さて、困ったことになった。隊長があのザマだと、俺みたいな下っ端はまず間違いなく死ぬことになる。捨て駒ありきの将棋ですらあのザマなのに、実際の戦闘ならもっと立ち回りはヘタクソだろう。
それだけは、少なくとも避けないと死人が出る。隊長にとって隊員は捨て駒のうちの一つかもしれないが、俺たち駒側はそんな死に方はごめんだ。
だが、言って聞かないあのアホ隊長は一度痛い目合ってくれないと分からないだろう。実戦で痛い目に遭われたらこっちが死ぬ。なら、
「と、いうわけで、部隊ごとの演習を総隊長に頼んでもらえませんか」
京楽さんに頼んでみた。
「ふーむ、なるほどね」
「流石に、新入りの下っ端の分際で総隊長に提案は出来ませんし、京楽さんから頼んでもらえませんか」
「言わんとすることは分かるけど、でも僕はそういうこと言うキャラじゃないから、山爺にはバレると思うよ?」
「俺が言ったってバレなきゃ問題ないですから。護廷十三隊はいろいろと護るためにあるとはいえ、意味のない捨て駒になるのは御免です」
「ひ、ひどい言い様だけど……何かあったの?」
「将棋であのあと56連勝しました」
あの人、飛車角をさっさと裏返して無双することしか考えてねぇんだよな。最強が一人いて戦争に勝てるなら総隊長以外いらんだろ。
「まぁ、言うだけ言ってみるよ」
「すみません。あ、でも訓練で死人を出すわけにはいきませんから、斬魄刀と八十番台以上の鬼道は禁止でお願いします」
「分かった」
よし、これで様子をみよう。
ー
翌日、隊首会が開かれた。昨日、京楽さんに頼んだことを実行してくれるのかな。
てか、よく考えたらしてくれないと困るよな。確か隊長になるのに色々条件はあるが、その全てが戦闘力によるもの。それダメダメだよね。
そんな事を考えながら、同期の雛森さんと茶屋でお茶を飲んでいた。まぁ、同期と言っても俺は飛び級だから、俺より歳上なんだけど。
「はぁ……」
「ど、どうしたの?北山くん」
「いや、頭痛くて……」
「へっ?ぐ、具合悪いの?」
「そうじゃなくて。………そういや、雛森さんは五番隊でしたっけ?」
「うん。藍染隊長の所」
すんごい嬉しそうな顔で言ったよこの人……。そういや、前に現世に実地訓練行った時に助けてくれたのが藍染隊長だったな。
「あの人は頭良さそうだよな。………うちの隊長とちがって」
「北山くんは何番隊?」
「2」
「砕蜂隊長だって頭良さそうじゃない」
「それ本気で言ってんすか」
「へっ?」
「あの人アホだよアホ。俺、隊長と将棋やって60連勝中」
「ろ、60……?」
「あの様子じゃ、俺に勝たせてくれてるようには見えないし、あの人の指揮能力は正直疑問です」
「あ、藍染隊長は将棋強いよ。私、勝てたことないもん(1回しかやったことないけど)」
「いや、基本俺から挑んだわけじゃなくて向こうから挑んでくるんですけどね」
「う、うん……」
悲しげに雛森さんは目を伏せた。まぁ、そうなるよね。
「ていうか、そもそも霊術院にいた頃から思ってたんだけど、強けりゃ隊長になれるってどうなんすかね」
「どういう意味?」
「そのまんま。隊長に必要なのは戦闘力より状況を見回して判断する能力、部下をいかに上手く動かし、臨機応変に指示を出して速やかに任務を完了するか、その辺の能力を必要とされるのが隊長だと思うんですよね」
「ふーん。そうなのか」
「そりゃ隊長ってのは部下の命を預かる立場ですから。それなのにうちの隊長は『勝てばいい』なんて思ってやがるもんだから、不安であることこの上ないんですよ」
「あー……あっ」
「そんな奴に命を預けたら、こっちの身が危ねえっつの。副隊長も中々頭が軽いし。体は重そうなのに」
「き、北山くん……」
「あんな隊長じゃ、近いうちに部下からストライキ起こるって。最低でももう少しまともな頭を持ってくれないと……」
「後ろ……」
「へ?」
振り返ると、隊首会を終えた砕蜂隊長が怒りのオーラを醸し出しながら俺を睨んでいた。
「…………」
「…………」
マズイな、死んだ。次の瞬間には首が撥ねられてるかもしれない。何か手を考えないと。
「怒ってます?」
「当たり前だ」
「砕蜂隊長」
「なんだ。遺言か?」
「慣性の法則を簡単に説明しなさい」
「…………すみませんでした」
「二人ともどんな関係なんですか⁉︎」
俺もそう思う。