ストライクウィッチーズ ~ドゥーリットルの爆撃隊~   作:ユナイテッド・ステーツ・オブ・リベリオン

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Vol.25:破滅の輝き

                   

 アルンヘム空軍基地を飛び立った、500以上の爆撃群は計画通りの進路を移動していた。

 

 

「見えたぞ、あれがベルリンの巣だ」

 

 

 高度1万メートルを飛んでいた10機のB29爆撃機を率いる、第2中隊長が叫ぶ。

 

 彼の率いる爆撃団『ピースキーパー』もその一翼を担い、例の「新型爆弾」を“ネウロイの巣”に投下するべくフライトを続けている。

 

 

「このままパスファインダー(先導機)に続け! 各機は編隊を維持! 念のため警戒も怠るな!」

 

 号令に従い、巨鳥の群れが進んでゆく。自動銃塔が旋回し、防御砲火網を組み上げる。

 

「これで……終わりなんですよね? この長い戦争も……やっと……」

 

 若い機銃手が、不安そうに呟く。皆が、責任感と戦争からやっと解放されるという爽快感で気分が高ぶっている。

 

「ああ。だから気を抜くな」

 

 最後まで油断するわけにはいかない。操縦桿を握る手に力を込め、眼前に迫りつつある“巣”に意識を集中する。

 

 

 **

 

 

「――見えたぞ、10時の方向だ!」

 

 

 雲の上を疾駆していた10機のスピットファイアを率いる中隊長が叫ぶ。

 

「このまま爆撃するぞ! 各小隊は楔形陣形を維持! 隊列を乱すなよ!」

 

 中隊長は一瞬だけ前方に視線を向け、こちらに向かってくる小型ネウロイの数を確認する。

 

(4、5、6……よし!この数なら……!)

 

 “巣”の周囲には護衛の小型ネウロイが多数いる。

 

 誰かがその注意を引き付けなければ、爆撃部隊は目標を前にして撃墜されかねない。先行していたウィッチ隊が漸減してくれていたおかげか、数はだいぶ減っているようだ。

 

 『インディペンデント』爆弾が投下されるまでの時間稼ぎぐらいなら――中隊長がそう思った瞬間。

 

 

「隊長! 11時方向、第3中隊の展開位置に高熱源反応です! これは……!」

 

 

 副隊長の絶叫――それに一瞬だけおくれて、右方向から眩い閃光。

 

 

「……嘘だろ!?」

 

 

 尋常ではない威力の爆発。目を開けてみると、隣にはつい先ほどまで並走していた戦闘機編隊が文字通り消滅していた。

 

「なんだ今の爆発は!? 敵のレーザー光線か!?」

 

「回避機動する間もなかったってのか……?」

 

 再び彼方から光の筋が飛んでくる。

 

「第1中隊が……!」

 

 今度は左側を飛んでいた爆撃機中隊が、同じように一瞬で消滅していた。しかし消滅の瞬間、護衛中隊の隊長は確かに見た。

 

「嘘だろ!? あのピンク色の光は……!」

 

 

 ―――新型爆弾『インディペンデント』

 

 

 前回の作戦で人類の窮地を救い、今回の作戦の要。それが今、目の前で原因不明の爆発を起こしている。

 

「っ……!」

 

 もはや隊列どころではない。慌てて陣形を解き、回避を試みる10機体のスピットファイア。

 

「各機、散開しろ!今ならまだ――」

 

 指揮官が最後の瞬間に見たものは、眩いばかりの光芒。それに触れて一瞬で蒸発していく、自分の機体だった。

 

 

 **

 

 

 前線の戦況は、無線で司令部にも届けられていた。

 

 オペレーターからは、多数の爆撃機や戦闘機がレーザーによって次々に迎撃されている事を示す報告が続いている。ウィッチによる援護も、あまりに巨大なレーザーの前では無意味に等しく、彼女たちの損害も拡大している。

 

「すでに200機以上が通信途絶!? まだ“巣”まで、60km以上もあるんだぞ!?」

 

 空軍将校の一人が、前線からの報告を聞きながら半狂乱で叫ぶ。巨大レーザーによる迎撃は、作戦を根本から崩壊させつつあった。

 

「いくらネウロイのレーザーが強力とはいえ、ウィッチの護衛もつけているのに……どうしてここまで被害が拡大した!?」

 

「通信によれば、『インディペンデント』爆弾が次々と原因不明の爆発を起こしているとのことです!」

 

「ッ!? 一体どういう事だ……?」

 

 

 **

 

 

 誰もが首をかしげる中、ドゥーリットルだけのその報告の意味するところに気付いていた。

 

(あの『インディペンデント』爆弾は、回収したネウロイのコアの欠片から作られたもの……原理にはまだ解明不能な部分も多い)

 

 だが、すでにパンドラの箱は開かれている。結局のところ理屈をどれだけ並べたところで、ドゥーリットルは最終的に使用を許可してしまった。

 

 

 ――それが今、更なる危機を生み出す事になろうとは。

 

 

 別の報告によれば、ネウロイは互いに共鳴し合うという噂も聞いている。それが事実なら、ネウロイの“巣”に共鳴した新型爆弾が何らかの反応を引き起こしても不思議は無い。

 

 それが爆発という、最悪の結果が現れたのだ。

 

(やはり、時期尚早でしたか……!)

 

 上層部に押し切られるまま、新兵器を導入してしまった自らの過失を呪うドゥーリットル。その代償は、多数の機材、そして人命の消失という形で支払われている。

 

 

 **

 

 

「今すぐにでも、主力を引き返させるべきです!」

 

 

 ブリタニア連邦の士官が狼狽えるように発言する。

 

「このままでは全滅の恐れがあります! 虎の子の『インディペンデント』を温存するためにも、一度撤退を……!」

 

「既にやっている!」

 

 リベリオンの将校が殺気だった声で吠え返した。何度も前線部隊には退却と作戦の中止を命じているが、前線の大混乱のせいで通信回線がまともに機能していないのだ。

 

「ドゥーリットル中将、指示を!」

 

 うろたえるような部下の声に、ドゥーリットルは絞り出すようにして命令を下す。

 

「……全ての戦術予備を投入してください。退却ラインで防空コンプレックスを構築し、そこで敵を食い止めます」

 

「ですが、それでは退却する味方を誤射する危険性が……」

 

「大丈夫です。万が一を考えて安全圏セーフ・ゾーンを設定した航路があるので、すぐにそれを防空部隊および航空隊の両方に伝えてください」

 

 続けて、ドゥーリットルは新型爆弾の破棄を命じた。いざという時の証拠隠滅も兼ねて、それはあらかじめ上層部から指示されている。

 

「報告から、今回の原因不明の爆発は『インディペンデント』に何らかの異常が発生したためと判断します。各部隊は速やかに新型爆弾を破棄し、基地に帰投してください」

 

 恐らくは殆どが間に合わぬであろうことを悔やみながら、ドゥーリットルは必死に部下を鼓舞し続ける。

 

 

 だが、彼らの試練はそこで終わらなかった。続く偵察機からの報告が、今度こそ連合軍を恐怖のどん底に叩き落とす。

 

「――たった今、ベルリンの巣を監視していた偵察機より報告! 大量のネウロイが前線に殺到しています!」

               




      い つ も の


 ベタなお約束展開ですが、様式美と言ってくれると嬉しいです(震え声)
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