翌日、雨でも降ればいいのにと、割と本気で思っていた俺をあざ笑うかのごとく、雲一つない青空の下、7番隊と実践型演習の日となった。
現在は作戦会議で、出場メンバーが集まって、前方の砕蜂隊長の話を聞いている。そもそも事前に作戦くらい決めとけコノヤローって感じだが、まあうちの隊長にそんなものを期待する方が間違っている。そんなことを思いながら、手元の7番隊の資料を見た。
相手は狛村隊長。顔をいつも隠してる超巨大な隊長さん。でかいというだけでかなり高圧的なのに、あの武人みたいな性格の人なので、相対するだけでちびりそうになる。
ま、さすがに砕蜂隊長がどんなに俺のこと嫌いでも、隊長と正面から殴り合えなんて言わないだろう。でも、酷い指示の時とかのためにちゃんとシュミレーションしとかないとな。
例えばー、あれだ。目に入った敵から潰していこうぜみたいな……、
「試合での作戦は、各々臨機応変に行動で行こうと思う」
「想像以上だこれ」
マジかよあの人。もはや戦略ですらない。冗談抜きでやってられねーんだけど。
思わず漏れた俺の本音に、砕蜂隊長はピクッと眉を吊り上げた。
「なんだ、北山。文句あるのか?」
言っても考え直す気ねーだろあんた。一応言うけど。
「それ、部隊戦で戦略はありませんって言ってるのと同じなんですけど本気ですか?」
「戦略ならあるだろ。臨機応変」
日本語って難しい。
「そうですか、なんでもないです」
他の奴も異存はなさそうな様子なので、もう黙った。そもそも、向こうだって戦術があるかは分からないし、俺には護廷十三隊という組織が今までどうやって戦ってきたのかわからないのだ。下手に戦術を立てるよりこの方が良いのかもしれない。………精一杯、向こうを正当化してみたけどだいぶ無理あるなこれ。
ー
場所は瀞霊廷の外の森。あらかじめ定位置に両チームついておいて、時間になったら花火が上がる。
2番隊の皆さんはトランシーバーをポケットに突っ込み、木刀を腰に挿し、いつでも準備万端だ。ちなみに、戦闘不能だと曖昧なので、俺たちの胸に板が付けられている。それが割られると戦闘不能ということになる。
開始時間まで、空を眺めながらのんびりと待ってると、大前田副隊長が俺の肩を叩いた。
「あんま固くなるなよ。落ち着いて行こうぜ」
こういう風に声をかけていただけるのはありがたいし、この人良い人だなぁとは思う。が、固くなって欲しくないならそれなりに戦術を立ててもう少し安心させてください。
「おい、無駄話はするな」
砕蜂隊長に怒られて、俺は再び空を見上げた。
すると、瀞霊廷の方からポンッと花火が上がった。演習開始だ。直後、さすが隠密機動隊というべきが、全員の姿が消えた。ものっそい速度で動き出したようだ。
ま、臨機応変に言われてるし、俺は俺で好きに動かせてもらおう。
そう決めて、俺は隠れられそうな場所に向かった。
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恋次、イヅル、雛森の3人はモニターを見ながら観戦していた。
7番隊は3人、4人、3人に別れて移動し、2番隊は大体2人ずつくらいに別れていた。流石、隠密機動隊というか、移動速度はそれぞれ速く、すでに7番隊の隊員と接触しそうな場所まで来ていた。
が、スタート地点からポツンと取り残された奴が一人いる。
「………ねぇ、あれ」
「言うな、雛森」
「僕達の同期じゃないよ」
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うちの隊は全員、2〜3人組で行動してるみたいだが、新入りの俺なんかとは誰も組みたがらなかった。そりゃそうだろうな、自分が危険になるし。
どう考えても、敵味方含めて他のどの隊員よりも戦闘力の劣る俺がいきなり突撃したら、間違いなくボコられる。
なら、アシストに回った方がいいだろう。元々、俺は一対一の戦闘より周りの援護能力のが高い。
俺は霊圧を消して高台を目指した。隠密起動というだけあって隊服は黒い。あとは服に草でも付けておけば十分迷彩になるだろう。
そこそこ高い木の上に乗り、枝の上に乗った。
「この距離なら、狙撃できる」
霊圧が高まるのを感じた。そっちに手を向けた。
「破道の四、白雷」
一条の光が俺の手から飛び出し、七番隊の男の肩を貫いた。
俺は、鬼道が得意だ。いや、得意なんて生易しいもんじゃない。最早、達人レベルと言ってもいい。全鬼道九十番台まで全部いけるし、それらを組み合わせることだってできる。その所為で飛び級生になったと言っても過言ではない。だけど、これをやると……、
『おい、新入り。人の戦闘に手出しするな』
こう言われるんだよな。はーあ、知らね。