「チッ……ご苦労だったな、北山」
「おい、今舌打ちしませんでした?」
思わず毒づいてしまった。
「ていうか、2番隊って大丈夫なんですか?せっかく霊圧消して接近したのに正面から斬り合うし、なんか戦術面的に不安なんですが」
「ふむ、勝ったのなら問題ないだろう」
「えっ?今なんて?」
「勝ったのなら問題ないだろう」
………おいまじかこいつ。こんなんじゃ少し知恵の働く手強い相手が出たら詰まるぞ。
思わずバカを見る目で隊長を眺めてると、ムッとしたのか目付きが鋭くなった。
「………なんだ」
「いえ、とても指揮する立場の方の意見とは思えなかったので」
「むっ」
あ、「むっ」とか口に出しちゃうんだ。隊長なのにマスコットかよ。
というか、余計なことを口走ったかもしんない。
「どういう意味だ」
「そのままの意味です。では、俺は部屋に戻」
「待て」
ですよねー、この後の展開は目に見えてわかるぞ。
「そこまで言うからには、貴様は指揮する能力があるんだろうな?」
そう言うと、砕蜂隊長は引き出しから板のようなものを出した。
「私と将棋で勝負しろ」
ほらきたー。
「………今日は疲れちゃったから寝たいんですが」
「貴様から売ってきた喧嘩だろう」
いやいや、喧嘩なんて売ってねーよ。
「いや、俺朝から頭痛が……」
「知るか。いいから来い」
渋々ながら、俺は相手をすることにした。
〜10分後〜
勝ちました。
「〜っ!」←赤面してる砕蜂隊長
「………」←真顔の俺
なんだろう、勝っちゃった。つーか弱っ。飛車角金銀桂香全部こっち来たの初めての経験だわ。
「き、貴様……!」
………あー、なんというか、アレだ。あんま良い隊長の所に来れなかったんだな、俺。どんなバカでも飛車角金銀桂香失うのは狙ってやったほうが難しいだろ。
マジで大丈夫かこの部隊。
「あの、砕蜂隊長、気を悪くしないで聞いてください」
「……なんだ?」
「コロンブスがアメリカ大陸を発見したのは何年?」
「1945年?」
「………平民の意見を取り入れる『目安箱』を設置した将軍は誰?」
「家康?」
「…………2H+O2→?」
「すまん、何を言ってるかわからん」
「……………」
とりあえず、目の前で険しい表情を浮かべてる隊長サンを見て思うのは、この部隊は駄目だと言うことだ。
俺がしっかりしないとマジで。
「お、おい!その目はなんだ!そのバカを見る目をやめろ!」
しかし、ここまでアホの子だと今まで何してたんだと不安になるな。俺が言ったのはほとんど一般常識の範囲内だし、もしかしてこの子戦闘と勉強は別物と考えてるのかしら。
「聞いてるのか⁉︎そんなかわいそうな人を見る目で見るな!」
それなのに隊長なんてやって……それも色々ナントカ分隊とかある2番隊の総隊長とか……これは正直かなりマズイのでは?
「おい、聞こえてるんだろ!怒るぞ!」
とにかく、俺がしっかりしないと2番隊は終わりだ。自分より強い相手が出て来た直後、何も出来なくなるなんて困るしな。
「お、おい北や」
「砕蜂隊長」
「な、なんだ……?」
なんでちょっと涙目になってんだこの人。まぁいいわ。
「勉強しましょう」
「はっ?」
「今回で砕蜂隊長は頭に超が付くほどバカだということが分かりました」
「失礼過ぎるぞ貴様!」
「なので、勉強です。とりあえず、並みの点数くらい取ってくれないと、部隊が全滅します」
「むっ、そんなに私は弱く見えるか?」
「そういうことじゃなくて、もし不慮の事態とかに陥った時にどうしようもなくなるでしょ」
「その不慮の事態とやらも乗り越えれば良いだろう」
「だから、ゴリ押しじゃなくて戦術面での話ですよ。不慮の事態の時の味方のコンディション、敵の戦力、それらをすべてひっくるめて計算した上で、撤退すべきか任務を続行するかの判断を下せるなら良いですが……」
「任務を続行するに決まってるだろう。私がいて負けるとでも?」
「…………」
この隊長駄目だ。なんかもう考えるのバカバカしくなってきた。
「分かりましたよ。じゃ、俺は部屋に戻るんで」
「待て」
なんだよまだなんかあんのかよ。
「将棋、もう一回」
「……………」
負けず嫌いかよ。