ストライクウィッチーズ ~ドゥーリットルの爆撃隊~   作:ユナイテッド・ステーツ・オブ・リベリオン

15 / 34
Vol.15:対ネウロイ駆逐大隊

「だ、大隊司令部より通達――!」

 

 次の瞬間、雷鳴のようなおどろおどろしい重低音が響いた。爆発音か砲声か、その両方か。

 

「小型ネウロイの集団が警戒線を突破、突撃破砕区域に侵入した模様! 現在、重砲部隊が間接射撃による漸減を実施中。各部隊は逆襲に備えて待機せよ!」

 

 敵をアウトレンジから一方的に殲滅……というのは聞こえは良いが現実には難しい。弓矢から火縄銃、そして大砲と投擲武器がどれだけ進歩しても、それは常に傍に護衛を必要とした。

 

『――第601、第805対ネウロイ駆逐大隊(アンチ・ネウロイ・デストロイヤー)、出撃せよ!』

 

 リべリオン軍において「撃ち漏らしの露払い」という役目を担ったのは、主に陸戦ストライカーユニットを装備した陸戦ウィッチ達であった。

 

 

『――座標指示、グリッドH1588T1127! 撃てぇーーッ!』

 

 だが、ただの陸戦ウィッチではない。彼女たちが装備しているストライカーユニットは、あまりに異質であった。

 

 

 『M36ジャクソン』駆逐戦車型・陸戦ストライカー

 

 

 カールスラントの有する陸戦用超重ストライカーユニット『ティーガー1』の88mm砲を優に超える、50口径90mm砲を装備した『動く大砲』、それがリべリオンの新型陸戦ストライカーだ。

 

 これまでの陸戦ストライカーは、その殆どが戦車をベースに作られたものであり、攻・守・走のバランスが揃っている。

 

 だが、この『M36ジャクソン』ストライカーは明らかに「攻」に偏っている。すなわち魔力の大半を砲撃に回すことで、長射程と大火力を長時間発揮できるような仕上がりにしているのだ。

 

 代償として、防御力は壊滅的に低下するため運用を少しでも間違えると大損害を被る。

 

『――座標修正、グリッドH1588T1183!』

 

 それでもリべリオンが実戦投入を決意した背景には、自らの圧倒的火力への自信とそれを効率的に運用する情報ネットワークへの信頼があったからだ。

 現に今のところ、リべリオン軍は飽和攻撃で敵を一方的に殲滅しつつある。

 

 

『――撃ち方、止めぇッ!』

 

 これまでのウィッチ隊と異なる点があるとすれば、アンチ・ネウロイ・デストロイヤー大隊では一般兵との協調行動を前提となっている事があげられる。

 

 一般的な砲撃では ①砲撃要請→②砲撃→③着弾報告→④誤差修正→⑤砲撃→⑥効果判定 というサイクルを繰り返す事になっている。

 

 接近戦ならば直接弾道なので目視でもどうにかなるが、長距離射程ではそうもいかない。複雑な計算や弾道予測が必要となり、ウィッチ一人に全てを押し付けるのは大きな負担えq。

 

 

 そこでリべリオン軍は観測班、砲撃指揮所、陸戦ウィッチの3つを一つのチームとすることで、専門家と負担の軽減を狙った。

 

 一般兵の砲撃指揮官はウィッチの指揮官とは別に砲撃指示を専門に行い、観測班の着弾結果をもとに射撃修正を行う。そして観測班もまた、着弾報告と戦果報告だけをすれば良いため負担は大幅に軽減される。最後に陸戦ウィッチだが、彼女たちはただ砲撃指揮官の指示通りに動けば良いため、砲撃時の魔力のコントロールに集中できる、という仕組みだ。

 

 タイムラグの問題は、小隊レベルにまで無線機を配備することで補った。リべリオン軍では理論上、ほぼ全ての兵士がリアルタイムで戦況を把握する事が可能なのだ。

 

 

 そして『戦場の霧』が晴れた時、人類は未知の存在であるネウロイに対するマイナス面を大幅に克服することになる。

 

 

 **

 

 

『――砲兵の制圧射撃に合わせて、アンチ・ネウロイ・デストロイヤー大隊は二時方向へ後退、次の指示があるまで待機せよ!」

 

 

 テクノロジーに支えられて正確無比に動くリべリオン軍の姿は、もはや生身の人間というより歯車で動く機械のようであった。鉄と血の戦場から、さらにロマンを抜いて数学を足したような無機質さすら覚える。

 

 

『――対象区域の安全を確認。予定通り航空支援を実施します』

 

 戦況はすでに最終段階に入っていた。ドゥーリットルは続けて空母から爆撃隊を出動させ、長蛇の陣形で時計回りの方向に絨毯爆撃を試みた。正確に当てるのではなく、はるか上空から確率論的にネウロイを吹き飛ばすのだ。

 

 無誘導爆弾にもVT信管が着けられており、これが作動して爆破した箇所を確認しながら、後続の爆撃機がさらに精度をあげてゆく。むろんネウロイも反撃を試みるが、想定を超える火力の集中に耐えきれず、次々とコアを露出させていく。

 

 そこを狙って、リべリオンのウィッチは数人がかり機銃の弾をばら撒いていく。素人ウィッチであろうと、コアが露出して弾も豊富、回避の必要もないとなればコアの破壊は容易いものだ。

 

 この新システムが機能している限り、リべリオンの用兵と統帥に勝てる者は存在しない、という事実が証明されつつあるようだった。

 

    




 モデルはWW2時のアメリカ軍の「戦車駆逐大隊」です。高火力・高機動力・紙装甲の駆逐戦車を主体として、火力と機動力の集中運用で敵戦車部隊を撃破することを期待されていました。
 結果としてはさすがに防御力が低すぎたらしく、戦果の割に被害が大きいため徐々に戦車部隊の支援に回り、「戦車には戦車で」という方向に落ち着いたのだとか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。