こっちは負傷者担いでるんですよ」
「大丈夫だ、敵はもう殲滅した」
いや、そういうことじゃ……はぁ、もういいか。
結局、このまま「これわざわざ2番隊に頼む必要あった?」みたいな感じで、任務を終わらせた。