ストライクウィッチーズ ~ドゥーリットルの爆撃隊~   作:ユナイテッド・ステーツ・オブ・リベリオン

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Chapter.3:鉄の嵐
Vol.18:アンコントローラブル


              

 かくして――。

 

 作戦の第4段階『アイアン・ウォール』作戦にて緊急事態発生の報を受けたとき、ドゥーリットルは食事中だった。

 

 臨時司令部の置かれたホテルの食堂の中、たっぷりのオランデーズソースをかけたエッグ・ベネディクトを口に運んでいた彼女は、優雅に口元をナプキンで拭くとチップを置いて立ち上がる。

 

「戦況は?」

 

 作戦指揮室に入るなり、ドゥーリットルは広範囲に広がる戦況の情報集積に専念した。

 

(地震……?)

 

 ドゥーリットルの内心で、微かに動揺する。

 

 

 ――そんなはずはない。ここは欧州、地震など滅多に起きるものではない事は地質学者の全員が保証している。

 

 

 では、何か。決まっている、ネウロイだ。

 

 

「全部隊に警報を発令してください! 警戒を厳にして、少しの変化も見落とさないように!」

 

 即座に、ドゥーリットルは作戦の一時中止を決断した。その上で、警戒態勢をとらせて即応できるよう予備部隊の展開と配置の指示も出す。

 

 

 ――さぁ、来るなら来い。

 

 

 嵐の前の静けさという言葉の通り、意外に感じるほどの長時間にわたってしばらくは何も起こらなかった。やがて全員の忍耐が限界に達した頃、それは起こった。

 

 

「地面が、隆起している……?」

 

 技術士官の報告に、ドゥーリットルは唸る。各種計器からの情報を精査すると、膨大な質量を持つ物体が地下から隆起してきているという。

 

 

「出現地点は……ぜ、前方2kmの地点!」

 

「何だって!?」

 

 若いオペレーターのあげた悲鳴に、全員が信じかねるように反応した。

 

 ――目と鼻の先ではないか。

 

 ドゥーリットルが素早く窓辺に寄ってカーテンをあけると、目の前で視線の先にある地面に巨大な亀裂が走っていく。

 

「ネウロイ……」

 

 まるで大地という母胎から産み落とされるかのように、禍々しく黒い巨体がゆっくりと出現してくる。

 

「なんだ、あのバカでかさは……!」

 

「全幅1kmぐらいあるんじゃないか……?」

 

 最長もまた、全長に準ずる大きさだ。ネウロイの“巣”にすら匹敵する大きさだ。

 

「しかし本当にネウロイなのか? まだ確認が……」

 

「だったら何なのだ? 推測では――」

 

 ざわめくオペレーターたちを、ドゥーリットルの声が一喝する。

 

「推測より、実態の確認を優先します! 偵察機および観測部隊の情報を急いで! ブリタニアのグリニッジ王立天文台にも協力を依頼してください!」

 

 

 ドゥーリットルの指示でひとまず混乱は収束したが、依然として謎の乱入者の正体は掴めていない。

 

「増速!――巨大構造物、増速していますっ!」

 

「正確な報告をお願いします! 具体的な数値と針路は分かりますか?」

 

「速度は時速400キロほど、針路はこちらにまっすぐ向かってきます。!」

 

「では戦闘機隊、それから予備のウィッチ隊をスクランブル発進させて下さい。高射砲部隊も警戒態勢を維持するように……地上部隊にはプランEを伝達、警戒態勢をとりつつ、師団司令部に集結して防衛戦闘の用意を」

 

 焦りを抑え、ドゥーリットルは全軍に作戦の一時中止を伝達した。イレギュラーは極力排除し、計画通りシステマティックに戦う……多国籍で無秩序な軍隊を統制するには、それしかない。

 場合によっては、作戦そのものを中止と計画の再考も視野に入れている。

 

「偵察に向かったウィッチ隊、まもなく接敵します。視界不良、目視による識別は困難かと……」

 

 不安定な欧州の空は、またもや連合軍を翻弄していた。ドゥーリットルは思わず舌打ちしつつ、電子および音波観測をメインにするよう指示をだそうとした、その時。

 

 

「ッ!? ――通信途絶!?」

 

 

 レーダーから、偵察に向かっていたウィッチ隊の反応がロストする。

 

「ジャミングか!?」

 

「いえ……この反応は!」

 

 嫌な予感がした。

 

(………まさか)

 

 自らの予想が外れるように祈りつつ、ドゥーリットルは窓へと向かう。窓ガラスを開けて身を乗り出した次の瞬間、彼女の視界に映ったものは――。

 

 雲を貫く、眩い赤光。ドゥーリットルの目を焼くような閃光が、真っ直ぐに隣接する空軍基地に直撃する。

 

 高出力エネルギーが滑走路を融解させ、格納庫は小爆発を繰り返しながら地面を抉り取っていく。直撃、爆発、あとはその繰り返しだった。

 

 ネウロイを吐き出した直後、地面にあった亀裂から黒い煙のようなものが吹き上がる。

 

「っ……!」

 

 間違いようもない。あの黒い煙、否、黒い雲は――。

 

 

「新しいネウロイの巣……!」

 

 

 まさか、アレは。

 

 

「――報告します! 観測班が、目の前の黒い物質をネウロイの巣と断定!」

 

 

 やはり、アレは。

 

「……っ!」

 

 連合軍総司令官は、思わず言葉を失った。

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