ストライクウィッチーズ ~ドゥーリットルの爆撃隊~ 作:ユナイテッド・ステーツ・オブ・リベリオン
「え……!?」
目を剥くミーナ。
「部隊を……潰した?」
それはどういう――と先を続けようとしたミーナに、無線で指示が入る。
『――ヴァルケ中佐、ポイントS575に移動してください』
ハッと気を取り直す。そうだ、今はまだ戦闘中なのだ。
「話はあとで聞かせてもらうわよ!」
そう叫ぶと、ミーナは自身のストライカーをふかせて大空へと吸い込まれていく。
――まずは、目の前にいるネウロイを倒すのが先決だ。
**
残存部隊の一角を率いるラル隊長の下には、7人のウィッチが集まっていた。いつもの戦友たち――502JFWの仲間だ。
「行くか」
ラルは簡潔に命じた。それだけで、今の部下には全てが伝わる。
「菅野さん! そんな前のめりに突っ込まないで!」
ロスマン先生が怒鳴った。菅野と二パのペアは例によって近づき過ぎだ。
「ざっけんな! こっちは暴れたくてウズウズしてんだよ!」
「菅野、落ち着いて! ほら、離れるよ!」
ニパが引きずるようにして、菅野をネウロイから離す。襲い掛かる破壊の光を紙一重で躱しながら、指示されたポイントまで引きずっていく。
「よし……クルピンスキー」
ラルの指示で、待機していたメンバーが襲い掛かる。ストライカーユニットをブーストしての急降下爆撃。熾烈な対空砲火に何度も足を止められながら、しかし彼女たちは飛ぶのを諦めない。
「僕だってやる時にはやるんだよ!」
「行け、ニセ伯爵!!」
「えーっと、一応は応援してくれているのかい……?」
◇
502JFWの猛攻を受けたネウロイは、手負いの獣のように抵抗した。檻に閉じ込められた猛獣のごとく、鋭い爪や牙で攻撃を繰り返すが、徐々にいなされるようにして追い込まれていく。
陣形は崩された。右往左往する中でネウロイはまず、速度という力を喪失していった。
ゆっくりと、しかし着実に進路を変えられ、狩人たちの待つ狩場へと誘導されていく。被弾してスピードが落ちたネウロイには、それと比例するように次々と銃弾が当てられていく。
「――第11砲兵師団、一斉射」
世界最強を誇ったリべリオン軍は、見る影もなく無残な敗北を喫した。しかしそれは「軍」としての総体で見ればの話だ。ごく稀に、士気も高く損耗も少なかった部隊が勇敢にも踏みとどまる場合がある。
第11砲兵師団はそうした部隊の一つだった。
ドゥーリットルの手元にはまだ、大砲と対空機銃、そして戦車という文明の利器が残されていた。
完璧でないにせよ、コンバット・ボックスを見せつける余地は充分にある。
「――第8戦車連隊は孤立したネウロイに砲火を集中、ヒット&アウェイを繰り返して被害を抑えながら敵を足止めしてください」
戦車隊は後退しつつ、巧みな機動で敵を翻弄していた。対空砲は遮蔽物に潜みつつ、ここぞというタイミングで正確無比なヒットを当てる。
砲兵部隊も大砲が焼き付いても構わぬとばかりに踏みとどまっている。被害は少なくないが、戦果はあがっている。
**
200人を超えるウィッチと10万を超える兵士が、ゲルマニアの大地に展開してたった一つの目標を攻撃している。
めくるめく銃弾の交差に、爆発四散する戦車。プロペラを破壊されて酔っ払いのごとくふらつく爆撃機、炎に包まれたまま、なお機銃を打ち続ける対空戦闘車両。膨大な血と鉄が浪費され、ゲルマニアの大地に吸い込まれていく。
「……さすがに状況が複雑になってきましたね。少しばかり視察にでも行きますか」
それまで戦闘指揮室から一切動かなかったドゥーリットル中将は、まるで人が変わったように輸送機に乗って戦場を縦横無尽に疾駆した。
護衛の戦闘機を率いて戦場を突っ切っていくと、ネウロイの放火がそれに集中し、分離した小型ネウロイが追跡と撃破を試みる。
その間に501JFWが別の方向から小型ネウロイを蹴散らし、巣に執拗な攻撃を加えた。分離を済ませたばかりの小型ネウロイが、今まさに飛び立とうとした直後に光と炎に包まれて砕け散る。
ゾウに群がる蚊のごとく、巨大な巣にウィッチたちが舞い踊り、鈍重なレーザーの動きをあざ笑う。
「――敵、巨大な個体を分離!」
「あらあら」
ネウロイの新しい動きに狼狽の気配すら見せずに、ドゥーリットルは通信を担当するナイトウィッチに二、三の指示を与えた。
501JFWはゆるやかに降下し、眼下に見える森林をすれすれのところで飛行する。
ドゥーリットルの戦術用兵は多様で巧妙を極めた。決勝点における有利を確立した上で、兵力配分の駆け引きを楽しんでいるようにさえ見える。
「うらぁぁああああっっ――!!」
巧みに張り巡らされた火線の網目を潜り抜けたネウロイに、突如として地上の森から突っ込んできた人影があった。
菅野と雁淵ひかりである。
火線を避けようとしたネウロイは密集するように誘導され、互いの存在が邪魔になって効果的にレーザーを放つことが出来ない。
そこに、一撃必殺の菅野の拳が巨体を貫く。悲鳴のような音を発したのち、ネウロイは強烈に輝いて四散した。
「やったぜ!」
死闘のただなか、生き残った地上部隊と二線級のウィッチたちもまた活躍の場を得ていた。ドゥーリットルは彼らに制圧射撃を命じており、洗練された指揮も相まって苛烈な効果をあらわしつつあった。
ベテランウィッチたちが危険を承知で近接戦闘に従事したため、ネウロイは巣の近くで戦わざるを得ない。
必然、狭い空域で戦うことになればネウロイは密集し、下手にレーザーを使おうものなら同士討ちの危険が高まる。
ウィッチたちは指示に従って巧みにネウロイを盾にしつつ、隙あらばネウロイの同士討ちを狙っているのである。
青い大空に、エネルギーの乱流が湧き起こる。凶暴化したそれは互いに衝突し、共食いあって無慈悲な乱流に巻き込まれていく。
必死になって死のレーザーから逃れようとするネウロイもいたが、ウィッチたちの機関銃がそれを許さない。
銃弾の火線から味方のレーザーへ、空から地面へと誘導され、回避運動を強要されたネウロイは身体をすり減らし、コアを露出させていく。
「――ロケット、一斉掃射!」
ドゥーリットル中将の声が朗々と響き渡ると、フリ―ガ―ファウストを構えたオラーシャのウィッチ隊が一撃必殺の弾頭を吐き出した。
味方のウィッチがことごとく息をのむほどの威力が発揮され、ネウロイの巨体が縦横に切り裂かれて爆散していく。
「――大型ネウロイ、一体撃破!」
502JFWが巨大なネウロイの体をオレンジ色の火球から細かい塵へと四散させたとき、その左後方でも大小無数のネウロイの破片が八方へと飛び散っていく。
「――こちら中型ネウロイを二体、行動不能にした!」
戦果を報告する通信が無線に溢れかえる。
USA!USA!USA!