ストライクウィッチーズ ~ドゥーリットルの爆撃隊~ 作:ユナイテッド・ステーツ・オブ・リベリオン
ダウンバーストの発生によって担当地区が飛行禁止区域に設定されたウィッチたちの大部分は、補給のため母艦に帰投していた。
ミーナらが所属するカールスラント部隊もそのひとつである。彼女たちはストライカーユニットを整備班に引き渡した後、栄養と水分の補給を行うべく食堂で待機していた。食堂にはラジオも設置されており、他の部隊がどういう戦況なのか確認することも出来る。
当然ながら注目されたのはリベリオン軍の状況であり――放送内容を信じるならば、リベリオン軍は通常部隊と素人ウィッチのみでネウロイの撃破を成功させつつあった。
「冗談だろ……」
バルクホルンが、放心したように呻く。所詮は素人、いくら新技術と装備で武装しようと戦場を知らぬ新兵が撃初陣で活躍できるはずがない……そんなベテランの慢心を打ち砕くかのごとく、ラジオはリべリオン軍の奮闘を興奮気味に伝えていた。
「リベリオンの人たち、本当に飽和攻撃でネウロイ倒しちゃってるんだ……」
エーリカでさえ、ラジオに耳を押し付けるようにして一言も聞き漏らすまいとしている。それほど、リベリオン軍の戦法と戦果はベテランの欧州ウィッチたちにとって衝撃的なものだった。
「ミーナは、何か知ってた?」
エーリカの問いに、ミーナは「ええ」と静かに頷く。
「コンバット・ボックス……」
重火力密集編隊(コンバット・ボックス)……それは圧倒的な火力を投入することで、ウィッチの消耗を抑えようという戦術だ。
現状のウィッチ頼りの状況を危惧し、「通常兵器でも従来の数倍の火力を揃え、情報・指揮管制システムと組み合わせることでネウロイに対抗できる」としたドゥーリットル中将らによって提案された。
元は人類同士の戦闘を想定していたリベリオン軍が、爆撃の際に大編隊を組ませることで防御火力を充実させ、爆撃機の生存性向上を目指して研究していたものだ。
使われる兵器は多種多様にわたる。対空砲火、成形炸薬弾、対戦車砲、自走砲、ロケット弾、焼夷弾、対戦車ライフル、クラスター爆弾、対空機関砲、迫撃砲、高高度爆撃機などを組み合わせた、火力による3次元制圧――それを複数のレーダーや情報管理・火器管制システムによって統制し、従来の6倍から10倍の火力を迅速に集中して敵を圧倒する。
(だからこその大規模攻勢作戦……攻撃側なら戦場と相手を自由に選べるし、事前に偵察しておけば主導権も握れる)
更に攻撃中も情報収集を続けることで、コアの位置を割り出し、最終的には全火力をコアに集中させて飽和攻撃を行う。陸上ウィッチによる長距離狙撃も、重要な攻撃手段だ。
さらに複数の兵科を統合運用するための、通信装備や指揮管制システムにも抜かりはない。ドゥーリットルは空母ホーネットの戦闘指揮所から一歩も動くことなく、ほぼ完璧に戦場をリアルタイムで掌握できていた。
ミーナの脳裏に、ドゥーリットルの笑顔が浮かぶ。やはりあの司令官、とんだ食わせ者だ。
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「でもミーナ、なんでわざわざ効率悪い方法使うのさ? 確かに今回は役に立ったけど、ウィッチが空を飛べない状況なんてそうそう無いよ」
確かにストライカーユニットが普及する前の人類はああやって、通常兵器による飽和攻撃でネウロイを倒していた。だから通常兵器でネウロイが倒せない訳ではない。
だが、それがウィッチにとって代わられたのは、ウィッチに任せた方が効率的だからだ。小型ネウロイ一体を倒すためだけにトン単位の砲弾を使うようなやり方は、それこそリべリオンのような工業・資源大国でなければ不可能だ。
それだけに、エーリカの疑問は当然とも言うべき問いだった。実際、ミーナとしても同じ疑問を抱いている。
――たしかにレーダーや火器管制装置、近接信管といった新技術は驚異的だ。通常兵器にしては、随分と効率良くネウロイを倒している。『コンバット・ボックス』に対応した部隊なら、中型ネウロイ程度は一個師団もあれば対応できるだろう。
(でも、やはりウィッチを超えるほどではない。ウィッチを使った方が効率よく、もっと多くの命を守れるのに……)
リベリオン軍の方法は、基本的に大軍で敵を圧倒する正攻法だ。少数精鋭部隊による奇襲を重視するカールスラント軍とは、ドクトリンが根本から違う。
だからこそ、ミーナの目にはリベリオン軍の思惑が理解できなかった。多くの出血を伴いながら物量でゴリ押しするようなやり方は、どう考えても下策にしか見えない。
(それとも、軍事以外に何か別の理由が……?)
ミーナの心の問いに答えてくれる者はおらず、ただラジオだけがリべリオン軍の勝利を伝えていた。
史実のコンバット・ボックスとは似て非なるもの。